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■ヒトiPS細胞を使って声帯粘膜細胞を作製 福島医大 [健康ダイジェスト]

 福島医大医学部耳鼻咽喉科学講座の今泉光雅助教(36歳)は、人間由来のiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って声帯粘膜と同様の性質を持つ細胞を作製する実験に成功しました。
 マウスのiPS細胞による組織再生技術を応用し、人間の声帯の再生治療に向けた新たな一歩を踏み出しました。将来的に再生が可能になれば、拒絶反応なしに声帯を修復できます。最先端技術を身近な医療の向上に役立てる研究として注目されます。
 今泉助教は、ヒトiPS細胞の研究で世界的な成果を挙げている米国のウィスコンシン大で信頼性の高いヒトiPS細胞の提供を受け、培養して300万個まで増やした上で、人間の声帯から採取した「線維芽細胞」と混ぜ合わせ、分化・誘導を促しました。
 線維芽細胞は、人体内で組織が損傷を受けた際に損傷部に移動してコラーゲンを作り、修復を助ける性質を持ちます。今泉助教はこの性質に着目し、活用することを発想。培養の過程でヒトiPS細胞を声帯の粘膜細胞と同様の性質を持つ細胞に変化させることに成功しました。
 今泉助教は昨年6月までの2年間、ウィスコンシン大に福島医大から派遣されました。実験は派遣期間中の一昨年春に成功し、研究成果をまとめた論文の内容が認められ、昨年末には米国の専門学術誌に掲載されました。
 今泉助教が所属する福島医大耳鼻咽喉科学講座(大森孝一教授)は、京都大などと連携してマウスiPS細胞など各種細胞による気管組織の再生実験に約十年前から取り組んできました。今泉助教は、講座で蓄積されてきたマウスiPS細胞の培養技術を生かし、マウスより取り扱いが難しいとされているヒトiPS細胞の分化・誘導に挑戦しました。
 人間の声帯の手術は、喉頭がんや、声帯ポリープなどの治療で行われますが、声帯組織を切除すると、手術前と同様に発声するのが難しくなるケースがあります。iPS細胞で再生した組織は、移植しても原則的に拒絶反応がないとされます。
 将来的にiPS細胞による声帯再生が実現すれば、移植して声を出しやすくするなど患者の日常生活の質向上に結び付くと期待されます。
 今泉助教は昨年7月に福島医大に復帰し、ヒトiPS細胞で再生した細胞を動物の体内に移植して組織化させる実験に入っており、動物実験を重ねて再生技術確立を目指します。「これからもヒトiPS細胞を用いた実験を進め、早い時期に臨床に生かせるように努力したい」と意気込んでいます。

 2014年3月16日(日) 




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