■用語 上腕二頭筋腱断裂 [用語(さ行)]
肘から肩にかけての筋肉の腱が、何らかの力により切れてしまう状態
上腕二頭筋腱(じょうわんにとうきんけん)断裂とは、腕を曲げた時にできる力こぶを作る、肘(ひじ)から肩にかけての筋肉である上腕二頭筋の腱が、何らかの力によって切れる状態。
上腕二頭筋は主に、肘関節を曲げたり、前腕を外側に回す時、すなわち手のひらを上に向ける時に働きます。肩側の上端で長頭腱と短頭腱の2本に分かれているのが、名前の由来となっています。
その外側にある長い長頭腱は、肩関節の中を通って肩関節の受け皿である肩甲骨関節窩(か)の上につながっています。内側にある短頭腱は、肩甲骨の烏口(うこう)突起と呼ばれる骨の突起部分につながっています。
一方、上腕二頭筋の肘側の下端は、太い1本の腱として、前腕の親指側の骨である橈骨(とうこつ)につながっています。
上腕二頭筋腱断裂は、肩に近い上端部が断裂する場合と、肘に近い下端部が断裂する場合とがあります。
上端部の断裂は、構造上、上腕骨との摩擦を受けやすい長頭腱に限って生じ、腱が完全に裂かれて切れる完全断裂と、腱の一部だけが切れる部分断裂とがあります。完全断裂は、特殊な場合を除いて障害はありません。部分断裂は、痛みが強い場合は肩の動きに支障が生じます。
高齢になると、肩関節の部分で長頭腱の上面を包んでいる腱板が自然に高率に断裂します。長頭腱の断裂の大部分は、この腱板の断裂に伴って長頭腱が徐々に摩耗され、何でもない日常生活中で物を持つなど外的な力が急激に加わることで生じます。
また、どの年齢層においても、腱板の断裂を伴わない長頭腱断裂が生じます。肘を曲げて重量物を持ち上げ、腕を常に拳上している労働者に発生頻度が多く、また、ラグビーやフットボールなどの激しいコンタクトスポーツや、重量挙げ、体操、剣道などの強い筋力を使うスポーツ、ゴルフ、テニスなどの弱い力が繰り返し加わるスポーツで起こることがあります。
長頭腱断裂の症状は、人によって多少異なるものの、ブチッという何かが切れるような小さな音がするとともに、多くは肩から二の腕の前方にかけて軽い痛みを感じます。肘を曲げて重い物を持ったり、手のひらを力いっぱい上に向けたりすると、痛みが増します。
数日たつと痛みは薄れますが、力こぶの前面の皮膚に出血による青あざが出ます。
何も感じず、知らないうちに長頭腱が自然に断裂していて、仕事やスポーツを続けているケースもあります。筋力的には若干弱くなりますが、上腕二頭筋腱は長頭腱と短頭腱の2本立てでできているため、長頭腱が断裂しても動かすことに関しては、支障なく過ごすことができるからです。肩の関節の周辺は、ほかの筋肉が動きをカバーしてくれるので、目立った肩の運動制限もありません。
長頭腱の完全断裂では、腕を曲げて力こぶを作ると、肩の方の腱が断裂して緊張がないため、筋肉は先の方に引っ張られ、肘関節のすぐ上に不自然な半球状の膨らみが現れます。
一方、下端部の腱断裂は、中高年の男性肉体労働者に多く、下から重い物を急に持ち上げる時や、高い所からの荷崩れを支えようとした時などに生じます。スポーツでは、重量挙げ、腕相撲、野球で飛球を取る時などに生じます。
下端部の腱断裂の症状は、バキッという音がして肘の前面に強い痛みが生じ、肘の動きと手のひらを上に向ける動きは痛みのために不可能になります。次第に、肘前面にはれと出血による青あざが現れます。
下端部の腱断裂は、上端部の腱断裂と比べて約30分の1と少ないものの、重大な障害です。
上端部の長頭腱断裂では、特に痛みが強ければ三角巾(きん)、なければふろしきやスカーフを三角形に折ったもので腕をつって固定し、応急処置をします。痛みが少なければ、特に何もしません。痛みの原因を知るためにも、整形外科を受診します。
下端部の腱断裂では、三角巾などで腕をつり、肘の部分を氷などで冷やして、できるだけ早く整形外科を受診します。
上腕二頭筋腱断裂の検査と診断と治療
整形外科の医師による診断では、上腕二頭筋の上端部の長頭腱の完全断裂では、力こぶを作ると筋肉が下端のほうに移動して肘関節のすぐ上に半球状の膨らみが現れるので、簡単に診断されます。高齢者では、以前から存在し古くなった腱板断裂の存在を疑わねばなりません。
部分断裂では、特徴的な症状が乏しいため、外来でできる諸検査でも診断ができず、関節の中を内視鏡で直接見る関節鏡検査が必要になることがよくあります。
下端部の腱断裂は、発生した状況や特徴的な症状から簡単に診断されますが、断裂の詳細を把握するためにMRI(磁気共鳴画像)検査を行います。
整形外科の医師による治療では、長頭腱の完全断裂の場合、それ自体では特に日常生活に支障がないので、高齢者においては、痛みがとれるまで比較的安静を守るだけで構いません。
しかし、上腕二頭筋に命令を伝えている筋皮神経という神経が引っ張られて、肘の外側から前腕の親指側に痛みを起こした場合には、手術が必要です。
若い人や中年の肉体労働者においては、長頭腱が完全断裂しても肘を曲げる力は保たれるものの、手のひらを上に向ける力が弱くなるので、断裂した腱を上腕骨の上端に固定する手術が勧められます。部分断裂で痛みが強く続く場合には、断裂の部分を削って滑らかにしたり、完全断裂と同様の手術をします。
下端部の腱が断裂した場合には、すべてのケースで手術が行われます。通常、骨に腱が付く部位で切れますので、骨に穴を開けてしっかり縛り付けます。
手術の対象になる以外の断裂では、三角巾やテーピング、薬による治療や注射で改善を図るほか、内出血を取り除くマッサージやストレッチ、温熱療法などの物理療法で機能回復を目指します。
上腕二頭筋腱(じょうわんにとうきんけん)断裂とは、腕を曲げた時にできる力こぶを作る、肘(ひじ)から肩にかけての筋肉である上腕二頭筋の腱が、何らかの力によって切れる状態。
上腕二頭筋は主に、肘関節を曲げたり、前腕を外側に回す時、すなわち手のひらを上に向ける時に働きます。肩側の上端で長頭腱と短頭腱の2本に分かれているのが、名前の由来となっています。
その外側にある長い長頭腱は、肩関節の中を通って肩関節の受け皿である肩甲骨関節窩(か)の上につながっています。内側にある短頭腱は、肩甲骨の烏口(うこう)突起と呼ばれる骨の突起部分につながっています。
一方、上腕二頭筋の肘側の下端は、太い1本の腱として、前腕の親指側の骨である橈骨(とうこつ)につながっています。
上腕二頭筋腱断裂は、肩に近い上端部が断裂する場合と、肘に近い下端部が断裂する場合とがあります。
上端部の断裂は、構造上、上腕骨との摩擦を受けやすい長頭腱に限って生じ、腱が完全に裂かれて切れる完全断裂と、腱の一部だけが切れる部分断裂とがあります。完全断裂は、特殊な場合を除いて障害はありません。部分断裂は、痛みが強い場合は肩の動きに支障が生じます。
高齢になると、肩関節の部分で長頭腱の上面を包んでいる腱板が自然に高率に断裂します。長頭腱の断裂の大部分は、この腱板の断裂に伴って長頭腱が徐々に摩耗され、何でもない日常生活中で物を持つなど外的な力が急激に加わることで生じます。
また、どの年齢層においても、腱板の断裂を伴わない長頭腱断裂が生じます。肘を曲げて重量物を持ち上げ、腕を常に拳上している労働者に発生頻度が多く、また、ラグビーやフットボールなどの激しいコンタクトスポーツや、重量挙げ、体操、剣道などの強い筋力を使うスポーツ、ゴルフ、テニスなどの弱い力が繰り返し加わるスポーツで起こることがあります。
長頭腱断裂の症状は、人によって多少異なるものの、ブチッという何かが切れるような小さな音がするとともに、多くは肩から二の腕の前方にかけて軽い痛みを感じます。肘を曲げて重い物を持ったり、手のひらを力いっぱい上に向けたりすると、痛みが増します。
数日たつと痛みは薄れますが、力こぶの前面の皮膚に出血による青あざが出ます。
何も感じず、知らないうちに長頭腱が自然に断裂していて、仕事やスポーツを続けているケースもあります。筋力的には若干弱くなりますが、上腕二頭筋腱は長頭腱と短頭腱の2本立てでできているため、長頭腱が断裂しても動かすことに関しては、支障なく過ごすことができるからです。肩の関節の周辺は、ほかの筋肉が動きをカバーしてくれるので、目立った肩の運動制限もありません。
長頭腱の完全断裂では、腕を曲げて力こぶを作ると、肩の方の腱が断裂して緊張がないため、筋肉は先の方に引っ張られ、肘関節のすぐ上に不自然な半球状の膨らみが現れます。
一方、下端部の腱断裂は、中高年の男性肉体労働者に多く、下から重い物を急に持ち上げる時や、高い所からの荷崩れを支えようとした時などに生じます。スポーツでは、重量挙げ、腕相撲、野球で飛球を取る時などに生じます。
下端部の腱断裂の症状は、バキッという音がして肘の前面に強い痛みが生じ、肘の動きと手のひらを上に向ける動きは痛みのために不可能になります。次第に、肘前面にはれと出血による青あざが現れます。
下端部の腱断裂は、上端部の腱断裂と比べて約30分の1と少ないものの、重大な障害です。
上端部の長頭腱断裂では、特に痛みが強ければ三角巾(きん)、なければふろしきやスカーフを三角形に折ったもので腕をつって固定し、応急処置をします。痛みが少なければ、特に何もしません。痛みの原因を知るためにも、整形外科を受診します。
下端部の腱断裂では、三角巾などで腕をつり、肘の部分を氷などで冷やして、できるだけ早く整形外科を受診します。
上腕二頭筋腱断裂の検査と診断と治療
整形外科の医師による診断では、上腕二頭筋の上端部の長頭腱の完全断裂では、力こぶを作ると筋肉が下端のほうに移動して肘関節のすぐ上に半球状の膨らみが現れるので、簡単に診断されます。高齢者では、以前から存在し古くなった腱板断裂の存在を疑わねばなりません。
部分断裂では、特徴的な症状が乏しいため、外来でできる諸検査でも診断ができず、関節の中を内視鏡で直接見る関節鏡検査が必要になることがよくあります。
下端部の腱断裂は、発生した状況や特徴的な症状から簡単に診断されますが、断裂の詳細を把握するためにMRI(磁気共鳴画像)検査を行います。
整形外科の医師による治療では、長頭腱の完全断裂の場合、それ自体では特に日常生活に支障がないので、高齢者においては、痛みがとれるまで比較的安静を守るだけで構いません。
しかし、上腕二頭筋に命令を伝えている筋皮神経という神経が引っ張られて、肘の外側から前腕の親指側に痛みを起こした場合には、手術が必要です。
若い人や中年の肉体労働者においては、長頭腱が完全断裂しても肘を曲げる力は保たれるものの、手のひらを上に向ける力が弱くなるので、断裂した腱を上腕骨の上端に固定する手術が勧められます。部分断裂で痛みが強く続く場合には、断裂の部分を削って滑らかにしたり、完全断裂と同様の手術をします。
下端部の腱が断裂した場合には、すべてのケースで手術が行われます。通常、骨に腱が付く部位で切れますので、骨に穴を開けてしっかり縛り付けます。
手術の対象になる以外の断裂では、三角巾やテーピング、薬による治療や注射で改善を図るほか、内出血を取り除くマッサージやストレッチ、温熱療法などの物理療法で機能回復を目指します。
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