■用語 QT短縮症候群 [用語(A〜Z、数字)]
突然、脈が乱れて不整脈発作や失神発作を起こし、突然死に至ることが、まれにある疾患
QT短縮症候群とは、突然、脈が乱れる不整脈発作や失神発作を起こしたり、時には突然死に至ることがまれにあり得る疾患。SQTS(Short QTSyndrome)とも呼ばれます。
医療機関において、心臓の動きをコントロールしている電気刺激の変化を記録する心電計で検査をすると、心電図に現れるQTと呼ばれる波形の部分の間隔(QT時間)が、正常な状態の心臓に比べて短くなることから、この疾患名が付けられています。
QT短縮症候群には、生まれ付き、または明らかな原因のない先天性(遺伝性)QT短縮症候群と、何らかの原因があって引き続き発症する後天性(二次性)QT短縮症候群とがあります。
先天性QT短縮症候群は、極めてまれな遺伝性の疾患で、正確な発生頻度は明らかになっていません。症状には個人差が大きく、遺伝子に異常があっても必ずしも不整脈発作の症状が現れるとは限りません。
心臓は収縮と弛緩(しかん)を絶えず繰り返していますが、この先天性QT短縮症候群では、心臓の筋肉である心筋細胞が収縮して全身に血液を送り出した後、収縮前の状態に戻る時間が通常よりも短縮するために、心筋細胞が過敏になって不整脈発作が起こりやすくなります。
先天性QT短縮症候群の原因は、心筋細胞にあるイオンチャネルと呼ばれる経路の異常です。心臓が規則正しく収縮と弛緩を繰り返すには、心臓の上部にある洞結節(どうけっせつ)と呼ばれる部分が1分間に60~80回発生させている電気刺激が正しく伝えられることが、重要になります。電気刺激を正しく伝えるため、心筋細胞はイオンチャネルという経路を使ってナトリウムやカリウム、カルシウムなどのイオンを出し入れしていますが、このイオンチャネルが正常に働かなくなり、電気刺激が正しく伝えられなくなると、脈が乱れる不整脈発作が起きやすくなります。
イオンチャネルの異常は、イオンチャネルを作る際に使った設計図の誤り、すなわち遺伝子の異常で起こります。先天性QT短縮症候群では、これまでに6個の原因遺伝子が報告されています。最も多いQT短縮症候群1型(SQT1)の遺伝子の異常は25%程度に認められるとされていますが、そのほかの原因遺伝子の検出頻度は低くなります。
また、先天性QT短縮症候群の遺伝子異常は、常染色体優性遺伝の形式をとり、子孫に代々受け継がれて家族性に発症する場合もありますが、家族には認めずに本人にのみ遺伝子異常が出現する場合もあります。
一方、後天性QT短縮症候群は、高カリウム血症や高カルシウム血症などによって生じる電解質異常が原因となって、元々は正常範囲内であったQT時間が短縮して発症することがあります。また、抗生物質や抗ヒスタミン剤、抗不整脈薬や向精神薬といった薬物の使用や、ほかの疾患による発熱などが誘因となって、QT時間が短縮して発症することもあります。
無症状の場合もありますが、まれに心室頻拍や心室細動などの不整脈が発生して失神したり、心停止や突然死に至ったりすることもあります。症状が起こる可能性は、小児から成人のあらゆる年齢層にあります。
一度でも心停止を起こしたことがある場合、失神または不整脈が出現している場合、家族に同様の発症者がいる場合は、リスクが高いことが予想され、小児循環器科、循環器科などの不整脈の専門医を受診し、適切な検査と治療を受けることが勧められます。
QT短縮症候群の検査と診断と治療
小児循環器科、循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による診断では、QT短縮症候群であるかどうか、もしQT短縮症候群であれば先天性、後天性のいずれであるか、先天性ならどのような型の遺伝子異常があるか、また現在危険な状態にあるかどうかなどについて、各種の検査を行います。
不整脈発作や失神発作の既往歴、家族歴などからQT短縮症候群が疑われた場合は、心電図でQT時間の短縮を確認します。QT時間で280~300ms(ミリ秒)以下、心拍数で補正したQTc時間(補正QT時間)で300~320ms(ミリ秒)以下がQT短縮とされていますが、QTc時間(補正QT時間)が330ms(ミリ秒)以下の場合は、QT短縮症候群である可能性が高くなります。
検査の際に、運動や薬剤による負荷をかけることで、QT時間の短縮がよりはっきりすることがあります。遺伝子診断は、治療薬の選択や適切な生活指導のために有効ですが、症状を伴うQT短縮症候群でも現状、遺伝子診断率は低くなっています。
小児循環器科、循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による治療では、無症状で家族に同様の発症者がいない場合、家族に突然死した人がいない場合は、経過観察を行います。
心室頻拍や心室細動が出現した場合、原因不明な失神を繰り返している場合、家族に同様の発症者がいたり突然死した人がいる場合は、植え込み型除細動器(ICD)を植え込むことがあります。また、一度でも心停止を起こしたことがある場合も、植え込み型除細動器(ICD)を植え込みことが第一選択の治療法となります。
植え込み型除細動器(ICD)は、致命的な不整脈が起きても、それを自動的に感知して止めてしまう装置で、通常、左の胸部に植え込みます。鎖骨下の静脈に沿ってリード線を入れ、心臓の内壁に固定します。
QT時間を延長させる薬がいくつかあり、抗不整脈薬であるキニジンの内服、ニフェカラントやジソピラミドの点滴静脈注射を行うこともありますが、QT時間を安定して延長することはできません。
後天性QT短縮症候群の場合は、電解質異常や薬剤の内服などの原因があるので、それらを取り除くとQT短縮が延長して正常化し、症状はよくなります。
QT短縮症候群とは、突然、脈が乱れる不整脈発作や失神発作を起こしたり、時には突然死に至ることがまれにあり得る疾患。SQTS(Short QTSyndrome)とも呼ばれます。
医療機関において、心臓の動きをコントロールしている電気刺激の変化を記録する心電計で検査をすると、心電図に現れるQTと呼ばれる波形の部分の間隔(QT時間)が、正常な状態の心臓に比べて短くなることから、この疾患名が付けられています。
QT短縮症候群には、生まれ付き、または明らかな原因のない先天性(遺伝性)QT短縮症候群と、何らかの原因があって引き続き発症する後天性(二次性)QT短縮症候群とがあります。
先天性QT短縮症候群は、極めてまれな遺伝性の疾患で、正確な発生頻度は明らかになっていません。症状には個人差が大きく、遺伝子に異常があっても必ずしも不整脈発作の症状が現れるとは限りません。
心臓は収縮と弛緩(しかん)を絶えず繰り返していますが、この先天性QT短縮症候群では、心臓の筋肉である心筋細胞が収縮して全身に血液を送り出した後、収縮前の状態に戻る時間が通常よりも短縮するために、心筋細胞が過敏になって不整脈発作が起こりやすくなります。
先天性QT短縮症候群の原因は、心筋細胞にあるイオンチャネルと呼ばれる経路の異常です。心臓が規則正しく収縮と弛緩を繰り返すには、心臓の上部にある洞結節(どうけっせつ)と呼ばれる部分が1分間に60~80回発生させている電気刺激が正しく伝えられることが、重要になります。電気刺激を正しく伝えるため、心筋細胞はイオンチャネルという経路を使ってナトリウムやカリウム、カルシウムなどのイオンを出し入れしていますが、このイオンチャネルが正常に働かなくなり、電気刺激が正しく伝えられなくなると、脈が乱れる不整脈発作が起きやすくなります。
イオンチャネルの異常は、イオンチャネルを作る際に使った設計図の誤り、すなわち遺伝子の異常で起こります。先天性QT短縮症候群では、これまでに6個の原因遺伝子が報告されています。最も多いQT短縮症候群1型(SQT1)の遺伝子の異常は25%程度に認められるとされていますが、そのほかの原因遺伝子の検出頻度は低くなります。
また、先天性QT短縮症候群の遺伝子異常は、常染色体優性遺伝の形式をとり、子孫に代々受け継がれて家族性に発症する場合もありますが、家族には認めずに本人にのみ遺伝子異常が出現する場合もあります。
一方、後天性QT短縮症候群は、高カリウム血症や高カルシウム血症などによって生じる電解質異常が原因となって、元々は正常範囲内であったQT時間が短縮して発症することがあります。また、抗生物質や抗ヒスタミン剤、抗不整脈薬や向精神薬といった薬物の使用や、ほかの疾患による発熱などが誘因となって、QT時間が短縮して発症することもあります。
無症状の場合もありますが、まれに心室頻拍や心室細動などの不整脈が発生して失神したり、心停止や突然死に至ったりすることもあります。症状が起こる可能性は、小児から成人のあらゆる年齢層にあります。
一度でも心停止を起こしたことがある場合、失神または不整脈が出現している場合、家族に同様の発症者がいる場合は、リスクが高いことが予想され、小児循環器科、循環器科などの不整脈の専門医を受診し、適切な検査と治療を受けることが勧められます。
QT短縮症候群の検査と診断と治療
小児循環器科、循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による診断では、QT短縮症候群であるかどうか、もしQT短縮症候群であれば先天性、後天性のいずれであるか、先天性ならどのような型の遺伝子異常があるか、また現在危険な状態にあるかどうかなどについて、各種の検査を行います。
不整脈発作や失神発作の既往歴、家族歴などからQT短縮症候群が疑われた場合は、心電図でQT時間の短縮を確認します。QT時間で280~300ms(ミリ秒)以下、心拍数で補正したQTc時間(補正QT時間)で300~320ms(ミリ秒)以下がQT短縮とされていますが、QTc時間(補正QT時間)が330ms(ミリ秒)以下の場合は、QT短縮症候群である可能性が高くなります。
検査の際に、運動や薬剤による負荷をかけることで、QT時間の短縮がよりはっきりすることがあります。遺伝子診断は、治療薬の選択や適切な生活指導のために有効ですが、症状を伴うQT短縮症候群でも現状、遺伝子診断率は低くなっています。
小児循環器科、循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による治療では、無症状で家族に同様の発症者がいない場合、家族に突然死した人がいない場合は、経過観察を行います。
心室頻拍や心室細動が出現した場合、原因不明な失神を繰り返している場合、家族に同様の発症者がいたり突然死した人がいる場合は、植え込み型除細動器(ICD)を植え込むことがあります。また、一度でも心停止を起こしたことがある場合も、植え込み型除細動器(ICD)を植え込みことが第一選択の治療法となります。
植え込み型除細動器(ICD)は、致命的な不整脈が起きても、それを自動的に感知して止めてしまう装置で、通常、左の胸部に植え込みます。鎖骨下の静脈に沿ってリード線を入れ、心臓の内壁に固定します。
QT時間を延長させる薬がいくつかあり、抗不整脈薬であるキニジンの内服、ニフェカラントやジソピラミドの点滴静脈注射を行うこともありますが、QT時間を安定して延長することはできません。
後天性QT短縮症候群の場合は、電解質異常や薬剤の内服などの原因があるので、それらを取り除くとQT短縮が延長して正常化し、症状はよくなります。
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