■用語 ガラクトース血症 [用語(か行)]
糖の一種であるガラクトースを代謝する酵素系の障害のために、体内にガラクトースがたまる遺伝的疾患
ガラクトース血症とは、糖の一種であるガラクトースを代謝する酵素系の障害のために、体内に大量のガラクトースがたまる疾患。先天性代謝異常症の一種です。
ガラクトースは乳糖(ラクトース)という糖の構成成分で、乳糖は母乳、ミルクに多く含まれています。ガラクトースとブドウ糖(グルコース)の2種類の糖が結合してできている乳糖は、乳糖分解酵素によってガラクトースとブドウ糖に分解され、小腸で吸収されます。人間は、ガラクトースをそのまま利用できないため、肝臓でブドウ糖に作り変えて利用しています。
このガラクトースをブドウ糖に変換する酵素系の障害により、授乳開始直後から体内に大量のガラクトースがたまって、血液中のガラクトース値が上昇し、尿中にも多量に排出される、いわゆるガラクトース尿がみられ、新生児期あるいは乳幼児期にガラクトース血症を発症します。
健康な人のガラクトースの値は、血液1dℓ中1mg程度ですが、ガラクトースの代謝に異常があると、ガラクトースとその誘導体であるガラクトース1リン酸が体内に蓄積し、さまざまな症状が現れます。
ガラクトース血症は、ガラクトースの代謝のどの過程に異常があるかにより、ガラクトース血症Ⅰ型(トランスフェラーゼ欠損症)、ガラクトース血症Ⅱ型(ガラクトキナーゼ欠損症)、ガラクトース血症Ⅲ型(エピメラーゼ欠損症)の3つに分類され、いずれも常染色体劣性遺伝の形をとります。
ガラクトース血症は早期発見、早期治療により正常な発育を期待できるため、新生児の集団スクリーニングの実施対象疾患となっており、このスクリーニングで発見される頻度は、ガラクトース血症Ⅰ型が100万人に1人、ガラクトース血症Ⅱ型が50万人に1人、ガラクトース血症Ⅲ型は10万人に1人とされています。
最も症状の重いのは、ガラクトース血症Ⅰ型です。ガラクトース1リン酸ウリジルトランスフェラーゼ、略称トランスフェラーゼという肝臓の酵素が欠けているために、血液中のガラクトースとガラクトース1リン酸の量が増加するタイプで、尿中に多量のガラクトースが排出されてきます。
ほとんどの新生児で、生後2週間以内に授乳力低下、嘔吐(おうと)、下痢などの消化器症状が現れ、体重の増加が悪くなります。低血糖がみられ、肝臓がはれ、黄疸(おうだん)が長引き、肝機能障害がみられます。細菌が感染しやすく、敗血症、髄膜(ずいまく)炎などで重症になることが多いといわれています。
このまま授乳を続けると、肝障害が進行し、肝硬変になります。この結果、肝臓で作られる出血を止める成分が欠乏し、体のあちらこちらに内出血が起こるようになります。腎臓(じんぞう)にも影響が現れ、アミノ酸尿が起こるようになります。
新生児のころから目が白内障となり、脳浮腫(ふしゅ)が起こって、筋肉の緊張が低下します。乳児期以降まで治療が行われないと、知能や運動機能の発達が遅れます。
ガラクトース血症Ⅱ型は、ガラクトキナーゼという肝臓の酵素が欠けているために、血液中のガラクトースの値が上昇し、尿中に大量に排出されるものの、ガラクトース1リン酸の血液中の値は上昇しないタイプ。
起こる障害は目の白内障だけで、ガラクトース血症Ⅰ型のような低血糖、黄疸、知能や運動機能の障害などは起こりません。
ガラクトース血症Ⅲ型は、赤血球に含まれるエピメラーゼという酵素が欠損しているために、赤血球中のガラクトース1リン酸の値が上昇し、ガラクトースの値は正常なタイプ。
新生児の集団スクリーニング検査が開始されてから見付かるようになった疾患で、かなりの頻度で発見されています。しかし、肝機能障害や白内障などの障害は起こらず、通常無症状とされています。
これは、エピメラーゼが欠損しているのは赤血球だけで、肝臓などのほかの臓器や組織でのトランスフェラーゼやガラクトキナーゼの活性には異常がみられないためといわれています。
ガラクトース血症の検査と診断と治療
ガラクトース血症は、新生児の集団スクリーニングという集団検診の対象疾患になっています。具体的なスクリーニングの流れは、まず産科医療機関で生後4~7日目の新生児のかかとからごく少量の血液をろ紙に採り、スクリーニングセンターに郵送します。
スクリーニングセンターでは、ペイゲン法、ボイトラー法、藤村法などを組み合わせた検査で、血液中のガラクトースとガラクトース1リン酸の量とともに、赤血球のトランスフェラーゼなどの酵素の活性を測定するなどして、ガラクトース血症を発見しています。
結果に異常のある場合、小児科の医師による診断で、精密検査が行われます。血液中や尿中のガラクトースは新生児の肝臓病や血管の奇形、他の代謝異常症でも高値になることがあるので、最終的な診断には酵素活性を測定して、それが低下していることを確かめます。
小児科の医師による治療は、ガラクトース血症Ⅰ型、ガラクトース血症Ⅱ型ではガラクトース、すなわち乳糖を食事から除去することが原則で、乳糖を除去した無乳糖乳や豆乳を用います。
治療としては、母乳ならびに保育用ミルクの投与を中止し、無乳糖乳や豆乳(市販名ボンラクト、ラクトレス、ラクトースフリーなど)を用いることによって、大部分は症状が軽快します。
離乳食が始まると、乳製品はもちろんのこと、乳糖を含むさまざまな食品を除去する必要があります。3歳ぐらいになるとガラクトース代謝を代行する代謝経路ができるので、2歳までは厳密に行い、5歳以降は普通食でもよいとされています。
しかし、早期の治療が行われたとしても完全にコントロールすることが難しい場合は、乳糖やガラクトースの制限は生涯続けることが必要で、中断すると再び症状が現れてきます。
また、この疾患の経過は必ずしも順調とはいえず、食事療法を厳格に行っているのに、心身の発育に遅れや神経症状が出現したり、女児の場合は卵巣の障害などが出現したりすることもあります。従って、代謝を専門とする医師の定期的な診察を受けることが大切です。
ガラクトース血症Ⅲ型では、治療の必要がないとされ、食事療法も必要ありません。ただし、ガラクトース血症Ⅰ型と同じ障害を起こすケースもあるという報告もあるので、代謝を専門とする医師の一定期間の経過観察が必要です。
ガラクトース血症とは、糖の一種であるガラクトースを代謝する酵素系の障害のために、体内に大量のガラクトースがたまる疾患。先天性代謝異常症の一種です。
ガラクトースは乳糖(ラクトース)という糖の構成成分で、乳糖は母乳、ミルクに多く含まれています。ガラクトースとブドウ糖(グルコース)の2種類の糖が結合してできている乳糖は、乳糖分解酵素によってガラクトースとブドウ糖に分解され、小腸で吸収されます。人間は、ガラクトースをそのまま利用できないため、肝臓でブドウ糖に作り変えて利用しています。
このガラクトースをブドウ糖に変換する酵素系の障害により、授乳開始直後から体内に大量のガラクトースがたまって、血液中のガラクトース値が上昇し、尿中にも多量に排出される、いわゆるガラクトース尿がみられ、新生児期あるいは乳幼児期にガラクトース血症を発症します。
健康な人のガラクトースの値は、血液1dℓ中1mg程度ですが、ガラクトースの代謝に異常があると、ガラクトースとその誘導体であるガラクトース1リン酸が体内に蓄積し、さまざまな症状が現れます。
ガラクトース血症は、ガラクトースの代謝のどの過程に異常があるかにより、ガラクトース血症Ⅰ型(トランスフェラーゼ欠損症)、ガラクトース血症Ⅱ型(ガラクトキナーゼ欠損症)、ガラクトース血症Ⅲ型(エピメラーゼ欠損症)の3つに分類され、いずれも常染色体劣性遺伝の形をとります。
ガラクトース血症は早期発見、早期治療により正常な発育を期待できるため、新生児の集団スクリーニングの実施対象疾患となっており、このスクリーニングで発見される頻度は、ガラクトース血症Ⅰ型が100万人に1人、ガラクトース血症Ⅱ型が50万人に1人、ガラクトース血症Ⅲ型は10万人に1人とされています。
最も症状の重いのは、ガラクトース血症Ⅰ型です。ガラクトース1リン酸ウリジルトランスフェラーゼ、略称トランスフェラーゼという肝臓の酵素が欠けているために、血液中のガラクトースとガラクトース1リン酸の量が増加するタイプで、尿中に多量のガラクトースが排出されてきます。
ほとんどの新生児で、生後2週間以内に授乳力低下、嘔吐(おうと)、下痢などの消化器症状が現れ、体重の増加が悪くなります。低血糖がみられ、肝臓がはれ、黄疸(おうだん)が長引き、肝機能障害がみられます。細菌が感染しやすく、敗血症、髄膜(ずいまく)炎などで重症になることが多いといわれています。
このまま授乳を続けると、肝障害が進行し、肝硬変になります。この結果、肝臓で作られる出血を止める成分が欠乏し、体のあちらこちらに内出血が起こるようになります。腎臓(じんぞう)にも影響が現れ、アミノ酸尿が起こるようになります。
新生児のころから目が白内障となり、脳浮腫(ふしゅ)が起こって、筋肉の緊張が低下します。乳児期以降まで治療が行われないと、知能や運動機能の発達が遅れます。
ガラクトース血症Ⅱ型は、ガラクトキナーゼという肝臓の酵素が欠けているために、血液中のガラクトースの値が上昇し、尿中に大量に排出されるものの、ガラクトース1リン酸の血液中の値は上昇しないタイプ。
起こる障害は目の白内障だけで、ガラクトース血症Ⅰ型のような低血糖、黄疸、知能や運動機能の障害などは起こりません。
ガラクトース血症Ⅲ型は、赤血球に含まれるエピメラーゼという酵素が欠損しているために、赤血球中のガラクトース1リン酸の値が上昇し、ガラクトースの値は正常なタイプ。
新生児の集団スクリーニング検査が開始されてから見付かるようになった疾患で、かなりの頻度で発見されています。しかし、肝機能障害や白内障などの障害は起こらず、通常無症状とされています。
これは、エピメラーゼが欠損しているのは赤血球だけで、肝臓などのほかの臓器や組織でのトランスフェラーゼやガラクトキナーゼの活性には異常がみられないためといわれています。
ガラクトース血症の検査と診断と治療
ガラクトース血症は、新生児の集団スクリーニングという集団検診の対象疾患になっています。具体的なスクリーニングの流れは、まず産科医療機関で生後4~7日目の新生児のかかとからごく少量の血液をろ紙に採り、スクリーニングセンターに郵送します。
スクリーニングセンターでは、ペイゲン法、ボイトラー法、藤村法などを組み合わせた検査で、血液中のガラクトースとガラクトース1リン酸の量とともに、赤血球のトランスフェラーゼなどの酵素の活性を測定するなどして、ガラクトース血症を発見しています。
結果に異常のある場合、小児科の医師による診断で、精密検査が行われます。血液中や尿中のガラクトースは新生児の肝臓病や血管の奇形、他の代謝異常症でも高値になることがあるので、最終的な診断には酵素活性を測定して、それが低下していることを確かめます。
小児科の医師による治療は、ガラクトース血症Ⅰ型、ガラクトース血症Ⅱ型ではガラクトース、すなわち乳糖を食事から除去することが原則で、乳糖を除去した無乳糖乳や豆乳を用います。
治療としては、母乳ならびに保育用ミルクの投与を中止し、無乳糖乳や豆乳(市販名ボンラクト、ラクトレス、ラクトースフリーなど)を用いることによって、大部分は症状が軽快します。
離乳食が始まると、乳製品はもちろんのこと、乳糖を含むさまざまな食品を除去する必要があります。3歳ぐらいになるとガラクトース代謝を代行する代謝経路ができるので、2歳までは厳密に行い、5歳以降は普通食でもよいとされています。
しかし、早期の治療が行われたとしても完全にコントロールすることが難しい場合は、乳糖やガラクトースの制限は生涯続けることが必要で、中断すると再び症状が現れてきます。
また、この疾患の経過は必ずしも順調とはいえず、食事療法を厳格に行っているのに、心身の発育に遅れや神経症状が出現したり、女児の場合は卵巣の障害などが出現したりすることもあります。従って、代謝を専門とする医師の定期的な診察を受けることが大切です。
ガラクトース血症Ⅲ型では、治療の必要がないとされ、食事療法も必要ありません。ただし、ガラクトース血症Ⅰ型と同じ障害を起こすケースもあるという報告もあるので、代謝を専門とする医師の一定期間の経過観察が必要です。
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