■用語 遺尿症 [用語(い)]
夜間や昼間に、継続的な尿漏れがある状態
遺尿症とは、夜間や昼間に、尿が不随意、または無意識に排出される状態。夜間の尿漏れだけのものを夜尿症、睡眠時遺尿症と呼び、昼間の尿漏れだけのものを昼間遺尿症、昼間尿失禁症と呼びます。
遺尿症の一種である夜尿症は、肉体的にも知能的にも正常なのに、5〜6歳をすぎても継続的に夜の尿漏れがある状態。睡眠中に無意識に排尿してしまうのは、膀胱(ぼうこう)に尿がいっぱいになったのが自覚できなかったり、膀胱に尿が十分にたまっていないのに我慢できないために起こります。
乳児のお漏らしは当たり前のことで、成長するに連れて夜尿の回数は減っていき、ほとんど5〜6歳までにはなくなります。しかし、その年齢にはかなり個人差があり、5歳をすぎて夜尿があっても、必ずしも病的というわけではありません。経過をみて、次第に回数が減ってくるようであれば、夜尿症として大騒ぎすることはありません。
一説では、5〜6歳児では約20パーセント、小学校低学年では約10パーセント、小学校高学年では約5パーセントに夜尿症がみられるとされています。男女別では、児童・学童では男子のほうが多く、成人では女性のほうに多いとされ、遺伝する傾向も指摘されています。
また、夜尿症の約20パーセントは、昼間も服を着たまま尿が漏れる昼間遺尿症を伴っています。昼間に漏れる時は、排尿を我慢している時や、何かに夢中になっている時に起こります。
乳児以来ずっとこのような遺尿が続いているものを一次性遺尿症、一度は治ったのに再び遺尿が戻ってしまったものを二次性遺尿症と呼びます。
一次性の夜尿症の根本的原因としては、いくつかのことが考えられています。一つには、排尿のメカニズムに関係する自律神経の緊張状態が考えられます。自律神経の一つである副交感神経が過敏で、排尿を促す信号をすぐに出してしまう状態です。
二つ目は、夜間に作られる尿の量が減るのが普通なのに、ホルモンの調節が未熟で脳下垂体から出る抗利尿ホルモンが少ないため、夜中にもたくさんの尿ができるためと考えられます。
さらに、先天的に膀胱の容量が小さいことや冷え性も、一次性の夜尿症の原因になります。これらの原因が患児個人について、必ずしも明確にわかるわけではありません。
二次性の夜尿症では、親の愛情不足やストレスなどといった心理的な要因が考えられています。
以上のほかに、夜尿症が尿路感染症や尿崩症などの基礎疾患の症状としてみられる場合があります。昼間遺尿症でも、膀胱の容量が機能的に低下しているものが大部分であり、頻尿、尿意切迫感を伴っていると基礎疾患がある頻度が高くなります。
遺尿症の基礎疾患としては、先天性腎(じん)奇形、糖尿病、神経性多飲症、脊髄(せきずい)疾患、尿管異所開口、てんかん発作、睡眠時無呼吸症候群、注意欠陥多動障害なども考えられます。
夜尿症など遺尿症は成長するにつれて自然に治ることが多いとされていますが、治療を希望する場合は小児科の専門医を受診します。
遺尿症の検査と診断と治療
小児科の医師はまず、尿路感染症や尿崩症などの基礎疾患がないことを確かめた上で、夜尿症に代表される遺尿症の治療に取り掛かります。
医師による治療では、原因を想定して、順次それに応じた対策を試みていくことになります。副交感神経が過敏なためと考えられる場合は、緊張状態を解くために三環系抗うつ剤や抗コリン剤、精神安定剤を試します。
三環系抗うつ剤の有効率は40〜50パーセント程度で、飲んでいる時は尿意で目が覚めたり、朝まで尿を我慢できるようになりますが、中止すると元に戻ることが多い薬です。
抗利尿ホルモンの分泌が少ないためと考えられる場合は、夜の就寝前に抗利尿ホルモンを投与します。これには点鼻薬があり、寝る前に鼻にスプレーするだけなので簡単に治療を行うことができます。
有効率は40〜50パーセント程度で、尿量を減らす薬なので使用している時は夜尿は減りますが、短期間で中止すると元に戻ることも多い薬です。また、使用時に水分を取りすぎると水中毒という合併症を起こすため、使用2〜3時間前から次の朝まで水分を制限し、コップ一杯程度にする必要があります。
膀胱の容量が小さいためと考えられる場合は、昼間たくさん水を飲ませて、できるだけ排尿を我慢させる方法がとられます。また、排尿時に一時的に排尿をストップさせることにより、排尿をコントロールする訓練も行われます。
眠った後に無理やり起こして排尿させる方法は、目が覚めない状態で排尿するというパターンが身に着いてしまうといわれ、今は行われていません。尿が少し漏れるとアラームが鳴る夜尿アラームという装置が開発されており、有効であることがわかっています。
夜尿アラームは睡眠中の膀胱容量を増やし、尿意により起きやすくする効果がある方法で、少なくとも3カ月間行い、有効率は約60パーセントです。ただし、アラームでは患児本人は起きないことがほとんどのため、家族が起こす必要があり、毎日行うとかなりの負担になります。
二次性の夜尿症では、親の愛情不足や本人のストレス、不安などの心理的なものが原因となっているので、周囲は患児に不安を与えないような家庭環境作りを行う必要があります。
冷え性が夜尿症の原因となっているような場合には、寝る時に布団などを十分かけてやることにより保温に気を付ける必要があります。
夜尿症や昼間遺尿症が、尿路感染症や尿崩症、先天性腎奇形、てんかん発作などの基礎疾患の一症状としてみられる場合は、その基礎疾患の治療を医師が行います。
遺尿症とは、夜間や昼間に、尿が不随意、または無意識に排出される状態。夜間の尿漏れだけのものを夜尿症、睡眠時遺尿症と呼び、昼間の尿漏れだけのものを昼間遺尿症、昼間尿失禁症と呼びます。
遺尿症の一種である夜尿症は、肉体的にも知能的にも正常なのに、5〜6歳をすぎても継続的に夜の尿漏れがある状態。睡眠中に無意識に排尿してしまうのは、膀胱(ぼうこう)に尿がいっぱいになったのが自覚できなかったり、膀胱に尿が十分にたまっていないのに我慢できないために起こります。
乳児のお漏らしは当たり前のことで、成長するに連れて夜尿の回数は減っていき、ほとんど5〜6歳までにはなくなります。しかし、その年齢にはかなり個人差があり、5歳をすぎて夜尿があっても、必ずしも病的というわけではありません。経過をみて、次第に回数が減ってくるようであれば、夜尿症として大騒ぎすることはありません。
一説では、5〜6歳児では約20パーセント、小学校低学年では約10パーセント、小学校高学年では約5パーセントに夜尿症がみられるとされています。男女別では、児童・学童では男子のほうが多く、成人では女性のほうに多いとされ、遺伝する傾向も指摘されています。
また、夜尿症の約20パーセントは、昼間も服を着たまま尿が漏れる昼間遺尿症を伴っています。昼間に漏れる時は、排尿を我慢している時や、何かに夢中になっている時に起こります。
乳児以来ずっとこのような遺尿が続いているものを一次性遺尿症、一度は治ったのに再び遺尿が戻ってしまったものを二次性遺尿症と呼びます。
一次性の夜尿症の根本的原因としては、いくつかのことが考えられています。一つには、排尿のメカニズムに関係する自律神経の緊張状態が考えられます。自律神経の一つである副交感神経が過敏で、排尿を促す信号をすぐに出してしまう状態です。
二つ目は、夜間に作られる尿の量が減るのが普通なのに、ホルモンの調節が未熟で脳下垂体から出る抗利尿ホルモンが少ないため、夜中にもたくさんの尿ができるためと考えられます。
さらに、先天的に膀胱の容量が小さいことや冷え性も、一次性の夜尿症の原因になります。これらの原因が患児個人について、必ずしも明確にわかるわけではありません。
二次性の夜尿症では、親の愛情不足やストレスなどといった心理的な要因が考えられています。
以上のほかに、夜尿症が尿路感染症や尿崩症などの基礎疾患の症状としてみられる場合があります。昼間遺尿症でも、膀胱の容量が機能的に低下しているものが大部分であり、頻尿、尿意切迫感を伴っていると基礎疾患がある頻度が高くなります。
遺尿症の基礎疾患としては、先天性腎(じん)奇形、糖尿病、神経性多飲症、脊髄(せきずい)疾患、尿管異所開口、てんかん発作、睡眠時無呼吸症候群、注意欠陥多動障害なども考えられます。
夜尿症など遺尿症は成長するにつれて自然に治ることが多いとされていますが、治療を希望する場合は小児科の専門医を受診します。
遺尿症の検査と診断と治療
小児科の医師はまず、尿路感染症や尿崩症などの基礎疾患がないことを確かめた上で、夜尿症に代表される遺尿症の治療に取り掛かります。
医師による治療では、原因を想定して、順次それに応じた対策を試みていくことになります。副交感神経が過敏なためと考えられる場合は、緊張状態を解くために三環系抗うつ剤や抗コリン剤、精神安定剤を試します。
三環系抗うつ剤の有効率は40〜50パーセント程度で、飲んでいる時は尿意で目が覚めたり、朝まで尿を我慢できるようになりますが、中止すると元に戻ることが多い薬です。
抗利尿ホルモンの分泌が少ないためと考えられる場合は、夜の就寝前に抗利尿ホルモンを投与します。これには点鼻薬があり、寝る前に鼻にスプレーするだけなので簡単に治療を行うことができます。
有効率は40〜50パーセント程度で、尿量を減らす薬なので使用している時は夜尿は減りますが、短期間で中止すると元に戻ることも多い薬です。また、使用時に水分を取りすぎると水中毒という合併症を起こすため、使用2〜3時間前から次の朝まで水分を制限し、コップ一杯程度にする必要があります。
膀胱の容量が小さいためと考えられる場合は、昼間たくさん水を飲ませて、できるだけ排尿を我慢させる方法がとられます。また、排尿時に一時的に排尿をストップさせることにより、排尿をコントロールする訓練も行われます。
眠った後に無理やり起こして排尿させる方法は、目が覚めない状態で排尿するというパターンが身に着いてしまうといわれ、今は行われていません。尿が少し漏れるとアラームが鳴る夜尿アラームという装置が開発されており、有効であることがわかっています。
夜尿アラームは睡眠中の膀胱容量を増やし、尿意により起きやすくする効果がある方法で、少なくとも3カ月間行い、有効率は約60パーセントです。ただし、アラームでは患児本人は起きないことがほとんどのため、家族が起こす必要があり、毎日行うとかなりの負担になります。
二次性の夜尿症では、親の愛情不足や本人のストレス、不安などの心理的なものが原因となっているので、周囲は患児に不安を与えないような家庭環境作りを行う必要があります。
冷え性が夜尿症の原因となっているような場合には、寝る時に布団などを十分かけてやることにより保温に気を付ける必要があります。
夜尿症や昼間遺尿症が、尿路感染症や尿崩症、先天性腎奇形、てんかん発作などの基礎疾患の一症状としてみられる場合は、その基礎疾患の治療を医師が行います。
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