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■用語 回旋筋腱板損傷 [用語(か行)]

[野球]スポーツ障害や老化で、肩関節の回旋筋腱板に損傷が起こった状態
 回旋筋腱板(けんばん)損傷とは、肩関節で上腕を保持している回旋筋腱板という筋肉と腱の複合体に、スポーツ障害や老化が原因で損傷が起こった状態。回旋筋腱板の略が腱板で、肩腱板損傷とも呼ばれます。
 回旋筋腱板損傷には、挫傷(ざしょう)、炎症、一部分が切れる不全断裂(部分断裂)、全部が切れる完全断裂などがあります。
 水泳肩、テニス肩、野球肩の原因に回旋筋腱板損傷が多くを占め、肩インピンジメント症候群などとも呼ばれています。肩峰下滑液包炎も回旋筋腱板に隣接する部位の炎症で、原因については同様と考えられます。
 肩関節は一般的に、肩甲上腕関節(第一肩関節)のことを指します。この肩関節は肩甲骨と上腕骨との間の関節で、受け皿である肩甲骨の浅い関節窩(か)の上に、大きなボールである上腕骨頭が乗っているような構造をしており、人間の体の中で最も関節可動域が広く、ある程度の緩みがあるため、スポーツなどによって強い外力が加わると簡単に脱臼(だっきゅう)するのが特徴です。
 肩関節の中には、上腕骨頭が肩関節の中でブラブラしないように肩甲骨に押し付ける役割の4つの小さな筋肉、すなわち前方から肩甲下筋、棘上(きょくじょう)筋、棘下筋、小円筋があります。これらの筋肉が上腕骨頭に付く部分の腱は、それぞれ境目がわからないように板状に付着しているために回旋筋腱板と呼ばれます。
 回旋筋腱板は肩関節のさまざまな運動により圧迫、牽引(けんいん)、摩擦、回旋などの刺激を受けており、加齢とともに変性し、40歳ごろから強度の低下による損傷の危険性が高まります。重い物を持ったり、転倒による肩の打撲など軽微な外力が加わって損傷する場合もありますし、若年者ではスポーツ障害としてみられることもあります。
 特に、肩峰および上腕骨頭に挟まれた棘上筋の腱は、肩関節の挙上時には肩峰と烏口(うこう)肩峰靭帯(じんたい)によって圧迫を受けています。これらの要因により退行変性を起こしやすく、回旋筋腱板の中では最も損傷を起こしやすいところです。
 スポーツ障害としての回旋筋腱板損傷は、野球の投球、ウエートリフティング、ラケットでボールをサーブするテニス、自由形、バタフライ、背泳ぎといった水泳など、腕を頭よりも高く上げる動作を繰り返し行うスポーツが原因で起こります。
 腕を頭より高く上げる動作を繰り返すと、上腕骨の上端が肩の関節や腱の一部と擦れ合うため、腱の線維に微小な断裂を生じます。痛みがあってもその動作を続ければ、腱が断裂してしまったり、腱の付着部位の骨がはがれてしまうことがあります。
 腕を頭より高く上げる動作や背中から回す動作を繰り返すと、上腕骨の上端が肩関節の反対側の骨である肩甲骨と擦れ合い、炎症を起こします。スポーツ選手では、激しい動きの際に肩を安定化させるインナーマッスルの機能が低下していると、回旋筋腱板損傷が発生します。
 加齢により肩甲骨の動きが悪くなることも一因で、明らかな外傷によるものは半数で、残りははっきりとした原因がなく、日常生活動作の中で損傷が起きます。40歳以上の男性の右肩に多いことから、回旋筋腱板の老化と肩の使いすぎが原因となっていることが推測されます。
 回旋筋腱板損傷の症状としては、肩が痛む、肩が上がらない、肩を上げる際に力が入らない、肩を上げる際に肩の前上面でジョリジョリという軋轢(あつれき)音がする、ある角度で痛みがあるなど、自然軽快しにくい特徴があります。
 肩の痛みは当初、腕を頭よりも高く上げたり、そこから前へ強く振り出す動作の際にだけ生じます。後になると、握手のため腕を前へ動かしただけでも痛むようになります。
 通常は、物を前方へ押す動作をすると痛みますが、物を体の方に引き寄せる動作では痛みはありません。炎症を起こした肩は、特に夜間などに痛むことがあり、眠りが妨げられます。また、腕を肩よりも高く上げた状態で肩峰を抑えると、痛みます。
 手が後ろに回らなくなる、いわゆる四十肩、五十肩と診断され、長い間治らない人の中に、回旋筋腱板損傷が見逃されていることがあります。
[野球]回旋筋腱板損傷の検査と診断と治療
 整形外科の医師による診断では、MRI(磁気共鳴画像)検査が有用で、上腕骨頭の上方の回旋筋腱板部に断裂の所見がみられたりします。また、いくつかの方向に腕を動かしてみて、特定の動きや、特に腕を肩よりも高く上げる動作で痛みやピリピリ感を伴うことで、回旋筋腱板損傷と確定されます。
 スポーツなどによる疲労性のものでは、肩の痛み、特に運動時痛を伴います。広範囲断裂では、布団の上げ下ろしや洗濯物を干す際の挙上障害などがあります。転倒などの急性外傷によるものでは、受傷時に突然肩の挙上が不能となり、同時に肩関節痛を感じます。断裂が小さいと、挙上は除々に可能となる場合もあります。
 整形外科の医師による治療では、断裂などの損傷を生じた肩関節の回旋筋腱板を使わずに休め、肩の筋肉を強化します。回旋筋腱板のすべてが断裂することは少ないので、残っている回旋筋腱板の機能を賦活させる肩の筋肉強化は有効です。
 安静時や夜間の痛みが強い場合には、内服や外用の消炎鎮痛剤、関節内注射により和らげます。水溶性副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の局所注射も、炎症を抑えるのに用います。物を前方へ押しやる動作や、肘(ひじ)を肩より高く上げる動作を伴う運動はすべて避けます。
 肩の筋肉強化では、ゴムチューブによるカフ(回旋筋腱板)エクササイズを行い、インナーマッスルを鍛え、肩の回旋筋腱板のバランスを回復させます。カフエクササイズは肩関節の疾患において一般的な訓練となっており、ゴムチューブによる軽い抵抗、もしくは徒手による無抵抗にて、外旋や肩甲骨面上の外転などを行って、回旋筋腱板の筋活動を向上させます。
 強すぎる抵抗は大胸筋や三角筋に力が入ってしまい、軽い抵抗に反応する回旋筋腱板の働きを阻害してしまうので、十分注意する必要があります。
 カフエクササイズでは、腕を体側に付けて、前腕を床と平行にしてゴムバンドを持ちます。肘を支点としてゴムバンドを引きながら、この腕を前方向、後ろ方向、横方向(手が体から離れる向きと、腕を胸の前に引き寄せる向き)に動かします。
 この運動は、肩の回旋筋腱板のバランスを回復させ、腕を頭よりも高く上げる動きを含む動作中に回旋筋腱板がぶつからないようにする働きがあります。
 断裂が特に重度な場合は手術も行われ、回旋筋腱板が完全に断裂していたり、1年たっても完治しない場合が対象となります。手術には、関節鏡視下手術と通常の直視下手術があります。
 関節鏡視下手術のほうが体に負担がかからず、手術後の痛みが少ないために普及してきていますが、大きな断裂では、縫合が難しいために直視下手術を選択するほうが無難です。
 手術では回旋筋腱板がぶつからずに動かせるように、肩の骨から余分な部分を切除します。同時に、回旋筋腱板の修復も行います。手術後は、約4週間の固定と2~3カ月の機能訓練が必要です。




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