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■電気刺激で脊髄損傷患者の歩行が可能に スイス連邦工科大が成功 [健康ダイジェスト]

 脊髄(せきずい)損傷の患者の脊髄に電極を埋め込み、患者の意図に基づく電気信号を伝えながらリハビリを行ったところ、歩く機能が改善したという研究成果を、スイス連邦工科大学ローザンヌ校などの研究チームが発表しました。リハビリでの活用などが期待され、事故などで長年体の自由を失っている人々に希望をもたらしています。
 論文は1日、イギリスの科学誌「ネイチャー」に掲載されました。
 通常、脊髄を損傷すると脳からの電気信号が足に届かなくなります。脳神経外科医と技術者らからなる研究チームは、足を動かすという患者の意図を反映するような電気信号を、足の動きの計測データやコンピューターシミュレーションなどを活用して作り出しました。
 患者が足を動かしたいと思うタイミングに合わせて、下半身の筋肉の動きをつかさどる脊髄の特定部位に埋め込んだ電極に、発信装置から信号が流れることで、あたかも脳から刺激されたような状態にしました。
 脊髄損傷になった20~40歳代の男性3人に、この方法で5カ月間リハビリをしたところ、いずれも運動機能を示すスコアが改善。神経接合が再生して筋肉の連鎖反応を引き起こし、動かなかった足が動くようになりました。
 2011年に交通事故に遭って以来、もう歩くことはできないといわれていたヘルトヤン・オスカムさん(35歳)は、5カ月のリハビリを終えた時点で、電気信号なしでも短距離を歩けるようになりました。別の患者デービッド・ムゼーさん(28歳)も、2010年の事故で左脚が完全にまひしていましたが、5カ月のリハビリの結果、電気刺激を使った歩行器で最長2時間歩くことに成功しました。短距離ならば自力で歩くこともできるといいます。
 研究を率いたスイス連邦工科大学の神経科学者グレゴワール・クルティーヌ氏は、「10年以上にわたる慎重な研究が結果を生んだ」と述べました。
 これ以前の臨床試験では、脊髄にいわゆる連続電気刺激を与える方法が用いられていましたが、マウス実験では成功していたものの、人間に対しては期待していた結果が得られていませんでした。しかし、対象部位を特定した電気刺激を使った今回のリハビリを5カ月続けた結果、3人の患者がまひしていた筋肉を電気刺激なしでも動かせるようになりました。
 今回、試験治療の対象となったのは下半身にある程度の感覚が残っていた患者で、クルティーヌ氏は今後、脊髄損傷事故に遭ったばかりの患者を対象に試験治療を実施していく予定だといいます。
 脊髄損傷は、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使った治療法の研究も進められています。脊髄損傷のリハビリに詳しい国立障害者リハビリテーションセンター研究所の河島則天さんは、「今回のような技術の進歩が再生医療の成果と融合すれば、患者が再び歩く機能を取り戻すことも夢ではないだろう」と話しています。

 2018年11月3日(土)

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