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■血液製剤の安定供給に課題、需要急増し10年で1・5倍  感染症や脳神経病に有効 [健康ダイジェスト]

 免疫がかかわる病気に有効な、献血から作る血液製剤のうち「免疫グロブリン製剤」の需要が高まっています。近年、脳や神経の病気で新たな治療法が普及したことなどで、供給量は10年前の約1・5倍になりました。安定供給には血液の確保が不可欠で、若者の献血者が減ったことが課題となっています。
 免疫グロブリン製剤は、献血によって得られた血液中の血漿(けっしょう)から有用なタンパク質を取り出して原料とする薬の一種。弱った免疫機能を調整して通常通りに戻す働きがあり、重症感染症や乳幼児に多い川崎病のほか、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)やギラン・バレー症候群などの脳や神経にかかわる病気の症状を抑えるのに使われます。適応患者は合計10万人を超えるとされます。
 脳や神経の病気では短時間で症状が現れたり、神経障害が起きたりすることがあります。時には呼吸困難など激しい症状も現れるため、発症後すぐに使われることが多くなっています。
 CIDPは末梢神経の炎症によって手足のしびれや筋力が低下する指定難病です。
 国内の患者は推定で約4200人。神経障害が強くなって日常生活が難しくなると、入院して免疫グロブリン製剤を5日間連続で点滴します。ステロイド薬や血漿交換などほかの治療法も推奨されているものの、副作用の少なさから免疫グロブリン製剤が選ばれるケースが多くなっています。治療しないと筋力の低下が続き、筋肉萎縮など後遺症の懸念があります。
 2016年、こうした発症時の使い方に加え、回復後の状態維持、再発予防としても免疫グロブリン製剤を使えるようになりました。
 症状や生活に合わせ、3〜4週間おきに病院で点滴するか、1週間おきに自宅で自己注射をします。2024年には日本神経学会の診療ガイドラインにも有効な治療と明記され、今後さらに需要が高まる可能性があります。
 千葉県在住の池崎悠さん(32)は15歳の時にCIDPを発症。両腕の痛みや脱力が起きて、高校受験時には文字が書きづらくなりました。以後、症状が悪化するたび3回入院し、点滴をする従来の治療で対応してきましたが、治療と学校生活との両立に苦労しました。料理を作るなどの日常生活に支障が出る時期もあったといいます。
 2019年以降、免疫グロブリン製剤を定期的に点滴する維持療法を始めました。「『また悪くなるかも』という不安定な精神状態から脱することができた。(この薬は)病気に振り回されず、安心して日常生活を送る基盤だ」と話しました。
 千葉大病院脳神経内科の三沢園子・准教授は、「副作用が少なく、投与が容易なのが利点。治療が有効な患者にとって命綱だ」と話しました。
 日本赤十字社によると2007〜2022年度の献血者数は約500万人でほぼ横ばいだった半面、30歳代以下に限ると約4割減りました。人口減少や、新型コロナウイルス感染症の流行を切っ掛けに学校での献血活動が減ったことが原因とみられます。
 2023年には需要急増に加え、新型コロナで受診を控えていた患者が集中し国内で供給できる製剤の量を超えたため、厚生労働省が緊急的に輸入量を増やす事態が起きました。治療を変更したり、転院したりした患者もいました。
 日赤は血漿だけを採血する「成分献血」専用の施設を設けるなど対策を進めています。一部メーカーは生産工場の新設を計画しています。
 三沢准教授は、「必要な患者に薬が行き渡ることの重要性を改めて実感させられた。患者の元気な日常を献血で支えられることを、ぜひ知ってほしい」と話しています。

 2025年2月11日(火)

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