■用語 化生性胃炎 [用語(か行)]
委縮性胃炎が進行して、委縮した胃粘膜が腸のような粘膜に置き換わる疾患
化生性胃炎とは、委縮性胃炎が進行して委縮した胃粘膜の性質が変わり、腸のような粘膜に置き換わる疾患。腸上皮化生性胃炎とも呼ばれます。
化生性胃炎に進行する委縮性胃炎は、慢性的な胃の炎症によって、胃液を分泌する胃腺(せん)の部分の粘膜が委縮していく疾患。胃粘膜の委縮の度合はさまざまで、胃の一部しか委縮しないケースから、胃全体が委縮するケースまであります。
委縮性胃炎の経過はまず、胃の粘膜が赤く痛んだ状態になることから始まり、胃の粘膜の細胞が次第に少なくなって、胃液(胃酸)を分泌する力が次第に衰えていきます。
さらに進行すると、粘膜の性質が変わって、腸の粘膜に近いような細胞に姿を変えます。これを腸上皮化生といい、それが著しい場合は化生性胃炎となります。
委縮性胃炎には、大きく分けてA型胃炎(自己免疫性胃炎)とB型胃炎(多巣性委縮性胃炎)という2つのタイプが存在しています。
A型胃炎(自己免疫性胃炎)は、胃の真ん中の部分を中心として、広い範囲で委縮が広がり、主に胃液を出す壁細胞という細胞が減っていきます。その進行した病態が腸上皮化生、化生性胃炎で、自分の細胞に対する抗体ができることによる疾患であり、一種の自己免疫疾患です。
悪性貧血という貧血を伴い、カルチノイドという腫瘍(しゅよう)を誘発しやすいのも特徴です。このタイプは、海外に比較的多く、日本では非常にまれだと見なされています。
一方、B型胃炎(多巣性委縮性胃炎)は、ほとんどの場合、委縮が胃の出口の付近から始まり、進行とともに、次第に胃の上のほうへと上がっていきます。進行すると、胃の全体に広がり、腸上皮化生、化生性胃炎がみられるようになります。
委縮の進行した粘膜には遺伝子異常が起こり、これが胃がんの大きな原因となるのも特徴です。このタイプが、日本人の委縮性胃炎の大部分を占めます。
B型胃炎(多巣性委縮性胃炎)の原因の大部分は、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の感染であると見なされています。
人間の胃にピロリ菌が感染すると、まず表面が赤くはれるようなタイプの胃炎が起こります。その中には潰瘍化するものもあり、しばらくすると、胃の出口から胃の細胞の減少、すなわち委縮が始まります。
さらに進行すると、胃の粘膜の細胞に遺伝子異常が起こり、腸上皮化生、化生性胃炎が起こります。この化生性胃炎が進行すると、胃酸はほとんど出なくなり、胃の中の酸度は低下します。
ピロリ菌は胃粘膜の環境に適合しているので、委縮性胃炎が高度になると、ピロリ菌はかえって減少し、時には胃の中からいなくなります。つまり、委縮性胃炎の原因はピロリ菌なのですが、進行した委縮性胃炎では、往々にしてピロリ菌は見付からないことがあるのです。
ピロリ菌の感染から数十年を掛けて、委縮性胃炎が発生し、それからさらに十数年を経て腸上皮化生、化生性胃炎が生じるというのが、一般的な時間経過と考えられています。従って、高齢者に多く見られ、食欲不振、食後のもたれ、上腹部の張りを覚える人もいます。
腸上皮化生、化生性胃炎の初期には、委縮した胃粘膜が小腸のような粘膜に置き換わります。進行すると、大腸のような粘膜に置き換わります。後者では、がん化のリスクが高いとされ、委縮の程度は進んでいます。
化生性胃炎が進行すると、胃酸はほとんど出なくなり、胃の中の酸度は低下しますので、食事を消化することができず、胃の動きも悪くなるために、食物は胃の中に停滞し、発酵してガスを出します。胃の中はただれ、胃はもたれ、下痢になり、体調は悪化します。
化生性胃炎の検査と診断と治療
消化器科、内科の医師による診断では、胃内視鏡検査で胃の粘膜の状態を見て、委縮や腸上皮化生が生じているかどうか判断します。通常の粘膜であれば胃の血管は見えませんが、委縮が生じている場合は、粘膜が薄くなり、胃の血管が黄色っぽく見えてきます。腸上皮化生が生じている場合は、粘膜の凹凸が目立ちます。
また、胃内視鏡検査の時に胃の粘膜の一部を採取し、顕微鏡で調べる生検を行うと、胃粘膜が組織学的および機能的に、小腸や大腸のような粘膜に置き換わっているかどうかを確認できます。生検を行うと、原因となるピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)がいるかどうかを確認することもできます。
委縮性胃炎、腸上皮化生、化生性胃炎と区別すべき疾患としては、胃がんが最も重要です。
消化器科、内科の医師による治療では、委縮してしまった粘膜を元に戻す画期的な方法はありません。ピロリ菌が原因のB型胃炎(多巣性委縮性胃炎)の場合は、除菌という方法があります。ピロリ菌に感染しているかどうかを調べ、陽性の場合は、除菌すれば胃の壁の状態が回復し、胃液分泌も元に戻ります。しかし、除菌したからといって、委縮が治るわけではありません。
胃がんを発症した人はほぼ100パーセントがピロリ菌に感染していたことがわかっており、ピロリ菌の除菌をすれば、胃がんのリスクの減少につながります。もちろん、ピロリ菌に感染している人がすべて胃がんになるわけではなく、1000人の陽性者のうち胃がんを発症する人は2~3人にすぎません。
除菌だけで、すべてが解決するわけでもありません。委縮性胃炎、腸上皮化生、化生性胃炎の状態では、胃液の分泌が少ないかほとんどないため、できるだけ胃に負担をかけない食生活を心掛けることが大切です。1日3食を規則正しく摂取するようにして、脂っこいものなど消化の悪いものや、香辛料など刺激の強いものは控えめにします。
委縮性胃炎、腸上皮化生、化生性胃炎を持っている人は胃がん発症のリスクが高くなりますから、最低でも年に一度の内視鏡検査は必ず受けることも大切です。
たとえ胃がんが発生したとしても、早期発見ならば内視鏡による胃粘膜切除手術で、簡単に切除することができます。早期の胃がんの5年生存率は90パーセント以上と高くなっています。
化生性胃炎とは、委縮性胃炎が進行して委縮した胃粘膜の性質が変わり、腸のような粘膜に置き換わる疾患。腸上皮化生性胃炎とも呼ばれます。
化生性胃炎に進行する委縮性胃炎は、慢性的な胃の炎症によって、胃液を分泌する胃腺(せん)の部分の粘膜が委縮していく疾患。胃粘膜の委縮の度合はさまざまで、胃の一部しか委縮しないケースから、胃全体が委縮するケースまであります。
委縮性胃炎の経過はまず、胃の粘膜が赤く痛んだ状態になることから始まり、胃の粘膜の細胞が次第に少なくなって、胃液(胃酸)を分泌する力が次第に衰えていきます。
さらに進行すると、粘膜の性質が変わって、腸の粘膜に近いような細胞に姿を変えます。これを腸上皮化生といい、それが著しい場合は化生性胃炎となります。
委縮性胃炎には、大きく分けてA型胃炎(自己免疫性胃炎)とB型胃炎(多巣性委縮性胃炎)という2つのタイプが存在しています。
A型胃炎(自己免疫性胃炎)は、胃の真ん中の部分を中心として、広い範囲で委縮が広がり、主に胃液を出す壁細胞という細胞が減っていきます。その進行した病態が腸上皮化生、化生性胃炎で、自分の細胞に対する抗体ができることによる疾患であり、一種の自己免疫疾患です。
悪性貧血という貧血を伴い、カルチノイドという腫瘍(しゅよう)を誘発しやすいのも特徴です。このタイプは、海外に比較的多く、日本では非常にまれだと見なされています。
一方、B型胃炎(多巣性委縮性胃炎)は、ほとんどの場合、委縮が胃の出口の付近から始まり、進行とともに、次第に胃の上のほうへと上がっていきます。進行すると、胃の全体に広がり、腸上皮化生、化生性胃炎がみられるようになります。
委縮の進行した粘膜には遺伝子異常が起こり、これが胃がんの大きな原因となるのも特徴です。このタイプが、日本人の委縮性胃炎の大部分を占めます。
B型胃炎(多巣性委縮性胃炎)の原因の大部分は、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の感染であると見なされています。
人間の胃にピロリ菌が感染すると、まず表面が赤くはれるようなタイプの胃炎が起こります。その中には潰瘍化するものもあり、しばらくすると、胃の出口から胃の細胞の減少、すなわち委縮が始まります。
さらに進行すると、胃の粘膜の細胞に遺伝子異常が起こり、腸上皮化生、化生性胃炎が起こります。この化生性胃炎が進行すると、胃酸はほとんど出なくなり、胃の中の酸度は低下します。
ピロリ菌は胃粘膜の環境に適合しているので、委縮性胃炎が高度になると、ピロリ菌はかえって減少し、時には胃の中からいなくなります。つまり、委縮性胃炎の原因はピロリ菌なのですが、進行した委縮性胃炎では、往々にしてピロリ菌は見付からないことがあるのです。
ピロリ菌の感染から数十年を掛けて、委縮性胃炎が発生し、それからさらに十数年を経て腸上皮化生、化生性胃炎が生じるというのが、一般的な時間経過と考えられています。従って、高齢者に多く見られ、食欲不振、食後のもたれ、上腹部の張りを覚える人もいます。
腸上皮化生、化生性胃炎の初期には、委縮した胃粘膜が小腸のような粘膜に置き換わります。進行すると、大腸のような粘膜に置き換わります。後者では、がん化のリスクが高いとされ、委縮の程度は進んでいます。
化生性胃炎が進行すると、胃酸はほとんど出なくなり、胃の中の酸度は低下しますので、食事を消化することができず、胃の動きも悪くなるために、食物は胃の中に停滞し、発酵してガスを出します。胃の中はただれ、胃はもたれ、下痢になり、体調は悪化します。
化生性胃炎の検査と診断と治療
消化器科、内科の医師による診断では、胃内視鏡検査で胃の粘膜の状態を見て、委縮や腸上皮化生が生じているかどうか判断します。通常の粘膜であれば胃の血管は見えませんが、委縮が生じている場合は、粘膜が薄くなり、胃の血管が黄色っぽく見えてきます。腸上皮化生が生じている場合は、粘膜の凹凸が目立ちます。
また、胃内視鏡検査の時に胃の粘膜の一部を採取し、顕微鏡で調べる生検を行うと、胃粘膜が組織学的および機能的に、小腸や大腸のような粘膜に置き換わっているかどうかを確認できます。生検を行うと、原因となるピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)がいるかどうかを確認することもできます。
委縮性胃炎、腸上皮化生、化生性胃炎と区別すべき疾患としては、胃がんが最も重要です。
消化器科、内科の医師による治療では、委縮してしまった粘膜を元に戻す画期的な方法はありません。ピロリ菌が原因のB型胃炎(多巣性委縮性胃炎)の場合は、除菌という方法があります。ピロリ菌に感染しているかどうかを調べ、陽性の場合は、除菌すれば胃の壁の状態が回復し、胃液分泌も元に戻ります。しかし、除菌したからといって、委縮が治るわけではありません。
胃がんを発症した人はほぼ100パーセントがピロリ菌に感染していたことがわかっており、ピロリ菌の除菌をすれば、胃がんのリスクの減少につながります。もちろん、ピロリ菌に感染している人がすべて胃がんになるわけではなく、1000人の陽性者のうち胃がんを発症する人は2~3人にすぎません。
除菌だけで、すべてが解決するわけでもありません。委縮性胃炎、腸上皮化生、化生性胃炎の状態では、胃液の分泌が少ないかほとんどないため、できるだけ胃に負担をかけない食生活を心掛けることが大切です。1日3食を規則正しく摂取するようにして、脂っこいものなど消化の悪いものや、香辛料など刺激の強いものは控えめにします。
委縮性胃炎、腸上皮化生、化生性胃炎を持っている人は胃がん発症のリスクが高くなりますから、最低でも年に一度の内視鏡検査は必ず受けることも大切です。
たとえ胃がんが発生したとしても、早期発見ならば内視鏡による胃粘膜切除手術で、簡単に切除することができます。早期の胃がんの5年生存率は90パーセント以上と高くなっています。
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