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■他人の間葉系幹細胞を使う再生治療薬、膝の軟骨向け治験開始 ツーセルと中外製薬 [健康ダイジェスト]

 広島大学発の創薬ベンチャー、ツーセル(広島市南区)は、膝の軟骨を再生する細胞治療薬の臨床試験(治験)を始めました。別の人の細胞を使う中外製薬との共同開発で、患者の細胞を採取・培養するよりもコストや時間がかかりません。
 1年間かけて北海道や福岡県、大阪府、千葉県などの病院で70症例を手掛け、2019年中に国内での製造販売の承認を取得し、2020年の発売を目指します。
 新薬の製品化に向けた治験は、大きく3段階に分かれます。今回、ツーセルが行うのは第3相(フェーズ3)の治験で、多数の患者を対象にして、新薬の安全性や効用について既存の治療方法などと比較します。
 11月末に、膝の軟骨を再生する細胞治療薬の第3相治験で、最初の患者の手術が実施されました。今後、提携する各地の病院と連携し、新薬を使った手術と比較対象となる治療法を合わせて70症例実施します。治験の対象となるのは、外傷性軟骨損傷や離断性骨軟骨炎の患者。治療後、1年間の経過観察をして審査します。治験が順調に進めば、最短で2020年ごろに国内での販売にこぎ着けます。
 国内の再生医療製品の実用化例は現在、患者自身の細胞から培養した細胞を使う「自家移植」のものしかありません。ツーセルの再生医療製品は、他人の細胞から培養した間葉系幹細胞(MSC)を使う「他家移植」での実用化を目指しています。あらかじめ培養しておいた他人由来の細胞を使う場合、自家移植と比べ費用や手術にかかる時間も大幅に短縮できます。ツーセルの技術では、1人の細胞から1000人から1万人分のMSCを作製できる可能性があるといいます。
 一方、他人の細胞を移植した場合は、体内から取り除こうとする「拒絶反応」が懸念されます。ツーセルでは、血清を使わずにMSCを培養するなど研究を重ね、拒絶反応が起きにくいMSCを供給する技術を整えています。
 ツーセルは2003年の設立で、今回治験に入った膝の軟骨を再生する細胞治療薬は初の製品化となる可能性があります。製品化となった場合は、量産化のための工場を広島県内に建設する方針。
 MSCを活用した再生医療の裾野拡大も進めます。大塚製薬からも出資を受けており、脳梗塞を含む中枢神経疾患領域の研究開発にも着手しています。
 間葉系幹細胞(MSC)は、人の骨髄や脂肪、滑膜(関節周囲の膜)などに含まれる細胞で、骨、軟骨、脂肪、神経などへ分化する能力を持っていて、最近では神経や腎臓(じんぞう)、膵臓(すいぞう)などにも分化できる能力を持つことがわかってきました。ES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞(人工多能性幹細胞)のようにどんな細胞にも分化するわけではありませんが、細胞のがん化リスクが低いなどのメリットもあります。

 2017年12月3日(日)

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