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☐用語 アルコール性神経障害 [用語(あ行)]

[バー]アルコールを長期間、過剰に飲み続けることで、神経に起こる障害
 アルコール性神経障害とは、アルコールを長期間、過剰に飲み続けることで、神経のいろいろな部位に起こるビタミン欠乏性の障害。アルコールやその分解産物であるアセトアルデヒドによる毒性と、随伴してよく起こるビタミン欠乏による症状がみられます。
 多量飲酒は1日当たり日本酒3合以上が目安とされ、体重60キログラムの健康男子の1日のアルコール処理能力は、純アルコールで144ミリリットル、すなわち、日本酒で5合、ビールで大瓶5本です。これ以上をほぼ毎日飲み続けていると、常に体の中にアルコールが残っている状態になり、アルコール依存症になる危険性が大です。
 このような場合は、食事をバランスよく摂取することができず、ビタミンB1、B6、B12が不足しがちです。特にビタミンB1がアルコールの代謝のために使われてしまって、慢性的にB1欠乏状態になります。このようなことから、ビタミン欠乏性の栄養障害が神経のいろいろな部位で起こります。
 アルコール性神経障害の症状を示す疾患には、ウェルニッケ脳症、コルサコフ症候群、アルコール性小脳変性症、アルコール性多発神経炎、アルコール性ミオパチー、アルコール性ミエロパチーなどがあります。
 ウェルニッケ脳症とは、ビタミンB1の欠乏のために、脳の働きに障害が起きる疾患です。体内の炭水化物の代謝に必要なビタミンB1の欠乏のみでも発症しますが、長期間のアルコール多飲者やアルコール依存症の人などに多く起こるため、アルコールも複合的に影響して発症すると推測されています。大量のアルコールの摂取によってビタミンB1の腸管からの吸収が障害され、さらにアルコールを多飲する人は食事を摂取しない飲み方をする人が多いためです。
 飢餓による栄養障害は現在では非常に少なくなりましたが、インスタント食品の偏食による栄養の偏りや、摂食障害、妊娠悪阻(つわり)などもビタミンB1の欠乏を招いて、ウェルニッケ脳症を発症する要因になります。
 脳内の非常に特異的な場所である乳頭体(にゅうとうたい)、中脳水道周囲、視床などが、病変の好発部位となります。従って、症状も特徴的であり、急性期には眼球運動障害、運動失調、意識障害の3主要症状が現れます。
 眼球運動障害は、外直筋(がいちょくきん)まひのために目の玉が一点を見詰めたまま動かなくなることが多く、瞳孔(どうこう)の異常などを起こす内眼筋まひはまれです。回復してくると、眼球が自動的に一方向に素早く動いてからゆっくりと元の位置に戻る水平眼振が起こり、物が2つに見える複視やめまい感が自覚されます。
 運動失調としては、小脳の働きが悪くなるために、立ったり座ったりした時に体がふらついて倒れたり、歩行がおぼつかなかったり、手足を思うように動かせなくなるといった症状が急性に起こります。
 意識障害としては、無欲、注意力散漫、すぐに眠ってしまう傾眠といった軽い意識障害から昏睡(こんすい)まで、さまざまな程度に起こります。思考や行動が乱れる錯乱、意識混濁に加えて幻覚や錯覚がみられるせん妄が、前面に出ることもあります。
 慢性期になると、ウェルニッケ脳症はコルサコフ症候群に移行し、場所や時間がわからなくなる見当識(けんとうしき)障害、健忘、記銘力や記憶力の障害など、いわゆる物忘れの症状が主体となります。
 長期間のアルコール多飲者が、通常の酔っ払った状態とは異なる意識状態の異変を感じたら、ウェルニッケ脳症、コルサコフ症候群を疑うことが重要で、早急に救急患者として医療機関を受診することが大切です。
 そのほか、アルコール性神経障害の症状を示す疾患であるアルコール性小脳変性症は、立ったり座ったりした時に体がふらついて倒れたり、歩行がおぼつかなかったり、ろれつが回らず言葉をうまく発音できないといった症状が現れます。
 アルコール性多発神経炎(末梢〔まっしょう〕神経炎)は、いわゆる脚気(かっけ)で、ビタミンB群やニコチン酸の欠乏のために、心臓の弱まりにより下肢のむくみが、末梢神経障害により上下肢のしびれが起きます。足先のジンジンとした異常感覚や痛みなどを初発症状として、手足の筋肉の脱力、転びやすい、走りにくいなどの症状を来します。
 アルコール性ミオパチーは、横紋筋融解や低カリウム血症により筋肉が障害され、筋痛、筋力低下、筋委縮などから起立歩行障害などを来します。
 アルコール性ミエロパチーは、脊髄(せきずい)が障害されます。
[バー]アルコール性神経障害の検査と診断と治療
 内科、神経内科の医師による診断では、問診して飲酒量が多ければ、末梢血検査、肝機能検査、血中ビタミン濃度測定、末梢神経伝導検査、脳のMRI(磁気共鳴画像)検査などを行い、アルコールまたはビタミン欠乏症によるどの疾患が起こっているのかを明らかにすることができます。
 内科、神経内科の医師による治療では、飲酒をやめ、ビタミンB1、B6、B12を補給するとよいのですが、急性期はアルコール性の胃炎が起こっていて吸収が悪く、特にウェルニッケ脳症では、救急処置として、ビタミンB1を500ミリグラムくらい大量に7日間ほど静脈注射で投与します。眼球運動障害や眼振は2日ほどでよくなります。
 その後は、経口的にビタミンB複合体を150ミリグラムくらい1カ月ほど投与すると、アルコール多飲と栄養障害のために体内で不足していたビタミンが補給されます。
 ウェルニッケ脳症の場合、眼球運動障害、運動失調、意識障害の典型的な3主要症状が現れた時には、治療を行っても後遺症を残すことが多いため、できる限り早期に診断し、早期に治療を開始することが極めて重要です。ビタミンB1を静脈注射すると、眼球運動障害は迅速に改善します。しかし、運動失調や記憶障害などの改善は単純ではなく、回復の度合は症状の現れた期間が長引くほど悪化します。
 そして、バランスのよい食事を勧めます。精神的な不安を除くために、解決できる問題は医師に誠実に相談相手になってもらうことが大切です。アルコールを多飲する人の中には、家庭や仕事の上で問題を抱えている場合があるので、よく話を聞いて相談に乗ってあげる友人や医師が必要です。禁酒をして、場合によっては断酒会に入ってもらうこともあります。

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