■痛風の発症、遺伝要因が強く影響と判明 「生活の乱れ」強調は一面的 [健康ダイジェスト]
関節がはれて強い痛みを伴う「痛風」は、血液中の尿酸値に関係するため、酒の飲みすぎやぜいたく病といった悪いイメージがこびりついています。だが、生活の乱れを強調するのは、病気の全体像からすれば一面的な見方で、誤解であることがわかってきました。同じような生活でも多くの人は発症せず、最新研究では生まれ付きの体質、遺伝子の特徴が強く影響していることが判明しました。専門家は、通院と服薬によって尿酸値を一定値以下に保てば、再発は予防可能だと話しています。
国の国民生活基礎調査によると、痛風で通院する国内の患者は130万人で、予備軍と考えられる高尿酸血症の患者は1000万人以上と推定されています。肥満や飲酒が引き金になるとされてきたものの、近年、遺伝要因による影響が極めて強いとの研究報告が相次いでいます。
防衛医大の松尾洋孝教授(分子生体制御学)と大阪大の岡田随象教授(遺伝統計学)らは2024年、アメリカのアラバマ大などとの国際共同研究で、約12万人の痛風患者を含む262万人を対象に全ゲノムを調べ、痛風の炎症にかかわる遺伝子の候補が見付かったと国際学術誌に発表しました。
痛風にかかわる377の遺伝子座(関連遺伝子の位置)を特定し、そのうち149は未知の遺伝子座でした。
松尾教授によると、痛風は高尿酸血症でも一部の人にしか発症せず、主な原因は遺伝的な体質にあることが今回の研究でも示されたとしています。
関連遺伝子には、尿酸を腸管から排出する機能にかかわる遺伝子が含まれており、多数の遺伝子が関与する痛風発症のメカニズム解明が期待されます。「遺伝子検査は病気のタイプ分けにも役立ち、タイプに応じた適切な治療を選択するような個別化された医療も実現しそうだ」といいます。
ただ、医療現場においては薬剤の進歩によって痛風はすでに、十分に克服可能になっているといいます。受診する患者に対して松尾教授は、発症のメカニズムを「屋根に降り積もる雪」に例えて説明しています。
「高尿酸血症によって関節などにたまる尿酸の結晶は雪の結晶と同じで、解けずにたまれば長い年月でだんだんと積もっていく。ある日、屋根から雪がどさっと落ちるようにしてたまった尿酸結晶が脱落すると、激しい炎症が引き起こされて痛風発作に至る」。
尿酸が排出されにくい体質に加え、尿酸値を高めるような生活が続くと雪が積もりやすい。ただ、松尾教授は「発作時には尿酸値を下げようとしてはいけない」と注意を促しています。
「痛みが治まるのを待って、それからは春に雪が解けるように、結晶をゆっくりと減らすことが大切。強い薬で尿酸値を一気に下げようとすると、かえって発作を誘発する恐れがある」といいます。
もちろん、飲みすぎや食べすぎも問題になります。尿酸値を上昇させるリスクとなる要因として「肥満」「飲酒」「加齢」などがすでにわかっており、性別では男性のリスクが女性より圧倒的に高くなっています。こうした発症と悪化の条件をよく知って生活習慣を改善すること、具体的には、減量や節酒に努めることが大切だといいます。
松尾教授は「痛風は体質の個人差に応じた検診や予防、治療ができる可能性が高い。最新の知見も生かし、検査で示される尿酸値を6(単位はmg/dL)以下に保つことを目指してほしい。それが維持できれば、ほとんどの患者は痛風発作が全く起きない状況になる。体質は容易に変えられないが、生活改善と治療でそれは十分に可能だ」とアドバイスしました。
2025年2月4日(火)
国の国民生活基礎調査によると、痛風で通院する国内の患者は130万人で、予備軍と考えられる高尿酸血症の患者は1000万人以上と推定されています。肥満や飲酒が引き金になるとされてきたものの、近年、遺伝要因による影響が極めて強いとの研究報告が相次いでいます。
防衛医大の松尾洋孝教授(分子生体制御学)と大阪大の岡田随象教授(遺伝統計学)らは2024年、アメリカのアラバマ大などとの国際共同研究で、約12万人の痛風患者を含む262万人を対象に全ゲノムを調べ、痛風の炎症にかかわる遺伝子の候補が見付かったと国際学術誌に発表しました。
痛風にかかわる377の遺伝子座(関連遺伝子の位置)を特定し、そのうち149は未知の遺伝子座でした。
松尾教授によると、痛風は高尿酸血症でも一部の人にしか発症せず、主な原因は遺伝的な体質にあることが今回の研究でも示されたとしています。
関連遺伝子には、尿酸を腸管から排出する機能にかかわる遺伝子が含まれており、多数の遺伝子が関与する痛風発症のメカニズム解明が期待されます。「遺伝子検査は病気のタイプ分けにも役立ち、タイプに応じた適切な治療を選択するような個別化された医療も実現しそうだ」といいます。
ただ、医療現場においては薬剤の進歩によって痛風はすでに、十分に克服可能になっているといいます。受診する患者に対して松尾教授は、発症のメカニズムを「屋根に降り積もる雪」に例えて説明しています。
「高尿酸血症によって関節などにたまる尿酸の結晶は雪の結晶と同じで、解けずにたまれば長い年月でだんだんと積もっていく。ある日、屋根から雪がどさっと落ちるようにしてたまった尿酸結晶が脱落すると、激しい炎症が引き起こされて痛風発作に至る」。
尿酸が排出されにくい体質に加え、尿酸値を高めるような生活が続くと雪が積もりやすい。ただ、松尾教授は「発作時には尿酸値を下げようとしてはいけない」と注意を促しています。
「痛みが治まるのを待って、それからは春に雪が解けるように、結晶をゆっくりと減らすことが大切。強い薬で尿酸値を一気に下げようとすると、かえって発作を誘発する恐れがある」といいます。
もちろん、飲みすぎや食べすぎも問題になります。尿酸値を上昇させるリスクとなる要因として「肥満」「飲酒」「加齢」などがすでにわかっており、性別では男性のリスクが女性より圧倒的に高くなっています。こうした発症と悪化の条件をよく知って生活習慣を改善すること、具体的には、減量や節酒に努めることが大切だといいます。
松尾教授は「痛風は体質の個人差に応じた検診や予防、治療ができる可能性が高い。最新の知見も生かし、検査で示される尿酸値を6(単位はmg/dL)以下に保つことを目指してほしい。それが維持できれば、ほとんどの患者は痛風発作が全く起きない状況になる。体質は容易に変えられないが、生活改善と治療でそれは十分に可能だ」とアドバイスしました。
2025年2月4日(火)
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