■病気 肝硬変 [病気(か行)]
肝細胞が壊死し、線維化して発症
肝硬変とは、肝細胞が壊死(えし)して組織の中に線維が増え、肝臓が硬く変わる疾患です。 内部の血液循環に異常が生じ、肝臓の働きが果たせなくなります。特に、40歳以上の男性に多くみられ、好発年齢は60歳代。
肝臓は再生力が強い臓器ですので、肝細胞が壊死などを起こしても、その原因が一過性の場合には、欠損部分が新しい肝細胞によって補充されて治癒します。しかし、慢性的に傷害されている場合には、肝臓の中に線維が増えてきます。
肝硬変では、この増えた線維によって、肝細胞の集団が島状に取り囲まれ、結節状になっています。肝臓の表面も、同様に結節がみられて凹凸状となっています。
肝硬変の主な原因は、アルコール性肝炎、B型およびC型慢性肝炎です。アルコールが原因のものをアルコール性肝硬変といい、ウイルス肝炎を原因とするものを壊死後性肝硬変といいます。
日本では、B型およびC型肝炎ウイルスによるものが最も多く、アルコール性肝硬変がそれに次ぐものです。そのほか、自己免疫、毒物、心臓性肝硬変、胆汁うっ滞、寄生虫、先天性の代謝異常を原因とするものもあります。
症状は黄疸、腹水、むくみ、出血など
肝硬変の初期には、自覚症状がないことが多く認められます。肝臓は予備力が大きいために、特に肝機能に異常のない場合も、決してまれではありません。
次第に肝機能障害が進行するとともに、肝臓の予備力が低下してくると、皮膚が色素沈着を増して黒褐色となり、倦怠(けんたい)感、脱力感、体重減少、毛細血管の拡張によって手のひらが薄く赤黒くなる手掌紅斑(しゅしょうこうはん)、首から胸にかけて赤いクモ状の斑点ができるクモ状血管腫(しゅ)などの症状がみられるようになります。
また、肝臓での性ホルモンの不活性化によって、男性では乳房が膨らむ女性化乳房、精巣委縮、ED(インポテンス)などが、女性では月経異常などが起こります。
さらに進行してくると、黄疸(おうだん)が出て、おなかが膨らみ、腹水がたまります。足にむくみが出現し、へそ周辺の静脈が腫(は)れ、門脈圧亢進(こうしん)症という状態になると、食道静脈瘤(りゅう)の破裂で吐血します。
本来、腹部内の臓器から集められた血液は、すべて門脈という血管によっていったん肝臓に運ばれ、大静脈を経由して心臓に戻ります。肝硬変があると肝臓内の血液の流れが悪くなるため、門脈の血液が肝臓に入る時に抵抗がかかり、門脈の圧が高くなって、門脈圧亢進症を招きます。
肝臓内を通り切れない門脈血は、食道の部分の静脈を脇(わき)道として遠回りし、大静脈に注ぐことになります。この食道部分の静脈を流れる血液量が多くなると、静脈の圧が高まって腫れ、その食道静脈瘤が破れると吐血を起こすのです。
門脈圧亢進症があると、その下流の臓器の脾(ひ)臓が腫れるために、白血球減少、血小板減少や貧血がみられるようにもなります。
また、肝臓での蛋白(たんぱく)代謝で生じるアンモニアを処理して、毒性のない尿素に変える働きが低下するために、中毒物質であるアンモニアが血液中に増加して、精神症状も起こります。性格が急に変わったり、普通では考えられないような異常行動をとったりすることがあり、ついには、うとうとと眠ったような昏睡(こんすい)状態となります。これを肝性脳症と呼んでいます。
肝硬変の診断と治療
肝硬変は進行性の病気ですので、予防し、初期のうちに進行を食い止めることが重要です。
肝臓の働きにはかなりの予備力があり、また生化学検査は感度が比較的低いため、肝硬変があっても肝機能検査の結果はしばしば正常値となりますが、超音波検査やCT検査で、肝硬変を示唆する肝臓の縮小や、結節などの組織の異常がわかることがあります。放射性同位元素を用いた肝スキャン検査では、肝臓のどの部分が機能し、どこが線維化しているかが画像に示されます。
医師が診断を確定するには、肝生検が行われます。肝生検とは、肝臓に針を刺して組織を採取し、その組織を顕微鏡で見て検査を行うもの。麻酔が使われますので痛みはありませんが、肝臓に傷を付けるため、検査後は安静にしていることが必要です。
肝硬変の臨床的な機能分類として、肝硬変の原因を問わず、肝臓の機能不全症状の有無から、代償期と非代償期とに分けられます。
代償期肝硬変とは、黄疸、腹水、むくみ、肝性脳症、消化管出血などの肝機能低下と、門脈圧亢進に基づく明らかな症候が1つも認められない病態です。非代償期肝硬変とは、これらの症候のうち1つ以上が認められる病態です。
肝硬変の初期で、体の機能に支障がない代償期の治療は、本人のQOL(生活の質)を維持していきながら、肝硬変の進行を食い止めることを目的として行われます。規則正しい生活、バランスのとれた食事が基本となり、定期的に検査を受ける以外は特別な治療は行われないのが、一般的です。
進行した非代償期の治療では、アルコールなどの毒性物質の摂取をなくし、腹水や食道静脈瘤、肝性脳症といった合併症が生じれば、その治療が行われていきます。
腹水の治療では、水分と塩分を制限し、肝臓への負担を軽減するために、ある程度は安静も必要となります。さらに、効果を見ながら利尿剤を用いられることもあります。これでも改善しない場合は、アルブミンを注射で補います。ただし、薬剤は弱っている肝臓には負担になるので、なるべく使わず、使っても少量ずつが原則です。
食道静脈瘤の治療では、静脈瘤ができても痛みや異物感などの自覚症状がないため、定期的な検査を受けてもらい、破裂を防止します。静脈瘤が赤みを帯びてきたら、破裂の危険信号ですので、予防のための治療が必要になります。患部に硬化剤を注入して静脈瘤を固めてしまう方法や、静脈瘤を輪ゴムで縛って血流を止めてしまう静脈瘤結紮(けっさつ)術などがあります。
肝性脳症の治療では、まず食事で取る蛋白質を1日40グラムに制限します。そして、薬物療法に使われるのは、ラクツロースという一種の緩下剤で、腸内の有害な細菌を抑えて排便を促し、腸内を浄化する薬です。アンモニアの産生を促す細菌を殺すための抗生物質、あるいはアミノ酸バランスを調整する特殊アミノ酸製剤なども使われます。
また、肝臓で代謝される栄養を補う薬の服用が必要な場合には、過剰投与を避けるため、通常よりも大幅に用量が減らされます。適切な栄養摂取を心掛け、蛋白質や塩分の摂取制限、ビタミン剤の服用などが行われます。
肝臓は本来、脂質、炭水化物、蛋白質、アミノ酸およびエネルギー代謝など栄養代謝の中心的な臓器ですので、肝硬変、特に機能不全を来す非代償期肝硬変では、さまざまな栄養代謝障害が引き起こされるからです。
詳しい病気の解説は四百四病の事典(http://ksjuku.com/jiten.html)へどうぞ
肝硬変とは、肝細胞が壊死(えし)して組織の中に線維が増え、肝臓が硬く変わる疾患です。 内部の血液循環に異常が生じ、肝臓の働きが果たせなくなります。特に、40歳以上の男性に多くみられ、好発年齢は60歳代。
肝臓は再生力が強い臓器ですので、肝細胞が壊死などを起こしても、その原因が一過性の場合には、欠損部分が新しい肝細胞によって補充されて治癒します。しかし、慢性的に傷害されている場合には、肝臓の中に線維が増えてきます。
肝硬変では、この増えた線維によって、肝細胞の集団が島状に取り囲まれ、結節状になっています。肝臓の表面も、同様に結節がみられて凹凸状となっています。
肝硬変の主な原因は、アルコール性肝炎、B型およびC型慢性肝炎です。アルコールが原因のものをアルコール性肝硬変といい、ウイルス肝炎を原因とするものを壊死後性肝硬変といいます。
日本では、B型およびC型肝炎ウイルスによるものが最も多く、アルコール性肝硬変がそれに次ぐものです。そのほか、自己免疫、毒物、心臓性肝硬変、胆汁うっ滞、寄生虫、先天性の代謝異常を原因とするものもあります。
症状は黄疸、腹水、むくみ、出血など
肝硬変の初期には、自覚症状がないことが多く認められます。肝臓は予備力が大きいために、特に肝機能に異常のない場合も、決してまれではありません。
次第に肝機能障害が進行するとともに、肝臓の予備力が低下してくると、皮膚が色素沈着を増して黒褐色となり、倦怠(けんたい)感、脱力感、体重減少、毛細血管の拡張によって手のひらが薄く赤黒くなる手掌紅斑(しゅしょうこうはん)、首から胸にかけて赤いクモ状の斑点ができるクモ状血管腫(しゅ)などの症状がみられるようになります。
また、肝臓での性ホルモンの不活性化によって、男性では乳房が膨らむ女性化乳房、精巣委縮、ED(インポテンス)などが、女性では月経異常などが起こります。
さらに進行してくると、黄疸(おうだん)が出て、おなかが膨らみ、腹水がたまります。足にむくみが出現し、へそ周辺の静脈が腫(は)れ、門脈圧亢進(こうしん)症という状態になると、食道静脈瘤(りゅう)の破裂で吐血します。
本来、腹部内の臓器から集められた血液は、すべて門脈という血管によっていったん肝臓に運ばれ、大静脈を経由して心臓に戻ります。肝硬変があると肝臓内の血液の流れが悪くなるため、門脈の血液が肝臓に入る時に抵抗がかかり、門脈の圧が高くなって、門脈圧亢進症を招きます。
肝臓内を通り切れない門脈血は、食道の部分の静脈を脇(わき)道として遠回りし、大静脈に注ぐことになります。この食道部分の静脈を流れる血液量が多くなると、静脈の圧が高まって腫れ、その食道静脈瘤が破れると吐血を起こすのです。
門脈圧亢進症があると、その下流の臓器の脾(ひ)臓が腫れるために、白血球減少、血小板減少や貧血がみられるようにもなります。
また、肝臓での蛋白(たんぱく)代謝で生じるアンモニアを処理して、毒性のない尿素に変える働きが低下するために、中毒物質であるアンモニアが血液中に増加して、精神症状も起こります。性格が急に変わったり、普通では考えられないような異常行動をとったりすることがあり、ついには、うとうとと眠ったような昏睡(こんすい)状態となります。これを肝性脳症と呼んでいます。
肝硬変の診断と治療
肝硬変は進行性の病気ですので、予防し、初期のうちに進行を食い止めることが重要です。
肝臓の働きにはかなりの予備力があり、また生化学検査は感度が比較的低いため、肝硬変があっても肝機能検査の結果はしばしば正常値となりますが、超音波検査やCT検査で、肝硬変を示唆する肝臓の縮小や、結節などの組織の異常がわかることがあります。放射性同位元素を用いた肝スキャン検査では、肝臓のどの部分が機能し、どこが線維化しているかが画像に示されます。
医師が診断を確定するには、肝生検が行われます。肝生検とは、肝臓に針を刺して組織を採取し、その組織を顕微鏡で見て検査を行うもの。麻酔が使われますので痛みはありませんが、肝臓に傷を付けるため、検査後は安静にしていることが必要です。
肝硬変の臨床的な機能分類として、肝硬変の原因を問わず、肝臓の機能不全症状の有無から、代償期と非代償期とに分けられます。
代償期肝硬変とは、黄疸、腹水、むくみ、肝性脳症、消化管出血などの肝機能低下と、門脈圧亢進に基づく明らかな症候が1つも認められない病態です。非代償期肝硬変とは、これらの症候のうち1つ以上が認められる病態です。
肝硬変の初期で、体の機能に支障がない代償期の治療は、本人のQOL(生活の質)を維持していきながら、肝硬変の進行を食い止めることを目的として行われます。規則正しい生活、バランスのとれた食事が基本となり、定期的に検査を受ける以外は特別な治療は行われないのが、一般的です。
進行した非代償期の治療では、アルコールなどの毒性物質の摂取をなくし、腹水や食道静脈瘤、肝性脳症といった合併症が生じれば、その治療が行われていきます。
腹水の治療では、水分と塩分を制限し、肝臓への負担を軽減するために、ある程度は安静も必要となります。さらに、効果を見ながら利尿剤を用いられることもあります。これでも改善しない場合は、アルブミンを注射で補います。ただし、薬剤は弱っている肝臓には負担になるので、なるべく使わず、使っても少量ずつが原則です。
食道静脈瘤の治療では、静脈瘤ができても痛みや異物感などの自覚症状がないため、定期的な検査を受けてもらい、破裂を防止します。静脈瘤が赤みを帯びてきたら、破裂の危険信号ですので、予防のための治療が必要になります。患部に硬化剤を注入して静脈瘤を固めてしまう方法や、静脈瘤を輪ゴムで縛って血流を止めてしまう静脈瘤結紮(けっさつ)術などがあります。
肝性脳症の治療では、まず食事で取る蛋白質を1日40グラムに制限します。そして、薬物療法に使われるのは、ラクツロースという一種の緩下剤で、腸内の有害な細菌を抑えて排便を促し、腸内を浄化する薬です。アンモニアの産生を促す細菌を殺すための抗生物質、あるいはアミノ酸バランスを調整する特殊アミノ酸製剤なども使われます。
また、肝臓で代謝される栄養を補う薬の服用が必要な場合には、過剰投与を避けるため、通常よりも大幅に用量が減らされます。適切な栄養摂取を心掛け、蛋白質や塩分の摂取制限、ビタミン剤の服用などが行われます。
肝臓は本来、脂質、炭水化物、蛋白質、アミノ酸およびエネルギー代謝など栄養代謝の中心的な臓器ですので、肝硬変、特に機能不全を来す非代償期肝硬変では、さまざまな栄養代謝障害が引き起こされるからです。
詳しい病気の解説は四百四病の事典(http://ksjuku.com/jiten.html)へどうぞ
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