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■世界最短の1カ月でインフルエンザワクチン製造 田辺三菱製薬、タバコの葉を使う技術を開発 [健康ダイジェスト]

 感染症を予防するワクチンの製造に、約60年ぶりの技術革新が起きようとしています。田辺三菱製薬は早ければ2018年度内に、世界最短の1カ月で製造するインフルエンザワクチンの承認をアメリカで申請します。
 製造に6カ月以上かかる従来のワクチンは、流行型に適合しなかったり不足したりするなどの課題がありました。効果を高めたワクチンを即座に供給できるようになれば世界的な大流行(パンデミック)のリスクを抑えられ、政府のワクチン備蓄の在り方も変わる可能性があります。
 体内の免疫力を高めるワクチンを作るには、ウイルスを培養で増やした上で毒性を取り除く必要があります。一般的なのは鶏卵を使う方法で、1950年代から続いています。ただ特別な環境で飼育した鶏と受精卵を確保しなければならないため、出荷まで1年以上がかかります。医師ら医療関係者向けの出荷でさえ、6カ月以上が必要。
 2000年代前半に致死率の高い強毒性の鳥インフルエンザが人に感染することが確認され、2009年には新型インフルエンザにより全世界で推定28万人以上の死者が出たことから、製薬各社は迅速にワクチンを製造する技術の開発に取り組んできました。
 田辺三菱製薬がワクチン製造に使うのは、タバコの葉です。流行しているウイルスの型を分析し、その遺伝子をタバコの葉の組織に組み込んで、成育後に収穫してワクチン成分を抽出する仕組みです。
 同社は動物の細胞を使った製法の開発に取り組んでいましたが、量産が難しいという課題に直面し、目を付けたのが成育が早く葉の収量が多いタバコでした。アメリカのフィリップモリス・インターナショナルと2013年に共同で買収したカナダのバイオ医薬品会社、メディカゴの技術を使い、1カ月で大量生産する技術の開発にめどを付けました。
 田辺三菱製薬はアメリカで2018年度中にもインフルエンザワクチンの製造販売の承認を申請する見込みで、2019年度の実用化を目指します。
 アメリカを先行させるのは遺伝子組み換え技術に関する基準が整っているためで、日本でも阪大微生物病研究会と共同で開発する方針。ほかの感染症への展開についても、「いいワクチンがないロタウイルスやノロウイルスを検討している」といいます。
 田辺三菱製薬はワクチン販売の国内最大手で、2018年3月期(国際会計基準)のワクチンの売上高は約350億円。今後は新型ワクチンの実用化やアメリカとカナダにある工場の拡充などを進め、この規模を約3倍の1000億円に増やす計画です。
 調査会社TPCマーケティングリサーチによると、日米欧のワクチンの市場規模は2兆3000億円とされ成長が続いています。うちインフルエンザワクチンは約3600億円程度ですが、パンデミックが起きると市場は2~3倍に膨れ上がります。
 世界のワクチン市場はアメリカのメルクやファイザー、イギリスのグラクソ・スミスクライン、フランスのサノフィの4社がシェア9割を握っており、国内最大手の田辺三菱製薬ですらシェアは1%強にすぎません。新たな製造技術が実用化されれば、この外資4社の牙城を切り崩す可能性もあります。

 2018年11月7日(水)

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