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■アメリカがワクチン特許権停止を支持 WHOは歓迎の姿勢 [健康ダイジェスト]

 発展途上国が新型コロナウイルスのワクチンを十分に確保できていない中、世界貿易機関(WTO)では、供給を拡大するためにワクチンの特許権を一時的に停止すべきかどうか協議されています。
 これについて、アメリカ政府は、これまでの方針を見直して特許権の停止を支持すると表明し、協議が前進するか注目されます。
 ワクチンに関する特許権の扱いは、現在、WTOで議論されており、南アフリカとインドが低価格のジェネリックワクチンを自由に生産できるよう、特許権を一時的に停止することを提案し、ワクチンを十分に確保できていない発展途上国約60カ国の間で支持が広がっています。
 これに対して、ワクチンを開発した大手製薬会社を抱えるアメリカやヨーロッパなどの先進国は、特許権を停止すれば将来の技術革新に支障が出るとして慎重な姿勢を示し、協議は難航しています。
 こうした中、アメリカのジョー・バイデン政権で貿易政策を担当するキャサリン・タイ通商代表は、5日に発表した声明で「パンデミック(世界的な大流行)​を終わらせるために特許権の停止を支持する。異例な時代には異例の手段が必要」と述べ、これまでの方針を見直すと表明しました。
 ただ、WTOは全会一致が原則で、タイ通商代表は「問題の複雑さを考えれば、交渉には時間がかかる」とも指摘しています。
 世界でワクチン普及の格差が開き、発展途上国の反発が強まる中、今回、アメリカが歩み寄ったことでほかの先進国も特許権の一時停止に賛同し、停止の方向に協議が進むか注目されます。
 世界保健機関(WHO)のテドロス・​アダノム事務局長は5日、ツイッターに「世界規模の公衆の難題に取り組むアメリカのリーダーシップの強力な例だ」と書き込み、歓迎する姿勢を示しました。
 新型コロナウイルスのワクチンの供給が発展途上国を中心に依然として十分でない中、テドロス事務局長は今年3月の会見で、世界各地で広く生産できるようワクチンに関する特許権の保護を一時的に停止すべきだと主張していました。
 アメリカの首都ワシントンの連邦議会近くでは5日、約150人が集まり、新型コロナウイルスで打撃を受けている発展途上国へのワクチン供給を拡大するよう求めるデモを行いました。
 集まった人たちは「皆にワクチンを」などと書かれたプラカードを手に、感染拡大を抑えるためにはワクチンにかかわる特許権の保護を一時停止させ、発展途上国でもワクチンを生産できるようにしなければならないなどと声を上げていました。
 デモに参加したインド系アメリカ人の女性は、「アメリカには大きな責任がある。他の国でもワクチンが生産できるようにするためにワクチンの特許を開放すべきだ」と話していました。
 スイスのジュネーブに本部がある製薬会社などで構成される国際製薬団体連合会は5日、アメリカ政府がワクチンの特許権の停止を支持すると表明したことについて、「アメリカ政府の決断には失望させられた」とした上で、「特許権の停止は複雑な問題に対して間違った解決案だ」と述べています。
 さらに、「ワクチンの特許を停止しても生産量が増えるわけでも、世界的な健康危機に立ち向かう実用的な策を提供するわけでもない」として、貿易障壁の解消やワクチンの原材料不足などの課題から目をそらすことになり、逆に混乱を招く恐れがあると指摘しています。

 2021年5月7日(金)




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