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■父母と別の女性3人の遺伝子を受け継ぐ子供が誕生 アメリカのクリニックが実施 [健康ダイジェスト]

 3人の遺伝子を受け継ぐ新たな体外受精の技術を使って男の新生児が生まれたと、アメリカの不妊治療クリニックのチームが27日、イギリスの科学誌「ニューサイエンティスト」で明らかにしました。10月に開かれるアメリカの生殖医学会の大会で発表するといいます。
 生殖医学会の大会の発表要旨によると、アメリカのニューヨークにある不妊治療クリニックに所属するジョン・ザン医師らのチームが、重い遺伝性の病気「ミトコンドリア病」の36歳の母親の卵子から核を取り出し、あらかじめ核を取り除いた第三者の女性の卵子に入れた後、父親の精子と体外受精させました。5つの受精卵のうち、正常に育った1つを母親の子宮に戻しました。
 ニューサイエンティスト誌によると、体外受精はメキシコで行われ、今年4月に男児が誕生し、順調に育っているといいます。同誌は、男児を抱いたザン医師の写真を掲載しました。アメリカでは認められていないため、ザン医師は「規制のないメキシコで実施した」と述べています。こうした手法で健康な新生児が生まれたのは、世界で初めてとみられます。
 細胞内小器官であるミトコンドリアは、細胞の核とは別に独自のDNAを持ちます。核DNAは両親のものが子供に遺伝しますが、ミトコンドリアDNAは母親のものだけが受け継がれます。今回の手法を使った場合、核DNAは両親から、ミトコンドリアDNAは卵子提供者からそれぞれ受け継がれるため、遺伝的に「3人の親」を持つことになります。
 ミトコンドリアは細胞内でエネルギーのもとになる物質をつくる働きをしており、ミトコンドリアに異常があると、神経や筋肉に障害が出ることがあります。この母親も以前に、2人の子供をミトコンドリアの働きが低下することで起きるミトコンドリア病で亡くしているといいます。
 今回の手法を使うと、理論的には母親のミトコンドリアが受け継がれないため、ミトコンドリア病の予防につながります。ニューサイエンティスト誌によると、男児のミトコンドリアDNAに今のところ異常はみられないものの、今後も注視する必要があるとしています。
 この手法を巡っては、昨年2月にイギリスで臨床応用が承認されました。アメリカでも今年2月、有識者のアカデミーが臨床試験で実施することに倫理的に大きな問題はないとする答申をまとめています。ただ、将来に及ぶ安全面の不安や倫理上の懸念から、反対意見や慎重論もあります。
 東京大学の神里彩子特任准教授(生命倫理政策)は、「実用化に向けて議論が進んでいるイギリスでも、まだ科学的な安全性の検証が続いている中で、長期のフォローアップや出自を知る権利などの体制があいまいなまま実施されたのではないかと疑問に感じる。これが前例となり世界に影響が出ることが心配される。日本でも生殖の技術に関する規制を議論していく必要がある」と話しています。

 2016年9月28日(水)

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