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■用語 解離性健忘 [用語(か行)]

[人影]心的外傷など原因で、過去の一時期の記憶、あるいは全生涯にわたる記憶を失う疾患
 解離性健忘とは、心的外傷やストレスが原因で、過去の一時期の記憶、あるいは全生涯にわたる記憶を失う疾患。解離性障害の一種です。
 高齢者より若年の成人に多く、男性より女性に起こりやすいと見なされていますが、どの年代の男女にも起こり得ます。心的外傷やストレスによるダメージを避けるため、精神が緊急避難的に機能の一部を停止させることが、解離性健忘につながると考えられています。
 そのため、特に戦争、事故、自然災害、性的虐待などの心的外傷を体験した人によくみられます。家庭内の不和、貧困、借金、失業、自殺企図、進学の問題、失恋、離婚、病気、けが、近親者の死亡なども関係します。また、性的衝動や攻撃的衝動によって引き起こされたり、実際に暴力や非難されるような性的行為を行った後でみられることもあります。
 解離性健忘は、健忘の程度と内容により、限局性健忘(局所性健忘)、選択性健忘、全生活史健忘(全般性健忘)、持続性健忘、系統的健忘の5つに分類されます。
 限局性健忘は、数時間から数日という短時間に生じた出来事の記憶を失う健忘。選択性健忘は、数時間から数日という短時間に生じた出来事の一部を思い出すことができるものの、すべてを思い出すことができない健忘。全生活史健忘は、全生涯にわたる記憶を喪失する健忘。持続性健忘は、ある出来事が生じた後から今までの記憶を喪失する健忘。そして、系統的健忘は、あるカテゴリーに属する記憶、例えば、ある特定の人物にかかわる記憶を喪失する健忘に相当します。
 解離性健忘の最も一般的な症状は、記憶の喪失です。普通は意識的に自覚している日常にかかわる情報や、自分自身についての記憶、例えば、自分が誰(だれ)なのか、何をしたのか、どこへ行ったのか、誰と話したのか、何を話したのかなどの記憶が失われます。情報自体は忘れていても、その人の行動には引き続き影響を与えていることもあります。
 健忘はしばしば、突然起こります。大半の人は、記憶を失ったことを認識しています。中には、記憶にはないものの確かに自分が何らかの行為をしたことを認識していたり、その証拠を示されて初めて、記憶の欠落に気付く人もいます。
 記憶の喪失に混乱した様子になる人もいますし、軽度の抑うつ状態になったり、苦痛に悩まされる人もいます。一方で、心配しない人や、無関心な人もいます。
 記憶の空白期間は数分間から数時間、あるいは数年間にまで及び、その空白期間が1つだけの場合もあれば、複数の場合もあります。ある特定の期間の記憶をすべて喪失するのではなく、島状に飛び飛びの記憶の痕跡(こんせき)を残す場合が多くみられます。時には、それまでの人生のすべての記憶が欠落してしまう場合もあります。また、起きたことを次々に忘れてしまう場合もあります。
 慢性の解離性健忘の人では、状況に適応するために偽りの情報を作り、それを実際の経験として話したり、知っているふりをしたりします。そして、自らはその偽りを意識しません。
 解離性健忘の発症者が合併しやすい疾患としては、転換性障害、神経性過食症、アルコール依存症、うつ病などが挙げられます。
 心のトラブルによって記憶が飛んでしまい、仕事や家事などができなくなった時は、精神科、神経科、心療内科を受診することが勧められます。
[人影]解離性健忘の検査と診断と治療
 精神科、神経科、心療内科の医師による診断では、症状を注意深く観察し、体を診察して健忘に身体的な原因がないかどうかを調べます。身体的な原因を除外するために、脳波検査と毒素や薬物を調べる血液検査を行うこともあります。
 また、解離性同一性障害や特定不能の解離性障害の可能性も考えながら、解離性健忘を診断します。解離性同一性障害は、解離性健忘の症状を含んでいるからです。
 その人の記憶喪失の体験の特徴をとらえて理解し、治療計画を立てるために、しばしば特殊な心理検査も行われます。
 精神科、神経科、心療内科の医師による治療は、まず発症者が安心できる環境にすること、発症者と信頼関係を築くことから始めます。
 欠落した記憶が自然には回復しない場合や、緊急に記憶を取り戻す必要がある場合は、記憶想起法がしばしば効果を発揮します。催眠、またはアモバルビタール、チオペンタールラボナールなどの短時間作用型バルビツール酸を静脈内に注射して気持ちを落ち着かせ、鎮静状態にした上で行う面接により、医師が過去のことについて質問します。
 催眠や薬物を利用した面接は、記憶の欠落に伴う不安を軽減するとともに、苦痛に満ちた心的外傷(トラウマ)や葛藤(かっとう)を思い出さないようにするために本人が心の中に築いた防御を突破し、あるいはう回するのに役立ち、記憶を取り戻す助けとなります。
 また、発症者を催眠状態に置くことにより、精神的抑制が消えて欠落した記憶が意識の中に現れることがあります。薬剤は覚醒(かくせい)のコントロールが難しく、しかも、呼吸抑制など危険な副作用が起こる可能性があります。それに対して、催眠は副作用の危険性は少ないものの、治療する側が催眠の技術を持っていなければなりません。
 医師は、どのようなことを思い出すべきか示唆したり、極度の不安を引き起こしたりしないように注意しなければなりません。この方法で再生された記憶は正確でないこともあるため、別の人による裏付けも必要となります。
 そのため、この方法で再生された記憶が正確でない場合もあることを前もって発症者に告げ、本人の同意を得てから、催眠または薬物を利用した面接を行います。
 記憶の空白期間をできるだけ埋めることにより、発症者の自己同一性(アイデンティティ)や自己認識に連続性を取り戻すことができます。健忘がなくなった後も心理療法を継続することは、原因となった心的外傷や葛藤を発症者が理解し、解決方法を見いだしていく上で役立ちます。
 また、発症者の精神的な健康を回復させるために、抗うつ剤や精神安定剤が有効なこともあります。
 大半の人は、欠落した記憶と思われるものを取り戻し、健忘の原因となった心のトラブルの解決に至ります。しかし、中には心のバリアを突き破ることができず、失った過去を再構築できない人もいます。




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