SSブログ

■日本初となる便秘のガイドラインがまとまる 「慢性便秘の診断・治療研究会」が作成 [健康ダイジェスト]

 消化器内科医らで組織する「慢性便秘の診断・治療研究会」が、日本初となる医療機関向けの「慢性便秘症診療ガイドライン(指針)」をまとめました。
 日本だけで用いられ、「ガラパゴス化」していた便秘の分類を、国際基準に合わせて変更しました。薬が有効でない便秘や、食物繊維の摂取で悪化する便秘などへの適切な対応が可能になります。
 現状で慢性便秘は、便を送り出す力が低下する「弛緩(しかん)性」と、ストレスが原因の「けいれん性」、肛門や直腸の働きに異常がある「直腸性」に分類されます。便の回数や量が少ないと医師が診ると、弛緩性と診断されることが多く、下剤の必要がない患者にも薬が処方され、副作用が問題になることもありました。
 今回作成されたガイドラインは、排便が少なくなる排便回数減少型と、肛門の動きや、肛門に近い直腸自体に原因がある排便困難型に分類。2つの型はさらに2つのタイプに分かれ、それぞれ治療法が異なります。
 まず、排便回数減少型は、食事の内容や量が便秘の要因になっている大腸通過正常型と、腸管の動きが悪く便が腸内に滞りがちな大腸通過遅延型があります。
 大腸通過正常型の多くは、食物繊維や食事の量を増やすと改善します。反対に大腸通過遅延型は、食物繊維を増やすとさらに便秘が悪化する恐れがあり、治療には排便を促す下剤を使います。
 どちらのタイプか正確に見極めるには、専門の検査が必要で、20個の小さなバリウムの粒を含む検査薬を服用し、5日後に腹部のエックス線検査を受けます。4個以上が大腸に残っていれば大腸通過遅延型、3個以下なら大腸通過正常型と診断します。ただし、この検査は健康保険が使えず、一部の医療機関が研究として、患者から料金を取らずに行っています。
 ガイドライン作成に携わった指扇(さしおうぎ)病院(さいたま市)の排便機能センター長、味村俊樹さんは、「この検査は正確な診断と適切な治療につながり、患者の体への負担も少ない。早急な保険適用を求めたい」と話しています。
 下剤の選択も、新しい指針で大きく変わりました。下剤は現状で、腸管を刺激して動きをよくする刺激性下剤が多く使われています。しかし、腹痛などの副作用が起こりやすく、島根大学第2内科教授の木下芳一さんは「指針では、高齢者に使いやすい非刺激性下剤の推奨度がより高くなっている」と話しています。
 非刺激性下剤は、水分で便を軟らかくして排出を促します。代表的な薬は酸化マグネシウムですが、腎機能低下があるとマグネシウムが十分に排出されず、体に悪影響が出ます。そこで、腎機能が低下した高齢者らには、近年発売されたマグネシウムを含まない非刺激性下剤の使用が推奨されています。
 排便困難型には、手術が必要なタイプがあります。器質性便排出障害は、直腸が女性器の膣(ちつ)側に膨らむ直腸瘤(りゅう)などが原因で、手術で直腸を元に近い形に戻します。
 もう一方のタイプの機能性便排出障害は、排便しようと息むと逆に肛門が締まったり、肛門近くの直腸の感覚が鈍ったりしているのが便秘の元になっています。これには、肛門の力の入り具合をモニターで見ながら締めたり緩めたりするバイオフィードバック療法や、直腸内で膨らませたバルーンを排出する訓練などの治療法が行われます。
 厚生労働省の国民生活基礎調査(2013年)によると、便秘に悩む人は60歳までは男性よりも女性が多いものの、加齢とともに男性の有病率も増加し、80歳以上では男性が女性を上回ります。高齢化が進む中、日本の便秘「患者」は1000万人以上いるとみられています。
 ガイドライン作成に携わった横浜市立大大学院医学研究科・肝胆膵消化器病学教室の中島淳教授は、「『便秘なんてたいしたことない』と思う人も多いが、とんでもない。中でも高齢者の便秘は、命にかかわることが最近の研究でわかってきた。また、ただの便秘と思っていたら、実際は大腸がんなどの病気が隠れていることもある。高齢化の進展で便秘患者はさらに増えるとみられるだけに、診断・治療体制を整える必要があった」と説明しています。
 特に最近、医療機関で問題となっているのが「宿便性腸穿孔(せんこう)」の患者の増加で、これは便秘で硬くなった便が原因で腸に穴が開く病気。かつてはごくまれにしかみられませんでしたが、高齢者の便秘の増加で多くの病院で対応を迫られるようになっているといいます。
 今回作成されたガイドラインは、「便秘」を「本来なら体外に排出すべき糞(ふん)便を、十分量かつ快適に排出できない状態」と定義。その上で、「大腸がんなどの病気による大腸の形態的変化を伴わないもので、排便困難や残便感があって困っている場合治療が必要だ」とし、「週に3回程度の排便でも、腹痛や腹部膨満感、残便感などがなければ問題はない」としています。

 2017年12月2日(土)

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:健康

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。