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■血液製剤、余剰分に限り輸出解禁へ 厚労省が50年ぶりに政策転換 [健康ダイジェスト]

 献血から製造される血液製剤について、厚生労働省は国内メーカーが輸出・販売するのを解禁する方針を固めました。
 血液製剤は1960年代に本格化したベトナム戦争で、負傷者の治療に使われたとする疑惑が国会で追及され、1966年から輸出が禁じられていました。来年度に、余剰分に限り輸出を認める省令改正を目指しており、約50年ぶりの政策転換になります。
 海外の医療への貢献のほか、国内メーカーの海外展開を後押しする狙いもありますが、血液製剤の市場自由化が進む影響を懸念する声もあります。また、「国内の患者を救うため」という献血の前提が変わることに対し、無償で協力している提供者への説明も求められそうです。
 血液製剤は国の輸出貿易管理令の対象品目で、国内医療での使用を優先するとして全地域への輸出が禁じられています。輸入はできますが、1980年代にウイルスに汚染された輸入血液製剤で薬害エイズが起きた反省から、政府は国内自給を原則に掲げています。しかし、今でも一部の血液製剤は輸入に頼っています。
 国内で献血で採取された血液を扱っているのは日本赤十字社だけで、日赤から血液を購入した国内メーカー3社が特定の成分を抽出した複数の「血漿(けっしょう)分画製剤」を製造しています。このうち、やけどや肝硬変治療に使うアルブミン製剤は自給率56%にとどまりますが、血友病患者用の凝固製剤の一部は1994年以降、自給率100%に達し、消費されない余剰分は廃棄しています。
 余剰分が輸出できれば、少子化で需要が減りつつある国内市場に代わる新たな収益源になるとの期待があります。また、外資系メーカーも国内外の在庫調整がしやすくなる利点があり、国に規制緩和を要望しています。
 国内メーカー3社はいずれも輸出に向けた具体的な検討は始めておらず、うち1社の一般社団法人・日本血液製剤機構は、厚労省のヒアリングに「人道支援を目的に無償や低価格で輸出することは差し支えない」と答えています。

 2017年11月14日(火)

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■北大、脳梗塞の再生医療で治験を始める 骨髄幹細胞を増殖し脳内に移植 [健康ダイジェスト]

 北海道大学は14日までに、脳梗塞の患者自身の幹細胞を使った再生医療の臨床試験(治験)を始めたと発表しました。患者の骨髄から採取した幹細胞を培養して移植することで、脳神経の再生を促し、まひした手足の機能を改善するのを目指します。
 脳梗塞は脳の血管が詰まって神経が損傷する病気。発症後すぐに治療しないと、手足のまひや言語障害といった後遺症が残りやすくなります。北大は2人の脳梗塞急性期の患者に再生医療を行い、最終的には6人に実施する計画です。
 1例目の患者は6月に脳梗塞を発症して入院し、2週間後に北大病院に転院しました。患者の腰の骨から骨髄幹細胞を取り出して増やした後、8月に脳内に直接注入しました。11月上旬には2例目の患者にも実施。幹細胞移植後、1年にわたって安全性や有効性を調べます。
 国内では年間約30万人が新たに脳梗塞を発症し、多くの患者で亡くなったり、重度の後遺症が残ったりしています。2025年には、脳梗塞による後遺症に悩む要介護者は520万人に上ると推定されています。
 発症から12時間以内程度の超急性期には点滴治療や血管内手術などがありますが、脳神経組織がいったん傷付いた後は、リハビリによる機能回復しかなく、新たな治療法の開発が求められています。

 2017年11月14日(火)

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■横浜市立大の病院、がん疑い放置で患者死亡 医師が電子システムを確認せず [健康ダイジェスト]

 横浜市南区の横浜市立大学付属市民総合医療センターで、がんの疑いを示す情報が5カ月間放置され患者が死亡した医療事故は、電子処理システムに潜む盲点を浮き彫りにしました。
 専門家は、「重大な病変を見付けたら、電話で直接連絡するなど、人間同士のコミュニケーションを大事にすべきだ」と警鐘を鳴らしています。
 亡くなったのは、コンピューター断層撮影(CT)検査を受けた神奈川県横須賀市の70歳代の男性患者。膵臓(すいぞう)の膨張に気付いた医師は今年1月、「膵臓がんの疑い」とする画像診断書を電子システムを通じて主治医に送りました。
 しかし、主治医が画像診断書を読んだのは6月でした。男性患者が別の病院で膵臓がんと指摘されたため、過去のデータを点検して気付きました。すでに手術できないほどがんが進行しており、男性患者は10月16日に死亡しました。
 10月30日の会見で、医療センターの後藤隆久病院長は「1月に適切に判断していれば外科的な治療が可能だったと考えている。医師・部門間の情報共有ができていなかった」と陳謝しました。
 医療事故に詳しい京都府立医科大学付属病院の佐和貞治医療安全管理部長は、「医療システムの電子化が進んだ2000年以降、同じような問題はあちこちで起きている」と明かしています。
 佐和部長によると、「がんの疑い」などの重要情報を目立たせたり、未読を防いだりする仕組みは、電子システムにもともと盛り込まれていないといいます。「たとえば郵便なら書留で、大事な現金が届いたと確認できる。しかし病院の電子システムのやりとりでは、おろそかになっている」と続けました。
 問題を起こした医療センターは、電子システム上の画像診断書を印刷して主治医に届けるよう改善しました。
 今回の問題は、ほかの医療現場でも深刻に受け止められています。神奈川県立足柄上病院(松田町)は、来年2月に稼働予定の電子カルテシステムに、未読の画像診断書にはアラームで知らせる機能を追加する検討を始めました。
 2012年以降、6人分の画像診断書を放置し、3人が死亡した東京慈恵会医大病院(東京都港区)も、画像診断書の未読をチェックする人員を配置するのに加え、患者に画像診断書のコピーを渡して、主治医に疑問をぶつけられる再発防止策を検討中です。
 佐和部長は、「今のところ電子システムだけでヒューマンエラーを防ぐのは難しい。医師は、システムの足りないところを補完する意識を持たなければならない」と話しています。

 2017年11月14日(火)

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■食物アレルギー治療の臨床研究で、子供が一時心肺停止に 神奈川県立こども医療センター [健康ダイジェスト]

 横浜市にある病院で、食物アレルギーを治療する臨床研究に参加していた子供が、重いアレルギー症状を起こして一時、心肺が停止し、現在も治療を受けていることがわかりました。
 病院は「最善の努力をもって対応していく」としており、専門の学会は同じような事例が起こっていないか、全国の医療機関を対象に緊急の調査を始めました。
 食物アレルギーでは、原因となる食べ物を少しずつ食べることで治す「経口免疫療法」という治療法があり、横浜市にある神奈川県立こども医療センターでは、患者200人に対して入院させて安全を管理した状態でアレルギーの原因の食べ物の摂取量を徐々に増やし、退院後も一定量の摂取を続ける「急速法」と呼ばれる臨床研究を行っていました。
 神奈川県立こども医療センターによりますと、今年、この臨床研究に参加していた牛乳アレルギーの子供が、入院を終え医師の指導のもと、自宅で牛乳を飲み続けていましたが、およそ3カ月が経過して牛乳を飲んだ直後に重いアレルギー症状が現れ、一時、心肺が停止して脳に障害が出て、現在も治療を続けているということです。
 神奈川県立こども医療センターは、臨床研究に参加しているほかの患者に対し、変化があればすぐに連絡するよう注意を促すとともに、緊急時の対処法も改めて周知した上で、「患者様・ご家族様のお心を察するに余りあるものがあります。この事態に取りうる最善の努力をもって対応してまいります」としています。
 また、専門医で作る日本小児アレルギー学会にも報告され、学会では、食物アレルギーの診療を行っている全国330の医療機関を対象に、治療や実際に食べ物を食べて行う検査などの過程で、呼吸困難になるなど気道を確保する緊急対応が必要になった事例や、集中治療室で治療を行った事例、それに脳の障害など重い症状が出た事例がないか緊急の調査を始めました。また、後遺症が残ったかどうかも調査し、それぞれのケースの共通点などから、原因を検討していくということです。
 調査を行う国立病院機構相模原病院の海老澤元宏医師は、「どれくらい重篤な事案が発生しているのかその実態はよくわかっておらず、調査を通じてどこに問題があったのかや避けられることなのかなどを検討したい。臨床研究を行う施設には改めて安全を担保した上で取り組んでもらいたい」と話しています。
 食物アレルギーは、卵や牛乳、小麦などの食べ物を摂取することで、皮膚や呼吸器などのさまざまなところにアレルギーの症状が現れるものです。発症する患者の数は年齢が0歳の時が最も多く、その後、成長に伴って低下するとされており、過去の研究では、乳児の5%から10%に食物アレルギーの症状が出たと報告されています。
 そして、成長するのに伴って自然によくなる人もおり、それまでの間、医師などによる「栄養食事指導」という方法が一般的に行われています。この方法では、アレルギーの原因となる食べ物を症状が出る量以上は摂取しないようにして、不足する栄養などについては、指導を受けて別な食材で補うようにします。
 一方、食物アレルギーを積極的に治療する方法として試みられているのが、経口免疫療法と呼ばれる治療法です。成長の過程でアレルギーの症状が早期によくなることが期待できない患者に対して行われるもので、少しずつ食べる量を増やしながら耐性をつけ、症状を出さずに上限を増やしていく方法です。
 専門家によりますと、経口免疫療法は世界でも日本が先進的に取り組んでいる治療法で、2年前の2015年の時点で全国でおよそ8000人の患者が治療を受けているという報告があります、この経口免疫療法の中には食べる量を増やす初めの段階で、ゆっくりと量を増やす「緩徐法」や、急激に増やす急速法など複数の方法があるとされています。
 日本小児アレルギー学会の診療ガイドラインでは、一部の症例に効果があるとする一方、治療中に全身に症状が出るアナフィラキシーなどの重篤な症状が出ることがあるほか、治療が終わった後に症状が出る場合もあるなどの問題があるとされ、一般診療としては推奨されていません。
 このため学会では、この経口免疫療法を行う場合は、食物アレルギー診療を熟知した専門医が行うことや、症状が出た場合の救急対応の準備をしっかりと行っていることなどを条件に、臨床研究として慎重に行うことを求めています。

 2017年11月13日(月)

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■用語 奇乳 [用語(き)]

[ゴルフ]生後間もない新生児の乳頭から乳汁様の液体が分泌される現象
 奇乳(きにゅう)とは、生後2~3日ころから1週間ころの間に、新生児の胸が膨らむとともに、乳頭(乳首)から乳汁様の半透明から白色の液体が分泌される状態。魔乳、鬼乳とも呼ばれます。
 妊娠中、母体では女性ホルモンの一つである卵胞ホルモン(エストロゲン)が卵巣から多量に分泌され、これが乳腺(にゅうせん)を発達させるとともに、脳下垂体に作用して乳汁分泌を促すプロラクチンの分泌を抑制しています。ところが、出産とともに、卵胞ホルモンの分泌が急速に低下し、プロラクチンの分泌の抑制がなくなるために、プロラクチンの分泌が増加し、乳汁(母乳)の分泌が開始されます。
 妊娠中、母体の卵胞ホルモンは胎盤を通じて胎児の血液にも移行していますが、出生後、臍帯(さいたい)が切断され、母体との関係が絶たれると、卵胞ホルモンが急激に減少して、その影響が急速に失われるため、母体と同様な機構でプロラクチンが少量分泌され、これが作用して乳腺が刺激され、新生児の乳頭から乳汁様の液体が分泌されるのです。乳汁様の液体の成分は、乳汁と同一です。
 奇乳は生後2~3日ころから分泌され始めることが多く、搾ったりせずに放置すれば数日から1週間程度で出なくなります。中には、5~6週間にわたって分泌がある場合もあります。新生児の体質や、母体から移行していたホルモンの量で、期間は変わってきます。
 成熟した新生児では、生まれた当初から左右の乳房が大きな場合がありますが、これも胎盤経由のホルモンと自分自身のホルモンによって乳腺が発達したものと考えられています。
 この時期の乳腺の発達には男女差はなく、男の子の新生児でも乳房が膨らんだり、奇乳が見られたりすることがあります。
 ヨ-ロッパでは昔、魔女信仰の影響から、新生児の乳頭から分泌される乳汁様の液体が魔女の薬の材料になるとされて「Witch’s milk(魔女のミルク)」と呼ばれていたことから、日本では奇乳、魔乳、鬼乳などと呼ばれるようになったようです。
 ヨーロパでは魔法使いの女が採りに来る前に早く搾ってしまわなくてはならないと信じられていたそうですが、近年では搾ったり、触ったりすると、かえって乳腺が刺激されていつまでも液体が出続けたり、細菌が入って感染を起こすことがあるため、搾ったり、触ったりしてはいけないものとされています。
 新生児の奇乳は自然に止まるのを待てばよく、特別な処置は必要ありません。乳汁とは少し違うような色の液体が出てくる場合は、乳腺などが傷付いている可能性がありますので、一度、産科、または小児科を受診し診察を受けてください。

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■用語 拡張型心筋症 [用語(か)]

[ゴルフ]心筋の細胞が変質して、心室の壁が薄く伸び、心臓全体が拡張する疾患
 拡張型心筋症とは、心臓の筋肉組織である心筋の細胞の性質が変わり、正常な心臓と比べて心筋が薄く伸び心臓全体が拡張する疾患。
 その結果、とりわけ血液を全身に送り出している左心室の壁が薄く伸びて、心筋の収縮機能が低下し、十分な血液を全身に送れなくなります。十分な血液を送れなくなると、それを補うため心臓は容積を大きくして、1回の収縮で送り出す血液の量を増やそうとします。
 しかし、この状態が長く続くと、心臓の中に血液が滞って心臓はさらに拡張し、心筋もさらに引き伸ばされて薄くなっていきます。これによって、心臓にかかる負担はむしろ大きくなってしまう悪循環を招きます。
 心臓の収縮機能が低下して全身に十分な血液がゆき渡らなくなると、脳から心臓に強く働くよう指令が出る一方、腎臓(じんぞう)では尿として排出される量が減り、そのぶん、体内の水分(体液)の量が増え、心臓にかかる負担はさらに増えます。
 この悪循環が心不全といわれる状態で、拡張型心筋症の人は心不全の発症をいかに抑制するか、心不全になった場合はどのようにして悪循環から脱出するかが重要になります。
 発症するのは60歳前後の人が多いという報告もありますが、10歳以下の子供から高齢者まで幅広い年齢層に発症します。また、男女比を見ると、2・6:1と男性に多い傾向がみられます。
 遺伝子やウイルス感染、免疫反応などが拡張型心筋症の原因と考えられ、一部は原因がわかるようになってきましたが、多くは不明のままです。原因がわからない拡張型心筋症は、厚生労働省の特定疾患(難病)に指定されているため、医療費の自己負担分が公費で支払われる場合があります。
 最初のうちは自覚症状がないことも多く、なかなか疾患に気が付かない人もいます。しかし、心不全が重くなると症状が現れてきます。
 初期には疲れやすくなったり、運動時や坂道・階段の昇降時などに動悸(どうき)や息切れを感じたりという症状が現れ、ひどくなると安静時にも症状がみられるようになり、夜間発作性呼吸困難が出てくることもあります。
 夜間発作性呼吸困難とは、夜、眠りについて数時間たったころに突然起こる強い呼吸困難のことです。横になったことで下半身の血液がより多く心臓へ流れ込み、肺全体が血液で満たされ、肺がうまく酸素を取り入れられなくなって起こります。
 もっと重症になると、不整脈が起こったり、全身にむくみが出たり、肝臓がはれたり、むくみにより体重が増加したり、胃腸粘膜のむくみにより食欲が低下したりします。また、全身への血液供給の低下により、全身倦怠(けんたい)感、手足の冷感、日中の尿量や尿の回数の減少などが起こります。
 脈が通常よりも早くなる心室頻拍や、心筋の収縮が失われてけいれんする心室細動といった危険な不整脈が起こると、突然死する場合もあります。
[ゴルフ]拡張型心筋症の検査と診断と治療
 循環器科、循環器内科、心臓血管外科、心臓血管内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による診断では、症状、身体所見や、胸部X線検査、心電図検査、心臓超音波検査(心エコー)、冠動脈造影などの各種検査の所見により判断します。
 そのほか、詳細な心臓の画像を作成できるMRI(磁気共鳴画像撮影)検査、心臓の機能の詳しい情報がわかる心臓カテーテル検査、心筋生検による組織検査を行うこともあります。
 診断の基本は、心不全の重症度、その原因となる心室拡大と左心室の収縮機能低下の程度を評価することにあります。
 循環器科、循環器内科、心臓血管外科、心臓血管内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による治療では一般的に、長期間にわたる安静と減塩食、水分摂取制限が必要です。
 心筋の収縮機能の低下に対しては通常、強心薬のジギタリス、利尿剤、降圧剤の一種のACE阻害剤の3つを使用し、症例によってはβ(ベータ)遮断剤が有効なこともあります。
 すべての薬剤が無効な場合には、心臓移植が検討されます。
 拡張型心筋症で多く出現する頻拍性不整脈に対しては、抗不整脈薬を使用します。しかしながら、心筋の収縮機能の低下している拡張型心筋症では、抗不整脈薬の使用で、さらに収縮力を低下させることは不利であるため、使用には十分な注意が必要です。
 突然死のリスクが高い場合は、植え込み型除細動器による治療を行うこともあります。
 また、拡張型心筋症を発症した場合、医療機関での治療のほかに日常の生活習慣を改善することも重要です。適度な運動、禁煙や節酒、ストレスの管理、体重の管理などが必要となります。

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■用語 拘束型心筋症 [用語(こ)]

[ゴルフ]心筋が拘束されたように硬くなって、左心室が広がりにくくなる疾患
 拘束型心筋症とは、心臓の筋肉組織である心筋が拘束されたように硬くなって広がりにくくなるため、左心室に血液を満たす上で抵抗が生じ、体が必要とする量の血液を十分に送り出せなくなる疾患。
 心筋症は、心筋の伸び縮みがうまく働かなくなり、体が必要とする量の血液を送り出しにくくなる疾患のことをいいます。いくつかの種類がある心筋症の1つである拘束型心筋症は、拡張型心筋症のように左心室が拡張することはなく、肥大型心筋症のように心筋が肥大することもありません。また、心臓の動きも見たところ正常ですが、左心室の壁が硬くなって広がりにくくなり、進行すると心不全や不整脈などの症状が起こります。
 拘束型心筋症は、心筋症の中でも発症例が少ないタイプです。拡張型心筋症、肥大型心筋症とともに、厚生労働省が定める特定疾患(難病)に指定されています。
 一般に拘束型心筋症という場合は、特発性つまり原因がわからず発症した特発性拘束型心筋症のことを指します。この特発性拘束型心筋症には、2種類の基本的なタイプがあります。
 1つのタイプでは、心筋が徐々に瘢痕(はんこん)化した組織に置き換わります。瘢痕とは手術などによってついた傷跡のことで、がんへの放射線療法による皮膚の損傷が原因で起こる場合もあります。
 もう1つのタイプでは、異常な物質が心筋内に蓄積したり、心筋内に浸潤したりします。例えば、体内の鉄分が過剰になると、心筋内に鉄分が蓄積します。血球の一種である好酸球が、好酸球増加症候群の人の心筋に浸潤することもあります。
 また、拘束型心筋症には、ほかのさまざまな疾患に伴って発症する二次性拘束型心筋症もあります。例えば、通常、体内には存在しないアミロイドと呼ばれる異常な蛋白(たんぱく)質が心筋に蓄積すると、アミロイドーシスという疾患を起こし、発症します。二次性拘束型心筋症でも、発症するメカニズムは多くの場合不明です。
 軽症の場合は症状がないこともありますが、病状が進行して心不全を引き起こすと、息切れや動悸(どうき)、むくみ、体がだるいなどの症状が現れます。さらに進行すると、不整脈が起こりやすくなります。
 症状は、安静時よりも運動時に起こりやすくなります。安静時に比べて、運動中はより多くの血液が必要になるからで、安静時には十分な血液量を全身に供給できていても、心筋が硬くなり血液を満たす上で抵抗が生じると運動中に体が求める血液の量を送り出すことが困難になり、症状が起こります。
 息切れや動悸が頻繁にみられるようであれば一度、病院で診断を受けるようにしたほうがいいかもしれません。
[ゴルフ]拘束型心筋症の検査と診断と治療
 循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科の医師による診断では、診察、心電図検査、心臓超音波検査(心エコー)を行います。また、心筋内に蓄積したり浸潤している異常な物質を特定するために心臓MRI(磁気共鳴画像撮影)検査、心臓カテーテル検査を実施することもあります。
 鑑別が重要な疾患には、病態が似ている収縮性心膜炎があります。
 循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科の医師による治療では、特発性拘束型心筋症は原因がはっきりわからないため、拘束型心筋症そのものを治す方法はありません。
 二次性拘束型心筋症では基礎疾患を治療することになりますが、この基礎疾患に対しても有効な治療法がないことも多く、中心となる治療は拘束型心筋症によって引き起こされる心不全、不整脈、血栓塞栓(そくせん)症の予防になります。
 心不全の治療では、症状がうっ血中心になるため、主に利尿薬を使って、たまった血液の排出を図ります。また、心筋の傷害を軽減するためにアンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシン受容体遮断薬を使うこともあります。
 不整脈の治療では、心臓が拍動しなくなってけいれんするだけの状態になる心房細動が最も多い不整脈であり、心房細動が出現すると心臓の働きも急速に低下するため、脈拍が上がりすぎないようにある種のカルシウムチャンネル遮断薬、β(ベータ)受容体遮断薬を使います。
 ジギタリスなどの強心薬も心不全治療と合わせて使用される場合がありますが、副作用に注意が必要です。脈が早くなる心室頻拍などそのほかの重症心不全も発症する可能性があり、必要に応じて抗不整脈薬などを使います。
 血栓塞栓症の予防では、心房細動がみられる場合は心臓の中に血の固まりである血栓ができやすくなるため、長期間にわたって血液を固まりにくくする抗凝固療法を行い、塞栓症の防止を図ります。
 拘束型心筋症の予後は、基礎疾患によってさまざまです。成人の特発性拘束型心筋症について、海外から5年生存率64%、10年生存率37%という報告もありますが、そのまま日本人に当てはめていいかどうかは不明です。
 ただ、決して予後は良好といえないため、特に小児の特発性拘束型心筋症の場合は積極的に心臓移植の適応を考慮することになります。
 二次性拘束型心筋症の中では、特にアミロイドーシスによるものは不良で、心臓の機能低下が認められてから数年以内、さらに心不全症状が出現してからは半年程度の予後と考えられています。

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■用語 多臓器不全 [用語(た)]

[ゴルフ]生命維持に必要不可欠な臓器が同時に、あるいは次々に機能不全に陥った致命的状態
 多臓器不全とは、生命の維持に欠かすことのできない重要な臓器が同時、あるいは連続的に機能不全に陥った重篤な状態。多器官障害、多器官不全、複合器官障害、複合器官不全、多臓器機能不全症候群とも呼ばれます。
 肝臓や腎(じん)臓のほか、心臓(循環器系)、肺(呼吸器系)、消化器系、血液系、中枢神経(神経系)、免疫系など全身の複数の臓器が機能不全を起こし、多くは集中治療を要します。臓器の多くが重篤な機能不全を起こした場合には、救命医療のおよばないことも多々あります。
 主な原因は、敗血症や菌血症など重度の感染症、重度の外傷や火傷(やけど)、重度のショックによる低血圧、重い膵炎(すいえん)、心不全からの低血圧、人為的な操作で傷をつくる大きな手術など。これらが組み合わさって起きることもあります。
 重度の感染症や重度の外傷などを負った場合は、大量出血や血液中の毒素が増えたりすることに加え、体が生命の維持のために防護機能を過剰に働かせるために、臓器の機能が狂ってしまうことがあります。また、重度のショックによって低血圧になった場合は、血液量の不足、血液中の酸素不足などにより臓器の細胞が壊れ、機能不全を起こします。
 症状は、臓器系の疾患が悪化した状態が現れます。肺の機能不全では人工呼吸器が必要になる状態、腎臓の機能不全では人工透析が必要になる状態、肝臓の機能不全では肝不全や肝性昏睡(こんすい)、中枢神経(脳)の機能不全では錯乱状態や失神などで、ほかにも全身けいれんや不整脈、黄疸(おうだん)、腸閉塞(へいそく)、消化管出血などさまざま。
 こういった重度の臓器機能不全が2つ以上同時に起こっていると多臓器不全と診断されますが、3つ以上では発症から症状の進行が急激に進むため、生存率が著しく低くなります。
 すでに入院している場合は、多臓器不全の前段階である全身性炎症反応症候群の時点で、診断と緊急治療を行うことも可能です。敗血症も、全身に炎症を起こす全身性炎症反応症候群の一種とみなされています。
 一方で、自宅療養をしていて多機能不全を起こした場合は、医療機関に搬送する救急車が到着する前に、不整脈などで亡くなってしまう例もあります。多臓器不全になる可能性がある場合は、家族が応急処置の講習を受けておくことが勧められます。
[ゴルフ]多臓器不全の診断と治療
 医療機関による治療は、一般病棟では管理が難しいため、集中治療室(ICU)といった高度医療を提供する場所で行います。
 多臓器不全と診断したら即刻、機能不全を起こしている臓器ごとに対する治療を始めます。呼吸困難の場合は人工呼吸、大量出血の場合は輸血、血液中の有害物質が多い場合は人工透析、感染症の原因菌が特定できた場合は抗菌薬、代謝機能不全の場合は中心動脈への栄養補助、また血液の循環補助を行うなど治療法はさまざまです。
 ただし、1つの臓器を治療するための薬剤や装置が、ほかの臓器には悪影響をおよぼすという場合もあります。臓器ごとに対する治療の関連性を判断しながら進める必要があるため、思い切った治療が困難になることもあります。
 多臓器不全を発症したら生存率が低くなるので、発症前のできるだけ早い段階で臓器ごとの原因を取り除くための治療を開始することが重要です。全身性炎症反応症候群の時点で治療を開始していれば、回復の可能性が高くなります。特に敗血症では、血液中に菌が見付かるのを待ってから原因菌に対する薬物治療をしたのでは遅いことが多いので、早期診断と適切な早期治療が重要です。

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■用語 アレルギー性接触皮膚炎 [用語(あ行)]

[手(チョキ)]原因となる物質との接触で、アレルギーのある人のみに起こる皮膚の炎症
 アレルギー性接触皮膚炎とは、原因となる物質が接触することによって、アレルギーのある人のみに起こる皮膚の炎症。
 原因となる物質は、身の回りの品や職業と関係のあるさまざまな物が挙げられます。植物類では、うるし、ギンナン、桜草など。金属類では、腕時計、ネックレス、イヤリングなど。ゴム類では、ゴム手袋、下着類のゴム、おむつカバーなど。さらに、化粧品類、香料、シャンプー、せっけん、整髪料、染髪やパーマに使われる薬剤、防臭剤、殺菌剤、ゴム製品や皮革の加工に使われる化学物質などです。
 アレルギー性接触皮膚炎は、接触した物質の毒性が非常に強いために、接触した人全部がかぶれるようなものではありません。接触した物質の毒性の強さと症状の強さは相関せず、アレルギーのある人のみに生じるものです。
 まず、原因となる物質に触れると、皮膚の炎症細胞が感作されます。次に、その原因物質に再度、ないし何度か接触することによって、皮膚の炎症細胞が活発に働いて、湿疹(しっしん)を誘発します。炎症細胞が感作されていない人では、全く反応しない炎症反応です。
 症状はいわゆる湿疹の型をとりますが、原因物質によって多少異なります。最も多いのは、原因物質が触った部分が赤くはれ、強いかゆみがあり、次第に小さな水膨れとなるもので、原因物質との接触が続く間は治りません。
 湿疹ができるところは、原因物質が加わった部分なので、自分で気が付くことが多いものです。もし原因に気付かずに、何度も繰り返してアレルギー性接触皮膚炎が起こっていると、皮膚が次第に厚くなったり、色が付いて治りにくくなります。かき傷やかさぶたもみられるようになります。また、原因がわかっても、職業や生活環境の関係から原因が除去できなくて、治らない場合もあります。
 接触皮膚炎症候群という病態もあります。初めは原因物質が触れた部分だけに症状がみられますが、その物質への接触を続けていると、周辺の皮膚にも湿疹が広がることで、かいて広がる場合をいいます。さらに、これが全身に広がることがあり、自家感作性皮膚炎と呼ばれます。アレルギー性接触皮膚炎が治っても自家感作性皮膚炎が持続することがあり、治るまでに長期間を要することがあります。
 アレルギー性接触皮膚炎の場合、思い掛けない物質が原因になっていることもあります。早めに皮膚科などを受診して、原因物質を確認することが大切です。
[手(チョキ)]アレルギー性接触皮膚炎の検査と診断と治療
 皮膚科、皮膚泌尿器科、アレルギー科の医師による診断では、症状やその部位から原因物質を推定し、続いて貼布(ちょうふ)試験(パッチテスト)で確認します。
 貼布試験では、リント布かガーゼに原因と考えられる物質を塗って、皮膚に張り付け、絆創膏(ばんそうこう)で固定します。48時間後に検査の判定を行った時、貼布した部分に発赤、または小さな水膨れができていれば陽性です。金属アレルギーの場合は、1週間たって陽性反応が出ることもあるため、診断に時間がかかります。貼布試験を行う際には、入浴はできず、汗をかかないように注意する必要もあります。
 皮膚科、皮膚泌尿器科、アレルギー科の医師による治療では、原因物質に触れないようにしてもらいます。医師の側では、原因物質が含まれている製品を知らせるとともに、その物質が含まれていない代替製品を紹介します。
 皮膚の炎症やかゆみを和らげるには、ステロイド外用剤の塗布と抗ヒスタミン作用のある内服剤が有効です。うるしや染髪に使われる薬剤による場合など、症状が激しく範囲が広い場合には、短期間ステロイド剤を内服します。

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