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■マダニが媒介する脳炎、北海道外でも感染可能性 9月にワクチン販売開始 [健康ダイジェスト]

 野山に潜むマダニが媒介する感染症は数種類ありますが、そのうちのダニ媒介脳炎(TBE)は致死率が高く、手足のまひなどが残ることがあるので要注意です。国内では2024年10月末時点で北海道でのみ7人の患者報告があり、近年、原因不明の脳髄膜炎と診断されていた本州や九州の人から、事後的に感染の証拠が見付かるなど、北海道外でも広がっている可能性が指摘されています。TBEの発症を予防するワクチンも承認・販売されました。
 マダニは野山や畑など屋外に生息するクモの仲間で、家の中にいてアレルギーの原因となるダニとは異なります。体長は成長段階により1ミリ程度から3〜8ミリとなり、動物や人間が近付くとくっついて、血を吸う際に保有する病原体を感染させます。
 マダニが媒介して感染する病気では、細菌リケッチアが原因の日本紅斑熱や、ウイルスが原因の重症熱性血小板減少症候群(SFTS)などがあります。TBEはTBEウイルスが原因で、頭痛や発熱、吐き気がみられ、悪化すると精神錯乱や意識不明、けいれんが起こることがあります。ただし、70%以上は感染しても症状がないとされます。
 発症した場合、有効な薬などの治療法は今のところなく、対症療法が基本となります。致死率は20%以上と高く、手足や感覚のまひ、認知機能の低下といった後遺症も生存者の30〜40%でみられます。
 ヨーロッパやロシア、アジアで多発しており、渡り鳥などでウイルスが日本に入ったとみられます。1993年に北海道で初の患者が確認され、2024年7月までに道内で7人が発症、うち2人が死亡しました。
 「北海道の感染例は氷山の一角で、ほかの地域でも診断されていない人たちがたくさんいるだろう」。北海道での勤務経験もありTBEに詳しい新潟市民病院総合診療内科の児玉文宏・副部長はこう警戒感を示します。
 TBEウイルスを媒介し得るマダニは国内全域に生息しています。国立精神・神経医療研究センターなどのチームは、原因不明の脳髄膜炎と診断されていた520人の北海道外の患者を対象に、残された血液を分析したところ、TBEウイルスへの感染を示す抗体が東京都、岡山県、大分県の計3人から見付かったと20923年に発表しました。いずれも北海道への旅行歴はなく、居住地域で刺されて感染したと推定されます。
 また、栃木県のニホンジカ、富山県と長崎県(対馬市)のイノシシ、島根県のアカネズミから抗体が見付かり、これも北海道外にTBEウイルスが存在する証拠とみられています。
 感染を防ぐには、野外で活動する際に腕や足、首など肌の露出を少なくしてマダニにかまれないことが重要です。マダニは数日間にわたって吸血することが多く、血で10ミリ以上に膨らんで、ほくろができたと勘違いしがち。かまれたら、体調の変化に注意し、発熱があれば医師の診察が勧められるといいます。
 ヨーロッパやアジアを中心にTBEは世界で年間1万例前後報告されており、ワクチンが開発されています。国内でも、ヨーロッパやロシアなどへの渡航や北海道内での野外活動向けにワクチンが利用されてきました。厚生労働省は2024年3月にファイザーのワクチン「タイコバック」を承認、9月から販売が始まっています。一定の間隔をおいて3回接種し、その後は3〜5年おきに追加接種し免疫を維持します。
 児玉さんは、「今のところ、北海道以外の人にワクチンを強く勧めるほどではないが、北海道でキャンプやハイキング、山菜採りなど野外活動をする場合は、接種を検討してもよい」と話しています。

 2025年1月14日(火)

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