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■炎症を引き起こす活性酸素を除去できるマイクロマシンを開発 産業技術総合研究所  [健康ダイジェスト]

 産業技術総合研究所(産総研、茨城県つくば市)は、3種類のタンパク質だけからなり、炎症を引き起こす過剰な活性酸素を除去できる高機能なマイクロマシン(微小機械)を開発したと発表しました
 このマイクロマシン開発は、産総研バイオメディカル研究部門の山添泰宗主任研究員によるものです。
 血管や臓器の中で働くナノマシンやマイクロマシンを使って、病気の診断、病変部への薬の投与、有害物質の除去などを行う治療法が期待を集めています。体内で働くナノマシンやマイクロマシンは、安全性の高い素材で作られ、また、役割を終えた後には体内で分解されてなくなるのが理想的です。タンパク質は、生体適合性や生分解性があり、また、結合、触媒、伝達、輸送など多岐にわたる機能を持つので、素材として有望ですが、多くのタンパク質は非常に繊細であり、少しの刺激によって容易にその立体構造が壊れて機能も失われます。この取り扱いの困難さのために、複数のタンパク質を部品として、乾燥状態にも耐えられる強さと高度な機能を備えたナノマシンやマイクロマシンを組み立てることは困難でした。
 産総研では、今回、異なる機能を持つ血清アルブミン、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)、抗体という3種類のタンパク質を組み合わせて、過剰な活性酸素を除去できるタンパク質だけからなるマイクロマシンの開発に取り組みました。
 まず、抗原・抗体反応を利用して基板上に抗体を規則正しく並べ、これを血清アルブミンなどで構成されるマイクロマシンの本体部分に組み込みました。水に不溶性のマイクロマシンを作るために化学処理が必要ですが、タンパク質の構造が破壊されないように、架橋剤を用いた化学処理の反応条件を最適化しました。また、反応液に安定剤を加えて、乾燥工程でのタンパク質の構造破壊を防止しました。なお、安定剤はすべて、マイクロマシン作製後に溶出させて取り除くことができます。
 このマイクロマシンは、熱、pH変化、乾燥の外部刺激に対して高い安定性を示し、直径約100µm、中央部で約170nmと薄く、外周部で約740nmと厚い円形の薄いシート状となりました。
 このマイクロマシンを、活性酸素を分泌する細胞と混合したところ、マイクロマシンは、表面に組み込まれている抗体の働きにより良好に細胞を捕捉できることがわかりました。マイクロマシンに捕捉された細胞から周囲に分泌された活性酸素の量を測定したところ、フリーの状態の細胞に比べて70%減少することがわかりました。また、薬剤結合マイクロマシンは、薬剤を周囲に放出することで、捕捉していないものの近くにある細胞についても活性酸素の生成を著しく抑制できることもわかりました。
 今回、天然素材で安全性の高いタンパク質を使って、高度な機能を備えたマイクロマシンを構築できることが実証されたため、タンパク質を使った安全・安心・高機能な医療用デバイス(医療用具)の開発が進むと期待されます。
 産総研は今後、炎症性サイトカインに結合する抗体などを組み込んで、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性疾患の治療に役立つマイクロマシンを開発するとしています。また、今回開発した作製手法をバイオセンサーやウェアラブルデバイスなどのデバイス開発にも応用していくということです。

 2017年12月9日(土)

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