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■インフルエンザ、飛沫や接触でない空気感染のリスクも  アメリカのメリーランド大学が報告 [健康ダイジェスト]

 インフルエンザ感染者が普通に呼吸するだけでも、ウイルスは周囲に拡散し、同じ室内にいる人に「空気感染」してしまう可能性が予想以上に高いことが、アメリカのメリーランド大学の研究で判明しました。
 インフルエンザの主な感染経路に関してはこれまで、感染者の咳(せき)やくしゃみとともに飛び散ったウイルスを含むしぶきを吸い込むことで感染する「飛沫(ひまつ)感染」か、ウイルスが付着したものを触った手指を介して感染する「接触感染」のいずれかによって広まると考えられていました。
 しかし、このほどメリーランド大学のドナルド・ミルトン教授(環境衛生学)らの研究者が行った研究で、インフルエンザの感染者が咳やくしゃみをしていなくても、その吐く息を吸い込んだだけで空気感染が起こる可能性が指摘されました。感染者の吐く息に含まれる微細な粒子にも感染性のあるウイルスが含まれいるために、直接患者の咳やくしゃみを浴びなくても、同じ室内にいるだけでも、感染が起こり得るといいます。
 研究者たちは今回、インフルエンザが疑われる若者355人を選び出し、呼気の中に排出されるインフルエンザウイルスの量と感染力を調べました。
 355人のうち、インフルエンザと診断され、発症から3日以内に鼻の粘膜から標本(鼻咽頭スワブ)が採取されていて、同時に30分間の呼気も提出していた142人を分析対象にしました。142人の年齢の中央値は20歳、男性が49%で、89人がA型、50人はB型、3人は両方の型に感染していました。これらの患者は、発症から3日以内に計218回受診して、標本の提出に協力していました。
 計218回の受診のうち、195回(89%)の受診では1回以上の咳が観察されていましたが、くしゃみが観察されたのは11回(5%)のみでした。多くの患者は、咳、鼻水などの「上気道症状」は軽症から中等症で、全身症状は中等症から重症、痰(たん)、気管支炎などの「下気道症状」は軽症だと報告していました。
 呼気の採取は、自由に話したり、咳やくしゃみをしたりする中で30分間行いました。呼気標本は、空気感染の原因となる「飛沫核」と同じ大きさの直径5μm以下の微細粒子が含まれる標本と、飛沫感染の原因となる「飛沫」と同じ大きさの直径5μm超の粗大粒子を含む標本に分けました。
 標本中にインフルエンザのウイルスRNAが存在するかどうかを調べたところ、微細粒子の標本の76%、粗大粒子の標本の40%、鼻咽頭スワブ標本の97%が陽性でした。さらに、感染性を持つインフルエンザウイルスの存在を調べたところ、微細粒子標本の39%と鼻咽頭スワブ標本の89%が陽性でした。
 微細粒子の標本中にウイルスRNAが存在することと関係していた要因は、「呼気採取中の30分間に出た咳の回数」「上気道症状あり」「症状発現から経過した日数が少ないこと」などでした。つまり、咳や鼻水などの上気道症状が出ていて、発症早期のインフルエンザ患者ほど、呼気中にウイルスが含まれていて空気感染を起こす可能性が高いということが考えられます。
 なお、呼気採取中に、くしゃみはまれにしかみられておらず、感染性のある微細粒子の産生にくしゃみは必須ではないと考えられました。
 ミルトン教授はプレス資料で、「インフルエンザ感染者が咳やくしゃみをしなくても、普通に呼吸をするだけでも、周囲の空気にウイルスが放出されるという現象が判明した。であるならば、感染者が職場や学校に出てくる例に関してはこれまで以上の注意が必要だろう。周囲への感染を防ぐという優先度からも、職場や学校にはとどまらせず、即座に帰宅してもらうべきだろう」、「我々がさらに強調したいのは、今回の研究成果をぜひ企業や教育関係施設、あるいは通勤・通学車内の換気システム改善などを通じたインフルエンザ予防策として、その向上に活かしてほしいという点である」と述べています。
 メリーランド大学の研究論文は、2018年1月18日付のアメリの「科学アカデミー紀要」(電子版)に掲載されました。

 2018年2月27日(火)

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