■改正臓器移植法の施行から1年 15歳未満、国内移植に期待も厳しい現実 [健康ダイジェスト]
脳死下の臓器提供条件を大幅に緩和した改正臓器移植法の施行されてから1年が経ちましたが、15歳未満の子供からの臓器提供には多くの課題があります。
日本臓器移植ネットワークによると、法改正以降、この1年間で実施された脳死移植は計55件で、うち15歳未満の提供者(ドナー)は、今年4月12日に関東甲信越地方の病院で法的に脳死と判定された10歳代前半の男児1例だけでした。
移植ネットによると、今年5月末までに移植希望の登録をしている15歳未満の子供は、心臓8人、肺4人、肝臓10人、腎臓46人。
日本小児循環器学会理事長で東京女子医大循環器小児科の中西敏雄教授は、「これまで海外渡航による移植を検討する際、免罪符として子供の国内登録を行うことがあったが、今は本当に国内で移植できるかもしれないという期待を抱きながら登録するケースが出てきた」といいます。
もっとも、18歳未満の脳死判定を行う際に定められている「虐待」の有無の確認や、子供の脳死を受け入れる親の心情など、実際には15歳未満からの提供に至るハードルは高いままです。結果、海外渡航による移植に頼らざるを得ない子供は依然、存在します。
一方、各国でも臓器提供者不足は深刻で、世界の潮流は渡航移植に年々厳しいものとなっています。加えて、日本では改正臓器移植法施行で「子供も移植ができる」という認識が先行し、渡航移植に必要な資金を集める募金への風当たりが強くなっています。
渡航移植患者やその家族らのサポートをしてきたNPO法人「日本移植支援協会」によると、これまで年間5~10人ほど渡航移植を支援してきたが、改正法施行後は国内での臓器提供が増えたため支援は1人のみに減ったといいます。高橋和子理事長は、「法改正以降、相談に来る家族に現状を伝えると皆、肩を落としてしまう」といいます。
国内で心臓移植が必要と新たに診断される子供は、年間約50人。中西教授は、「子供たちをどう救っていくのかを含め、国内で議論を深めてほしい」と訴えています。
18歳以上の脳死臓器提供実施施設として名前を公表しているのは2月1日現在、全国で303施設。これらの施設は制度上は小児の脳死臓器提供も可能ですが、小児からの提供実施を表明しているのは56施設にとどまっており、提供実施から手を引く施設も出ています。
脳死とは、心臓は動いているが脳の全機能が失われた状態。呼吸などの調節を行う脳幹の機能が残り、自ら呼吸できる「植物状態」とは異なります。
脳死状態でも人工呼吸器などを装着すれば、生命力の強い小児の場合、数年間心臓が動き続けることもあります。脳死判定は移植に関わらない判定医が、脳波活動や自発呼吸の消失の確認など5項目について、6時間以上の間隔を空けて2回行います。蘇生力の高い6歳未満は、間隔を24時間以上空けます。
昨年全面施行された改正臓器移植法で、本人が生前に拒否していない限り家族の承諾で脳死臓器提供ができるようになったほか、対象年齢も生後12週未満を除く全年齢で可能になりました。一方、虐待を受けていた小児(18歳未満)からの臓器提供を禁じています。
2011年7月18日(月)
日本臓器移植ネットワークによると、法改正以降、この1年間で実施された脳死移植は計55件で、うち15歳未満の提供者(ドナー)は、今年4月12日に関東甲信越地方の病院で法的に脳死と判定された10歳代前半の男児1例だけでした。
移植ネットによると、今年5月末までに移植希望の登録をしている15歳未満の子供は、心臓8人、肺4人、肝臓10人、腎臓46人。
日本小児循環器学会理事長で東京女子医大循環器小児科の中西敏雄教授は、「これまで海外渡航による移植を検討する際、免罪符として子供の国内登録を行うことがあったが、今は本当に国内で移植できるかもしれないという期待を抱きながら登録するケースが出てきた」といいます。
もっとも、18歳未満の脳死判定を行う際に定められている「虐待」の有無の確認や、子供の脳死を受け入れる親の心情など、実際には15歳未満からの提供に至るハードルは高いままです。結果、海外渡航による移植に頼らざるを得ない子供は依然、存在します。
一方、各国でも臓器提供者不足は深刻で、世界の潮流は渡航移植に年々厳しいものとなっています。加えて、日本では改正臓器移植法施行で「子供も移植ができる」という認識が先行し、渡航移植に必要な資金を集める募金への風当たりが強くなっています。
渡航移植患者やその家族らのサポートをしてきたNPO法人「日本移植支援協会」によると、これまで年間5~10人ほど渡航移植を支援してきたが、改正法施行後は国内での臓器提供が増えたため支援は1人のみに減ったといいます。高橋和子理事長は、「法改正以降、相談に来る家族に現状を伝えると皆、肩を落としてしまう」といいます。
国内で心臓移植が必要と新たに診断される子供は、年間約50人。中西教授は、「子供たちをどう救っていくのかを含め、国内で議論を深めてほしい」と訴えています。
18歳以上の脳死臓器提供実施施設として名前を公表しているのは2月1日現在、全国で303施設。これらの施設は制度上は小児の脳死臓器提供も可能ですが、小児からの提供実施を表明しているのは56施設にとどまっており、提供実施から手を引く施設も出ています。
脳死とは、心臓は動いているが脳の全機能が失われた状態。呼吸などの調節を行う脳幹の機能が残り、自ら呼吸できる「植物状態」とは異なります。
脳死状態でも人工呼吸器などを装着すれば、生命力の強い小児の場合、数年間心臓が動き続けることもあります。脳死判定は移植に関わらない判定医が、脳波活動や自発呼吸の消失の確認など5項目について、6時間以上の間隔を空けて2回行います。蘇生力の高い6歳未満は、間隔を24時間以上空けます。
昨年全面施行された改正臓器移植法で、本人が生前に拒否していない限り家族の承諾で脳死臓器提供ができるようになったほか、対象年齢も生後12週未満を除く全年齢で可能になりました。一方、虐待を受けていた小児(18歳未満)からの臓器提供を禁じています。
2011年7月18日(月)
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