■東京医科歯科大など、非アルコール性脂肪肝炎の経過再現に成功 治療法確立へ前進 [健康ダイジェスト]
東京医科歯科大学や九州大学、名古屋大学などの研究チームは、短期間で動物に「非アルコール性脂肪肝炎(NASH=ナッシュ)」を発症させる経過再現に成功しました。発症メカニズムが不明で治療も難しいNASHの病態解明を始め、検査や治療法の確立、創薬に向けての一歩として注目されています。
アルコールを全く飲まない人や、少しだけ飲むという人にもアルコール性肝障害に類似した脂肪性肝障害がみられる非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)が進行し、肝臓に炎症や線維化がみられるNASHは、肥満や糖尿病、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)などが背景にあります。脂肪肝の約10%がNASHに移行、さらに約10%が肝硬変や肝がんを発症すると考えられています。
患者数は増加傾向にあり、国内に約100〜200万人の発症者がいると推定されている一方、脂肪肝からNASHへの進行過程は未解明で、確定診断には肝臓の一部を採取する肝生検が必要になるなど体の負担も大きくなります。早期発見の手掛かりとなるバイオマーカーもなく、治療法も確立されていません。
NASHの病態解明に取り組むのは、九州大・小川佳宏教授(兼東京医科歯科大教授)と名古屋大・菅波孝祥教授らの研究チーム。研究では、約1週間でNASHを発症するマウスの開発に成功しました。その過程で、異物を捕食する白血球の一種である「マクロファージ」が作り出す微小環境が、肝臓の線維化を促進していることがわかりました。
これまでのマウスでは、NASHの病変を見るためには約20週間が必要でした。今回は、脂肪肝を発症させたマウスに、肝臓の線維化を起こす少量の肝障害性薬剤を投与。すると、約1週間でNASHの病変を再現できたといいます。
小川教授は、「NASHは5~10年をかけて進行する。その状態を研究で再現することは困難だった。短期間で病変を見ることができ、スピード感のある研究が可能になる」と指摘しています。
一連の研究から、異物を捕食するマクロファージが作り出す環境が、脂肪肝からNASHに進行する分岐点になっている可能性も浮かび上がりました。肝臓に脂肪が蓄積することで肝細胞が細胞死に陥り、肝臓に常在しているマクロファージが周辺を取り囲みます。そして、死滅した細胞を処理するためにhCLS(王冠様構造)と呼ばれる正常な組織にはない特徴的な微小環境を作り出し、周辺を線維化していきます。
小川教授は、「線維化は本来は細胞を再生させる修復反応だが、食生活や加齢など、さまざまな要因から線維化が収束しないとNASHにつながっていく」と分析しています。
脂肪肝は生活習慣の見直しなどによって、健康な状態に戻していくことが可能ですが、NASHの進行が始まると現状では食い止めるのが困難。その分岐点として、hCLS形成という現象が注目されています。
小川教授は、「NASHへの進行過程はブラックボックスだった。今回の発見は解明に向けた一つの手掛かり。病態を把握することで、早期発見や効果的治療方法の確立、薬の開発につなげていきたい」と話しています。
研究成果は、国際科学誌「JCIインサイト」オンライン版で発表されています。
2017年12月5日(火)
アルコールを全く飲まない人や、少しだけ飲むという人にもアルコール性肝障害に類似した脂肪性肝障害がみられる非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)が進行し、肝臓に炎症や線維化がみられるNASHは、肥満や糖尿病、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)などが背景にあります。脂肪肝の約10%がNASHに移行、さらに約10%が肝硬変や肝がんを発症すると考えられています。
患者数は増加傾向にあり、国内に約100〜200万人の発症者がいると推定されている一方、脂肪肝からNASHへの進行過程は未解明で、確定診断には肝臓の一部を採取する肝生検が必要になるなど体の負担も大きくなります。早期発見の手掛かりとなるバイオマーカーもなく、治療法も確立されていません。
NASHの病態解明に取り組むのは、九州大・小川佳宏教授(兼東京医科歯科大教授)と名古屋大・菅波孝祥教授らの研究チーム。研究では、約1週間でNASHを発症するマウスの開発に成功しました。その過程で、異物を捕食する白血球の一種である「マクロファージ」が作り出す微小環境が、肝臓の線維化を促進していることがわかりました。
これまでのマウスでは、NASHの病変を見るためには約20週間が必要でした。今回は、脂肪肝を発症させたマウスに、肝臓の線維化を起こす少量の肝障害性薬剤を投与。すると、約1週間でNASHの病変を再現できたといいます。
小川教授は、「NASHは5~10年をかけて進行する。その状態を研究で再現することは困難だった。短期間で病変を見ることができ、スピード感のある研究が可能になる」と指摘しています。
一連の研究から、異物を捕食するマクロファージが作り出す環境が、脂肪肝からNASHに進行する分岐点になっている可能性も浮かび上がりました。肝臓に脂肪が蓄積することで肝細胞が細胞死に陥り、肝臓に常在しているマクロファージが周辺を取り囲みます。そして、死滅した細胞を処理するためにhCLS(王冠様構造)と呼ばれる正常な組織にはない特徴的な微小環境を作り出し、周辺を線維化していきます。
小川教授は、「線維化は本来は細胞を再生させる修復反応だが、食生活や加齢など、さまざまな要因から線維化が収束しないとNASHにつながっていく」と分析しています。
脂肪肝は生活習慣の見直しなどによって、健康な状態に戻していくことが可能ですが、NASHの進行が始まると現状では食い止めるのが困難。その分岐点として、hCLS形成という現象が注目されています。
小川教授は、「NASHへの進行過程はブラックボックスだった。今回の発見は解明に向けた一つの手掛かり。病態を把握することで、早期発見や効果的治療方法の確立、薬の開発につなげていきたい」と話しています。
研究成果は、国際科学誌「JCIインサイト」オンライン版で発表されています。
2017年12月5日(火)
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