■人口1万人の町の水道水から発がん性指摘物質「PFAS」検出 最悪レベルで公費血液検査へ [健康ダイジェスト]
岡山県のほぼ中央にある吉備中央町で昨秋、浄水場の水から発がん性が指摘される物質が検出されました。高濃度有機フッ素化合物「PFAS(ピーファス)」の国内最悪レベルの汚染で、人口約1万人の山あいの小さな町は衝撃に包まれています。
住民たちの間では健康被害を心配する声が広がるなか、町は希望住民に血液検査を実施することを決めました。各地の河川や浄水場で高濃度のPFASが検出されるケースが相次いでいるものの、公費での血液検査の実施は全国でも初めてだといいます。検査は早ければ10月から行われます。
PFASは1万種類以上あるとされる有機フッ素化合物の総称。広く使われてきたのが「PFOA(ピーフォア)」と「PFOS(ピーフォス)」で、政府は水道水の暫定目標値として、この2物質の合計で1リットル当たり50ナノグラム(ナノは10億分の1)と定めています。
PFOAやPFOSには撥水(はっすい)や撥油の性質があり、泡消火剤や半導体の製造など幅広く利用されていました。だが、発がん性が指摘されたこともあり、世界的に規制が進み、日本でも法律で製造・使用、輸入、輸出などが段階的に原則禁止になっています。
汚染が明るみになったのは昨年10月、県の保健所から町への連絡が切っ掛けです。同町上田西にある円城浄水場で、PFOAとPFOSが暫定目標値の28倍という異常数値が検出されました。
給水区域は町内522世帯、約1000人と町民全体の約1割。町は急遽(きゅうきょ)対策本部会議を設置。住民に水道水の使用制限を呼び掛け、給水車などによる配水という措置をとりました。
汚染源は、浄水場の取水源の上流近くで野ざらしで保管されていた使用済み活性炭から流出したのではないか、とみられています。
実は汚染発覚を巡っては、町も大きなミスをしていました。浄水場で行った検査で2020~2022年度に汚染を示す異常数値が検出されていたのに、担当者が事態の重大性を認識しておらず、保健所に報告せず、公表もしていなかったのです。
適切な対応を怠ったとして、町は今年3月、水道課長ら6人を減給処分、正副町長は3カ月分の報酬5割を自主返納。山本雅則町長は「町としては今後とも町民に寄り添った対応を行っていこうと思います」とコメントしました。
気になるのが健康への影響で、町は今年度予算で健康影響調査の関連経費約6100万円を計上し、町が主体となって調査を行うことにしました。
調査対象は飲用した可能性がある住民や別居の家族、地区内企業の従業員ら、18歳未満も含む約2400人。希望者に行われる血液検査ではPFAS血中濃度などを測定します。分析、評価は岡山大学などが担うといいます。
問題の浄水場は取水源のダムを変更するなどして数値が改善。現在は飲用可能な状態に回復しているといいます。ただ、住民の中には「水道水を飲むのが怖い」という人がいるといいます。
浄水場の近くには、大きな工場もなく、周辺は自然豊かな場所。その水が汚染されていたという現実に住民たちの驚きも大きかったといいます。
不安や不信感が広がるなか、住民のうち27人が専門家に依頼して独自に血液検査を実施したところ、全員からアメリカでのガイドラインを超過するPFAS血中濃度が確認されました。
事態の対応に当たるため、住民たちは「円城浄水場PFAS問題有志の会」を結成。代表についた小倉博司さんは「健康問題については長期間の経過をみる必要がある。被害住民らが健康を取り戻す過程に、町が責任を持ってもらいたい」とし、「活性炭がどこでどのように使われたのか、そのプロセスが解明されなければ問題の本質は明らかにならない」として、有志の会では関与した企業の特定、責任追及を目指すといいます。
今後は高濃度PFASが検出された各地の住民団体と情報共有や意見交換をしていく方針だといいます。
小倉さんは「誰も責任を取らず、被害住民だけが取り残されるという結末にしてはならない。国や企業に対して責任を問う国民の声を挙げるべき時だ」と話しています。
2024年9月2日(月)
住民たちの間では健康被害を心配する声が広がるなか、町は希望住民に血液検査を実施することを決めました。各地の河川や浄水場で高濃度のPFASが検出されるケースが相次いでいるものの、公費での血液検査の実施は全国でも初めてだといいます。検査は早ければ10月から行われます。
PFASは1万種類以上あるとされる有機フッ素化合物の総称。広く使われてきたのが「PFOA(ピーフォア)」と「PFOS(ピーフォス)」で、政府は水道水の暫定目標値として、この2物質の合計で1リットル当たり50ナノグラム(ナノは10億分の1)と定めています。
PFOAやPFOSには撥水(はっすい)や撥油の性質があり、泡消火剤や半導体の製造など幅広く利用されていました。だが、発がん性が指摘されたこともあり、世界的に規制が進み、日本でも法律で製造・使用、輸入、輸出などが段階的に原則禁止になっています。
汚染が明るみになったのは昨年10月、県の保健所から町への連絡が切っ掛けです。同町上田西にある円城浄水場で、PFOAとPFOSが暫定目標値の28倍という異常数値が検出されました。
給水区域は町内522世帯、約1000人と町民全体の約1割。町は急遽(きゅうきょ)対策本部会議を設置。住民に水道水の使用制限を呼び掛け、給水車などによる配水という措置をとりました。
汚染源は、浄水場の取水源の上流近くで野ざらしで保管されていた使用済み活性炭から流出したのではないか、とみられています。
実は汚染発覚を巡っては、町も大きなミスをしていました。浄水場で行った検査で2020~2022年度に汚染を示す異常数値が検出されていたのに、担当者が事態の重大性を認識しておらず、保健所に報告せず、公表もしていなかったのです。
適切な対応を怠ったとして、町は今年3月、水道課長ら6人を減給処分、正副町長は3カ月分の報酬5割を自主返納。山本雅則町長は「町としては今後とも町民に寄り添った対応を行っていこうと思います」とコメントしました。
気になるのが健康への影響で、町は今年度予算で健康影響調査の関連経費約6100万円を計上し、町が主体となって調査を行うことにしました。
調査対象は飲用した可能性がある住民や別居の家族、地区内企業の従業員ら、18歳未満も含む約2400人。希望者に行われる血液検査ではPFAS血中濃度などを測定します。分析、評価は岡山大学などが担うといいます。
問題の浄水場は取水源のダムを変更するなどして数値が改善。現在は飲用可能な状態に回復しているといいます。ただ、住民の中には「水道水を飲むのが怖い」という人がいるといいます。
浄水場の近くには、大きな工場もなく、周辺は自然豊かな場所。その水が汚染されていたという現実に住民たちの驚きも大きかったといいます。
不安や不信感が広がるなか、住民のうち27人が専門家に依頼して独自に血液検査を実施したところ、全員からアメリカでのガイドラインを超過するPFAS血中濃度が確認されました。
事態の対応に当たるため、住民たちは「円城浄水場PFAS問題有志の会」を結成。代表についた小倉博司さんは「健康問題については長期間の経過をみる必要がある。被害住民らが健康を取り戻す過程に、町が責任を持ってもらいたい」とし、「活性炭がどこでどのように使われたのか、そのプロセスが解明されなければ問題の本質は明らかにならない」として、有志の会では関与した企業の特定、責任追及を目指すといいます。
今後は高濃度PFASが検出された各地の住民団体と情報共有や意見交換をしていく方針だといいます。
小倉さんは「誰も責任を取らず、被害住民だけが取り残されるという結末にしてはならない。国や企業に対して責任を問う国民の声を挙げるべき時だ」と話しています。
2024年9月2日(月)
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