■用語 体質性黄疸 [用語(た行)]
遺伝的体質により、生まれながらにしてビリルビンが体内から排出されにくいために黄疸を生じる疾患
体質性黄疸(おうだん)とは、遺伝的体質により、生まれながらにしてビリルビン(胆汁色素)が体内から排出されにくいために、黄疸を生じる疾患。
血液の赤血球の中には、ヘモグロビン(血色素)という物質が含まれています。ヘモグロビンは酸素を運ぶ役割を担っているのですが、寿命を120日とする赤血球が古くなって壊される際に、ヘモグロビンが分解される過程でビリルビンが作られます。
本来、脾臓(ひぞう)などで作られたビリルビンは血液に入って肝臓に運ばれ、肝臓で生成される消化液である胆汁の中へ排出され、その胆汁の成分として胆道を通って小腸の一部である十二指腸の中に排出され、最終的には便と一緒に体外へ排出されます。便の黄色は、このビリルビンの色です。
ビリルビンが体内で異常に増え、体内に一定量以上残った場合は、組織に蓄積するために皮膚などが黄色くなり、これを黄疸といいます。
従って、赤血球や肝臓の細胞が急に壊された時や、胆道が結石や悪性腫瘍(しゅよう)などで閉塞(へいそく)した時などに、黄疸はよく現れます。
しかし、このような疾患がないにもかかわらず、しばしば黄疸を認める場合は体質性黄疸が疑われ、その原因はビリルビンの肝臓の細胞の中への取り込みや、十二指腸の中への排出がほかの人より行われにくいという遺伝的なものと見なされます。
この体質性黄疸は、クリグラー・ナジャール症候群、ジルベール症候群、デュビン・ジョンソン症候群、ローター症候群の4つに分類されます。クリグラー・ナジャー症候群は重い疾患で治療が必要ですが、ほかの3つの症候群は体調が崩れた時に黄疸が生じる程度で、ほとんど治療の必要はありません。
クリグラー・ナジャール症候群が新生児期から発症して黄疸を来すのに対して、ほかの3つの症候群では思春期以降の発症になります。
クリグラー・ナジャール症候群では、脂溶性で細胞毒性の強い間接型ビリルビンが優位となり、ジルベール症候群でも、間接型ビリルビンが優位となり、思春期以降に発症します。
これとは反対に、デュビン・ジョンソン症候群とローター症候群では、水溶性で細胞毒性の弱い直接型ビリルビンが優位となり、いずれも発症は思春期以降です。
クリグラー・ナジャール症候群は、細胞毒性の強い間接型ビリルビンを細胞毒性の弱い直接型ビリルビンに変換する唯一の酵素の活性が低下しているため、間接型ビリルビン優位の高ビリルビン血症を示すことが特徴です。
このクリグラー・ナジャール症候群には、変換酵素の活性が完全に欠けているため、生後まもなくから長引く核黄疸、もしくはビリルビン脳症と呼ばれる状態を示す生命予後の不良な重症型と、酵素の活性は正常の10パーセント未満を示すものの、問題なく成長し、黄疸以外の症状は認められない軽症型があります。
いずれの型も家族性に発症し、遺伝形式は常染色体劣性とされていますが、軽症型の中には、常染色体優性遺伝の形式をとるものもあります。
活性がゼロの場合には、高度の新生児黄疸を来してビリルビンが脳細胞まで侵すことがあり、後遺症を残したり、幼児期のうちに死亡してしまうこともあります。
ジルベール症候群は、体質性黄疸の中で最も多くみられるのもので、100人に3人くらいにみられます。肝臓の細胞による間接型ビリルビンの取り込みから、直接型ビリルビンに変換するまでのいずれかの部位の障害が原因で発症します。
常染色体優性遺伝の形式を示す頻度が高いものの、原因が単一でないため遺伝形式もさまざまです。黄疸の程度は軽度にとどまり、日常生活に何ら支障はありません。
デュビン・ジョンソン症候群は、肝臓が色素の沈着により特徴的な黒色を示し、ローター症候群は、肝臓の色素沈着はありません。両症候群とも、黄疸以外にはほとんど症状はなく、日常生活に何ら支障はありません。
体質性黄疸の検査と診断と治療
小児科、内科、消化器科の医師による診断では、主に問診と画像検査を行います。問診では、体質性黄疸を患っている家族の有無、過去の黄疸歴・手術歴・輸血歴などの有無、黄疸に伴う意識障害や貧血などほかの症状とその発症時期、尿便の色、皮膚の掻痒(そうよう)感、全身状態など細かく調べます。
問診でわからなかった場合に、画像検査を行います。主に超音波(エコー)検査が行われ、これによって確定します。
クリグラー・ナジャール症候群の診断では、血清中の間接型ビリルビン値の上昇、および胆汁中の直接型ビリルビン値の低下により判断します。重症型と軽症型の区別には、フェノバルビタールという薬剤を投与し、間接型ビリルビンを直接型ビリルビンに変換する酵素の有無を調べる方法があり、酵素の活性が残っている場合には活性の上昇が認められます。
小児科、内科、消化器科の医師による治療では、ほとんどの体質性黄疸の場合、黄疸の程度は軽度なことが多く、日常生活に支障がないので治療はしません。ただ、体調が優れない時に黄疸が濃く出る場合があるので、ストレスのかからない生活を心掛けてもらいます。
美容的な観点から黄疸を軽くしたい時には、フェノバルビタールの内服が有用ですが、原則はあくまで無治療です。
クリグラー・ナジャール症候群の重症型では、間接型ビリルビン値を下げるために、光エネルギーでビリルビンをサイクロビリルビンに変化させて排出させる光線療法を行ったり、ビリルビン合成を抑えるための薬剤、便への排出を促すための薬剤を投与します。しかし、成長とともにこれらの治療効果が低下し、最終的には肝移植療法が必要になります。
軽症型では、フェノバルビタールの投与が有効です。
体質性黄疸(おうだん)とは、遺伝的体質により、生まれながらにしてビリルビン(胆汁色素)が体内から排出されにくいために、黄疸を生じる疾患。
血液の赤血球の中には、ヘモグロビン(血色素)という物質が含まれています。ヘモグロビンは酸素を運ぶ役割を担っているのですが、寿命を120日とする赤血球が古くなって壊される際に、ヘモグロビンが分解される過程でビリルビンが作られます。
本来、脾臓(ひぞう)などで作られたビリルビンは血液に入って肝臓に運ばれ、肝臓で生成される消化液である胆汁の中へ排出され、その胆汁の成分として胆道を通って小腸の一部である十二指腸の中に排出され、最終的には便と一緒に体外へ排出されます。便の黄色は、このビリルビンの色です。
ビリルビンが体内で異常に増え、体内に一定量以上残った場合は、組織に蓄積するために皮膚などが黄色くなり、これを黄疸といいます。
従って、赤血球や肝臓の細胞が急に壊された時や、胆道が結石や悪性腫瘍(しゅよう)などで閉塞(へいそく)した時などに、黄疸はよく現れます。
しかし、このような疾患がないにもかかわらず、しばしば黄疸を認める場合は体質性黄疸が疑われ、その原因はビリルビンの肝臓の細胞の中への取り込みや、十二指腸の中への排出がほかの人より行われにくいという遺伝的なものと見なされます。
この体質性黄疸は、クリグラー・ナジャール症候群、ジルベール症候群、デュビン・ジョンソン症候群、ローター症候群の4つに分類されます。クリグラー・ナジャー症候群は重い疾患で治療が必要ですが、ほかの3つの症候群は体調が崩れた時に黄疸が生じる程度で、ほとんど治療の必要はありません。
クリグラー・ナジャール症候群が新生児期から発症して黄疸を来すのに対して、ほかの3つの症候群では思春期以降の発症になります。
クリグラー・ナジャール症候群では、脂溶性で細胞毒性の強い間接型ビリルビンが優位となり、ジルベール症候群でも、間接型ビリルビンが優位となり、思春期以降に発症します。
これとは反対に、デュビン・ジョンソン症候群とローター症候群では、水溶性で細胞毒性の弱い直接型ビリルビンが優位となり、いずれも発症は思春期以降です。
クリグラー・ナジャール症候群は、細胞毒性の強い間接型ビリルビンを細胞毒性の弱い直接型ビリルビンに変換する唯一の酵素の活性が低下しているため、間接型ビリルビン優位の高ビリルビン血症を示すことが特徴です。
このクリグラー・ナジャール症候群には、変換酵素の活性が完全に欠けているため、生後まもなくから長引く核黄疸、もしくはビリルビン脳症と呼ばれる状態を示す生命予後の不良な重症型と、酵素の活性は正常の10パーセント未満を示すものの、問題なく成長し、黄疸以外の症状は認められない軽症型があります。
いずれの型も家族性に発症し、遺伝形式は常染色体劣性とされていますが、軽症型の中には、常染色体優性遺伝の形式をとるものもあります。
活性がゼロの場合には、高度の新生児黄疸を来してビリルビンが脳細胞まで侵すことがあり、後遺症を残したり、幼児期のうちに死亡してしまうこともあります。
ジルベール症候群は、体質性黄疸の中で最も多くみられるのもので、100人に3人くらいにみられます。肝臓の細胞による間接型ビリルビンの取り込みから、直接型ビリルビンに変換するまでのいずれかの部位の障害が原因で発症します。
常染色体優性遺伝の形式を示す頻度が高いものの、原因が単一でないため遺伝形式もさまざまです。黄疸の程度は軽度にとどまり、日常生活に何ら支障はありません。
デュビン・ジョンソン症候群は、肝臓が色素の沈着により特徴的な黒色を示し、ローター症候群は、肝臓の色素沈着はありません。両症候群とも、黄疸以外にはほとんど症状はなく、日常生活に何ら支障はありません。
体質性黄疸の検査と診断と治療
小児科、内科、消化器科の医師による診断では、主に問診と画像検査を行います。問診では、体質性黄疸を患っている家族の有無、過去の黄疸歴・手術歴・輸血歴などの有無、黄疸に伴う意識障害や貧血などほかの症状とその発症時期、尿便の色、皮膚の掻痒(そうよう)感、全身状態など細かく調べます。
問診でわからなかった場合に、画像検査を行います。主に超音波(エコー)検査が行われ、これによって確定します。
クリグラー・ナジャール症候群の診断では、血清中の間接型ビリルビン値の上昇、および胆汁中の直接型ビリルビン値の低下により判断します。重症型と軽症型の区別には、フェノバルビタールという薬剤を投与し、間接型ビリルビンを直接型ビリルビンに変換する酵素の有無を調べる方法があり、酵素の活性が残っている場合には活性の上昇が認められます。
小児科、内科、消化器科の医師による治療では、ほとんどの体質性黄疸の場合、黄疸の程度は軽度なことが多く、日常生活に支障がないので治療はしません。ただ、体調が優れない時に黄疸が濃く出る場合があるので、ストレスのかからない生活を心掛けてもらいます。
美容的な観点から黄疸を軽くしたい時には、フェノバルビタールの内服が有用ですが、原則はあくまで無治療です。
クリグラー・ナジャール症候群の重症型では、間接型ビリルビン値を下げるために、光エネルギーでビリルビンをサイクロビリルビンに変化させて排出させる光線療法を行ったり、ビリルビン合成を抑えるための薬剤、便への排出を促すための薬剤を投与します。しかし、成長とともにこれらの治療効果が低下し、最終的には肝移植療法が必要になります。
軽症型では、フェノバルビタールの投与が有効です。
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