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■用語 爪乾癬 [用語(つ)]

[足]皮膚疾患である乾癬の症状が爪の表面に現れ、爪が白濁、肥厚する状態
 爪乾癬(つめかんせん)とは、慢性の経過をとり治りにくい皮膚疾患である乾癬の症状が爪の表面に現れた状態。
 爪の水虫(爪白癬〔はくせん〕)と似た症状が現れ、爪の甲が変形して白く厚ぼったくなり、悪化すると表面がはがれ落ちます。爪の周囲に乾癬による皮膚病変を認め、頭部、腰部、下腿(かたい)前面などの好発部位にも、乾癬特有の皮膚病変を認めます。
 乾癬は、皮膚が赤くなって盛り上がり、表面に厚い銀白色の鱗屑(りんせつ)がついて、その一部がポロポロとはがれ落ちる皮膚疾患。炎症性角化症の代表で、慢性の経過をとり、なかなか治りにくい疾患ですが、周囲の人に移ることはありません。
 日本では3〜16万人の発症者がいると推定されており、近年は増加傾向にあります。男女比は2対1で男性に多く、主に30〜40歳代に発症します。女性では、10歳代と50歳代の発症が多いともいわれています。
 乾癬の起こる原因は、いまだはっきりとしていません。一説によると、一種の免疫反応の異常により生じるとされます。すなわち、健常の皮膚では、表皮細胞と白血球(リンパ球など)がサイトカインなどの伝達物質を使って、うまく連絡を取り合ってお互いを制御しています。このバランスが崩れると表皮細胞が一方的に増殖して、早く脱落していくことが起こります。
 健常の皮膚では普通、表皮細胞はその一番外側に角質層という死んだ細胞の層を作り、垢(あか)になって落ちていくことを、一定の周期の45日で繰り返しています。乾癬では、この周期が4~5日と極度に短縮しているため、カサカサした薄皮である鱗屑がどんどんできては、ポロポロとはがれていきます。
 この免疫反応の異常は、遺伝的になりやすい体質がある人に、扁桃腺(へんとうせん)炎などの感染症、薬物や外傷などの外的因子、糖尿病や高血圧、肝臓病、ストレスなどの内的因子が複雑に絡み合って発症したり、悪化したりすると考えられています。第二次世界大戦後に増加した疾患であり、もともと欧米人に多いことから、食事の西洋化が関係しているのではと類推されています。
 一つひとつの発疹(はっしん)は、にきびのような赤いぶつぶつで始まり、次第に周囲に拡大するとともに厚い鱗屑を持つようになり、ある時を境によくなって、鱗屑がなくなるということを繰り返します。その時の鱗屑の大きさは、一定していません。このように、よくなったり悪くなったりを年余に渡って繰り返します。
 乾癬では、ケブネル現象といって、繰り返しこすったり、傷付いたりした個所に、数日してから新しい発疹が出てくることがあります。これは、体の中でよくこすれる部位である肘(ひじ)や膝(ひざ)、尻(しり)、頭の毛の生え際などから発疹が出てきたり、あるいは発疹がひどい傾向にあります。
 また、アウスピッツ血露現象といって、鱗屑を無理にはがすと、点状に出血がみられることがあります。これは、乾癬の特徴的な表皮の増殖の仕方と関係しています。すなわち、表皮が厚くなった部分と薄くなった部分が隣り合っているため、薄い表皮の下にある血管が傷付いて生じると考えられます。
 鱗屑が厚い時にかゆみがありますが、基本的には自覚症状もなく、内臓にまで疾患が及ぶことはありません。
 こういった乾癬の典型的症状のみがみられる例を尋常性乾癬といい、尋常性乾癬の病変が爪の表面に現れた状態が爪乾癬です。乾癬の発症者の3割から5割が爪乾癬を発症するとされますが、生涯のうちでは8割から9割が爪乾癬を発症するとされます。
 爪乾癬は一度、手や足の爪に症状が現れると、一個所にとどまらず、両手や両足の爪に症状が広がります。そして、重症化すると、爪の甲が変形して白濁、肥厚するだけではなく、爪がはがれ落ちるほどになり、爪が一時的になくなってしまう状態になります。
 爪乾癬の症状に気付いたら、皮膚科、皮膚泌尿器科を受診し、治療法を相談します。多くのケースでは外来通院治療が行われ、重症化した場合には入院治療が必要なこともあります。
[足]爪乾癬の検査と診断と治療
 皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断は、爪の症状や特徴的な皮膚の発疹とその分布、経過より判断します。通常は内臓の異常はありませんが、時に糖尿病、高血圧、肝臓病を合併していることがあるので、検査で確認することが必要です。また、薬の副作用で乾癬のような発疹が出てくることもあります。
 治療の効果がみられない場合や経過の長い場合は、発疹の一部を切って顕微鏡で調べる組織検査を行うと、診断が確定します。
 皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療は、一般的な尋常性乾癬や爪乾癬に対する根本的な治療法はまだなく、完治させることは難しいと考えられているため、症状に合わせたいろいろな治療を行います。
 症状に合わせた治療の方法には、外用薬、内服薬、光線療法などさまざまあります。症状が軽い場合には主に外用薬で、症状が重くなると内服薬や光線療法で治療します。
 外用薬には、炎症を抑制する副腎(ふくじん)皮質ステロイド薬が多く用いられています。そのほか、皮膚の細胞が増殖するのを阻害する活性型ビタミンD3外用薬も、副腎皮質ステロイド薬ほどの速効性はありませんが、副作用が軽微なので併せて使用します。
 しかしながら、皮膚ではなく爪に現れた爪乾癬の場合、外用薬では深部に浸透させることが難しいのが実情です。
 内服薬としては、ビタミンA類似物質であるエトレチナート(チガソン)や、免疫抑制薬であるシクロスポリン(ネオーラル)が用いられ、一定の効果が得られています。
 光線療法は、紫外線の増感剤であるメトキサレン(オクソラレン)を発疹部に塗り、長波長紫外線UVAを当てる治療で、PUVA(プーバ)療法といいます。乾癬が全身にある場合、入院して内服のメトキサレンを使用してPUVA療法を行う場合もあります。紫外線を当てることで、異常な免疫反応が抑制され、効果が得られると考えられています。
 近年、PUVA療法に代わる光線療法として、特定の紫外線波長を利用したナローバンドUVB療法も利用されるようになってきています。
 いずれの治療法も一長一短があるため、治療により得られる効果と副作用のリスクの兼ね合いを考え、うまく組み合わせて症状をコントロールすることが大切です。乾癬の多くは慢性に経過しますが、自然に軽快、治癒することもあります。
 生活上の注意としては、こすると新しい発疹が出てくるケブネル現象がありますので、皮膚をこすり過ぎないように注意します。入浴は構いませんが、こすり過ぎず、また鱗屑を無理にはぎ取らないようにします。ただし、鱗屑には発疹の慢性化に関係する物質も含まれていますので、ぬるま湯につかって軟らかくした後で無理なく鱗屑を取ることはよいことです。
 日光浴も効果があるので、適度に行います。急激に日焼けをするとやはりケブネル現象で悪化することもあるので、あくまでも適度に。風邪を引いたりした後など、感染によりサイトカインのバランスが崩れ、乾癬の症状が悪化することがあります。風邪を引かないように、まめにうがいを励行します。精神的な動揺やストレスが疾患を悪くしますので、短気を起こさず、気長に治療していきます。




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