■用語 多乳房症、多乳頭症 [用語(た行)]
乳腺ないし乳頭が3つ以上ある状態
多乳房症、多乳頭症とは、乳房の通常の存在部位である両側前胸部とは異なった部位に、乳腺(にゅうせん)組織、乳頭、乳輪が存在し、乳腺ないし乳頭が3つ以上ある状態。副乳腺、副乳頭とも呼ばれます。
これは生まれ付きのものであり、多乳房(副乳腺)、多乳頭(副乳頭)の多くは、わきの下や、通常の乳房の下内側に存在します。
多乳房、多乳頭の起源は、胎児期にあります。胎生6週ころに、両わきの下から乳頭、腹部の左右、ももの内側に至る乳腺提という表皮の堤状の肥厚ができ、この乳腺提に7~9対の乳腺元基という乳腺の基が現れます。胎生9週には、1対は通常の乳房になり、残りは退縮します。しかし、いくつかの乳腺元基が残って、発育することがあります。これが多乳房、多乳頭であり、乳腺提の線上のどこにでも発育する可能性があります。
そもそも、人間や象のような少産種のほ乳動物では、1対のみの乳房を発育させるのに対して、ネズミやイノシシのような多産種のほ乳動物では、前足の両わきの下から後ろ足の間に至る乳腺提の線上に、複数対の乳房を発育させます。人間も胎児期には、通常の乳房以外の部位に乳房を発育させる要素を持っているため、多乳房、多乳頭はそれほど異常な存在ではありません。
実際、左右ともに、あるいは片側だけに多乳房、多乳頭のある人は、女性の5パーセント、男性の2パーセントに認められるといわれています。
多乳房、多乳頭は不完全で退化した乳房であるため、外から見てわかる乳首、乳輪を備えていることは少なく、あっても気付かないこともあります。目立たないため、ほくろやいぼと認識されることも多く、乳腺提の線上に対になったほくろがある場合、多乳房症、多乳頭症の可能性もあります。
まれに乳腺が少し発育して膨らみを生じ、小さないぼ状の乳首を伴うことがあります。
女性が妊娠時に、わきの下に違和感を覚え、熱く感じたり、その部分の色が濃くなってきて、多乳房、多乳頭の存在に初めて気が付くことがしばしばあります。
乳腺組織が存在する場合、通常の乳腺と同様にホルモン分泌に反応するため、女性では生理前のホルモン分泌の多い黄体期に多乳房がはれてきたり、痛みを伴うことがまれにあります。
また、妊娠授乳期にも正常な乳腺と同様に乳腺も発育するため、乳汁(母乳)が出てくる産後3~4目ころからゴルフボールのようなしこりになって、はれたり、痛みを伴うことがあります。乳腺自体から乳汁が出てくることもありますが、多乳房には乳汁が出る乳口がないことも多いので、中に乳汁がたまって乳腺炎を起こすこともあります。
妊娠授乳期においてのはれ、痛みの多くは、一時的なものであり、間もなく自然に消失します。しかし、強い痛みが生じたり、痛みが持続することもあります。妊娠ごとに、はれ、痛みを繰り返し生じることもあります。
多乳房の乳腺がはれた場合は、局所を冷却し炎症を抑えることで少しずつ治めることができます。保冷剤をガーゼで包み、冷湿布することを何回か繰り返すと、はれも引き、しぼむような形になります。熱感がある場合は、洗面器の水にペパーミントの精油を5、6滴垂らし、おしぼりを数本入れて絞って冷蔵庫で保存、これで冷湿布することを何回か繰り返すと、かなり楽になるでしょう。
ちなみに、多乳房にできる乳がん(異所性乳がん)は極めてまれであり、乳がん全体の0・4パーセントほどの頻度で生じ、そのうち3分の2はわきの下にできます。また、乳房の痛みを伴う乳がんは、あまり多いものではありませんので、多乳房が痛んでも心配はいりません。
乳頭を備えていないけれど、わきの下に違和感を覚え、熱く感じたり、多乳房が異常に大きいようで心配な場合は、婦人科、産婦人科、あるいは乳腺科、乳腺外科を受診することが勧められます。
多乳房症、多乳頭症の検査と診断と治療
婦人科、産婦人科、あるいは乳腺科、乳腺外科の医師による診断では、わきの下のしこりが疾患によって生じていないかどうか検査します。
考えられるものとして、乳がん、リンパ腺(せん)の炎症、ほかの臓器のがんからの転移、リンパの悪性腫瘍(しゅよう)、汗腺や皮脂腺の疾患などがあり、多乳房(副乳腺)との見分けがつきにくい場合には、しこりの一部を採取して顕微鏡で調べる生検を行うこともあります。
婦人科、産婦人科、あるいは乳腺科、乳腺外科の医師による治療では、多乳房に強い痛みが生じたり、痛みが持続する場合、ホルモン剤を投与し、ホルモン分泌を抑えます。
多乳房に乳腺炎が起きた場合は、初期には冷湿布して、乳汁は注射針を刺して吸引した上、抗生物質を注射か内服で投与し、鎮痛消炎剤を内服で投与します。
多乳頭(副乳頭)だけの場合には、外科的手術でほくろやいぼを切除するような要領で切除して、皮膚を縫合することも可能です。
多乳房の場合には、皮膚切除に加えて乳腺もくり抜いて切除することも可能です。くり抜いた部分が陥没しないように修正して、皮膚を縫合します。通常の乳腺と多乳房の乳腺はつながっていないことがほとんどのため、外科的には乳房温存治療ができる可能性が高いといえます。
多乳房症、多乳頭症とは、乳房の通常の存在部位である両側前胸部とは異なった部位に、乳腺(にゅうせん)組織、乳頭、乳輪が存在し、乳腺ないし乳頭が3つ以上ある状態。副乳腺、副乳頭とも呼ばれます。
これは生まれ付きのものであり、多乳房(副乳腺)、多乳頭(副乳頭)の多くは、わきの下や、通常の乳房の下内側に存在します。
多乳房、多乳頭の起源は、胎児期にあります。胎生6週ころに、両わきの下から乳頭、腹部の左右、ももの内側に至る乳腺提という表皮の堤状の肥厚ができ、この乳腺提に7~9対の乳腺元基という乳腺の基が現れます。胎生9週には、1対は通常の乳房になり、残りは退縮します。しかし、いくつかの乳腺元基が残って、発育することがあります。これが多乳房、多乳頭であり、乳腺提の線上のどこにでも発育する可能性があります。
そもそも、人間や象のような少産種のほ乳動物では、1対のみの乳房を発育させるのに対して、ネズミやイノシシのような多産種のほ乳動物では、前足の両わきの下から後ろ足の間に至る乳腺提の線上に、複数対の乳房を発育させます。人間も胎児期には、通常の乳房以外の部位に乳房を発育させる要素を持っているため、多乳房、多乳頭はそれほど異常な存在ではありません。
実際、左右ともに、あるいは片側だけに多乳房、多乳頭のある人は、女性の5パーセント、男性の2パーセントに認められるといわれています。
多乳房、多乳頭は不完全で退化した乳房であるため、外から見てわかる乳首、乳輪を備えていることは少なく、あっても気付かないこともあります。目立たないため、ほくろやいぼと認識されることも多く、乳腺提の線上に対になったほくろがある場合、多乳房症、多乳頭症の可能性もあります。
まれに乳腺が少し発育して膨らみを生じ、小さないぼ状の乳首を伴うことがあります。
女性が妊娠時に、わきの下に違和感を覚え、熱く感じたり、その部分の色が濃くなってきて、多乳房、多乳頭の存在に初めて気が付くことがしばしばあります。
乳腺組織が存在する場合、通常の乳腺と同様にホルモン分泌に反応するため、女性では生理前のホルモン分泌の多い黄体期に多乳房がはれてきたり、痛みを伴うことがまれにあります。
また、妊娠授乳期にも正常な乳腺と同様に乳腺も発育するため、乳汁(母乳)が出てくる産後3~4目ころからゴルフボールのようなしこりになって、はれたり、痛みを伴うことがあります。乳腺自体から乳汁が出てくることもありますが、多乳房には乳汁が出る乳口がないことも多いので、中に乳汁がたまって乳腺炎を起こすこともあります。
妊娠授乳期においてのはれ、痛みの多くは、一時的なものであり、間もなく自然に消失します。しかし、強い痛みが生じたり、痛みが持続することもあります。妊娠ごとに、はれ、痛みを繰り返し生じることもあります。
多乳房の乳腺がはれた場合は、局所を冷却し炎症を抑えることで少しずつ治めることができます。保冷剤をガーゼで包み、冷湿布することを何回か繰り返すと、はれも引き、しぼむような形になります。熱感がある場合は、洗面器の水にペパーミントの精油を5、6滴垂らし、おしぼりを数本入れて絞って冷蔵庫で保存、これで冷湿布することを何回か繰り返すと、かなり楽になるでしょう。
ちなみに、多乳房にできる乳がん(異所性乳がん)は極めてまれであり、乳がん全体の0・4パーセントほどの頻度で生じ、そのうち3分の2はわきの下にできます。また、乳房の痛みを伴う乳がんは、あまり多いものではありませんので、多乳房が痛んでも心配はいりません。
乳頭を備えていないけれど、わきの下に違和感を覚え、熱く感じたり、多乳房が異常に大きいようで心配な場合は、婦人科、産婦人科、あるいは乳腺科、乳腺外科を受診することが勧められます。
多乳房症、多乳頭症の検査と診断と治療
婦人科、産婦人科、あるいは乳腺科、乳腺外科の医師による診断では、わきの下のしこりが疾患によって生じていないかどうか検査します。
考えられるものとして、乳がん、リンパ腺(せん)の炎症、ほかの臓器のがんからの転移、リンパの悪性腫瘍(しゅよう)、汗腺や皮脂腺の疾患などがあり、多乳房(副乳腺)との見分けがつきにくい場合には、しこりの一部を採取して顕微鏡で調べる生検を行うこともあります。
婦人科、産婦人科、あるいは乳腺科、乳腺外科の医師による治療では、多乳房に強い痛みが生じたり、痛みが持続する場合、ホルモン剤を投与し、ホルモン分泌を抑えます。
多乳房に乳腺炎が起きた場合は、初期には冷湿布して、乳汁は注射針を刺して吸引した上、抗生物質を注射か内服で投与し、鎮痛消炎剤を内服で投与します。
多乳頭(副乳頭)だけの場合には、外科的手術でほくろやいぼを切除するような要領で切除して、皮膚を縫合することも可能です。
多乳房の場合には、皮膚切除に加えて乳腺もくり抜いて切除することも可能です。くり抜いた部分が陥没しないように修正して、皮膚を縫合します。通常の乳腺と多乳房の乳腺はつながっていないことがほとんどのため、外科的には乳房温存治療ができる可能性が高いといえます。
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