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☐用語 アメーバ性肝膿瘍 [用語(あ行)]

[喫茶店]赤痢アメーバが大腸から血行性に転移することにより、肝臓に膿瘍が形成される疾患
 アメーバ性肝膿瘍(のうよう)とは、経口的に侵入した赤痢アメーバという原虫が大腸より経門脈的に吸収されて肝臓に到達し、膿瘍が形成される疾患。
 アメーバ性肝膿瘍は、アメーバ赤痢(赤痢アメーバ症)の一つであり、そのうちの腸管外アメーバ症の一つでもあります。
 赤痢アメーバは人、サル、ネズミなどの大腸に寄生し、糞便(ふんべん)中にシスト(嚢子〔のうし〕)を排出します。このシストに汚染された飲食物を口から摂取することで、次の人へと感染します。急性期の感染者よりも、シストを排出する無症候性の感染者が感染源として重要です。ハエ、ゴキブリを介した感染も起こります。
 感染しても症状が現れるのは、5〜10パーセント程度。現れる場合の症状は、腸管アメーバ症(アメーバ性腸炎)と腸管外アメーバ症に大別されます。
 腸管アメーバ症は、下痢、粘血便、渋り腹、腸内にガスがたまって腹が膨れ上がる鼓腸、排便時の下腹部痛、不快感などの症状を伴う慢性腸管感染症であり、典型的にはイチゴゼリー状の粘血便を排出します。多くは、数日から数週間の間隔で増悪と寛解を繰り返します。
 盲腸から上行結腸にかけてと、S字結腸から直腸にかけての大腸に、潰瘍(かいよう)が好発します。まれに、肉芽腫(しゅ)性病変が形成されたり、潰瘍部が壊死性に穿孔(せんこう)したりすることもあります。
 一方、腸管外アメーバ症では、腸管部より赤痢アメーバが門脈という血管の血流に乗って肝臓に運ばれ、肝臓に膿瘍が形成されるアメーバ性肝膿瘍が最も高頻度にみられます。そのほか、皮膚、脳、肺に膿瘍が形成されることもあります。
 アメーバ赤痢全体の中で、アメーバ性肝膿瘍の占める割合は約30~40%で、成人男性に多くみられます。高熱、肝腫大、右季肋部(みぎきろくぶ)痛(右脇腹〔みぎわきばら〕の痛み)のほか、吐き気、嘔吐(おうと)、体重減少、寝汗、全身倦怠(けんたい)感などを伴います。膿瘍が破裂すると、腹膜や胸膜、心外膜にも病変が形成されます。
 しかし、実際にはケースごとにさまざまで、症状の軽いものもあれば、中には無症状で経過する場合もあります。粘血便や下痢、腹痛などの腸管症状を欠いたままアメーバ性肝膿瘍を形成することもあり、腸管症状は必ずしも合併するとは限りません。
[喫茶店]アメーバ性肝膿瘍の検査と診断と治療
 内科、感染症科の医師による診断は、肝膿瘍による発熱、右脇腹の痛みなどの症状の有無、経過に加えて、腸管アメーバ症の症状である粘血便や下痢、腹痛の有無についても確認します。また、海外渡航歴についても問診します。
 腹部超音波検査、腹部CT(コンピューター断層撮影)検査を行い、肝膿瘍の存在、また肝膿瘍の部位について、より詳細に確認します。
 右脇腹から針で肝膿瘍を刺して内容物を採取する穿刺(せんし)検査を行い、内容物の中に赤痢アメーバがいるかどうかを顕微鏡で調べます。検出率は50%前後ですが、アメーバ性肝膿瘍の内容物は無臭でアンチョビペースト状、あるいはチョコレート状と表現されることがあるため、診断に際しての参考となります。
 また、血液検査を行い、赤痢アメーバに対する血清アメーバ抗体があるかどうかを調べます。アメ−バ性肝膿瘍での血清アメ−バ抗体の陽性率は、95%以上と報告されています。
 内科、感染症科の医師による治療では、膿瘍液の特徴からアメーバ性肝膿瘍が疑われれば、直ちに抗原虫剤のメトロニダゾール(フラジール)やチニダゾールの投与を開始します。炎症所見、自覚症状などから治療効果を確認しますが、数日ごとに腹部超音波検査を行い肝膿瘍のサイズのチェックも行います。.
 肝膿瘍が破裂する危険性がある場合などでは、体外から細いチューブを肝膿瘍に入れて内容物を体外に排出する治療であるドレナージを開始します。
 炎症所見、自覚症状の消失、肝膿瘍の消失ないしは縮小をもって治療終了の目安とし、ドレナージチューブを抜去します。
 治療効果がみられない場合は、別の抗原虫剤のエメチンやクロロキンの使用も考慮します。汎発性腹膜炎症状を認めれば開腹術を行いますが、それ以外は外科的ドレナージを考慮しません。
 予防には、飲食物の加熱、手洗いの励行、適切な糞便処理が有効。また、シスト排出者との接触に注意する必要もあります。

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