■用語 無菌性髄膜炎 [用語(ま行)]
脳を取り巻く髄膜に細菌以外の病原体が感染し、炎症が起こる疾患
無菌性髄膜炎とは、脳を取り巻き、内側から軟膜、くも膜、硬膜の三層からなる髄膜に、細菌以外の病原体が感染し、炎症が起こる疾患。
その病原体には、ウイルスやマイコプラズマ、真菌、寄生虫などがあり、膠原(こうげん)病、悪性疾患、薬剤、造影剤などによっても発生します。小児に多くみられ、細菌由来の髄膜炎に比較すると病変は軽度で通常、予後は良好となります。
無菌性髄膜炎の一部を占める疾患であるウイルス性髄膜炎を起こす原因ウイルスは、エンテロウイルス属(コクサッキーウイルスA、コクサッキーウイルスB、エコーウイルス、エンテロウイルス)が最多で、次いでムンプスウイルスです。エンテロウイルス属、ムンプスウイルスによるウイルス性髄膜炎は、春から夏にかけて多くみられます。
また、原因ウイルスには、単純ヘルペス1型、単純ヘルペス2型、水痘・帯状疱疹(ほうしん)ウイルス、日本脳炎ウイルス、風疹ウイルス、麻疹ウイルスなどもあります。
感染経路は病原体によってさまざまで、潜伏期、症状にも違いはありますが、主な病原体であるウイルスでみると一般的に、年長児と成人では、急激な発熱、頭痛、嘔吐(おうと)を主症状とします。首が強く突っ張る項部強直などの髄膜刺激症状も多く認められます。
乳児では、発熱、不機嫌、授乳不良など非定型的な症状で発症し、髄膜刺激症状を認めないことも多くあります。新生児では、発熱、授乳不良に加えて、重篤な全身症状を引き起こす敗血症のような症状を示すことがあります。
原因ウイルスがエンテロウイルス属の場合は胃腸病変や発疹(はっしん)がみられ、ムンプスウイルスの場合は耳下腺(せん)のはれがみられ、単純ヘルペス1型と単純ヘルペス2型の場合は発疹がみられ、何度も再燃することがあります。水痘・帯状疱疹ウイルス、風疹ウイルス、麻疹ウイルスの場合も、発疹がみられます。
さらに、炎症が髄膜から脳そのものまでに及ぶと髄膜脳炎、脳炎を合併し、意識障害や手足のけいれんを起こすこともあります。
成人で発熱、頭痛、嘔吐をもって急性に発病した場合は、無菌性髄膜炎の一部を占めるウイルス性髄膜炎の疑いがあるので、内科、神経内科を受診します。乳幼児で発熱、授乳不良、何となく元気がないなど普段と様子が違う場合は、早めに小児科を受診することが重要です。
無菌性髄膜炎の検査と診断と治療
内科、神経内科、小児科の医師による診断では通常、症状や病歴だけでは無菌性髄膜炎と細菌性髄膜炎との鑑別が困難であるため、脊髄(せきずい)液を腰椎(ようつい)から穿刺(せんし)する髄液検査を行い、細菌以外のさまざまな病原体の中から、原因となっている病原体を明らかにします。
また、特に成人の場合は膠原病、悪性疾患、薬剤などでも無菌性髄膜炎を起こすことを考慮し、判断します。
無菌性髄膜炎の主な病原体であるウイルスでみると、髄液検査の所見では、単核球(リンパ球)を主とする細胞の増加が認められます。髄膜炎を疑わせる症状がなくても、髄液検査を行うと髄液中の細胞が増えていることもあります。
また、髄液からのウイルス分離で、原因ウイルスを証明します。あるいは、RT‐PCR法(逆転写酵素ーポリメラーゼ連鎖反応法)を用いて、ウイルス遺伝子(RNA)を検出します。最近の分子生物学的手法により、ウイルスがワクチン株(ワクチン由来)か野生株かの判定が可能になりました。
髄膜炎や、合併した髄膜脳炎、脳炎の程度をみるために、CT(コンピューター断層撮影)検査やMRI(核磁気共鳴画像)検査を行うこともあります。周囲でのウイルス性髄膜炎の流行状況、その年に多く分離されているウイルスの動向なども、診断の参考にします。
内科、神経内科、小児科の医師による治療では、ウイルス性髄膜炎の場合には、ほとんどのウイルスに特異的な治療法がないため、発熱や痛みに対する対症療法を行います。単純ヘルペス1型、単純ヘルペス2型、水痘・帯状疱疹ウイルスによる髄膜炎に対しては、アシクロビルなどの抗ウイルス剤の点滴投与を行います。
ムンプスウイルスによる髄膜炎の場合は、髄液検査において穿刺をすると、頭痛や嘔吐がある程度改善します。脱水症状を示している場合は、輸液(点滴)を行います。
一般的にウイルス性髄膜炎は早期に発見して早期に治療すれば、予後は良好で数週間の安静で自然治癒し、後遺症を残すことはほとんどありません。髄膜脳炎を合併した場合でも、ほかの原因による髄膜脳炎に比べると予後は良好です。
ウイルス以外の病原体による無菌性髄膜炎の場合には、病原体に特異的な治療を行います。予後は、原因病原体や全身状態に依存します。
例えば、真菌性髄膜炎の場合には、一般に抗真菌剤を用いて静脈内投与するか、髄液の中に直接注射します。真菌性髄膜炎を引き起こしたもとになる基礎疾患があれば、その治療も並行して行います。予後は、基礎疾患に左右されます。
無菌性髄膜炎とは、脳を取り巻き、内側から軟膜、くも膜、硬膜の三層からなる髄膜に、細菌以外の病原体が感染し、炎症が起こる疾患。
その病原体には、ウイルスやマイコプラズマ、真菌、寄生虫などがあり、膠原(こうげん)病、悪性疾患、薬剤、造影剤などによっても発生します。小児に多くみられ、細菌由来の髄膜炎に比較すると病変は軽度で通常、予後は良好となります。
無菌性髄膜炎の一部を占める疾患であるウイルス性髄膜炎を起こす原因ウイルスは、エンテロウイルス属(コクサッキーウイルスA、コクサッキーウイルスB、エコーウイルス、エンテロウイルス)が最多で、次いでムンプスウイルスです。エンテロウイルス属、ムンプスウイルスによるウイルス性髄膜炎は、春から夏にかけて多くみられます。
また、原因ウイルスには、単純ヘルペス1型、単純ヘルペス2型、水痘・帯状疱疹(ほうしん)ウイルス、日本脳炎ウイルス、風疹ウイルス、麻疹ウイルスなどもあります。
感染経路は病原体によってさまざまで、潜伏期、症状にも違いはありますが、主な病原体であるウイルスでみると一般的に、年長児と成人では、急激な発熱、頭痛、嘔吐(おうと)を主症状とします。首が強く突っ張る項部強直などの髄膜刺激症状も多く認められます。
乳児では、発熱、不機嫌、授乳不良など非定型的な症状で発症し、髄膜刺激症状を認めないことも多くあります。新生児では、発熱、授乳不良に加えて、重篤な全身症状を引き起こす敗血症のような症状を示すことがあります。
原因ウイルスがエンテロウイルス属の場合は胃腸病変や発疹(はっしん)がみられ、ムンプスウイルスの場合は耳下腺(せん)のはれがみられ、単純ヘルペス1型と単純ヘルペス2型の場合は発疹がみられ、何度も再燃することがあります。水痘・帯状疱疹ウイルス、風疹ウイルス、麻疹ウイルスの場合も、発疹がみられます。
さらに、炎症が髄膜から脳そのものまでに及ぶと髄膜脳炎、脳炎を合併し、意識障害や手足のけいれんを起こすこともあります。
成人で発熱、頭痛、嘔吐をもって急性に発病した場合は、無菌性髄膜炎の一部を占めるウイルス性髄膜炎の疑いがあるので、内科、神経内科を受診します。乳幼児で発熱、授乳不良、何となく元気がないなど普段と様子が違う場合は、早めに小児科を受診することが重要です。
無菌性髄膜炎の検査と診断と治療
内科、神経内科、小児科の医師による診断では通常、症状や病歴だけでは無菌性髄膜炎と細菌性髄膜炎との鑑別が困難であるため、脊髄(せきずい)液を腰椎(ようつい)から穿刺(せんし)する髄液検査を行い、細菌以外のさまざまな病原体の中から、原因となっている病原体を明らかにします。
また、特に成人の場合は膠原病、悪性疾患、薬剤などでも無菌性髄膜炎を起こすことを考慮し、判断します。
無菌性髄膜炎の主な病原体であるウイルスでみると、髄液検査の所見では、単核球(リンパ球)を主とする細胞の増加が認められます。髄膜炎を疑わせる症状がなくても、髄液検査を行うと髄液中の細胞が増えていることもあります。
また、髄液からのウイルス分離で、原因ウイルスを証明します。あるいは、RT‐PCR法(逆転写酵素ーポリメラーゼ連鎖反応法)を用いて、ウイルス遺伝子(RNA)を検出します。最近の分子生物学的手法により、ウイルスがワクチン株(ワクチン由来)か野生株かの判定が可能になりました。
髄膜炎や、合併した髄膜脳炎、脳炎の程度をみるために、CT(コンピューター断層撮影)検査やMRI(核磁気共鳴画像)検査を行うこともあります。周囲でのウイルス性髄膜炎の流行状況、その年に多く分離されているウイルスの動向なども、診断の参考にします。
内科、神経内科、小児科の医師による治療では、ウイルス性髄膜炎の場合には、ほとんどのウイルスに特異的な治療法がないため、発熱や痛みに対する対症療法を行います。単純ヘルペス1型、単純ヘルペス2型、水痘・帯状疱疹ウイルスによる髄膜炎に対しては、アシクロビルなどの抗ウイルス剤の点滴投与を行います。
ムンプスウイルスによる髄膜炎の場合は、髄液検査において穿刺をすると、頭痛や嘔吐がある程度改善します。脱水症状を示している場合は、輸液(点滴)を行います。
一般的にウイルス性髄膜炎は早期に発見して早期に治療すれば、予後は良好で数週間の安静で自然治癒し、後遺症を残すことはほとんどありません。髄膜脳炎を合併した場合でも、ほかの原因による髄膜脳炎に比べると予後は良好です。
ウイルス以外の病原体による無菌性髄膜炎の場合には、病原体に特異的な治療を行います。予後は、原因病原体や全身状態に依存します。
例えば、真菌性髄膜炎の場合には、一般に抗真菌剤を用いて静脈内投与するか、髄液の中に直接注射します。真菌性髄膜炎を引き起こしたもとになる基礎疾患があれば、その治療も並行して行います。予後は、基礎疾患に左右されます。
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