■用語 症候性顔面神経まひ [用語(さ行)]
顔面神経が侵されて、顔の筋肉の運動がまひする疾患で、明らかな原因があるもの
症候性顔面神経まひとは、明らかな原因があることにより、顔面神経が侵されて、顔の筋肉の運動がまひする疾患。
顔面神経は顔面神経管と呼ばれる骨で取り囲まれた狭いトンネルを通って脳から外に出ますが、何らかの疾患などが原因となって、顔面神経管の中で顔面神経がはれて圧迫されると、筋肉の運動まひが現れます。
症候性顔面神経まひの最も多い原因は、単純ヘルペスウイルス、水痘(すいとう)・帯状疱疹(たいじょうほうしん)ウイルスなどのウイルスの感染、もしくは神経に潜伏していた単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルスなどのウイルスの再活性化によるものです。
水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化によるものには、耳を中心に起こった帯状疱疹と、ハント症候群があります。
耳性帯状疱疹を発症すると、片側の耳に痛みや水膨れができ、顔面神経まひを伴うこともあります。ハント症候群を発症すると、顔面神経まひのほかに、難聴、耳鳴り、めまいなどの内耳障害を伴います。これは、顔面神経の膝(しつ)神経節という場所に潜んでいた水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化し、顔面神経やその周辺の聴神経に感染して起こるものです。
また、外傷により顔面神経が伸びたり、はれたり、切れたりすることで、症候性顔面神経まひを生じることがあります。受傷後すぐに生じる場合と、少し時間が経ってから生じる場合があり、受傷の程度、範囲によっては難聴や耳鳴り、めまいを伴うこともあります。
そのほか、顔面神経の経路にある耳下腺(せん)や中耳の腫瘍(しゅよう)、顔面神経そのものの腫瘍、中耳炎、糖尿病や自己免疫疾患、白血病などの全身の疾患、先天性の疾患、手術の合併症などによっても症候性顔面神経まひが生じることがあります。
顔面神経以外の脳神経まひも起こっている場合は、脳出血、脳梗塞(こうそく)、髄膜炎、脳炎、脳腫瘍によって症候性顔面神経まひが生じている可能性があります。
症候性顔面神経まひは、急性あるいは亜急性に発症します。症状は普通、片側だけに起こります。まれには、両側に起こります。
侵された側の表情筋が緩むために、顔がゆがむ、額にしわが寄らず仮面様の顔付きになる、口の一方が曲がって食べ物やよだれが出てしまう、目が完全に閉じられない、などの症状が現れます。
そのほか、まひ側の舌の前方3分の2の味覚障害を伴うこともあり、物を食べた時、金属を口に入れたような感じがしたりします。まひ側の耳が過敏になり、音が大きく響くように感じることもあります。
目が閉じにくいために目を涙で潤すことができず、夜間などに角膜が乾燥しやすくなるため、角膜に潰瘍(かいよう)ができることもあります。
症候性顔面神経まひの検査と診断と治療
症候性顔面神経まひは基本的に、耳鼻咽喉(いんこう)科の外来で治療可能な場合が多いのですが、検査が必要な場合、診断がはっきりしない場合、顔面神経まひの程度が強い場合などでは、入院が必要です。
耳鼻咽喉科の医師による診断は、典型的な顔の表情から比較的容易ですが、顔面神経まひの原因を調べるためにいろいろな検査を行います。脳の異常、外傷、腫瘍、中耳炎の有無などを確認するとともに、耳の穴や耳介に水膨れができていないかを観察します。
両側に同時に発症したり何度も繰り返す場合などは、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などの画像診断が必要です。サルコイドーシス、ライム病などの珍しい疾患で起こった可能性が疑われる場合には、血液検査などの検査が必要になります。障害の程度や回復の正確な評価のために、筋電図や誘発電位検査を行うこともあります。
耳鼻咽喉科の医師による治療では、それぞれの病態に応じて、顔面神経まひの改善を図ります。
耳性帯状疱疹、ハント症候群の治療では、水痘・帯状疱疹ウイルスが原因であることがはっきりすれば、アシクロビル製剤、バラシクロビル製剤などの抗ウイルス剤を注射します。発症から約3~4日以内に投与すれば回復が早いとされています。
これに加え、神経周辺の炎症を抑制するステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)の注射か内服、ビタミンB12剤、代謝を活性化するATP剤、鎮痛薬の内服、病変部への軟こうの塗布(とふ)などを行うこともあります。
目が閉じにくい場合、人工涙液を点眼して角膜を保護します。顔面神経まひには、顔面マッサージを行います。
耳性帯状疱疹、ハント症候群が原因で症候性顔面神経まひが起こった場合には、比較的、経過が長く、顔面の筋肉の運動まひがある程度残ることが多いようです。また、再生した顔面神経が本来の支配先と異なった筋を支配してしまった場合には、口を閉じると目が一緒に閉じたり、熱い物や冷たい物を食べた時に涙が出たりする異常連合運動が起こることがあります。
顔面神経まひが治らず、発症者が希望した場合は、顔面神経減荷術という手術を行い、まひが回復することもあります。
なお、水痘・帯状疱疹ヘルペスウイルスは体内の神経節に潜み、体力や抵抗力が低下した時に増殖し、発症する特徴があるので、再発を防ぐ上でも疲労、ストレス、睡眠不足を避け、免疫力を維持しておくことも大切です。
また、症候性顔面神経まひは、リハビリテーション療法も重要です。家庭でできる顔面マッサージとしては、朝夕30分間ほど、手で額や目の周りの筋肉をゆっくりと回すようにしてマッサージしたり、まひした口角を引っ張り上げるようにしたり、顔面の筋肉を働かせるために百面相の練習をしたりすると、効果があります。
症候性顔面神経まひとは、明らかな原因があることにより、顔面神経が侵されて、顔の筋肉の運動がまひする疾患。
顔面神経は顔面神経管と呼ばれる骨で取り囲まれた狭いトンネルを通って脳から外に出ますが、何らかの疾患などが原因となって、顔面神経管の中で顔面神経がはれて圧迫されると、筋肉の運動まひが現れます。
症候性顔面神経まひの最も多い原因は、単純ヘルペスウイルス、水痘(すいとう)・帯状疱疹(たいじょうほうしん)ウイルスなどのウイルスの感染、もしくは神経に潜伏していた単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルスなどのウイルスの再活性化によるものです。
水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化によるものには、耳を中心に起こった帯状疱疹と、ハント症候群があります。
耳性帯状疱疹を発症すると、片側の耳に痛みや水膨れができ、顔面神経まひを伴うこともあります。ハント症候群を発症すると、顔面神経まひのほかに、難聴、耳鳴り、めまいなどの内耳障害を伴います。これは、顔面神経の膝(しつ)神経節という場所に潜んでいた水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化し、顔面神経やその周辺の聴神経に感染して起こるものです。
また、外傷により顔面神経が伸びたり、はれたり、切れたりすることで、症候性顔面神経まひを生じることがあります。受傷後すぐに生じる場合と、少し時間が経ってから生じる場合があり、受傷の程度、範囲によっては難聴や耳鳴り、めまいを伴うこともあります。
そのほか、顔面神経の経路にある耳下腺(せん)や中耳の腫瘍(しゅよう)、顔面神経そのものの腫瘍、中耳炎、糖尿病や自己免疫疾患、白血病などの全身の疾患、先天性の疾患、手術の合併症などによっても症候性顔面神経まひが生じることがあります。
顔面神経以外の脳神経まひも起こっている場合は、脳出血、脳梗塞(こうそく)、髄膜炎、脳炎、脳腫瘍によって症候性顔面神経まひが生じている可能性があります。
症候性顔面神経まひは、急性あるいは亜急性に発症します。症状は普通、片側だけに起こります。まれには、両側に起こります。
侵された側の表情筋が緩むために、顔がゆがむ、額にしわが寄らず仮面様の顔付きになる、口の一方が曲がって食べ物やよだれが出てしまう、目が完全に閉じられない、などの症状が現れます。
そのほか、まひ側の舌の前方3分の2の味覚障害を伴うこともあり、物を食べた時、金属を口に入れたような感じがしたりします。まひ側の耳が過敏になり、音が大きく響くように感じることもあります。
目が閉じにくいために目を涙で潤すことができず、夜間などに角膜が乾燥しやすくなるため、角膜に潰瘍(かいよう)ができることもあります。
症候性顔面神経まひの検査と診断と治療
症候性顔面神経まひは基本的に、耳鼻咽喉(いんこう)科の外来で治療可能な場合が多いのですが、検査が必要な場合、診断がはっきりしない場合、顔面神経まひの程度が強い場合などでは、入院が必要です。
耳鼻咽喉科の医師による診断は、典型的な顔の表情から比較的容易ですが、顔面神経まひの原因を調べるためにいろいろな検査を行います。脳の異常、外傷、腫瘍、中耳炎の有無などを確認するとともに、耳の穴や耳介に水膨れができていないかを観察します。
両側に同時に発症したり何度も繰り返す場合などは、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などの画像診断が必要です。サルコイドーシス、ライム病などの珍しい疾患で起こった可能性が疑われる場合には、血液検査などの検査が必要になります。障害の程度や回復の正確な評価のために、筋電図や誘発電位検査を行うこともあります。
耳鼻咽喉科の医師による治療では、それぞれの病態に応じて、顔面神経まひの改善を図ります。
耳性帯状疱疹、ハント症候群の治療では、水痘・帯状疱疹ウイルスが原因であることがはっきりすれば、アシクロビル製剤、バラシクロビル製剤などの抗ウイルス剤を注射します。発症から約3~4日以内に投与すれば回復が早いとされています。
これに加え、神経周辺の炎症を抑制するステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)の注射か内服、ビタミンB12剤、代謝を活性化するATP剤、鎮痛薬の内服、病変部への軟こうの塗布(とふ)などを行うこともあります。
目が閉じにくい場合、人工涙液を点眼して角膜を保護します。顔面神経まひには、顔面マッサージを行います。
耳性帯状疱疹、ハント症候群が原因で症候性顔面神経まひが起こった場合には、比較的、経過が長く、顔面の筋肉の運動まひがある程度残ることが多いようです。また、再生した顔面神経が本来の支配先と異なった筋を支配してしまった場合には、口を閉じると目が一緒に閉じたり、熱い物や冷たい物を食べた時に涙が出たりする異常連合運動が起こることがあります。
顔面神経まひが治らず、発症者が希望した場合は、顔面神経減荷術という手術を行い、まひが回復することもあります。
なお、水痘・帯状疱疹ヘルペスウイルスは体内の神経節に潜み、体力や抵抗力が低下した時に増殖し、発症する特徴があるので、再発を防ぐ上でも疲労、ストレス、睡眠不足を避け、免疫力を維持しておくことも大切です。
また、症候性顔面神経まひは、リハビリテーション療法も重要です。家庭でできる顔面マッサージとしては、朝夕30分間ほど、手で額や目の周りの筋肉をゆっくりと回すようにしてマッサージしたり、まひした口角を引っ張り上げるようにしたり、顔面の筋肉を働かせるために百面相の練習をしたりすると、効果があります。
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