■病気 視神経症 [病気(さ行)]
視神経の損傷で視機能障害が起こった状態
視神経症とは、直接的な圧迫や循環障害が起こって視神経が損傷し、慢性かつ進行性の視機能障害が起こった状態。視神経は網膜に映った物の形や色、光などの情報を脳神経細胞に伝達するという役割を担っていますので、視神経が損傷すると物を見る働きも損なわれてしまいます。
この視神経が障害される疾患には視神経炎もありますが、厳密には、視神経の炎症によるものを視神経炎、炎症性でないものを視神経症と区別します。医師による実際の診断では、すぐに区別の付かないことも多いため、視神経症も含めて視神経炎といわれることもあります。
視神経症の視力障害は、数分から数時間で急速に進むこともあれば、2~7日かけて徐々に進行することもあります。多くは中心視力が低下しますが、視野狭窄(きょうさく)のみで視力は低下しないこともあります。視野異常も中心が見えにくくなる中心暗点から、耳側もしくは鼻側半分が見えにくくなる半盲性障害までさまざまです。視機能障害が片目に生じるか両目に生じるかは、原因によって異なります。
視神経症は、虚血性視神経症、外傷性視神経症、レーベル病を含む遺伝性視神経症、圧迫性視神経症、栄養欠乏性視神経症、中毒性視神経症、鼻性視神経症、甲状腺(こうじょうせん)視神経症、腫瘍(しゅよう)性視神経症などに分類されます。
虚血性視神経症
視神経へ栄養を送る血管の循環障害により、視神経への血液供給が妨げられると、視神経細胞が死んだり機能しなくなって、視機能の低下が生じます。この状態を虚血性視神経症といいます。この視神経症には、非動脈炎性と動脈炎性の2つのタイプがあります。
非動脈炎性虚血性視神経症は、50歳以上の人に起こることが多い疾患。視神経乳頭の梗塞(こうそく)によって、眼底に乳頭の蒼白浮腫(そうはくふしゅ)が生じ、視力低下と視野障害が出ます。
この疾患にかかりやすくなる要因としては、高血圧、糖尿病、動脈硬化があります。まれに、ひどい片頭痛を持つ若い人にもみられます。
動脈炎性虚血性視神経症のほうは、70歳以上の人に起こることが多い疾患。動脈が炎症を起こし、視神経への血液供給が妨げられて視神経症が起こるもので、特に多いのは側頭動脈の炎症です。側頭動脈炎が原因の視神経症は、浅側頭動脈に沿った痛みがあり、視力障害の程度がより重くなる傾向があります。
外傷性視神経症
外傷性視神経症は、視神経管への打撃や同部位の骨折による視神経症です。眉毛(まゆげ)部外側の打撲、鼻出血を伴う視力障害で、外傷性視神経症が疑われます。視神経管の骨折はそれほど多くなく、浮腫性変化や出血による視機能障害が大多数です。
遺伝性視神経症
種々のものがあり、いずれも難治性です。比較的多いものとしては、レ一ベル病(レーベル遺伝性視神経症)と優性遺伝性若年性視神経委縮症があります。
レーベル病は、10歳代から30歳代の男性に多く、片目または両目の比較的急激な視カ低下で始まる視神経症で、母系遺伝を示し同一家系内で発症することがあります。その後、数カ月の間に徐々に視神経乳頭の耳側より委縮が始まり、1年以内に視神経全体が委縮します。治療しない多くのレーベル病の発症者は、最終視力が0.1以下になります。
優性遺伝性若年性視神経委縮症は、10歳未満で発症します。初期には視カ低下のほかに色覚異常を示します。
圧迫性視神経症
眼窩(がんか)内の腫瘍や、甲状腺機能の異常に伴う外眼筋の腫大、副鼻腔(びくう)の病変(蓄膿)手術後の嚢胞(のうほう)という袋、悪性腫瘍などによる視神経の圧迫が原因です。
栄養欠乏性視神経症
不規則な食生活に過度の飲酒や喫煙、あるいは悪性貧血が原因となって、ビタミンB12を始めビタミンB1、ビタミンC、葉酸の不足により、両目の中心暗点を呈する視神経症が発症します。これは栄養性弱視とも呼ばれます。視野の中心部に小さい視野欠損が生じて次第に大きくなり、時には視力が完全に失われることがあります。
中毒性視神経症
鉛やメチルアルコール(メタノール)、エチレングリコール(不凍液)、タバコ、ヒ素、トルエンなどの有機溶剤、有機リン農薬、カーバメイト農薬など、視神経に有害な物質による障害もあります。まれに、抗結核薬のエタンブトールや、クロラムフェニコール、イソニアジド、ジゴキシンなどの薬剤が原因で発症することもあります。この種の視力障害は、中毒性弱視と呼ばれることもあります。
鼻性視神経症
視神経と副鼻腔は極めて隣接した位置関係にあるため、副鼻腔で起こった炎症が視神経にまで及んだり、副鼻腔にできた腫瘍などが視神経を圧迫することなどによって視神経障害が起こります。時に、耳鼻咽喉(いんこう)科での緊急処置を要することもあります。
甲状腺視神経症
重症の甲状腺眼症で外眼筋が肥大することによって、眼窩先端部で視神経が圧迫される視神経症です。
腫瘍性視神経症
眼窩内または頭蓋(とうがい)内における腫瘍が原因となって、視神経障害を起こしたもの。特に、視神経自体に発生する腫瘍は、失明の原因になります。
視神経症の検査と診断と治療
多くの視神経症は片眼性、無痛性で、急激発症の形をとらないため、たまたま片目を閉じてみたら見えにくいことに気付く場合がほとんどです。視力低下がゆっくりではあるものの慢性進行性であれば、早く眼科で精密検査を受ける必要があります。
医師による診察では、主に検眼鏡で目の後部を観察することで診断されます。この眼底検査のほか、視力検査、瞳孔(どうこう)の反応検査、視野検査、MRII検査、血液検査、髄液(ずいえき)検査などが必要に応じ行われます。
片眼性の視神経症の場合は、瞳孔の対光反応に左右差があることが特徴的で、瞳孔の反応検査は診断上重要です。動脈瘤(りゅう)など血管性病変が疑われる場合は、MRA検査や脳血管造影が必要になります。
同時に、毒物にさらされた可能性がないか、視神経症のリスク要因となるその他の病気にかかっていないかどうかについて、慎重に問診が行われます。
側頭動脈炎が疑われる場合は、診断を確定するために、側頭動脈の生検、すなわち組織のサンプルを採取して、顕微鏡で観察する検査が行われることもあります。
視神経症の治療では、基本的には原因となる疾患の治療が原則となり、脳外科や耳鼻科などと連携した治療が必要です。
非動脈炎性虚血性視神経症の治療では、高血圧、糖尿病、コレステロール値など、視神経への血液供給に影響を与える要因をコントロールしていきます。側頭動脈炎が原因の動脈炎性虚血性視神経症の場合は、正常な反対側の目に視力障害が起こるのを防ぐため、副じん皮質ステロイド剤、血管拡張剤、ビタミン剤などの内服や点滴が行われます。
視神経に有害な物質や薬剤が原因で発症した視神経症の場合は、タバコやアルコール、その他の有害な物質や薬剤を避ける必要があります。アルコール摂取が要因だと考えられる場合は、バランスのよい食事を取るとともに、ビタミン類のサプリメントを摂取します。
鉛が原因である場合は、鉛を体外に排出するため、サクシマーやジメルカプロールなどのキレート剤が使用されます。キレート剤には、金属に結合して体外への排出を促す作用があります。
栄養の不足が原因の視神経症の場合は、サプリメントにより不足した栄養が補われます。ただし、ビタミンB12の不足が原因の場合は、サプリメントの摂取だけでは不十分で、ビタミンB12が注射で補われます。視神経が委縮していない限り、ある程度の視力回復が期待できます。
視神経症とは、直接的な圧迫や循環障害が起こって視神経が損傷し、慢性かつ進行性の視機能障害が起こった状態。視神経は網膜に映った物の形や色、光などの情報を脳神経細胞に伝達するという役割を担っていますので、視神経が損傷すると物を見る働きも損なわれてしまいます。
この視神経が障害される疾患には視神経炎もありますが、厳密には、視神経の炎症によるものを視神経炎、炎症性でないものを視神経症と区別します。医師による実際の診断では、すぐに区別の付かないことも多いため、視神経症も含めて視神経炎といわれることもあります。
視神経症の視力障害は、数分から数時間で急速に進むこともあれば、2~7日かけて徐々に進行することもあります。多くは中心視力が低下しますが、視野狭窄(きょうさく)のみで視力は低下しないこともあります。視野異常も中心が見えにくくなる中心暗点から、耳側もしくは鼻側半分が見えにくくなる半盲性障害までさまざまです。視機能障害が片目に生じるか両目に生じるかは、原因によって異なります。
視神経症は、虚血性視神経症、外傷性視神経症、レーベル病を含む遺伝性視神経症、圧迫性視神経症、栄養欠乏性視神経症、中毒性視神経症、鼻性視神経症、甲状腺(こうじょうせん)視神経症、腫瘍(しゅよう)性視神経症などに分類されます。
虚血性視神経症
視神経へ栄養を送る血管の循環障害により、視神経への血液供給が妨げられると、視神経細胞が死んだり機能しなくなって、視機能の低下が生じます。この状態を虚血性視神経症といいます。この視神経症には、非動脈炎性と動脈炎性の2つのタイプがあります。
非動脈炎性虚血性視神経症は、50歳以上の人に起こることが多い疾患。視神経乳頭の梗塞(こうそく)によって、眼底に乳頭の蒼白浮腫(そうはくふしゅ)が生じ、視力低下と視野障害が出ます。
この疾患にかかりやすくなる要因としては、高血圧、糖尿病、動脈硬化があります。まれに、ひどい片頭痛を持つ若い人にもみられます。
動脈炎性虚血性視神経症のほうは、70歳以上の人に起こることが多い疾患。動脈が炎症を起こし、視神経への血液供給が妨げられて視神経症が起こるもので、特に多いのは側頭動脈の炎症です。側頭動脈炎が原因の視神経症は、浅側頭動脈に沿った痛みがあり、視力障害の程度がより重くなる傾向があります。
外傷性視神経症
外傷性視神経症は、視神経管への打撃や同部位の骨折による視神経症です。眉毛(まゆげ)部外側の打撲、鼻出血を伴う視力障害で、外傷性視神経症が疑われます。視神経管の骨折はそれほど多くなく、浮腫性変化や出血による視機能障害が大多数です。
遺伝性視神経症
種々のものがあり、いずれも難治性です。比較的多いものとしては、レ一ベル病(レーベル遺伝性視神経症)と優性遺伝性若年性視神経委縮症があります。
レーベル病は、10歳代から30歳代の男性に多く、片目または両目の比較的急激な視カ低下で始まる視神経症で、母系遺伝を示し同一家系内で発症することがあります。その後、数カ月の間に徐々に視神経乳頭の耳側より委縮が始まり、1年以内に視神経全体が委縮します。治療しない多くのレーベル病の発症者は、最終視力が0.1以下になります。
優性遺伝性若年性視神経委縮症は、10歳未満で発症します。初期には視カ低下のほかに色覚異常を示します。
圧迫性視神経症
眼窩(がんか)内の腫瘍や、甲状腺機能の異常に伴う外眼筋の腫大、副鼻腔(びくう)の病変(蓄膿)手術後の嚢胞(のうほう)という袋、悪性腫瘍などによる視神経の圧迫が原因です。
栄養欠乏性視神経症
不規則な食生活に過度の飲酒や喫煙、あるいは悪性貧血が原因となって、ビタミンB12を始めビタミンB1、ビタミンC、葉酸の不足により、両目の中心暗点を呈する視神経症が発症します。これは栄養性弱視とも呼ばれます。視野の中心部に小さい視野欠損が生じて次第に大きくなり、時には視力が完全に失われることがあります。
中毒性視神経症
鉛やメチルアルコール(メタノール)、エチレングリコール(不凍液)、タバコ、ヒ素、トルエンなどの有機溶剤、有機リン農薬、カーバメイト農薬など、視神経に有害な物質による障害もあります。まれに、抗結核薬のエタンブトールや、クロラムフェニコール、イソニアジド、ジゴキシンなどの薬剤が原因で発症することもあります。この種の視力障害は、中毒性弱視と呼ばれることもあります。
鼻性視神経症
視神経と副鼻腔は極めて隣接した位置関係にあるため、副鼻腔で起こった炎症が視神経にまで及んだり、副鼻腔にできた腫瘍などが視神経を圧迫することなどによって視神経障害が起こります。時に、耳鼻咽喉(いんこう)科での緊急処置を要することもあります。
甲状腺視神経症
重症の甲状腺眼症で外眼筋が肥大することによって、眼窩先端部で視神経が圧迫される視神経症です。
腫瘍性視神経症
眼窩内または頭蓋(とうがい)内における腫瘍が原因となって、視神経障害を起こしたもの。特に、視神経自体に発生する腫瘍は、失明の原因になります。
視神経症の検査と診断と治療
多くの視神経症は片眼性、無痛性で、急激発症の形をとらないため、たまたま片目を閉じてみたら見えにくいことに気付く場合がほとんどです。視力低下がゆっくりではあるものの慢性進行性であれば、早く眼科で精密検査を受ける必要があります。
医師による診察では、主に検眼鏡で目の後部を観察することで診断されます。この眼底検査のほか、視力検査、瞳孔(どうこう)の反応検査、視野検査、MRII検査、血液検査、髄液(ずいえき)検査などが必要に応じ行われます。
片眼性の視神経症の場合は、瞳孔の対光反応に左右差があることが特徴的で、瞳孔の反応検査は診断上重要です。動脈瘤(りゅう)など血管性病変が疑われる場合は、MRA検査や脳血管造影が必要になります。
同時に、毒物にさらされた可能性がないか、視神経症のリスク要因となるその他の病気にかかっていないかどうかについて、慎重に問診が行われます。
側頭動脈炎が疑われる場合は、診断を確定するために、側頭動脈の生検、すなわち組織のサンプルを採取して、顕微鏡で観察する検査が行われることもあります。
視神経症の治療では、基本的には原因となる疾患の治療が原則となり、脳外科や耳鼻科などと連携した治療が必要です。
非動脈炎性虚血性視神経症の治療では、高血圧、糖尿病、コレステロール値など、視神経への血液供給に影響を与える要因をコントロールしていきます。側頭動脈炎が原因の動脈炎性虚血性視神経症の場合は、正常な反対側の目に視力障害が起こるのを防ぐため、副じん皮質ステロイド剤、血管拡張剤、ビタミン剤などの内服や点滴が行われます。
視神経に有害な物質や薬剤が原因で発症した視神経症の場合は、タバコやアルコール、その他の有害な物質や薬剤を避ける必要があります。アルコール摂取が要因だと考えられる場合は、バランスのよい食事を取るとともに、ビタミン類のサプリメントを摂取します。
鉛が原因である場合は、鉛を体外に排出するため、サクシマーやジメルカプロールなどのキレート剤が使用されます。キレート剤には、金属に結合して体外への排出を促す作用があります。
栄養の不足が原因の視神経症の場合は、サプリメントにより不足した栄養が補われます。ただし、ビタミンB12の不足が原因の場合は、サプリメントの摂取だけでは不十分で、ビタミンB12が注射で補われます。視神経が委縮していない限り、ある程度の視力回復が期待できます。
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