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■用語 慢性化膿性中耳炎 [用語(ま行)]

[耳]急性中耳炎で鼓膜に開いた穴が残り続け、中耳腔に慢性炎症が生じる疾患
 慢性化膿(かのう)性中耳炎とは、急性中耳炎で鼓膜に穴が開き、急性炎症が治まった後も鼓膜の穴が残り続け、中耳腔(こう)に慢性炎症が生じる疾患。慢性中耳炎の一つです。
 耳には、急性中耳炎がひどくなると鼓膜に穴が開き、中耳の中にあるうみを自然に出して、急性炎症を治そうとする働きがあります。この時に開いた穴は自然に閉じますが、中耳炎を繰り返したり、治り方が不十分だと、穴が閉じなくなって慢性化膿性中耳炎になります。
 種々の程度の難聴を引き起こす厄介な慢性化膿性中耳炎の多くは、大人にみられます。幼少期に急性中耳炎にかかり鼓膜穿孔(せんこう)を起こしたものがそのまま慢性化することが多いのですが、幼少期にはあまり耳の疾患に気付かずに大人になって発症する場合もあります。
 大人になってから発症する慢性化膿性中耳炎は、糖尿病や甲状腺(こうじょうせん)の疾患、進行がんやエイズなどで免疫力が低下することに関係していると考えられます。この場合の起炎菌となるのは、MRSA(メチシリン耐性ブドウ球菌)、緑膿(りょくのう)菌、連鎖球菌、ブドウ球菌、インフルエンザ菌などです。まれに、重い糖尿病の人では真菌の感染によることもあります。
 小さな子供では、急性中耳炎から頑固な難聴を起こすような慢性化膿性中耳炎に移行することは、まずありません。乳幼児の場合は急性中耳炎を繰り返すタイプが多く、その結果鼓膜に穴が残って慢性化膿性中耳炎のようになることはあります。しかし、病変としては比較的軽いケースがほとんどです。
 慢性化膿性中耳炎の症状としては、鼓膜に穴が開いているために、外耳道を通して中耳に汚い水が入ったり、風邪を引くなどにより耳管を通して中耳に細菌が入り、うみが出てきたり、じくじくしたりします。これは耳垂れ、あるいは耳漏と呼ばれ、持続します。
 また、鼓膜に穴が開いているために、音が伝わりにくくなる上、中耳腔にある小さな3つの骨である耳小骨の周囲に炎症が及び、耳小骨の動きも悪くなります。その結果、伝音難聴が出現します。
 鼓膜に開いた穴が小さい時の伝音難聴は軽度ですが、穴が大きくなり細菌感染が続くと、その影響が中耳の奥にある内耳にも及んで感音難聴や、耳鳴り、めまいが出現してくることもあります。こうなると聞こえはかなり悪くなります。
 慢性化膿性中耳炎は、痛くない中耳炎です。耳垂れが主症状で、同じ中耳の炎症でも、耳痛、発熱、耳鳴りを伴う急性中耳炎とは、かなり様子が違っています。痛みがないため、聴力の回復を強く望まない人の中には、病院に行くのが面倒という理由から疾患をそのままにしてしまうこともあります。
 放置しておくと、感音難聴が進行したり、まれに顔面神経まひ、脳腫瘍(しゅよう)などに発展することもあるので、症状が進行または悪化するようなら耳鼻咽喉(いんこう)科を受診したほうがよいでしょう。
[耳]慢性化膿性中耳炎の検査と診断と治療
 耳鼻咽喉科の医師による診断では、鼓膜を観察することが第一で、できれば手術用顕微鏡や拡大耳鏡を用いて、よく観察します。うみがあるかどうか、穿孔の大きさ、位置、発赤の有無、肥厚、石灰化などを調べることで、現在の慢性化膿性中耳炎の程度や、今まであった炎症の程度を判断します。
 純音聴力検査で難聴の程度を調べ、伝音難聴なのか、伝音難聴と感音難聴の両方が起きている混合難聴なのかを判断します。鼓膜の穿孔を和紙などでふさいで聴力が改善するかどうかを調べると、耳小骨の音を伝える機能が正常かどうかがわかります。
 耳垂れの細菌検査を行い、細菌の種類と抗生剤の感受性を判断します。細菌としては、MRSA、黄色ブドウ球菌、緑膿菌などが多く検出されます。X線(レントゲン)検査、CT(コンピューター断層撮影)検査も行います。
 耳鼻咽喉科の医師による治療では、急性増悪時は中耳腔の鼓室洗浄、細菌の種類に合う適切な抗生剤の内服および点耳を行います。
 抗生剤の効きにくいMRSAや緑膿菌などの細菌感染を起こしている場合は、耳垂れを止めて炎症を軽くするのに苦慮することがしばしばあります。耳垂れが一時的に止まっても風邪を引いたり、体調を崩すと再発します。
 根本治療法としては、手術療法が唯一の方法となり、難聴は手術により鼓膜の穴をふさいで正常な鼓膜を作る鼓膜形成術、さらに耳小骨の伝音機能を治す鼓室形成術を行わなければ改善しません。
 慢性化膿性中耳炎を放置しておくと内耳性の感音難聴が進行し、手術によって聴力を改善することが難しくなりますので、医師は早期に手術を受けることを発症者に勧めます。
 昔の中耳炎の手術は、耳垂れを止めるために聴力を犠牲にしたり、耳の後ろに穴が開いたり、いろいろ厄介な面もありましたが、現在では技術が飛躍的に進歩し、顕微鏡や内視鏡を用いて微細な部分まで手術を行えるようになり、これらの厄介な問題は解決しています。
 穴の開いた鼓膜は側頭筋の筋膜でふさぎ、固着した耳小骨を動くようにしたり、役に立たない耳小骨の代わりに軟骨などを用いて、音を伝える仕組みを再建することにより、耳垂れを止めるだけでなく、難聴もかなりの率で改善しています。手術療法には年齢制限はなく、高齢者の手術も増えています。




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