■用語 尿閉 [用語(な行)]
膀胱に尿がたまり、尿意があるにもかかわらず、排出できない状態
尿閉とは、膀胱(ぼうこう)に尿がたまり、尿意があるにもかかわらず、排出できない状態。
腎臓(じんぞう)における尿の生成が少なくなり、1日の尿量が400ミリリットル以下になる乏尿、さらに尿の生成が極端に少なくなり、1日の尿量が100ミリリットル以下になる無尿とは異なります。
尿閉は、突然起こる急性尿閉と、残尿量が徐々に増加して起こる慢性尿閉とに分けられます。また、全く排尿できない完全尿閉と、残尿が多いものの一部を排尿できる不完全尿閉とに分けることもあります。
急性尿閉は、膀胱内に尿が充満しているにもかかわらず、急に排尿が全く不可能になる状態。膀胱排尿筋は正常な場合が多く、膀胱容量の増大とともに恥骨上部の疼痛(とうつう)、強度の不安感が生じ、冷汗をみます。
前立腺(ぜんりつせん)肥大症を持つ人が多量に飲酒した場合や、抗ヒスタミン薬を含む総合感冒薬を服用した場合にみられることがあります。
慢性尿閉は、徐々に下部尿路の閉塞(へいそく)が進行し、それに伴って残尿量が多くなって膀胱は尿が充満した状態になる一方で、尿意を感じなくなって尿が少しずつ漏れる状態。この失禁は、奇異性尿失禁または溢流(いつりゅう)性尿失禁と呼ばれます。放置すると、上部尿路の内圧が上昇し腎不全に陥る場合があります。
また、円滑な尿の排出が障害され、尿が出にくくなる排尿困難を生じるような薬剤の多剤併用により、徐々に残尿量が多くなって、慢性尿閉や腎不全になることもあります。慢性尿閉では、排尿困難に気付かず、尿失禁のみ気に掛けることもあるので、注意が必要です。
尿閉の状態では通常、発症者は500ミリリットル以上の尿が膀胱内にあると尿意を覚え、下腹部が半球状に盛り上がる膨隆や、はち切れそうなくらい張る緊満を認め、膀胱壁の過伸展により下腹部の激しい痛みを生じます。多くの場合、膨隆した下腹部を手で圧迫すると痛みが一段と強くなります。
尿意があるのに排尿できないことによる苦痛、不安、緊張などにより、頻脈、血圧上昇などもみられます。また、尿の膀胱内停留により腎盂(じんう)腎炎を併発している場合は、発熱や腰痛が認められます。
尿閉になると、膀胱に停留した尿の中で細菌が増殖して膀胱炎になったり、腎臓に尿がたまって水腎症や腎不全を合併する恐れもあります。
尿閉を起こしやすい疾患としては、前立腺肥大症のほか、尿道狭窄(きょうさく)、尿道結石、膀胱頸部(けいぶ)狭窄、糖尿病や脊髄(せきずい)損傷などに起因する神経因性膀胱などが挙げられます。
服用した場合に排尿困難、さらに尿閉を来すことがある薬剤には、総合感冒薬、抗ヒスタミン薬、胃腸薬、下痢止め薬、鎮痙(ちんけい)剤、精神安定剤、抗不整脈剤、頻尿尿失禁治療薬、過活動膀胱治療薬などがあります。特に前立腺肥大症のある高齢の男性は、これらの薬剤の服用には注意が必要です。
尿閉の検査と診断と治療
泌尿器科の医師の診断では、膀胱内に尿が充満していることを確認する超音波検査と、強い尿意あるいは下腹部痛を伴い、下腹部は充満した膀胱のため膨隆している症状から、容易に尿閉と確定できます。
泌尿器科の医師の治療では、全く排尿できない完全尿閉の救急処置として、尿道カテーテルという細い管を尿道から膀胱に挿入し、膀胱にたまった尿を排出させる導尿を行います。
一度の導尿で尿閉が改善しない場合は、尿道カテーテルをしばらく膀胱に挿入したままにしておく留置カテーテルを行います。尿道狭窄などで導尿が不可能な場合は、膀胱を直接穿刺(せんし)して排尿します。
前立腺肥大症が尿閉の原因の場合は、症状が軽い場合は薬物療法から始め、症状がひどい場合や合併症を引き起こしている場合は手術療法を行います。
前立腺肥大症の薬物療法は、近年では薬の開発もかなり進んでおり、効果があることが確認されています。治療に使用される薬には、α1受容遮断薬(α1ブロッカー)、抗男性ホルモン薬(抗アンドロゲン剤)、生薬・漢方薬の3種類があります。
α1受容遮断薬は、交感神経の指令を届けにくくし、筋肉の収縮を抑えて尿道を開き排尿をしやすくする薬で、ミニプレスが代表です。抗男性ホルモン薬は、男性ホルモンの働きを抑制する薬で、プロスタール、パーセリンなどが一般的です。その効果は服用してから3カ月程かかり、前立腺を20~30パーセントぐらい縮小させることができます。生薬・漢方薬は、植物の有効成分のエキスを抽出したもので、むくみを取ったり、抗炎症作用などの効果があります。
前立腺肥大症の手術療法には、経尿道的前立腺切除術(TURP)、レーザー治療、温熱療法などがあります。
経尿道的前立腺切除術は、先端に電気メスを装着した内視鏡を尿道から挿入し、患部をみながら肥大した前立腺を尿道内から削り取ります。レーザー治療は、尿道に内視鏡を挿入し、内視鏡からレーザー光線を照射します。そして、肥大結節を焼いて壊死を起こさせ、縮小させます。温熱療法は、尿道や直腸からカテーテルを入れ、RF波やマイクロ波を前立腺に当てて加熱し、肥大を小さくして尿道を開かせます。
尿道狭窄が尿閉の原因の場合は、内視鏡を用いて、狭いところを切開することが多いのですが、切開手術を要することもあります。
尿道結石が尿閉の原因の場合は、結石により尿道狭窄が起きている時には、ブジーと呼ばれる棒状の医療器具を挿入して結石を膀胱へ押し込み、内視鏡を使って超音波やレーザーなどで結石を破砕します。結石が前部尿道にあった場合には、異物鉗子(かんし)と呼ばれる器具を入れて石をつかみ、摘出するという処置が試みられます。
ブジーにより尿道が広げられると、自然に石が出てくることもあります。 開腹手術などを行うこともあります。
糖尿病や脊髄損傷などに起因する神経因性膀胱が尿閉の原因の場合は、基礎疾患に対する治療が可能ならばまずそれを行いますが、神経の疾患はなかなか治療の難しいことが多く、薬物療法、排尿誘発、自己導尿法などで排尿効率を高めることになります。
薬物療法は、膀胱の収縮力を高める目的で、副交感神経刺激用薬のウブレチド、ベサコリンのいずれかまたは両方を処方します。尿道括約部を緩める目的で、α1受容遮断薬(α1ブロッカー)のエブランチルを処方することもあります。
排尿誘発は、手や腹圧による膀胱訓練で、恥骨上部を押したり、下腹部の最も適当な部位をたたいたりすると膀胱の収縮反射を誘発できることがあります。
自己導尿法は、尿が出にくく残尿が多い場合に、1日に1〜2回、清潔なカテーテルを自分で膀胱内に挿入し、尿を排出させるものです。
このような治療だけでは不十分な場合、神経ブロックや手術などの方法もあります。
尿閉とは、膀胱(ぼうこう)に尿がたまり、尿意があるにもかかわらず、排出できない状態。
腎臓(じんぞう)における尿の生成が少なくなり、1日の尿量が400ミリリットル以下になる乏尿、さらに尿の生成が極端に少なくなり、1日の尿量が100ミリリットル以下になる無尿とは異なります。
尿閉は、突然起こる急性尿閉と、残尿量が徐々に増加して起こる慢性尿閉とに分けられます。また、全く排尿できない完全尿閉と、残尿が多いものの一部を排尿できる不完全尿閉とに分けることもあります。
急性尿閉は、膀胱内に尿が充満しているにもかかわらず、急に排尿が全く不可能になる状態。膀胱排尿筋は正常な場合が多く、膀胱容量の増大とともに恥骨上部の疼痛(とうつう)、強度の不安感が生じ、冷汗をみます。
前立腺(ぜんりつせん)肥大症を持つ人が多量に飲酒した場合や、抗ヒスタミン薬を含む総合感冒薬を服用した場合にみられることがあります。
慢性尿閉は、徐々に下部尿路の閉塞(へいそく)が進行し、それに伴って残尿量が多くなって膀胱は尿が充満した状態になる一方で、尿意を感じなくなって尿が少しずつ漏れる状態。この失禁は、奇異性尿失禁または溢流(いつりゅう)性尿失禁と呼ばれます。放置すると、上部尿路の内圧が上昇し腎不全に陥る場合があります。
また、円滑な尿の排出が障害され、尿が出にくくなる排尿困難を生じるような薬剤の多剤併用により、徐々に残尿量が多くなって、慢性尿閉や腎不全になることもあります。慢性尿閉では、排尿困難に気付かず、尿失禁のみ気に掛けることもあるので、注意が必要です。
尿閉の状態では通常、発症者は500ミリリットル以上の尿が膀胱内にあると尿意を覚え、下腹部が半球状に盛り上がる膨隆や、はち切れそうなくらい張る緊満を認め、膀胱壁の過伸展により下腹部の激しい痛みを生じます。多くの場合、膨隆した下腹部を手で圧迫すると痛みが一段と強くなります。
尿意があるのに排尿できないことによる苦痛、不安、緊張などにより、頻脈、血圧上昇などもみられます。また、尿の膀胱内停留により腎盂(じんう)腎炎を併発している場合は、発熱や腰痛が認められます。
尿閉になると、膀胱に停留した尿の中で細菌が増殖して膀胱炎になったり、腎臓に尿がたまって水腎症や腎不全を合併する恐れもあります。
尿閉を起こしやすい疾患としては、前立腺肥大症のほか、尿道狭窄(きょうさく)、尿道結石、膀胱頸部(けいぶ)狭窄、糖尿病や脊髄(せきずい)損傷などに起因する神経因性膀胱などが挙げられます。
服用した場合に排尿困難、さらに尿閉を来すことがある薬剤には、総合感冒薬、抗ヒスタミン薬、胃腸薬、下痢止め薬、鎮痙(ちんけい)剤、精神安定剤、抗不整脈剤、頻尿尿失禁治療薬、過活動膀胱治療薬などがあります。特に前立腺肥大症のある高齢の男性は、これらの薬剤の服用には注意が必要です。
尿閉の検査と診断と治療
泌尿器科の医師の診断では、膀胱内に尿が充満していることを確認する超音波検査と、強い尿意あるいは下腹部痛を伴い、下腹部は充満した膀胱のため膨隆している症状から、容易に尿閉と確定できます。
泌尿器科の医師の治療では、全く排尿できない完全尿閉の救急処置として、尿道カテーテルという細い管を尿道から膀胱に挿入し、膀胱にたまった尿を排出させる導尿を行います。
一度の導尿で尿閉が改善しない場合は、尿道カテーテルをしばらく膀胱に挿入したままにしておく留置カテーテルを行います。尿道狭窄などで導尿が不可能な場合は、膀胱を直接穿刺(せんし)して排尿します。
前立腺肥大症が尿閉の原因の場合は、症状が軽い場合は薬物療法から始め、症状がひどい場合や合併症を引き起こしている場合は手術療法を行います。
前立腺肥大症の薬物療法は、近年では薬の開発もかなり進んでおり、効果があることが確認されています。治療に使用される薬には、α1受容遮断薬(α1ブロッカー)、抗男性ホルモン薬(抗アンドロゲン剤)、生薬・漢方薬の3種類があります。
α1受容遮断薬は、交感神経の指令を届けにくくし、筋肉の収縮を抑えて尿道を開き排尿をしやすくする薬で、ミニプレスが代表です。抗男性ホルモン薬は、男性ホルモンの働きを抑制する薬で、プロスタール、パーセリンなどが一般的です。その効果は服用してから3カ月程かかり、前立腺を20~30パーセントぐらい縮小させることができます。生薬・漢方薬は、植物の有効成分のエキスを抽出したもので、むくみを取ったり、抗炎症作用などの効果があります。
前立腺肥大症の手術療法には、経尿道的前立腺切除術(TURP)、レーザー治療、温熱療法などがあります。
経尿道的前立腺切除術は、先端に電気メスを装着した内視鏡を尿道から挿入し、患部をみながら肥大した前立腺を尿道内から削り取ります。レーザー治療は、尿道に内視鏡を挿入し、内視鏡からレーザー光線を照射します。そして、肥大結節を焼いて壊死を起こさせ、縮小させます。温熱療法は、尿道や直腸からカテーテルを入れ、RF波やマイクロ波を前立腺に当てて加熱し、肥大を小さくして尿道を開かせます。
尿道狭窄が尿閉の原因の場合は、内視鏡を用いて、狭いところを切開することが多いのですが、切開手術を要することもあります。
尿道結石が尿閉の原因の場合は、結石により尿道狭窄が起きている時には、ブジーと呼ばれる棒状の医療器具を挿入して結石を膀胱へ押し込み、内視鏡を使って超音波やレーザーなどで結石を破砕します。結石が前部尿道にあった場合には、異物鉗子(かんし)と呼ばれる器具を入れて石をつかみ、摘出するという処置が試みられます。
ブジーにより尿道が広げられると、自然に石が出てくることもあります。 開腹手術などを行うこともあります。
糖尿病や脊髄損傷などに起因する神経因性膀胱が尿閉の原因の場合は、基礎疾患に対する治療が可能ならばまずそれを行いますが、神経の疾患はなかなか治療の難しいことが多く、薬物療法、排尿誘発、自己導尿法などで排尿効率を高めることになります。
薬物療法は、膀胱の収縮力を高める目的で、副交感神経刺激用薬のウブレチド、ベサコリンのいずれかまたは両方を処方します。尿道括約部を緩める目的で、α1受容遮断薬(α1ブロッカー)のエブランチルを処方することもあります。
排尿誘発は、手や腹圧による膀胱訓練で、恥骨上部を押したり、下腹部の最も適当な部位をたたいたりすると膀胱の収縮反射を誘発できることがあります。
自己導尿法は、尿が出にくく残尿が多い場合に、1日に1〜2回、清潔なカテーテルを自分で膀胱内に挿入し、尿を排出させるものです。
このような治療だけでは不十分な場合、神経ブロックや手術などの方法もあります。
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