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■「紅麹」サプリ、摂取中止しても腎機能回復せず 慢性腎臓病への進行に懸念 [健康ダイジェスト]

 小林製薬(大阪市中央区)の「紅麹(べにこうじ)」成分入りサプリメントを巡る健康被害問題は22日、同社が製品の自主回収を発表して2カ月となりました。サプリを摂取していた人の中には、現在も腎機能が回復しない患者が複数います。このまま回復せず慢性腎臓病に進行する可能性もあり、日本腎臓学会は今月、実態調査に乗り出しました。
 名古屋市立大学病院に通院する同市内の40歳代女性は3月22日の小林製薬の発表を知って、サプリの摂取を中止。しかし、2カ月が経過しても、腎機能の数値が正常値に戻っていません。
 女性は腎臓の尿細管がダメージを受ける「急性尿細管障害」と診断されました。腎臓は、老廃物が混じった血液を濾過(ろか)し、尿として体外に排出します。その通り道である尿細管は、体に必要なカリウムやリンなどの電解質を再吸収します。
 この女性はカリウムやリンなどが不足し、投薬治療を続けています。腎臓の持病はなく、同病院では「何らかの有害成分によるダメージが残っている」とみています。
 日本大学板橋病院(東京都板橋区)でも、治療した8人の患者全員の腎機能が正常値に戻っていません。このうち3人は3カ月以上たっており、慢性腎臓病の基準を満たしているといいます。
 同病院の阿部雅紀教授によると、尿細管の組織が硬くなる「線維化」が生じた患者もいます。阿部教授は「線維化すると完全回復が見込めない可能性が出てきた。慢性腎臓病への移行が懸念され、長期的な経過観察が必要だ」と話しています。
 日本腎臓学会は、 倦怠(けんたい)感や食欲不振などの症状については「摂取を中止するだけで多くは改善がみられた」とする調査結果を出しました。一方で、尿細管障害や腎機能の数値悪化がどの程度まで回復するかはわかっておらず、今月、最新の検査データを尋ねる調査を始めました。
 小林製薬は、「紅麹 」成分入りサプリメントの製品回収や取引先との補償交渉を進めています。
 小林製薬は「紅麹コレステヘルプ」など3製品を2021年2月以降、計約110万個販売しました。小林製薬は、問題が発覚した今年3月時点で店舗の在庫や家庭の飲み残しとして約30万個が流通していたと推計しているものの、16日までに回収されたのは約4割の約12万個にとどまります。
 小林製薬は紅麹原料を直接販売した52社などを対象に、回収に関する費用などを補償する方針で、個別に協議を進めています。4月25日からは3製品を摂取して医療機関を受診した人に医療費や交通費などの支払いも始めました。
 2024年1~3月期連結決算に、製品回収費用として36億円の損失を計上したものの、最終的にどこまで損失が膨らむかは見通せない状況です。

 2024年5月22日(水)

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