■病気 機能性胃腸症(機能性ディスペプシア) [病気(き)]
検査をしても異常がないのに、胃腸の不快症状がある疾患
機能性胃腸症とは、内視鏡などの検査をしても異常が見当たらないのに、胃腸の不快症状がある疾患。中でも、症状が上腹部にあるものを機能性ディスペプシアと呼んでいます。
消化器の主要部である胃は、ストレスなどの影響を受けやすく、とても敏感な臓器です。胃の働きが悪くなると、「どうも胃が重い」、「もたれる」、「みぞおちがシクシク痛む」、「むかむかする」、「胸焼けする」など、さまざまな症状が出てきます。こうした胃の不快症状は、誰もが経験するものです。
胃内部の胃腺(せん)からは、強い消化力を持つ胃酸が分泌されています。通常は、中性の粘液が胃壁を覆い、胃酸から胃を守っています。ところが、ストレスや不規則な食事、胃への刺激物などで、この攻めと守りの均衡が崩れてしまうと、胃にトラブルが発生してしまいます。
胃の疾患は、内視鏡などの検査では異常がないのに症状が長く続いているというものが大半で、慢性胃炎、胃神経症(神経性胃炎)といわれています。かつては、症状によって胃酸過多症、胃アト二ーなどの疾患名が付いていました。
しかし、最近では、これらの胃腸の働きが悪くなったために起こる疾患をまとめて、機能性胃腸症、ないし機能性ディスペプシアと呼び、他の胃潰瘍(かいよう)、胃がんなどの疾患と区別しています。
このように機能性胃腸症は新しい疾患というわけではなく、日本人の4人に1人が経験しているといわれるほど有り触れた疾患です。
胃の機能が低下することによって起こる機能性胃腸症、ないし機能性ディスペプシアの症状として、まず胃もたれが挙げられます。胃の動きが悪いと、食べた物や胃液などが十二指腸に送り出されず、胃にたまります。こうなると、食欲が失われたり、食べた物がいつまでもみぞおち付近でこなれていないように感じたり、腹部膨満感やむかつきなどの症状が出てきたりします。
胃もたれが起こる原因は、不規則な生活、食べすぎ、飲みすぎ、ストレスなどです。
次に、胸焼けが挙げられ、胃液が食道に逆流して、酸っぱいものが込み上げてくるものです。原因となるのは、食べすぎや飲みすぎ、前かがみの姿勢を長時間に渡って続けることなどです。また、胃が膨満したために、ぞうきんを絞ったような形をしている胃と食道のつなぎ目が緩んでしまうと、胸焼けになります。
肥満や妊娠によって腹圧がかかったり、便秘で胃が圧迫されたりして、胸焼けが起こることも。
さらに、みぞおちの痛みが挙げられます。胃が過度に膨らんだり、緊張したりすると、胃壁にある神経が突っ張ったり、縮んだりして、痛みが発症します。また、胃酸の分泌が多すぎても、潰瘍が起きた時のような痛みが起こります。ただし、病院で内視鏡検査を受けても、実際には潰瘍はありません。
みぞおちの痛みは、胃粘膜が直接胃酸の刺激を受ける空腹時、夜間に起こりやすくなります。原因は、ストレス、不規則な生活、食べすぎ、飲みすぎなどです。
機能性胃腸症の検査と診断と治療
胃もたれ、胸焼け、みぞおちの痛みなど気になる症状があれば、病院や診療所へ。胃の疾患は、医師でも症状だけでは判断できないことが多く、検査が必要です。定期検診で異常が見付かることも多いので、検診は積極的に受けましょう。
機能性胃腸症、ないし機能性ディスペプシアと診断されたら、投薬としてモリプサドなどの消化管運動機能改善薬が与えられます。さらに、胃もたれには、消化を助ける消化酵素薬(健胃薬)が与えられ、胸焼けや潰瘍症状型には、H2ブロッカーなどの胃酸分泌抑制薬が与えられます。
このH2ブロッカー胃腸薬は市販もされていますが、発疹(ほっしん)や脈の乱れなどの副作用がみられることもあるため、購入する際は薬剤師に相談を。
各種の症状を伴う混合型の場合には、抗うつ剤、精神安定剤が有効なことがあるので、プラスされます。
なお、薬を飲んでもよくならない、胃の症状以外に黒い便が出るなどほかの症状を伴う場合は、胃・十二指腸潰瘍や胆石、膵(すい)臓の疾患、がんなど原因となる疾患が潜んでいるかもしれません。自己判断をせず、消化器の専門医に相談します。
機能性胃腸症、機能性ディスペプシアの症状の軽減には、薬の服用とともに、過剰なストレスを避け、胃や腸に負担をかける生活習慣を改善することが有効です。
●ストレスをためない
胃は、ストレスの影響を強く受けます。胃が自律神経の働きと密接にかかわっていて、ストレスによって自律神経が乱れると、胃の動きや胃酸の分泌が影響を受けるためです。 疲れたなら、ゆっくり体を休め、心と体をリラックスさせましょう。
趣味や運動などで、気分転換を図ることも大切。ウオーキングなど軽く汗ばむほどの運動は、自律神経のバランスを取り戻すのにも効果があります。
●よく噛んで食べる
「胃腸の調子がおかしいな」と感じたら、食事の量を控えめにして、少量ずつ、よく噛(か)んで、ゆっくりと食べましょう。満腹になるまで食べると、胃の蠕動(ぜんどう)運動が妨げられ、胃がもたれやすくなりますので、腹8分目程度が胃の動きがスムーズ。よく噛んで食べれば、唾液(だえき)がたくさん出て消化を助けてくれます。
空気も一緒に飲み込み、おなかが張ってしまう早食いは、好ましくありません。また、食事は1日3食、決まった時間にとりましょう。長時間、食事をしないと、その間は胃酸が薄められず、胃に負担がかかるからです。
食後には、20〜30分ほどの食休みをとりましょう。食後すぐに活動すると、血液が体を動かす骨格筋に回ってしまい、胃腸への血流が減って消化活動が低下します。
●胃に優しい食材を選ぶ
胃の粘膜を保護する成分を食材としては、ビタミンUを含むキャベツ、ムチンを含むオクラやヤマイモ、加熱しても壊れにくいビタミンCを含むジャガイモなどが挙げられます。また、でんぷん質を分解する消化酵素を含んでいるダイコンや、豆腐、鶏(にわとり)のささ身、牛乳、豆乳など消化のよい食材もお勧めです。
逆に、胃にとどまる時間が長い脂っこい物、繊維質が多い物、甘味や塩気が強い物、香辛料、極端に冷たかったり熱かったりする物は、避けたいところです。アルコール、コーヒー、緑茶も、飲みすぎに注意を。
●便秘を治す
胃もたれや胸焼けは、便秘が原因で生ずることもあります。この場合、腸の働きの改善を図りましょう。
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機能性胃腸症とは、内視鏡などの検査をしても異常が見当たらないのに、胃腸の不快症状がある疾患。中でも、症状が上腹部にあるものを機能性ディスペプシアと呼んでいます。
消化器の主要部である胃は、ストレスなどの影響を受けやすく、とても敏感な臓器です。胃の働きが悪くなると、「どうも胃が重い」、「もたれる」、「みぞおちがシクシク痛む」、「むかむかする」、「胸焼けする」など、さまざまな症状が出てきます。こうした胃の不快症状は、誰もが経験するものです。
胃内部の胃腺(せん)からは、強い消化力を持つ胃酸が分泌されています。通常は、中性の粘液が胃壁を覆い、胃酸から胃を守っています。ところが、ストレスや不規則な食事、胃への刺激物などで、この攻めと守りの均衡が崩れてしまうと、胃にトラブルが発生してしまいます。
胃の疾患は、内視鏡などの検査では異常がないのに症状が長く続いているというものが大半で、慢性胃炎、胃神経症(神経性胃炎)といわれています。かつては、症状によって胃酸過多症、胃アト二ーなどの疾患名が付いていました。
しかし、最近では、これらの胃腸の働きが悪くなったために起こる疾患をまとめて、機能性胃腸症、ないし機能性ディスペプシアと呼び、他の胃潰瘍(かいよう)、胃がんなどの疾患と区別しています。
このように機能性胃腸症は新しい疾患というわけではなく、日本人の4人に1人が経験しているといわれるほど有り触れた疾患です。
胃の機能が低下することによって起こる機能性胃腸症、ないし機能性ディスペプシアの症状として、まず胃もたれが挙げられます。胃の動きが悪いと、食べた物や胃液などが十二指腸に送り出されず、胃にたまります。こうなると、食欲が失われたり、食べた物がいつまでもみぞおち付近でこなれていないように感じたり、腹部膨満感やむかつきなどの症状が出てきたりします。
胃もたれが起こる原因は、不規則な生活、食べすぎ、飲みすぎ、ストレスなどです。
次に、胸焼けが挙げられ、胃液が食道に逆流して、酸っぱいものが込み上げてくるものです。原因となるのは、食べすぎや飲みすぎ、前かがみの姿勢を長時間に渡って続けることなどです。また、胃が膨満したために、ぞうきんを絞ったような形をしている胃と食道のつなぎ目が緩んでしまうと、胸焼けになります。
肥満や妊娠によって腹圧がかかったり、便秘で胃が圧迫されたりして、胸焼けが起こることも。
さらに、みぞおちの痛みが挙げられます。胃が過度に膨らんだり、緊張したりすると、胃壁にある神経が突っ張ったり、縮んだりして、痛みが発症します。また、胃酸の分泌が多すぎても、潰瘍が起きた時のような痛みが起こります。ただし、病院で内視鏡検査を受けても、実際には潰瘍はありません。
みぞおちの痛みは、胃粘膜が直接胃酸の刺激を受ける空腹時、夜間に起こりやすくなります。原因は、ストレス、不規則な生活、食べすぎ、飲みすぎなどです。
機能性胃腸症の検査と診断と治療
胃もたれ、胸焼け、みぞおちの痛みなど気になる症状があれば、病院や診療所へ。胃の疾患は、医師でも症状だけでは判断できないことが多く、検査が必要です。定期検診で異常が見付かることも多いので、検診は積極的に受けましょう。
機能性胃腸症、ないし機能性ディスペプシアと診断されたら、投薬としてモリプサドなどの消化管運動機能改善薬が与えられます。さらに、胃もたれには、消化を助ける消化酵素薬(健胃薬)が与えられ、胸焼けや潰瘍症状型には、H2ブロッカーなどの胃酸分泌抑制薬が与えられます。
このH2ブロッカー胃腸薬は市販もされていますが、発疹(ほっしん)や脈の乱れなどの副作用がみられることもあるため、購入する際は薬剤師に相談を。
各種の症状を伴う混合型の場合には、抗うつ剤、精神安定剤が有効なことがあるので、プラスされます。
なお、薬を飲んでもよくならない、胃の症状以外に黒い便が出るなどほかの症状を伴う場合は、胃・十二指腸潰瘍や胆石、膵(すい)臓の疾患、がんなど原因となる疾患が潜んでいるかもしれません。自己判断をせず、消化器の専門医に相談します。
機能性胃腸症、機能性ディスペプシアの症状の軽減には、薬の服用とともに、過剰なストレスを避け、胃や腸に負担をかける生活習慣を改善することが有効です。
●ストレスをためない
胃は、ストレスの影響を強く受けます。胃が自律神経の働きと密接にかかわっていて、ストレスによって自律神経が乱れると、胃の動きや胃酸の分泌が影響を受けるためです。 疲れたなら、ゆっくり体を休め、心と体をリラックスさせましょう。
趣味や運動などで、気分転換を図ることも大切。ウオーキングなど軽く汗ばむほどの運動は、自律神経のバランスを取り戻すのにも効果があります。
●よく噛んで食べる
「胃腸の調子がおかしいな」と感じたら、食事の量を控えめにして、少量ずつ、よく噛(か)んで、ゆっくりと食べましょう。満腹になるまで食べると、胃の蠕動(ぜんどう)運動が妨げられ、胃がもたれやすくなりますので、腹8分目程度が胃の動きがスムーズ。よく噛んで食べれば、唾液(だえき)がたくさん出て消化を助けてくれます。
空気も一緒に飲み込み、おなかが張ってしまう早食いは、好ましくありません。また、食事は1日3食、決まった時間にとりましょう。長時間、食事をしないと、その間は胃酸が薄められず、胃に負担がかかるからです。
食後には、20〜30分ほどの食休みをとりましょう。食後すぐに活動すると、血液が体を動かす骨格筋に回ってしまい、胃腸への血流が減って消化活動が低下します。
●胃に優しい食材を選ぶ
胃の粘膜を保護する成分を食材としては、ビタミンUを含むキャベツ、ムチンを含むオクラやヤマイモ、加熱しても壊れにくいビタミンCを含むジャガイモなどが挙げられます。また、でんぷん質を分解する消化酵素を含んでいるダイコンや、豆腐、鶏(にわとり)のささ身、牛乳、豆乳など消化のよい食材もお勧めです。
逆に、胃にとどまる時間が長い脂っこい物、繊維質が多い物、甘味や塩気が強い物、香辛料、極端に冷たかったり熱かったりする物は、避けたいところです。アルコール、コーヒー、緑茶も、飲みすぎに注意を。
●便秘を治す
胃もたれや胸焼けは、便秘が原因で生ずることもあります。この場合、腸の働きの改善を図りましょう。
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