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■小児がん治療で抗体を失った子供へのワクチン再接種に助成広がる 大阪市や京都市など90市区町村 [健康ダイジェスト]

 小児がん治療に伴って骨髄移植の手術を受けたなどの影響で、治療前に受けた定期予防接種ワクチンの抗体が失われてしまった子供を対象に、再接種の費用を独自に助成する自治体が増えています。予防接種法で公費補助は1回だけで、再接種は個人の全額自己負担となる中、患者側の負担が大きいとして患者団体などが助成を求めており、国も制度改正の検討を始めました。
 「健康面も家計の面も、不安が大きかった」。愛知県豊橋市の女性(38歳)の長女(9歳)は、1歳の時に肝臓に腫瘍ができる小児がんになり、肝臓移植を受けました。長女は2歳で退院しましたが、今も免疫抑制剤の服用が必要です。風疹やはしかの抗体ができにくく、何度も予防接種を受ける必要があります。
 女性は入院に付き添い、ドナーとなった夫も会社を休みました。収入が減る一方で、再接種の費用のほか、交通費や食費などで増えた出費は計200万円近くに上ります。
 女性は別の自治体で再接種への助成制度があることを知り、豊橋市に要望。豊橋市は昨年4月から、小児がん治療を受けている子供を対象に助成を始めました。女性は「再接種が必要な子は全国にいる。制度が広がってほしい」と願っています。
 風疹やはしかなど定期予防接種は、予防接種法に基づいて市町村と特別区が実施。費用の約9割を国が負担し、ほとんどの自治体では無料です。予防接種法の施行令で、小児がんによる長期療養などで定期予防接種を対象年齢内に受けていない場合は、回復後2年以内は接種時の助成が可能となっています。しかし、一度接種を受けた後の再接種は、1種類のワクチンにつき1人1回の助成の原則を超えるために対象外となってしまいます。
 しかし、小児がんなどの治療で、骨髄移植など造血幹細胞移植を受けると、一度得た抗体が高い確率で消失します。抗がん剤治療や免疫抑制剤の服用で抗体が弱まるケースもあります。
 1年間で新たに小児がんと診断される子供は全国で約3000人。造血幹細胞移植例(20歳未満)は年550~650例とされます。すべての定期予防接種の対象ワクチンを再接種した場合、10万~20万円以上が必要で、患者の家族らが法改正や助成を求めてきました。
 厚生労働省が昨年秋に、初めて実施した調査では、昨年7月時点で、大阪市や名古屋市、京都市、新潟市、浜松市、堺市など90市区町村が助成を実施し、そのうち28自治体が全額補助していました。83自治体が近く助成を始める予定で、238自治体も実施を検討しています。
 全国に先駆けて、6年前に制度を始めた東京都足立区では、病気治療で抗体が消失し、医師の証明が出たケースに助成。担当者は「がんの子供を支える家庭の経済的負担を少しでも軽減したい」といいます。
 多くの自治体で、造血幹細胞移植の患者を助成の対象としていますが、抗がん剤治療は「免疫が消失することが医学的に実証されていない」として対象から除外している自治体もあります。
 大阪府池田市の女性(40歳)の長男(9歳)は2年前に白血病になり、抗がん剤治療で寛解しましたが、昨年10月に水ぼうそうが重症化して入院。7年前に接種したワクチンの抗体が、抗がん剤治療で失われたとみられるものの、池田市では助成の対象外です。女性は「感染を広めないために、再接種は重要。対象に加えてほしい」と求めています。
 「国が対応すべき課題」として、助成を見送る自治体もあります。厚生労働省は「今後、法改正の必要性や制度の在り方について、厚生科学審議会で検討していく」としています。

 2019年1月2日(水)

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