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■用語 脊椎側湾症 [用語(さ行)]

[晴れ]背骨がねじれを伴って側方に曲がる疾患
 脊椎(せきつい)側湾症とは、脊椎、すなわち背骨がねじれを伴って側方に湾曲する疾患。側湾症、脊柱側湾症とも呼ばれます。
 人間の脊椎は7個の頸椎(けいつい)、12個の胸椎、5個の腰椎、仙骨、尾骨で成り立っています。正常な脊椎は前あるいは後ろから見ると、ほぼ真っすぐに伸びているものですが、脊椎側湾症の場合には、脊椎が側方、すなわち横方向に湾曲し、脊椎のねじれも加わっています。
 湾曲のパターンは主に、3つに分けられます。胸椎を中心に曲がる胸椎カーブ、腰椎を中心に曲がる腰椎カーブ、そして、胸椎と腰椎の間で曲がる胸腰椎カーブです。
 脊椎側湾症は痛みを伴うことはまれなため初期における発見は難しく、ある程度進行してから気付く場合が多くみられます。肩や腰の高さが左右で違うなどの外見上の問題のほか、高度の湾曲になると、腰背部痛に加え胸の圧迫と変形による呼吸器障害、心臓の圧迫による循環器障害など内臓にも影響を及ぼしたりします。
 日本では、乳幼児の健康診査や学校の健康診断で脊椎検査が行われており、1980年(昭和55年)年ごろよりモアレ式体型観察装置を用いた撮影による検診(モアレ検査)が普及し、早期発見が可能になりました。
 脊椎側湾症のうち、原因のわからない特発性脊椎側湾症が80~90パーセントを占めています。発症時期により、0歳~3歳に発症する乳幼児脊椎側湾症、4歳~10歳に発症する学童期脊椎側湾症、10歳以降に発症す思春期脊椎側湾症に細分され、多くが思春期脊椎側湾症であることから、小学校4年生から中学校3年生までの間が特に注意が必要とされ、男子の5~7倍と女子に多く発症します。
 曲がりの角度が10度以上の人は女子の2〜3パーセントにいるとされ、軽症なら疾患ではなく単なる骨格の特徴と考えられていますが、成長とともに徐々に進行することもあり、角度が20度以上になると注意が必要です。原因は不明ですが、遺伝も一部関連しているようです。
 原因の特定ができている脊椎側湾症としては、先天的または発育段階に生じた脊椎の異常によって発症する先天性脊椎側湾症のほか、脳や脊髄の異常によって発症する神経原性脊椎側湾症、筋肉の異常により正常な姿勢を保てないことによって発症する筋原性脊椎側湾症、神経線維腫(しゅ)症(レックリングハウゼン病)による脊椎側湾症、間葉系疾患であるマルファン症候群やエーラス・ダンロス症候群などによる脊椎側湾症、さらに外傷性脊椎側湾症、その他の原因による脊椎側湾症が挙げられます。
[晴れ]脊椎側湾症の検査と診断と治療
 整形外科の医師による診断では、身長、体重の測定に始まり、肩の高さが左右同じかどうか、背中側から見て肩甲骨の高さに左右差はないか、骨盤の傾きはないか、深くお辞儀をした格好で肩や肩甲骨の高さに左右差は出ないか、という4つのチェックポイントを中心に、外観上の骨格の変形を調べます。
 特発性脊椎側湾症では、出っ張った側の肋骨(ろっこつ)が盛り上がっているのがはっきりわかります。
 皮膚にコーヒー色の色素斑(はん)や硬い盛り上がりがあれば、神経線維腫症(レックリングハウゼン病)が原因で脊椎の側湾が起こったと見なします。神経線維腫症は、脳神経や脊髄神経および皮膚の末梢(まっしょう)神経に腫瘍(しゅよう)が発生する遺伝性の疾患で、皮膚に色素が沈着するのが特徴です。
 脊椎の側湾の状態を正確にみるためには、X線(レントゲン)検査を行い、いろいろな姿勢でさまざまな角度から、頸椎から骨盤までを長いフィルムで撮影します。また、コブ法という方法で、脊椎の側湾の度合を測り、脊椎の回旋の状態、矯正の可能性なども、各種の計測によって調べます。
 X線検査と計測は一定期間ごとに行い、脊椎の側湾の進行、矯正治療の効果などを観察します。特発性脊椎側湾症の場合は、骨の成長が終わる18歳ごろまで半年から1年に1回、X線検査と計測を行います。
 整形外科の医師による治療では、コブ法による計測で20~50度の脊椎側弯症は、一般に脇(わき)から腰までを覆う矯正装具を身に着け、脊椎側湾症体操を毎日欠かさず行うことで、曲がった脊椎を矯正します。矯正装具による治療は、骨の成長が終わる18歳ごろまで続け、3~4カ月ごとに脊椎の側湾の状態と装具の適合性をチェックしたり、状態に応じた脊椎側湾症体操の適応を検討しながら進めます。
 また、牽引(けんいん)療法やギプスなどにより、脊椎の側湾の矯正と進行の防止を行うこともあります。
 コブ法による計測で50度以上に進んだ強い脊椎の側湾は、一般に手術による治療が必要になります。手術の目的は、主として、脊椎の側湾の進行防止、肺の機能障害が出ている場合の悪化防止、著しい変形に対する美容上の矯正などです。腰背部痛を起こしている場合や、神経性の疾患を合併している場合などにも、手術を行うことがあります。
 手術は、牽引やギプスによって可能な限り矯正してから行い、背中などを切開して背骨にボルトを入れ、金属の棒でボルトをつなげて固定します。手術後の安静期間を含めると、3〜6カ月の長期間にわたる入院が必要になります。

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