■用語 誤嚥性肺炎 [用語(こ)]
誤嚥によって、口の中の細菌が気管や肺に流れ込んで生じる肺炎
誤嚥(ごえん)性肺炎とは、口の中に常在する細菌が唾液などの分泌物とともに気管内に入る誤嚥に引き続いて、発症する肺炎。嚥下(えんげ)性肺炎とも呼ばれます。
飲み物や食べ物を飲み込む動作を嚥下といい、食道を通って胃に運ばれます。食道と気管は隣り合わせで、気管の入り口である喉頭(こうとう)が大きく開いており、このままでは飲み物や食べ物が気管に入ってしまいます。それを防ぐために、フタの役目を持つ喉頭蓋(がい)という軟骨からなる部分が、嚥下の動作とともに気管の入り口をふさぎます。
健常者でも、本来は胃の中に運ばれなければならない飲み物などが誤って気管内に入る誤嚥を起こしますが、むせたり、せき込んだりして気管から吐き出そうとします。たとえ誤嚥により口の中の細菌が唾液などの分泌物とともに気管や気管支、肺に入り込んだとしても、体力や抵抗力、免疫力により細菌を駆除できるので、生活していく上でさほど影響はありません。
高齢や脳の病気などの影響で嚥下機能の低下がある人は、飲み物や食べ物をうまく飲み込めず、喉頭蓋の動きが低下し、さらに誤嚥した際のむせたり、せき込んだりといった動作も鈍くなり、気管への誤嚥を招きやすくなります。誤嚥によって口の中の細菌が気管や気管支、肺に入り込んだ場合、体力や抵抗力、免疫の低下などにより細菌を駆除することができす、誤嚥性肺炎にかかる危険度が増します。
超高齢化社会を迎えて、肺炎の重要性が増しています。抗生物質(抗菌剤)の発達にもかかわらず、肺炎は全死亡原因の第4位、高齢者に限ってみると第1位です。高齢者の肺炎のほとんどは、この誤嚥性肺炎に相当し、再発を繰り返す特徴があります。
再発を繰り返すと、耐性菌が発生して抗生物質による治療に抵抗性を持つため、優れた抗生物質が開発された現在でも、体力や抵抗力、免疫力が全般的に落ちている高齢者が多く死亡する原因になっています。
誤嚥性肺炎の原因となる誤嚥は、胃液などの消化液が食べ物とともに食道を逆流して肺に流れ込むような明らかで大量の誤嚥よりも、不顕性誤嚥といって、口の中の分泌物や胃液が少量ずつ肺内へ吸引される誤嚥のほうが原因として重要です。この不顕性誤嚥に合わせて、口の中の細菌が気管や気管支に吸引され、誤嚥性肺炎が引き起こされます。
不顕性誤嚥は、特別な現象ではありません。元気な高齢者であっても、夜間は嚥下機能が低下するため、容易に誤嚥してしまいます。加齢とともに、のど仏の位置は下がり、嚥下の時に喉頭蓋が気管の入り口をふさぐのに時間がかかるようになるからです。特に、鎮静薬、向精神薬などの薬を服用している場合は、嚥下反射が抑えられ、不顕性誤嚥を起こしやすくなります。
肺炎は一般に、発熱、せき、痰(たん)、呼吸困難、胸痛などを主な症状としますが、これらの訴えが高齢者の場合ははっきりしません。また、肺炎は一般的に38℃以上の高熱を起こしますが、高齢者の場合は体温の上昇をみないか、あっても微熱程度のものが少なくありません。それに対して、呼吸数は増え、皮膚や舌の乾燥、すなわち脱水状態になることが多いといわれています。
誤嚥性肺炎の検査と診断と治療
内科、呼吸器内科、呼吸器科の医師による診断は、胸のX線(レントゲン)検査で行われます。誤嚥性肺炎では低酸素血症に陥っていることが多くあるため、パルスオキシメーターという医療機器によりSpO2(動脈血酸素飽和度)をモニターすることが、診断の参考となります。
原因となった細菌の特定のため、喀痰(かくたん)の培養検査を行います。気管支鏡で気管内採痰ができれば診断がより確実になりますが、発症者の状態があまりよくないことが多いので、細菌の特定は難しいこともしばしばあります。誤嚥性肺炎を引き起こす主な原因となるのは、肺炎球菌です。
内科、呼吸器内科、呼吸器科の医師による治療では、原因となった細菌を殺菌するペニシリン系、セフェム系などの抗生物質を投与します。胃液を肺の中に吸い込んで肺炎になった場合、ステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン剤)を短期に用いて肺炎を鎮める場合もあります。
さらに、低酸素血症に陥って呼吸不全(酸素欠乏)になった場合は、酸素吸入を行います。重症の呼吸不全では、人工呼吸器などによる治療も併せて行います。
誤嚥性肺炎の多くは抗生物質の投与で治るものの、肺炎の原因である不顕性誤嚥が減らなければ、いったん改善した肺炎が悪化します。そこで、誤嚥を減らす予防策が重要となります。
何より大事なのは口の中を清潔に保ち、口の中でたくさんの細菌を増殖させないようにすることです。歯磨きを毎日して口の中の細菌を減らしたり、たとえ歯がなくともブラッシングをしたり、就寝前にポピヨンヨードでうがいすることも有効な方法です。
寝たきりの高齢者の場合は、仰向けに寝かして放置していると誤嚥が悪化するので、頭部や上半身をベッドで高くしたり、口腔(こうくう)ケアなどを行うと有効です。栄養状態の低下、筋力の低下、意識レベルの低下が誤嚥を増やすため、日ごろよりこれらに対処しておきます。
また、医師による治療で、嚥下機能を改善するアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)、抗血小板薬(シロスタゾール)を投与することもあります。アンジオテンシン変換酵素阻害薬は高血圧の薬ですが、嚥下反射物質の濃度を上昇させて肺炎を予防します。抗血小板薬も脳梗塞(こうそく)の予防薬ですが、嚥下反射を高めて肺炎を予防します。
唐辛子(とうがらし)に含まれるカプサイシンにも、同様の作用が認められています。カプサイシンの入った辛い物を食べて、嚥下反射あるいはせき反射を高めておくことは、誤嚥予防、肺炎予防に役立ちます。
誤嚥(ごえん)性肺炎とは、口の中に常在する細菌が唾液などの分泌物とともに気管内に入る誤嚥に引き続いて、発症する肺炎。嚥下(えんげ)性肺炎とも呼ばれます。
飲み物や食べ物を飲み込む動作を嚥下といい、食道を通って胃に運ばれます。食道と気管は隣り合わせで、気管の入り口である喉頭(こうとう)が大きく開いており、このままでは飲み物や食べ物が気管に入ってしまいます。それを防ぐために、フタの役目を持つ喉頭蓋(がい)という軟骨からなる部分が、嚥下の動作とともに気管の入り口をふさぎます。
健常者でも、本来は胃の中に運ばれなければならない飲み物などが誤って気管内に入る誤嚥を起こしますが、むせたり、せき込んだりして気管から吐き出そうとします。たとえ誤嚥により口の中の細菌が唾液などの分泌物とともに気管や気管支、肺に入り込んだとしても、体力や抵抗力、免疫力により細菌を駆除できるので、生活していく上でさほど影響はありません。
高齢や脳の病気などの影響で嚥下機能の低下がある人は、飲み物や食べ物をうまく飲み込めず、喉頭蓋の動きが低下し、さらに誤嚥した際のむせたり、せき込んだりといった動作も鈍くなり、気管への誤嚥を招きやすくなります。誤嚥によって口の中の細菌が気管や気管支、肺に入り込んだ場合、体力や抵抗力、免疫の低下などにより細菌を駆除することができす、誤嚥性肺炎にかかる危険度が増します。
超高齢化社会を迎えて、肺炎の重要性が増しています。抗生物質(抗菌剤)の発達にもかかわらず、肺炎は全死亡原因の第4位、高齢者に限ってみると第1位です。高齢者の肺炎のほとんどは、この誤嚥性肺炎に相当し、再発を繰り返す特徴があります。
再発を繰り返すと、耐性菌が発生して抗生物質による治療に抵抗性を持つため、優れた抗生物質が開発された現在でも、体力や抵抗力、免疫力が全般的に落ちている高齢者が多く死亡する原因になっています。
誤嚥性肺炎の原因となる誤嚥は、胃液などの消化液が食べ物とともに食道を逆流して肺に流れ込むような明らかで大量の誤嚥よりも、不顕性誤嚥といって、口の中の分泌物や胃液が少量ずつ肺内へ吸引される誤嚥のほうが原因として重要です。この不顕性誤嚥に合わせて、口の中の細菌が気管や気管支に吸引され、誤嚥性肺炎が引き起こされます。
不顕性誤嚥は、特別な現象ではありません。元気な高齢者であっても、夜間は嚥下機能が低下するため、容易に誤嚥してしまいます。加齢とともに、のど仏の位置は下がり、嚥下の時に喉頭蓋が気管の入り口をふさぐのに時間がかかるようになるからです。特に、鎮静薬、向精神薬などの薬を服用している場合は、嚥下反射が抑えられ、不顕性誤嚥を起こしやすくなります。
肺炎は一般に、発熱、せき、痰(たん)、呼吸困難、胸痛などを主な症状としますが、これらの訴えが高齢者の場合ははっきりしません。また、肺炎は一般的に38℃以上の高熱を起こしますが、高齢者の場合は体温の上昇をみないか、あっても微熱程度のものが少なくありません。それに対して、呼吸数は増え、皮膚や舌の乾燥、すなわち脱水状態になることが多いといわれています。
誤嚥性肺炎の検査と診断と治療
内科、呼吸器内科、呼吸器科の医師による診断は、胸のX線(レントゲン)検査で行われます。誤嚥性肺炎では低酸素血症に陥っていることが多くあるため、パルスオキシメーターという医療機器によりSpO2(動脈血酸素飽和度)をモニターすることが、診断の参考となります。
原因となった細菌の特定のため、喀痰(かくたん)の培養検査を行います。気管支鏡で気管内採痰ができれば診断がより確実になりますが、発症者の状態があまりよくないことが多いので、細菌の特定は難しいこともしばしばあります。誤嚥性肺炎を引き起こす主な原因となるのは、肺炎球菌です。
内科、呼吸器内科、呼吸器科の医師による治療では、原因となった細菌を殺菌するペニシリン系、セフェム系などの抗生物質を投与します。胃液を肺の中に吸い込んで肺炎になった場合、ステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン剤)を短期に用いて肺炎を鎮める場合もあります。
さらに、低酸素血症に陥って呼吸不全(酸素欠乏)になった場合は、酸素吸入を行います。重症の呼吸不全では、人工呼吸器などによる治療も併せて行います。
誤嚥性肺炎の多くは抗生物質の投与で治るものの、肺炎の原因である不顕性誤嚥が減らなければ、いったん改善した肺炎が悪化します。そこで、誤嚥を減らす予防策が重要となります。
何より大事なのは口の中を清潔に保ち、口の中でたくさんの細菌を増殖させないようにすることです。歯磨きを毎日して口の中の細菌を減らしたり、たとえ歯がなくともブラッシングをしたり、就寝前にポピヨンヨードでうがいすることも有効な方法です。
寝たきりの高齢者の場合は、仰向けに寝かして放置していると誤嚥が悪化するので、頭部や上半身をベッドで高くしたり、口腔(こうくう)ケアなどを行うと有効です。栄養状態の低下、筋力の低下、意識レベルの低下が誤嚥を増やすため、日ごろよりこれらに対処しておきます。
また、医師による治療で、嚥下機能を改善するアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)、抗血小板薬(シロスタゾール)を投与することもあります。アンジオテンシン変換酵素阻害薬は高血圧の薬ですが、嚥下反射物質の濃度を上昇させて肺炎を予防します。抗血小板薬も脳梗塞(こうそく)の予防薬ですが、嚥下反射を高めて肺炎を予防します。
唐辛子(とうがらし)に含まれるカプサイシンにも、同様の作用が認められています。カプサイシンの入った辛い物を食べて、嚥下反射あるいはせき反射を高めておくことは、誤嚥予防、肺炎予防に役立ちます。
タグ:用語(こ) 男性性器結核 誤嚥性肺炎 女性性器結核 睾丸結核 新生児肺炎 肺好酸球浸潤症 好酸球肺浸潤症 非結核性肺気腫 受動喫煙 肺炎 肺がん 結核 サルコイドーシス 気胸 息切れ 気管支炎 気管支喘息 胸膜炎 肺水腫 肺気腫 敗血症 慢性気管支炎 小児喘息 アスベスト症 ブルガダ症候群 肋間神経痛 肋膜炎 肺嚢胞症 肺性心 心臓ぜんそく 気管支拡張症 過換気症候群 過呼吸症候群 かぜ症候群 肺カンジダ症 横隔膜ヘルニア ボックダレック孔ヘルニア 横隔膜まひ 急性気管支炎 びまん性汎細気管支炎 気管支狭窄 先天性気管狭窄症 日和見肺感染症 マイコプラズマ肺炎 間質性肺炎(肺線維症) 肺膿瘍 膿胸 肺真菌症 アスペルギルス症 塵肺症 肺塞栓、肺梗塞 肺線維症(間質性肺炎) 非定型抗酸菌症 縦隔炎 縦隔気腫、縦隔血腫 縦隔ヘルニア 原発性肺高血圧症 クレブシエラ肺炎 細菌性肺炎 肺吸虫症 自然気胸 肺動脈性肺高血圧症 慢性閉塞性肺疾患(COPD) 三次喫煙 肺高血圧症 原発性自然気胸 続発性自然気胸 間接喫煙 サードハンドスモーク 若年性肺気腫 たばこ病(慢性閉塞性肺疾患) 胸腹裂孔ヘルニア 肺MAC症 夏型過敏性肺炎 肺カルチノイド 漏斗胸 嚥下性肺炎 MAC症 過敏性肺炎 性器結核
大変参考になりました。
高齢の母親が汁物を飲むときに、最近よくむせていますので
心配です。
by 画象 (2013-01-21 09:04)