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☐用語 アセトン血性嘔吐症 [用語(あ行)]

[喫茶店]ほかに原因となる疾患がなく、かつ周期的に嘔吐の症状を繰り返す疾患
 アセトン血性嘔吐(おうと)症とは、激しい嘔吐が数時間もしくは数日間継続し、こうした嘔吐の症状を周期的に繰り返し示す疾患。周期性嘔吐症、自家中毒とも呼ばれます。
 繰り返す間隔は人によってまちまちですが、1カ月に何度も繰り返すこともあれば、年に数回程度ということもあります。嘔吐の症状がない間は、ほかに特別な症状はなく、日常生活にも支障はありません。
 アセトン血性嘔吐症はしばしば、胃腸炎や食中毒、摂食障害などと間違われることがあり、正確な診断が遅れることも多々あります。以前は、発症ピークを5歳前後とする幼児期から学童期にかけての疾患の一種類と考えられていましたが、近年は成人でも発症する疾患であるとの認識が広まりつつあります。
 アセトン血性嘔吐症の頻度は、5~10歳の小児においては2%ほどと報告されていますが、成人においては不明です。嘔吐の症状は非常に激しく、周期的に何度も繰り返すという性質から、発症者にとっては嘔吐症状が起こる度に日常生活に支障が出ることになります。早期の段階で適切に治療を施すことができないと、脱水や低血糖を引き起こすこともあり、より重症化することもあります。
 消化管の働きは自律神経や内分泌で調節されており、通常であれば脳からの指令により適切なタイミングで適切な消化活動が行われます。しかし、アセトン血性嘔吐症においては、脳と消化管の連絡体系に異常が生じているために、嘔吐症状が引き起こされていると想定されています。
 内分泌については、視床下部ー下垂体ー副腎(ふくじん)系と呼ばれる経路に関与するホルモンが、アセトン血性嘔吐症では異常を来していると想定されています。また、発症者には、片頭痛持ちが多いことも知られており、両者の発症の仕方に共通点があることも推定されています。
 家族歴があることもあり、この場合においては遺伝的な要因が関与することも示唆されます。さらに、細胞でエネルギーを作り出すミトコンドリアの機能異常との関連性も提唱されています。
 嘔吐症状を来す切っ掛けには、さまざまなものがあり、感染症、精神的ストレス、チョコレート・チーズ・アイスクリームなど刺激の強い物の摂取、月経、乗り物酔い、飢餓状態、身体の動かしすぎなど多岐にわたります。子供であれば、風邪やインフルエンザを切っ掛けにして、アセトン血性嘔吐症を発症することが多くみられます。また、不安や緊張を伴うようなイベントの前、例えば試験や遠足、発表会、誕生日会の前などに、突然、嘔吐症状を示すことも多くみられます。
 そのほか、子供の体内には糖分の蓄えが少なく、遊びに夢中になってご飯を食べなかったり、胃腸炎などを切っ掛けにして糖分摂取ができなかった場合に、容易に糖分が不足します。体内の糖分が不足すると、脂肪がエネルギー源として使用されますが、その過程でケトン体と呼ばれる酸性の物質が体内で産生されます。ケトン体の一種類としてアセトン体も血液中にみられるようになるため、アセトン血性嘔吐症の名称がついています。血液中に増えたアセトン体の臭いを反映して、吐物(とぶつ)はリンゴの腐ったような臭いがします。
 アセトン血性嘔吐症の症状は、吐き気や顔色不良などの前兆の後に、数時間から数日持続する激しい嘔吐が特徴的です。嘔吐症状は噴水様になることも多く、胆汁や血液が少量混入することもあります。嘔吐をした後にも、吐き気は持続します。
 そのほかの消化管症状として、胃のむかつき、食欲不振、腹痛なども伴うことがあります。さらに、自律神経症状として発汗や低体温、下痢、頭痛などを認めることもあります。アセトン血性嘔吐症では、一度症状が治まった後も、時間を空けて反復することも特徴です。合併症としては、水分摂取が不十分となり脱水になることが挙げられます。
 嘔吐症状ごとの間隔は、数日のこともあれば数カ月のこともあります。人によって症状の出方は異なるのですが、個人個人をみると、症状が出た切っ掛け、嘔吐症状の強さ、嘔吐症状の持続時間などは、比較的似ることが多くなります。
 小児の嘔吐症状が何日も続き、症状が改善しない場合は、小児科を受診することが勧められます。
[喫茶店]アセトン血性嘔吐症の検査と診断と治療
 小児科の医師による診断では、ほかに原因となる疾患がなく、かつ周期的に嘔吐の症状が起こることを基準として、アセトン血性嘔吐症と判断します。
 尿検査と血液検査を行うと、ケトン体が体内で産生されていることを反映し、尿中にケトン体、血中にアセトン体を認めます。しかし、こうした検査結果は長時間の空腹や体調不良でも認めることがあり、診断の確定にはつながりません。
 また、アセトン血性嘔吐症が進行すると、低血糖をみることもあります。さらに、脱水を反映した検査結果をみることもあります。
 小児科の医師による治療では、前兆の段階での治療、嘔吐症状がある時の治療、嘔吐症状がない時の治療に大きく分けて考えることができます。前兆の段階では、吐き気や頭痛、腹痛などを感じることがあり、これらに早期介入することで、その後に引き続く嘔吐症状を予防することが期待できます。
 そのため、吐き気止めや痛み止めを処方ます。また、糖分が不足して嘔吐症状が誘発されていることもあるため、糖分を摂取することが有効な場合もあります。
 嘔吐症状が始まると、経口摂取がうまくいかないこともあります。胃腸炎の場合と同様に少量ずつ経口補液を行うことが必要であったり、症状が強い場合には点滴での水分補給も必要になります。
 症状が改善した時には、人によって片頭痛の予防のための薬を処方することもあります。嘔吐症状を引き起こす切っ掛けがわかった時には、それを避けるような生活スタイルも必要です。例えば、夕食を抜いた後、翌日に嘔吐症状を起こすことが多い場合には、しっかりと夕食を摂取するよう心掛け、長時間空腹にしないことが必要です。チョコレート・チーズ・アイスクリームなど刺激の強い物を食べることが切っ掛けになる場合には、それを避ける努力も必要です。
 心理的な要因が強い時は、心理テストやカウンセリングを行うこともあります。

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