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■人の臓器を持つ動物を出産させる研究を解禁へ 来春までに指針改正 [健康ダイジェスト]

 人に移植するための臓器を動物の体内で作り出す研究を進めるため、国の生命倫理専門調査会は、人の細胞を混ぜた動物の受精卵(胚)を動物の子宮に戻して出産させることを認めるとした指針の改正を了承しました。この研究では、人の神経を含む脳を持った動物が生まれる可能性があるため倫理的な問題も指摘されており、専門調査会は今後、個別の研究に対して国が行う審査を慎重に行う必要があるとしています。
 動物の受精卵に人の細胞を混ぜた「動物性集合胚」を作る研究は、腎臓や膵臓(すいぞう)など移植のための臓器をブタなどの動物の体内で作り出すことを目的に行われています。
 国内ではこれまで、動物性集合胚を作ることは認められていたものの、動物の子宮に戻すことは国の指針で禁止されていましたが、26日の内閣府の生命倫理専門調査会で、動物の子宮に戻して出産させることを認めるとした文部科学省がまとめた指針の改正案が了承されました。
 現行の指針などでは、問題のある研究が行われないよう、個別の研究に対して国が審査を行い、大臣の認可を受ける手続きを求めているほか、動物の体内で作った臓器を人に移植することは、「安全性が確認できない」として禁止しています。
 この研究では、人の神経を含む脳を持った動物が生まれる可能性があり、一部の専門家は倫理的な問題があると指摘していますが、専門調査会では「動物の体内で人の脳神経ができたとしても、ブタなどでは高度な脳機能を持つ可能性は極めて低く、研究する意義がある」と判断したとしています。
 国は改正手続きを進め、早ければ来春にも動物の体内で人の移植用臓器を作る研究や、人の臓器を持つ動物で病気を再現し創薬を目指す研究が国内で解禁されることになります。具体的には、膵臓の異常による1型糖尿病の治療を目指して、ブタの受精卵に人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)を入れて人の膵臓を持った子ブタを産ませ、移植しても拒絶反応がない臓器を作る研究などが進むとみられます。
 生命倫理専門調査会の会長代理で、国立成育医療研究センターの五十嵐隆理事長は、「従来は動物性集合胚の成長の制御が難しかったが、技術が進んだことなどから、人と動物の境界があいまいな生物はかなりの精度でできない仕組みができた。最先端の研究が進むよう、指針の改正を了承できたことは非常によかった。ただ、一般の国民には、人なのか動物なのかわからない生物ができるのではという懸念があると思う。今後、個別の研究計画を審査する国は、慎重に検討する必要がある」としています。
 一方、生命倫理が専門の北海道大学の石井哲也教授は、指針の改正について「人の脳神経を持つ動物などが誕生することに、多くの人は気味が悪いなどの違和感を持つと思うが、今回の議論はそうした思いに十分に応えていない。仮に人の要素が強い動物が生まれてしまえば、取り返しがつかなくなり、人間の尊厳も脅かされる事態になりかねない。そうした倫理的な問題についても十分に検討されていない」と批判しました。

 2018年10月28日(日)

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