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☐用語 アミロイドニューロパチー [用語(あ行)]

[病院]異常な蛋白が末梢神経に沈着することで生じる神経障害
 アミロイドニューロパチーとは、ナイロンに似たアミロイド線維蛋白(たんぱく)と呼ばれる異常な蛋白が末梢(まっしょう)神経に沈着することで引き起こされる神経障害。アミロイド神経炎、アミロイド神経障害とも呼ばれます。
 多発性骨髄腫(しゅ)や慢性関節リウマチ、透析に関連して後天的に発生するものがある一方、家族性アミロイドポリニューロパチーという遺伝的なものを要因として発症するものもあります。
 アミロイド線維蛋白が体の各種臓器に沈着することで引き起こされる病気のことをアミロイドーシスといいます。アミロイド線維蛋白は心臓、肝臓、腎(じん)臓、脳、消化管など体の特定臓器に限局して沈着することもあれば、心臓や肝臓、腎臓など複数の臓器に渡って沈着することもあります。前者を限局性アミロイドーシス、後者を全身性アミロイドーシスといい、アミロイド線維蛋白が末梢神経に沈着し神経障害が引き起こされるのがアミロイドニューロパチーに相当し、全身性アミロイドーシスの一種です。
 アミロイド線維蛋白が産生される原因はさまざまであり、それに応じてアミロイド線維蛋白の構成成分も多彩です。血液がんである多発性骨髄腫に関連してアミロイドニューロパチーが発症することもあれば、慢性関節リウマチや、腎不全による長期透析などを原因としてアミロイドニューロパチーが引き起こされることもあります。
 こうしたアミロイドニューロパチーは後天的なものですが、遺伝性疾患として起こる場合もあります。特に頻度が高いのは、家族性アミロイドポリニューロパチーと呼ばれるものです。家族性アミロイドポリニューロパチーの中でもトランスサイレチンと呼ばれる蛋白質の構造が不安定になることを原因として発症するものが多く、遺伝子レベルに異常が存在しています。不安定なトランスサイレチンは、アミロイド線維蛋白を形成しやすく、これが全身の末梢神経に沈着することで病気の発症に至ります。
 家族性アミロイドポリニューロパチーは常染色体優性遺伝と呼ばれる遺伝形式をとる疾患であり、疾患を抱える人が子供をもうけた場合、理論的には50%の確率で子供も疾患を有します。
 アミロイドニューロパチーでは、感覚神経や自律神経、運動神経といった末梢神経に関連した症状がみられます。具体的には、手足のしびれや痛み、動悸(どうき)やめまい、下痢と便秘、吐き気や腹痛などがあります。温度覚や痛覚が鈍麻したり、消失したりすることもあり、ストーブなどで容易にやけどをしてしまうこともあります。
 また、四肢末端から筋力低下や筋委縮が始まり、手足がうまく動かなくなったり、まひにつながったりすることもあります。そのほか、排尿障害や勃起不全(インポテンツ)などもみられる症状です。心臓の動きをつかさどる自律神経にも異常が生じ、不整脈が出現することもあります。
 アミロイドニューロパチーの原因疾患はさまざまであり、症状の出方や進行度も異なります。中には発症から10年ほどの経過で進行し、寝たきりとなり亡くなるケースもあります。
[病院]アミロイドニューロパチーの検査と診断と治療
 内科、神経内科の医師による診断は、アミロイド線維蛋白の沈着が想定される末梢神経、筋、直腸などの組織の一部を採取し、それを顕微鏡で観察することで、異常構造物の沈着を証明します。神経を実際に採取するのが難しい場合は、体に有害となる可能性の低い皮下組織の採取などが選択されます。
 神経障害の程度を調べるために、心電図や神経伝達検査、レーザードップラー皮膚血流検査なども行われます。臓器障害は神経にとどまることばかりではないため、心機能を評価するための心臓エコーや心臓MRI(磁気共鳴画像撮影)検査、腎機能評価を評価するための血液検査や尿検査なども適宜検討されます。
 原因疾患を同定するための検査もなされます。具体的には、多発性骨髄腫であれば異常な蛋白質・異常細胞検出のための血液検査や尿検査、骨髄検査などが行われます。また、家族性アミロイドポリニューロパチーでは、原因となる遺伝子異常を同定するための遺伝子検査が行われます。
 内科、神経内科の医師による治療は、それぞれの症状に対しての対症療法と根治的な治療法を併せて行います。対症療法としては、不整脈に対してのペースメーカー埋め込み手術、心不全に対しての内服薬(アンギオテンシン酵素阻害薬や利尿剤など)治療、神経痛に対しての内服薬(カルバマゼピンなど)治療などを行います。
 アミロイド線維蛋白の沈着の原因になっている疾患に対しては、特異的な治療方法も選択されます。多発性骨髄腫であれば化学療法が選択されますし、家族性アミロイドポリニューロパチーであれば不安定なトランスサイレチンを安定化させるための内服薬治療や、異常なトランスサイレチンの産生を抑制するための肝移植が適宜検討されます。
 アミロイドニューロパチーでは温度覚や痛覚が鈍くなるため、気付かないうちにやけどを起こすことがあります。湯たんぽの使用を避ける、風呂に入る前に設定温度を確認するなどの日常生活上の対策も大切です。
 また、家族性アミロイドポリニューロパチーは遺伝性疾患としての側面も有していますので、遺伝カウンセリングを受けることも大切です。全く症状がない状態での発症前遺伝子診断もあり、将来、発症する可能性があるかどうかわかります。

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