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■「子宮移植」臨床研究の指針を策定へ 慶大病院、計画案を学会に提出 [健康ダイジェスト]

 生まれ付き子宮がない女性などに親族などから提供された子宮を移植して出産を目指す「子宮移植」について、日本産科婦人科学会などの学会は、臨床研究の指針の策定を始めることになりました。国内で子宮移植の検討を行うチームが臨床研究の計画案を学会に提出したことなどを受けて始めるもので、技術的な課題や倫理的な問題について議論が本格化することになります。
 子宮移植は、生まれ付き子宮がない女性などに親族などから提供された子宮を移植し、あらかじめ準備していたパートナーとの受精卵を着床させて妊娠、出産を目指すもので、スウェーデンなどの一部の国で行われ、世界で10人あまりが生まれたと報告されています。
 国内では、慶応大学病院のチームと名古屋第二赤十字病院などのチームが、それぞれ臨床研究の実施を検討しており、このうち慶応大学病院の木須伊織・特任助教(産婦人科)らのチームは7日、日本産科婦人科学会と日本移植学会に臨床研究の計画案を提出したことがわかりました。
 計画案では、先天的に機能性子宮を持たないものの、卵巣機能に異常はなく正常に機能しているロキタンスキー症候群の女性を対象として、3年間で5例程度を実施するとしています。
 慶応大学病院のチームは2013年に、一度摘出した子宮を再移植したサルが出産に成功したと発表。2014年には「子宮提供者の自発的な意思決定や安全を確保する」などとした指針を策定するなど、実施に向けた準備を進めていました。
 ロキタンスキー症候群は女性の4500人に1人ほどの割合でいるとされており、提出を受けた学会は、子宮移植を受ける患者や提供者の条件、それに実施する施設や医師の要件などを指針としてまとめる議論を始めることになりました。
 子宮移植を巡っては、出産のために健康な女性から子宮を取り出すことが許されるのかといった倫理的な問題に加え、これまでに世界で行われた移植では出産に至らないケースも報告されているほか、移植後に服用する免疫抑制剤の胎児への影響など、技術面や安全面での課題もあり、今後、議論が本格的に行われることになります。
 日本産科婦人科学会の倫理委員会の委員長で徳島大学の苛原稔教授は、「子宮移植は病気で子宮がない女性の選択肢の1つとしては考えられると思う。ただし、一般化されていない技術であり、問題点を一つ一つ解決しながら取り組むべきものだ。学会として指針を作り、研究を支援していきたい」と話しています。
 海外ではこれまでにロキタンスキー症候群のほか、がんなどで子宮を摘出した女性を含めて、少なくとも54例の子宮移植が実施されており、2014年にスウェーデンで子宮移植を受けた36歳の女性が世界で初めて出産するなど、スウェーデンやアメリカ、ブラジルなどで13人の子供が生まれています。
 一方、専門家によりますと、トルコやスウェーデンでは流産したケースが報告されているほか、移植した子宮がうまく定着せず、再び取り出したケースも10例以上報告されているということです。
 臓器移植は通常、心臓などの臓器の働きが悪くなり、命の危険がある場合などに行われます。しかし、子宮移植は妊娠や出産をするために健康な第三者の体にメスを入れ子宮を取り出すため、提供者の体と心に大きな負担が伴うことになり、倫理的に許されるのかといった課題があります。
 また、子宮移植を受けた患者は、拒絶反応が起きないかなどを時間をかけて確認した上で受精卵を子宮に着床させるほか、出産は帝王切開で行い、出産後は移植した子宮を手術で取り除くことになります。
 生命倫理の問題に詳しい北里大学医学部の齋藤有紀子准教授は、子宮がないために妊娠を諦めていた人たちの気持ちは切実で、その思いは否定されるべきではないとした上で、「健康な体にメスを入れる生体移植は、やむを得ない場合に例外的に行われるもので、生命の維持にかかわらない子宮移植に関しては、当事者の切実さや技術の確立だけですぐに正当化できるものではない。この技術は不妊医療、移植医療としての側面に加え、当事者の親の気持ちや移植という選択肢を示すことで、当事者自身が感じるプレッシャーなどにどのように対応していくのかといった課題もあり、課題の解決なしに見切り発車をすると、当事者の女性やその家族が置き去りとなってしまう可能性がある」と指摘しています。

 2018年11月7日(水)

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