■病気 動脈硬化 [病気(た行)]
動脈壁が硬化し、肥厚した病変
動脈硬化とは、コレステロールなどが動脈壁に沈着し、動脈壁の限られた部分が硬化し、肥厚した病変をいい、これによって引き起こされるさまざまな病態を動脈硬化症といいます。
動脈硬化によって動脈の血管壁に病変が起こっても、初期のうちは特に症状はありません。しかし、ある程度病変が進むと、血管の内腔(ないくう)が狭くなって血液の流れが障害されたり、血管壁の弾力性が失われた動脈が拡張、蛇行したり、時には破裂してしまうこともあり、その流域の臓器に影響が現れてきます。
影響を受ける臓器とそれに関連する動脈の部位によって、動脈硬化症を分類すると、脳へいく動脈に起こる脳動脈硬化症、心臓の動脈に起こる冠動脈硬化症、腹部や胸部の大動脈に起こる大動脈硬化症、手足へいく動脈に起こる末梢(まっしょう)動脈硬化症、腎(じん)臓へいく動脈に起こる腎動脈硬化症が、主なものとして挙げられます。
また、動脈壁に生じる病変によって、動脈硬化は粥状(じゅくじょう)硬化(アテローム硬化)、中膜硬化、細動脈硬化という3つのタイプに分類されます。
粥状硬化(アテローム硬化)は、太い動脈や比較的太い動脈の内壁、特に3層からなる動脈壁の内側表面の層である内膜に、コレステロールを主成分とする脂質や石灰が沈着しているタイプ。
アテロームとは、ギリシャ語で粥(かゆ)という意味です。石灰とは、酸と結び付いたカルシウムのことで、血液中のカルシウムはリン酸カルシウムの形となって、血管壁に沈着します。
中膜硬化は、手足などの動脈壁の中膜にまで、石灰の沈着が及んでいるタイプ。中膜とは3層から動脈壁の中央の層のことであり、筋肉と弾力線維からなっています。
この中膜硬化は、高齢者に多くみられる動脈硬化の一つで、加齢に従って動脈壁の中膜に変化が起こると考えられています。血管は硬くなり、弾力性は失われていきます。
細動脈硬化は、脳や腎臓などの臓器内部の細い動脈の壁が厚くなり、内腔が狭くなるタイプ。細動脈は直径わずか0.1ミリから0.2ミリにすぎない血管で、血管壁の老化などに伴って硬くなり、弾力性がなくなるため、血圧に対する抵抗力が弱くなります。高血圧が長い間続くと、その圧力で細動脈の壁が傷付きやすく、細動脈硬化は一層進行します。
この状態では、血管が破裂しやすく、特に脳内で破裂すると体の機能が突然まひする脳卒中になりやすく、危険なタイプの病気です。血圧を下げる薬を服用する以外に、決定的な解決策はありません。
最も注意を要する粥状硬化
通常、動脈硬化といえば、粥状硬化(アテローム硬化)を指します。この粥状硬化は、高血圧、高脂血症、糖尿病、高尿酸血症、肥満、喫煙、運動不足、ストレスなどの危険因子により生じると考えられています。
この粥状硬化は、心臓を取り巻く冠動脈、心臓からの血液を受け入れる大動脈、その大動脈から枝分かれして、腎臓と連絡する腎動脈、下肢へいく腸骨動脈や大腿(だいたい)動脈、脳へいく内頸(ないけい)動脈、同じく脳へいく脳底動脈など、比較的太い動脈の壁によく起こります。
早い場合、粥状硬化はすでに10歳代から始まります。個人差はありますが、その後長い年月をかけて、加齢とともに進展していきます。
初期の病変は、動脈壁の内膜の下に、血液中のコレステロール、リン脂質、中性脂肪などが沈着し、黄色い斑(まだら)状あるいは線状になることです。
やがて、その部位に、中膜の平滑筋細胞や、細胞間をくっつけている結合組織の成分が増殖して固まって、内膜が肥厚し、内腔側に膨らんきます。この塊が粥腫(じょくしゅ)、すなわちアテロームで、粥のようにドロドロしています。
さらに進むと、粥腫がつぶれたり、その部分に血栓がついたり、石灰化なども起こって、一層複雑な病変となっていきます。そうなると、血管の内腔はさらに狭くなってしまいます。
結果として、動脈の血流が遮断されて、酸素や栄養が重要な臓器に到達できなくなる結果、脳卒中、狭心症、心筋梗塞(こうそく)といった生命の危険につながる病気を引き起こす原因となります。
危険因子を上手にコントロールする
現代では、動脈硬化は治療と予防が可能な病気と見なされています。しかし、一般的には、治療より予防という考え方が大切にされており、実際に予防は非常に効果があります。
その治療と予防の重要なポイントは、危険因子をできるだけ早く発見して、上手にコントロールすること。
動脈硬化、特に粥状硬化の危険因子は高血圧、高脂血症、糖尿病、高尿酸血症、肥満、喫煙、運動不足、ストレスなどですので、これらの危険因子を一つだけでなく複数持っている場合、動脈硬化を進行させる危険は一層高まります。
特に、内臓脂肪が増加し、血圧の上昇、中性脂肪の上昇、糖代謝異常が合併した状態は、メタボリック・シンドローム(代謝症候群)と呼ばれ、動脈硬化が進展しやすい状態です。
治療と予防の原則は、まず食事療法です。その理由として、食事療法がかなり効果的である上に、薬物療法に比べて副作用が少ないことが挙げられます。
動脈硬化を促進させる高血圧や高脂血症、肥満を防ぐため、毎日規則正しい時間に、栄養バランスのとれた食事を取るようにし、偏食や過食をしないように心掛けます。より具体的には、動物性脂肪やコレステロール含有量の多い食品の摂取を制限することで高血圧、高脂血症を防止し、高カロリー食品の制限によって肥満を是正します。野菜や海草類のほか、不飽和脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)を多く含む青魚を多く摂取するように心掛けます。
運動療法を適当に取り入れることも効果的です。運動療法によって肥満の是正、ストレスの解消が図れますし、日常的な運動を継続的に行えば、中性脂肪を減らし、善玉コレステロールを増やし、血清脂質の代謝の改善が図れます。そのほかにも、運動は血圧を安定させたり、糖代謝を改善させる効果があります。
運動の種類は、激しいものは適しません。ウオーキング、水泳、水中ウオーキング、ジョギング、サイクリング、体操など、体に無理をかけない適度な運動を習慣にして、楽しく、長く続けることが大切です。
また、善玉コレステロールを減らし、ビタミンCを破壊する喫煙の制限や、ストレスの軽減を図るなど、生活上の注意を怠りなく続けることが肝要です。
食事療法や運動療法、生活上の注意だけでは、動脈硬化の進行が抑えられない時には、危険因子の改善、合併症予防のために、薬物療法が行われます。具体的には、降圧薬、脂質降下薬(特に悪玉コレステロール低下作用のあるスタチン系)、糖尿病治療薬が用いられます。この場合でも、食事療法や運動療法は、基礎的な治療として続けることが重要です。
詳しい病気の解説は四百四病の事典(http://ksjuku.com/jiten.html)へどうぞ
動脈硬化とは、コレステロールなどが動脈壁に沈着し、動脈壁の限られた部分が硬化し、肥厚した病変をいい、これによって引き起こされるさまざまな病態を動脈硬化症といいます。
動脈硬化によって動脈の血管壁に病変が起こっても、初期のうちは特に症状はありません。しかし、ある程度病変が進むと、血管の内腔(ないくう)が狭くなって血液の流れが障害されたり、血管壁の弾力性が失われた動脈が拡張、蛇行したり、時には破裂してしまうこともあり、その流域の臓器に影響が現れてきます。
影響を受ける臓器とそれに関連する動脈の部位によって、動脈硬化症を分類すると、脳へいく動脈に起こる脳動脈硬化症、心臓の動脈に起こる冠動脈硬化症、腹部や胸部の大動脈に起こる大動脈硬化症、手足へいく動脈に起こる末梢(まっしょう)動脈硬化症、腎(じん)臓へいく動脈に起こる腎動脈硬化症が、主なものとして挙げられます。
また、動脈壁に生じる病変によって、動脈硬化は粥状(じゅくじょう)硬化(アテローム硬化)、中膜硬化、細動脈硬化という3つのタイプに分類されます。
粥状硬化(アテローム硬化)は、太い動脈や比較的太い動脈の内壁、特に3層からなる動脈壁の内側表面の層である内膜に、コレステロールを主成分とする脂質や石灰が沈着しているタイプ。
アテロームとは、ギリシャ語で粥(かゆ)という意味です。石灰とは、酸と結び付いたカルシウムのことで、血液中のカルシウムはリン酸カルシウムの形となって、血管壁に沈着します。
中膜硬化は、手足などの動脈壁の中膜にまで、石灰の沈着が及んでいるタイプ。中膜とは3層から動脈壁の中央の層のことであり、筋肉と弾力線維からなっています。
この中膜硬化は、高齢者に多くみられる動脈硬化の一つで、加齢に従って動脈壁の中膜に変化が起こると考えられています。血管は硬くなり、弾力性は失われていきます。
細動脈硬化は、脳や腎臓などの臓器内部の細い動脈の壁が厚くなり、内腔が狭くなるタイプ。細動脈は直径わずか0.1ミリから0.2ミリにすぎない血管で、血管壁の老化などに伴って硬くなり、弾力性がなくなるため、血圧に対する抵抗力が弱くなります。高血圧が長い間続くと、その圧力で細動脈の壁が傷付きやすく、細動脈硬化は一層進行します。
この状態では、血管が破裂しやすく、特に脳内で破裂すると体の機能が突然まひする脳卒中になりやすく、危険なタイプの病気です。血圧を下げる薬を服用する以外に、決定的な解決策はありません。
最も注意を要する粥状硬化
通常、動脈硬化といえば、粥状硬化(アテローム硬化)を指します。この粥状硬化は、高血圧、高脂血症、糖尿病、高尿酸血症、肥満、喫煙、運動不足、ストレスなどの危険因子により生じると考えられています。
この粥状硬化は、心臓を取り巻く冠動脈、心臓からの血液を受け入れる大動脈、その大動脈から枝分かれして、腎臓と連絡する腎動脈、下肢へいく腸骨動脈や大腿(だいたい)動脈、脳へいく内頸(ないけい)動脈、同じく脳へいく脳底動脈など、比較的太い動脈の壁によく起こります。
早い場合、粥状硬化はすでに10歳代から始まります。個人差はありますが、その後長い年月をかけて、加齢とともに進展していきます。
初期の病変は、動脈壁の内膜の下に、血液中のコレステロール、リン脂質、中性脂肪などが沈着し、黄色い斑(まだら)状あるいは線状になることです。
やがて、その部位に、中膜の平滑筋細胞や、細胞間をくっつけている結合組織の成分が増殖して固まって、内膜が肥厚し、内腔側に膨らんきます。この塊が粥腫(じょくしゅ)、すなわちアテロームで、粥のようにドロドロしています。
さらに進むと、粥腫がつぶれたり、その部分に血栓がついたり、石灰化なども起こって、一層複雑な病変となっていきます。そうなると、血管の内腔はさらに狭くなってしまいます。
結果として、動脈の血流が遮断されて、酸素や栄養が重要な臓器に到達できなくなる結果、脳卒中、狭心症、心筋梗塞(こうそく)といった生命の危険につながる病気を引き起こす原因となります。
危険因子を上手にコントロールする
現代では、動脈硬化は治療と予防が可能な病気と見なされています。しかし、一般的には、治療より予防という考え方が大切にされており、実際に予防は非常に効果があります。
その治療と予防の重要なポイントは、危険因子をできるだけ早く発見して、上手にコントロールすること。
動脈硬化、特に粥状硬化の危険因子は高血圧、高脂血症、糖尿病、高尿酸血症、肥満、喫煙、運動不足、ストレスなどですので、これらの危険因子を一つだけでなく複数持っている場合、動脈硬化を進行させる危険は一層高まります。
特に、内臓脂肪が増加し、血圧の上昇、中性脂肪の上昇、糖代謝異常が合併した状態は、メタボリック・シンドローム(代謝症候群)と呼ばれ、動脈硬化が進展しやすい状態です。
治療と予防の原則は、まず食事療法です。その理由として、食事療法がかなり効果的である上に、薬物療法に比べて副作用が少ないことが挙げられます。
動脈硬化を促進させる高血圧や高脂血症、肥満を防ぐため、毎日規則正しい時間に、栄養バランスのとれた食事を取るようにし、偏食や過食をしないように心掛けます。より具体的には、動物性脂肪やコレステロール含有量の多い食品の摂取を制限することで高血圧、高脂血症を防止し、高カロリー食品の制限によって肥満を是正します。野菜や海草類のほか、不飽和脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)を多く含む青魚を多く摂取するように心掛けます。
運動療法を適当に取り入れることも効果的です。運動療法によって肥満の是正、ストレスの解消が図れますし、日常的な運動を継続的に行えば、中性脂肪を減らし、善玉コレステロールを増やし、血清脂質の代謝の改善が図れます。そのほかにも、運動は血圧を安定させたり、糖代謝を改善させる効果があります。
運動の種類は、激しいものは適しません。ウオーキング、水泳、水中ウオーキング、ジョギング、サイクリング、体操など、体に無理をかけない適度な運動を習慣にして、楽しく、長く続けることが大切です。
また、善玉コレステロールを減らし、ビタミンCを破壊する喫煙の制限や、ストレスの軽減を図るなど、生活上の注意を怠りなく続けることが肝要です。
食事療法や運動療法、生活上の注意だけでは、動脈硬化の進行が抑えられない時には、危険因子の改善、合併症予防のために、薬物療法が行われます。具体的には、降圧薬、脂質降下薬(特に悪玉コレステロール低下作用のあるスタチン系)、糖尿病治療薬が用いられます。この場合でも、食事療法や運動療法は、基礎的な治療として続けることが重要です。
詳しい病気の解説は四百四病の事典(http://ksjuku.com/jiten.html)へどうぞ
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