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■用語 胃マルトリンパ腫 [用語(い)]

[ダイヤ]胃の粘膜とリンパ球の複合組織であるマルトから、後天性に発生してくる腫瘍
 胃マルトリンパ腫(しゅ)とは、胃の粘膜とB細胞リンパ球の複合組織であるマルトから、後天性に発生してくる腫瘍(しゅよう)。悪性度の低いリンパ腫とされ、比較的進行が遅い腫瘍です。
 この胃マルトリンパ腫の約80パーセントは、慢性胃炎や胃十二指腸潰瘍(かいよう)、胃がんの原因ともなっているピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の感染が原因となっています。胃の中の胃液には胃酸とも呼ばれる塩酸が存在するので、通常は胃の内部では細菌は殺菌されるのですが、ピロリ菌は胃の内部でも存在できる細菌として、さまざまな疾患を引き起こしています。
 ただし、ピロリ菌に感染していても、実際に胃マルトリンパ腫になる人は極めてまれです。感染者のうちのどのような人が胃マルトリンパ腫になるのかは、まだよくわかっていません。
 一方、残りの約20パーセントの原因については、その約半数はAP12MALT1という遺伝子の異常が原因であることがわかっています。この遺伝子異常がどうして生じるかは、よくわかっていません。
 さらに、残りの約半数については、今のところ原因は全く不明です。
 胃マルトリンパ腫を来しても、多くの人は無症状のため、健康診断で発見されるケースが多くなっています。腹痛、胸焼け、上腹部の不快感、時に吐血などの症状を生じる人もいますが、症状は一般的に軽いことが多い傾向にあります。
 胃マルトリンパ腫は一般に良性の経過をたどるものの、一部の大細胞型の腫瘍が存在する場合はびまん性大細胞型リンパ腫という悪性リンパ腫へと移行し、急速に大きくなることがあります。
 健康診断などで胃マルトリンパ腫が発見されたら、消化器科の医師を受診して、さらに詳しい内視鏡検査を受ける必要があります。
[ハート]胃マルトリンパ腫の検査と診断と治療
 消化器科の医師による診断では、内視鏡検査を行って胃マルトリンパ腫が疑われたら、腫瘍の一部を採取して顕微鏡で調べる生検(病理検査)を行います。
 通常の生検(病理検査)に加えて、さまざまなリンパ球の特殊染色検査や遺伝子の検査なども行います。内視鏡検査および生検(病理検査)で胃マルトリンパ腫であって、悪性リンパ腫ではないと判断された場合は、尿素呼気試験、抗体検査などのピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)に関する検査を行います。
 さらに、病状の正確な診断のために超音波(エコー)内視鏡検査や、大腸など消化管検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査、核医学検査(ガリウムシンチ)、骨髄検査(マルク)などを行うことがあります。
 消化器科の医師による治療では、ピロリ菌に陽性の場合、1〜2週間のピロリ菌除菌療法を行います。
 ピロリ菌除菌療法では、2~3種類の抗生物質を同時に1~2週間服用し続けることで、胃の中に生息しているピロリ菌を除菌します。2~3種類の抗生物質を用いるのは、1種類だけよりも効果が高いのと、その抗生物質に対する耐性菌(抗生物質が効かない菌)ができてしまうのを防ぐためです。プロトンポンプ阻害薬(プロトンポンプインヒビター)1種類と抗生物質2種類を組み合わせた3剤を、朝夕2回、1週間服用し続けることもあります。
 ピロリ菌除菌療法は、約90パーセントの人で成功し、そのうち80~90パーセントの人では胃マルトリンパ腫が治ります。
 ピロリ菌除菌で治らない場合や、さらに進行する場合、放射線療法や薬物投与(化学療法)、あるいは手術の対象となります。多くの場合、これらで十分な治療効果が得られます。
 一方、ピロリ菌に陰性の場合で、遺伝子検査を行ってAP12MALT1という遺伝子に陽性の場合は、ピロリ菌除菌は効果がありませんので、放射線や薬物投与で治療することを原則とします。
 しかし、この遺伝子異常が原因の胃マルトリンパ腫は、悪性リンパ腫へと進行しにくいとされているため、治療を行わずに経過観察することもあります。
 胃マルトリンパ腫は一般に良性の経過をたどるものの、胃で再発したり、肺や大腸などのほかの臓器でマルトリンパ腫が再発したり、悪性リンパ腫へと移行する場合もあるので、内視鏡検査を始め定期検査をすることが不可欠です。

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