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■用語 NSAIDs過敏症 [用語(A〜Z、数字)]

[天秤座]解熱鎮痛薬である非ステロイド性抗炎症薬の使用によって誘発される過敏症
 NSAIDs(エヌセイズ)過敏症とは、アスピリンを始めとした解熱鎮痛薬である非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用することによって誘発され、気管支喘息(ぜんそく)やじんましん、鼻炎などの症状が出る疾患。NSAIDs不耐症、アスピリン過敏症、アスピリン不耐症とも呼ばれます。
 アスピリンは、発熱があった時などに使用する解熱鎮痛薬で、アセチルサリチル酸により作られています。非ステロイド性抗炎症薬は全般として、体内でプロスタグランジンという痛みを起こし、熱を上げる炎症物質が合成されるのを妨げる作用を持ち、解熱薬や鎮痛薬、抗炎症薬として幅広く用いられています。
 NSAIDs過敏症を誘発しやすいのは、非ステロイド性抗炎症薬のうち酸性のものが知られています。酸性解熱鎮痛薬に共通してみられるシクロオキシゲナーゼ抑制作用、つまり体内でのプロスタグランジンの合成に作用するシクロオキシゲナーゼという酵素の働きを阻害する作用が関係しているのではないかと考えられていますが、NSAIDs過敏症を誘発する真のメカニズムは不明です。
 アレルギーとして症状が出るわけではなく、遺伝的な影響もありませんが、NSAIDs過敏症は30~50歳代の成人に多い疾患で、女性のほうが男性よりも1・5倍かかりやすいといわれています。
 非ステロイド性抗炎症薬を服用することで、喘鳴などの気管支喘息症状や、発疹(はっしん)やかゆみなどのじんましん症状、鼻汁などの鼻炎症状などが発症します。これらの症状すべてを発症する場合や、どれか1つだけ発症する場合など、さまざまなパターンがあります。
 もともと、喘息を患っている人では、激しい発作を起こす場合があり、NSAIDs過敏喘息といいます。
 このNSAIDs過敏喘息は、鼻ポリープとも呼ばれる鼻茸(はなたけ)がある人や、慢性副鼻腔(ふくびくう)炎を合併している人に多くみられ、症状が進行すると、アナフィラキシーショックと呼ばれる重篤な全身反応を引き起こし、急激に全身の血管が拡張して血圧が下がり、最悪の場合は死に至ることもあります。
 NSAIDs過敏症を発症する体質が疑われる人は、市販の風邪薬や、少量の解熱鎮痛成分の入った湿布、目薬などを使用する際は、常に慎重を期す必要があります。また、色素や防腐剤などの食品添加物でも症状が出ることがあるので、注意を要します。
[天秤座]NSAIDs過敏症の検査と診断と治療
 内科、アレルギー科の医師による診断では、アスピリンあるいは他の非ステロイド性抗炎症薬の吸入や経口負荷試験により病状を判断します。アレルギー反応ではないので、薬剤アレルギーの血液検査やプリックテストなどの皮膚テストは陰性になります。
 内科、アレルギー科の医師による治療では、NSAIDs過敏症の根本原因が不明で完全な予防策がないため、解熱鎮痛薬である非ステロイド性抗炎症薬の服用を避け、医薬品や食品の添加物を除外することが処置となります。
 発熱時には、原則として氷冷します。どうしても薬が必要な時は、抗ヒスタミン薬、葛根湯(かっこんとう)などの漢方薬を処方します。比較的安全とされる酸性解熱鎮痛薬以外の薬剤であるアセトアミノフェン、塩基性解熱鎮痛薬であるソランタールを処方することもありますが、万全ではありません。発作時には、比較的安全とされるリン酸エステルステロイド薬を点滴で投与します。
 関節リウマチなどの慢性疼痛(とうつう)疾患で鎮痛薬を連用する必要がある時は、アスピリンを少量から連続投与し、耐性を維持するアスピリン耐性誘導(アスピリン脱感作療法)などの方法で対処します。

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■原発事故後に甲状腺がん手術、8割が再発や将来に不安 福島県の子供と保護者を調査 [健康ダイジェスト]

 福島第一原発事故の後に甲状腺がんと診断され、手術を受けた福島県の子供やその保護者に支援団体などがアンケート調査を行ったところ、がんの再発や将来などへの不安を抱えている人が8割近くに上りました。支援団体は患者たちの不安の実態が明らかになったとして、十分な支援を国や県に求めることにしています。
 2011年3月11日の東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、福島県が当時18歳以下だった約38万人を対象に行っている甲状腺検査では、これまでに190人余りが、がんやがんの疑いと診断され、このうち150人余りが甲状腺を切除する手術を受けました。検査を大規模に実施したことで多く見付かっている可能性が高いと指摘される一方、事故との因果関係を巡って専門家の間で議論が続いています。
 支援団体の「3・11甲状腺がん子ども基金」などは、今年8月、甲状腺がんの手術を受けた子供またはその保護者、合わせて67人に郵送でアンケート調査を行い、52人から回答を得ました。
 この中で、「今不安に感じていることがあるか」と尋ねたところ、「ある」という回答が77%に上りました。不安の内容としては、「がんの再発」が23人と最も多く、次いで「がんの転移」と「体調」がそれぞれ9人、「妊娠や出産」と「就職や仕事」がそれぞれ5人など、手術の後も健康面や将来などに、さまざまな不安を抱えていることがわかりました。
 自由記述には、「娘がひどく不安定になり、夜も眠れず学校にゆけず退学した」「甲状腺を全摘した息子は一生薬を服用しなければならず、親としては将来がとても心配」など、切実な声がつづられています。
 また、見付かった甲状腺がんについて、有識者で作る福島県の県民健康調査検討委員会が、現時点で放射線の影響とは考えにくいとする見解を示している一方、アンケート調査ではほぼ半数が「事故の影響はあると思う」と答えており、認識の違いも浮き彫りになりました。
 「3・11甲状腺がん子ども基金」は、これまで知られていなかった実態が明らかになったとして、患者への精神的なサポートや診療などにかかる費用など、国や県に十分な支援を求めることにしています。
 代表理事の崎山比早子さんは、「何が原因であろうと、原発事故がなければこのような状況にはならなかったことは確かで、継続的な患者のケアが必要だ」と話しています。
 甲状腺は首の前側にある成長などにかかわるホルモンを出す臓器で、原発事故で放出された放射性物質ヨウ素131は、甲状腺に蓄積しやすい性質を持っています。
 1986年4月26日に起きたチェルノブイリ原発事故の際、周辺地域で子供たちに甲状腺がんが多く見付かり、のちに被曝(ひばく)が原因と結論付けられたことから、福島第一原発事故の後、福島県は県民健康調査の一環として、子供の甲状腺検査を実施することにしました。
 検査の対象は事故当時、福島県内にいた18歳以下の子供たち約38万人で、事故から最初の3年で1巡目、その後、2年置きに2巡目、3巡目と対象者の検査を繰り返し行っています。

 2017年11月26日(日)

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■289疾患のiPS細胞を保存し、指定難病の5割以上をカバー 理化学研究所バイオリソースセンター [健康ダイジェスト]

 茨城県つくば市の理化学研究所バイオリソースセンター(BRC)は、有効な治療法が確立されていない病気に効く薬の開発などに役立てるため、国内の研究機関が患者の皮膚や血液から作製した289種類の病気のiPS細胞(人工多能性幹細胞)の寄託を受け、凍結保存しています。国が難病に指定している疾患の5割以上をカバーしています。
 京都大学の山中伸弥教授が人のiPS細胞の作製を発表してから今月で10年。治療薬の候補となる物質の特定につながる成果も上がり始めており、iPS細胞を用いた創薬研究が今後、加速しそうです。
 患者の組織から作製したiPS細胞を使って培養皿の上で病気を再現すれば、治療につながる物質の特定作業が容易になると考えられています。このため、BRCは国内の研究機関が患者の皮膚や血液から作製したiPS細胞を集めて凍結保存し、別の研究機関に提供して研究に役立ててもらう「疾患特異的iPS細胞バンク」を2010年12月から運営してきました。京都大学iPS細胞研究所など国内の公的研究機関が作製した患者由来のiPS細胞の寄託を受ける仕組みです。
 BRCによると、国内の11機関が昨年度末までに、786人の患者の組織から作製した289種類の病気のiPS細胞を疾患特異的iPS細胞バンクに提供しました。筋委縮性側索硬化症(ALS)やパーキンソン病などの国指定の難病が171種類含まれており、全部で331疾患ある指定難病の半数以上をカバーしています。指定難病以外にも、アルツハイマー病や統合失調症、てんかんなど、治療が難しく患者数が多い疾患もあります。また、疾患特異的iPS細胞バンクを通さずに進む研究もあります。
 BRCはこれまでに国内22機関、海外8機関にiPS細胞を提供しました。神経系の難病の研究に利用されているケースが多いといいます。BRC細胞材料開発室の中村幸夫室長は、「提供は今後増えていくと考えられる。たくさんの研究者に使ってもらい、一つでも多くの難治性疾患の治療に役立ててほしい」と話しています。
 iPS細胞を活用した創薬研究では、京大iPS細胞研究所の戸口田淳也教授らのチームが今年8月、筋肉などに骨ができる難病「進行性骨化性線維異形成症(FOP)」の治療薬の候補を特定したと発表。10月から本格的な臨床試験が始まっています。

 2017年11月26日(日)

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■用語 小児糖尿病 [用語(し)]

[レストラン]小児期に発症する糖尿病
 小児糖尿病とは、小児期に発症する糖尿病。
 一口に糖尿病といっても、糖尿病が発症した原因によって、1型糖尿病(インスリン依存型糖尿病)、2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)、妊娠糖尿病、その他の糖尿病の4つの種類に分けられますが、小児糖尿病にはこの4つの種類の糖尿病がすべてあります。以前は小児糖尿病といえば 1型糖尿病のことでしたが、現在では子供の肥満が増えているため2型糖尿病の発症率が増えています。
 10歳未満で発症する糖尿病は1型糖尿病がほとんどで、10歳代になると1型糖尿病は増加しますが、2型糖尿病も増えてきます。20歳以降になると、2型糖尿病がほとんどになります。
 1型糖尿病は、膵臓(すいぞう)のランゲルハンス島の中にあるβ(ベータ)細胞が破壊され、インスリン分泌がほぼゼロになってしまうことで発症する種類。原因としては、ウイルス感染、自己免疫性、特発性(原因不明)などがあります。
 インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモンであり、そのホルモンが体内で作られないわけですから、外からインスリンを補充しなければ、血糖値はどんどん上昇してしまいます。従って、1型糖尿病の人は、生存のために毎日のインスリン注射が絶対に必要になります。発症は小児や若い人に多くみられますが、中高年にも認められることがあります。
 2型糖尿病は、インスリン分泌が低下しやすく糖尿病になりやすい体質を持っている人に、過食、運動不足、肥満、ストレス、加齢のほか、発熱、過労、手術、薬の服用、ほかの疾患の影響、妊娠など、インスリンの作用を妨害するような引き金が加わって発症する種類。
 日本人の糖尿病の約9割がこの種類に当てはまり、生活習慣病の一つとされています。この2型糖尿病では、親や兄弟にも糖尿病にかかっている人がいることが多く、遺伝的要素が強く関係していると見なされています。
 過食など発症の引き金となる複数の因子の中では、とりわけ肥満が深く関係しています。調査によると、2型糖尿病患者の約3分の2は、現在肥満であるか、過去に肥満を経験しています。実際、肥満者ではインスリンの血糖低下作用が弱まっていることも、明らかにされています。
 脂肪を蓄積する細胞である脂肪細胞からは、インスリンの作用を妨害する遊離脂肪酸やTNFと呼ばれる物質などが分泌されていますので、肥満して脂肪細胞が増えると、せっかく分泌されたインスリンがうまく働くことができなくなり、血糖値が上昇するようになるのです。中年以降の発症例の多くは、2型糖尿病です。最近の日本では大人の2型糖尿病の増加とともに、小児や若い人の2型糖尿病も増えてきています。
 1型糖尿病の症状の現れ方は、急激です。肥満していない子供が急激にやせてくる、水をよく飲む、トイレが近くなる、夜尿が増える、疲れやすい、などの症状が多くみられます。糖がエネルギーとして利用されずに尿中に排出されてしまうため、空腹感が強く、いくら食べても体重が減少していきます。
 2型糖尿病は、大人と同じく無症状です。症状は気付きにくく、血糖値が多少高いくらいでは、全く自覚症状のない子供がほとんど。徐々に悪化し、血糖値がかなり高くなってくると初めて、のどが渇く、トイレが近くなる、尿の匂いが気になる、できものができやすい、傷が治りにくい、足がつる、また細胞のエネルギー不足によって体がだるい、疲れやすい、食べてもやせるといった症状が現れてきます。血糖値が極めて高い状態では、昏睡(こんすい)に陥ることもあります。
 また、肥満児が急激にやせてきて、2型糖尿病と診断される例もあります。この典型例が一般にペットボトル症候群といわれているもので、軽症の場合は清涼飲料水ケトーシス、重症の場合は清涼飲料水ケトアシドーシスとも呼ばれます。
 継続して大量に、糖分の多いジュースなどのペットボトルに入った清涼飲料水を摂取することで、水に溶けている糖分は吸収されやすいために血糖値が上昇し、血糖値を一定に保つホルモンで膵臓から分泌されるインスリンの働きが一時的に低下します。インスリンが欠乏すると、ブドウ糖をエネルギーとして使えなくなり、脂肪などを分解します。その際に、脂肪酸からできるケトン体と呼ばれる代謝成分が、血液中に過剰に増えます。ケトン体は酸性物質で、血液が酸性化(ケトーシス)したり、ひどく酸性化(ケトアシドーシス)したりして、ペットボトル症候群が発症します。
 症状としては、のどが異常に渇くことから多量の清涼飲料水を欲しがるようになり、上昇した血糖値によって尿量が増え、体重が急激に減少し、倦怠(けんたい)感を覚えます。週単位から1、2カ月の経過で発症し、意識の混濁や昏睡に陥るケースもあります。
 糖尿病の症状に気付いたら、すぐ小児科、内科などを受診してください。1型糖尿病の場合も、血液がひどく酸性化(ケトアシドーシス)した状態から昏睡に陥ることがあるので、早急に受診して、血糖値を測定してもらってください。
 2型糖尿病の場合は、気付いてからではすでに遅いことが多いので、学校での検尿を毎年1回必ず受けてください。
[レストラン]小児糖尿病の検査と診断と治療
 小児科、内科の医師による診断では、一般の血液生化学検査、尿中ケトン体、胸部X線検査などのほかに、血糖、尿糖、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)など糖尿病の診断に欠かせない検査を行います。急激な発症の時は、血液ガス分析、膵臓特異的自己抗体の検査を追加して行います。
 血糖値が落ち着いてから、内因性インスリンの分泌能を調べます。糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症(じんしょう)、糖尿病性神経障害、動脈硬化、高血圧症などの合併症を発症しているか否かを調べるために、眼底や尿中アルブミンの検査などをすることもあります。
 小児科、内科の医師による治療では、1型糖尿病(インスリン依存型糖尿病)の場合、食事療法や運動療法などの一般的な糖尿病治療のほかに,体内でインスリンがほとんど分泌されないので、インスリン製剤を注射で投与します。
 インスリン製剤には、速効型、超速効型、中間型、持効型、さらに、速効型や超速効型と中間型がいろいろな比率で混ざっている混合型があります。一般的に、食後に分泌されるインスリンを補充するためには、速効型や超速効型を毎食前に使用します。また、人の膵臓からは食事と関係なく一定のスピードでインスリンが分泌されているので、このインスリンを補充するためには、中間型や持効型インスリンを使用します。
 小児期は、1日に混合型インスリンを2回注射し、必要に応じて速効型を注射することで、ほぼ対応できます。学童期になり学校で注射できるようになれば、速効型ないし超速効型の食前3回注射に、睡眠前の中間型1回注射というやり方が、最も生活に合わせやすい方法です。昼食時に注射ができなければ、できるようになるまでの間、朝食時に混合型を使用していくこともできます。
 中学生以上になれば、速効型ないし超速効型の食前3回注射と、睡眠前の中間型ないし持効型の1回注射のやり方が、最も生活に合わせやすい方法となります。
 2型糖尿病(インスリン依存型糖尿病)の場合は、食事療法および運動療法で血糖値が十分に正常化しない際に、飲み薬やインスリンの注射が必要になります。
 飲み薬は、食後高血糖だけの状態か否か、内因性インスリンの分泌能が保持されているか否か、または肥満しているか否かで、使い分けをします。 飲み薬には、経口血糖降下薬、SU薬(スルホニル尿素薬)、 速効性インスリン分泌促進薬、α-グルコシダーゼ阻害薬、インスリン抵抗改善薬があります。
 ペットボトル症候群の場合は、血液中の糖分を低下させるホルモンのインスリンを静脈に注射し、血糖値を下げます。この場合、回復までは通常1カ月程度かかります。

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■用語 新生児低血糖症 [用語(し)]

[レストラン]新生児の血液中の糖分が少なくなっている状態
 新生児低血糖症とは、生まれたばかりの新生児の血液に含まれる糖分が少なくなっていて特有の症状が現れる状態。
 新生児に低血糖が認められても、すぐに正常な血糖値に回復することが多いのですが、中には低血糖の状態が続いてしまうケースもあります。血液に含まれる糖分は人間の脳の働きを支える重要なエネルギー源であるため、低血糖の状態が続いてしまうと、脳に悪影響を与えて神経系の後遺症を引き起こす可能性があります。
 胎児は低血糖にならないように、母親の胎内にいる時から胎盤を通して糖分を摂取し、出生後には母乳やミルクから糖分を得て、正常な血糖値を保っていきます。
 生まれたばかりの新生児は、それまで胎盤を通じて行われていた栄養供給が止まり、母乳かミルクを飲むまでは栄養を摂取できなくなります。胎盤を通じて得ていた糖分の摂取も一時的に途切れてしまうため、新生児が低血糖になるのは生理的なものだといえます。一般的に、新生児の血糖値は生まれた後に急速に下がり、1〜2時間後には最も低くなります。
 出生直後に血糖値が下がっても、ほとんどの新生児は体内の仕組みのお陰で、徐々に血糖値は上昇していきます。しかし、中には血糖値が正常に上がらず、低血糖の治療が必要になる場合もあります。
 新生児の低血糖を引き起こす原因はさまざまで、主にインスリンの過剰分泌がある場合と、ない場合に分けられます。
 インスリンは膵臓(すいぞう)のランゲルハンス島にあるベータ細胞から分泌されるホルモンで、骨格筋や肝臓、組織において血液から細胞内への糖分の吸収を促し、エネルギーを作ったり蓄えたりする働きを持つほか、血糖値を上昇しすぎないよう調節する役割も持っています。このインスリンが過剰に分泌されていたり、成長ホルモンなど血糖値を上昇させるホルモンが欠乏していたりすると、低血糖を引き起こします。
 例えば、妊娠中の母親が糖尿病にかかっていた場合、胎盤を通して通常より多くのブドウ糖が胎児に送られるため、血糖値を下げる働きを持つインスリンの分泌量も増えています。出生直後には、胎盤によるブドウ糖の供給は止まっても、インスリンは分泌され続けるために血糖値が下がり、新生児に低血糖の症状が現れることになります。
 インスリンの過剰分泌がない場合も、早産児や低出生体重児で、肝臓や筋肉に蓄えているグリコーゲンの量が少ないと、一時的に低下した血糖値を上げることができず、低血糖を引き起こしやすくなります。このほか、感染症も新生児の低血糖を引き起こす原因と考えられています。
 新生児の低血糖が軽症であれば、目立った症状が現れないことが多いのですが、重症の場合は、元気がなく母乳を飲まない、ボーッとして意識レベルが低い、けいれんに似た動きをする、無呼吸になる、顔色が悪く青白くなっていたりチアノーゼが起きている、汗をたくさんかき呼吸が荒くなる、などの症状が現れることがあります。
[レストラン]新生児低血糖症の検査と診断と治療
 小児科の医師による診断は、血糖値を調べる血液検査を行うのが一般的です。低血糖とともに起きやすい電解質異常を調べる検査を行うこともあります。
 小児科の医師によなどる治療は、無症状の場合には、できるだけ速やかに母親の直接授乳、ないしミルクによる栄養供給を開始します。
 経口摂取が困難な場合や、授乳などを行ったにもかかわらず低血糖が改善しない場合、症状のある場合、無症状でも血糖値が20~25㎎/dl未満の場合は、基本的にブドウ糖を点滴で投与します。点滴だけでは症状が改善しない場合は、ステロイド剤の投与や血糖を上昇させるホルモン、またはインスリンの働きを抑える薬を使うことがあります。
 また、低血糖を引きこしている原因についても調べ、原因となっている疾患がわかれば、その治療も同時に行います。
 血糖値と体調が落ち着いてきたら、母親の直接授乳などを増量し、糖分を供給していきます。血糖値が安定し、点滴の必要がなくなるまでは、入院の上で治療を行います。
 新生児低血糖症は、早期に適切な治療が行われた場合には予後は良好なのですが、発見が遅くなって治療が遅れてしまうと、低血糖の状態が長く続き、脳に何らかの障害を残す恐れがあります。特に早産児や低出生体重児で産まれ、新生児仮死があった場合は、様子を注意深く観察する必要があります。

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■用語 ケトン性低血糖症 [用語(け)]

[レストラン]乳幼児の血糖値が低下し神経症状が現れる疾患
 ケトン性低血糖症とは、乳幼児の血液に含まれる糖(ブドウ糖)の量、すなわち血糖値が40mg/dl以下に低下し、交感神経症状が現れる疾患。
 血液に含まれる糖は、生きるために欠かせないエネルギー源。生後1年から1年半の乳児の血糖値は80~100mg/dl、満1歳から満6歳の幼児の空腹時の血糖値は70~100mg/dlが正常値と見なされています。しかし、乳幼児は大人よりも血糖値が変動しやすいのが特徴で、低血糖になりやすい傾向にあります。
 食べた糖質(炭水化物)をビタミンB1がブドウ糖に変えて血液中に放出されることで、血糖値は上がります。血液中のブドウ糖をエネルギー源として脳や筋肉が活動できるわけで、糖質はゆっくりとブドウ糖に変わり、安定的なエネルギー源を供給しますが、乳幼児は1回で食べられる量が少ないので長い時間食べずにいると飢餓状態になり、低血糖になります。
 乳幼児期に最も多くみられる低血糖症がケトン性低血糖症で、尿検査でケトン体という物質がたくさん認められます。1歳半から5歳ごろまでに、ケトン性低血糖症がみられます。
 原因ははっきりわかっていませんが、比較的やせ形で発育のあまりよくない乳幼児に多くみられ、夕食を食べないで寝たために次の朝一時的に飢餓状態になったり、精神的ストレスや風邪などで食欲不振に陥って飢餓状態になることが、ケトン性低血糖症を発症する切っ掛けになります。
 飢餓状態が短時間である場合、血糖値を回復させるため、アドレナリンやグルカゴンなどの興奮にかかわるホルモンが分泌され、肝臓のグリコーゲンを分解しブドウ糖を放出することで血糖値は維持され得ます。しかし、乳幼児は肝臓にグリコーゲンを蓄積する機能が低いにもかかわらず、脳や筋肉での血糖の消費が盛んであるため、飢餓状態になるとグリコーゲンの分解による糖の供給は容易に不足状態に陥りやすくなります。
 グリコーゲンの分解による血糖値の維持が限界になると、体は糖新生を行うことで血糖値を維持しようとします。主に糖新生を行う肝臓では、脂肪をβ酸化することによって生成されるエネルギーを利用し、骨格筋由来のアラニン、乳酸、脂肪などを原料にして糖新生を行い、ブドウ糖を供給します。脂肪のβ酸化によってできた余分なアセチルコエー(活性酢酸)は、ケトン体(アセトン体)に変換されます。筋肉、脳、腎臓(じんぞう)などでケトン体は利用されますが、余分なケトン体は血中に増加していきます。
 低血糖の度合いにより症状はさまざまですが、軽度の場合は元気がない程度の症状です。ひどくなると、顔面が蒼白(そうはく)になり、嘔吐(おうと)を伴ってけいれんを引き起こすこともあります。
 ケトン性低血糖症を発症しても、普通の状態の時には、血糖の異常はありません。知能の遅れはありませんが、身体的な発育が少し遅れたり、体重の増加がよくない乳幼児は多くみられます。
[レストラン]ケトン性低血糖症の検査と診断と治療
 小児科の医師による診断では、血糖値の低下、および血中や尿中のケトン体の増加がみられる場合に、ケトン性低血糖症と確定します。鑑別すべき疾患としては、血液中のインスリン値が高い結果起こる低血糖症、内分泌・代謝性疾患が挙げられます。
 低血糖の出現時に検査をする機会が得られない場合は、12時間から18時間の絶食検査を行い、低血糖の出現を確認することもあります。ただし、この絶食検査の前には、脂肪のβ酸化を促進するカルニチン、アシルカルニチンが正常であることを確認しておかなければ危険です。
 小児科の医師による治療では、軽症の場合、経口で糖分を少量ずつ頻回に与えます。嘔吐などのため経口摂取が困難な場合や、中等症から重症の場合には、20%ブドウ糖液2mg/kgの静脈注射を行い、引き続き5~10%の糖濃度を含むブドウ糖の輸液を血糖値が正常化するまで行います。
 ケトン性低血糖症は予後良好な疾患であり、予防に努めていれば、一般に10歳前後には症状が出なくなります。
 予防としては、乳幼児に低血糖を起こさないようにするために、常に空腹にならないように食事の回数を増やしたり、炭水化物の多い食事を取らせます。食欲がない時や風邪などを引いて元気がない時には、早めに糖分を与えることが大切です。

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■用語 アミロイド肝 [用語(あ行)]

[天秤座]肝臓にアミロイド線維蛋白が沈着することが原因で、肝障害が生じる疾患
 アミロイド肝とは、ナイロンに似たアミロイド線維蛋白(たんぱく)と呼ばれる異常な蛋白が肝臓に沈着することが原因で、肝障害が生じる疾患。
 アミロイド線維蛋白は心臓、腎臓(じんぞう)、肝臓、脳、消化管のどこかに限局して沈着するほか、全身に沈着して臓器障害を起こすことがあります。前者を限局性アミロイドーシス、後者を全身性アミロイドーシスといいます。
 肝臓は特にアミロイド線維蛋白が沈着しやすい部位で、沈着した肝臓をアミロイド肝といいます。通常は、全身性アミロイドーシスの一部分症として発症します。
 アミロイドーシスは原因となる蛋白質が凝集して、アミロイド線維蛋白として臓器に沈着することで発症しますが、アミロイド線維蛋白にはいくつかの種類があります。肝臓に沈着するアミロイド線維蛋白は、免疫グロブリン(ALアミロイドーシス)あるいは血清アミロイドA(AAアミロイドーシス)という蛋白質に由来します。ALアミロイドーシスでは25〜80%、AAアミロイドーシスでは15%程度、肝臓にアミロイド線維蛋白の沈着がみられます。
 また、血清アミロイドAに由来する続発性アミロイドーシス(AAアミロイドーシス)では、関節リウマチなどを基礎疾患としてアミロイド肝を発症します。
 最も多い症状は、肝臓がはれる肝腫大(しゅだい)ですが、肝障害は軽度です。腫大した肝臓は、ほかの原因で腫大した肝臓に比べて非常に硬いことが特徴で、「岩のような硬さ」とも表現されます。その割に、肝臓を押して出る圧痛はありません。
 全身性アミロイドーシスになると、倦怠(けんたい)感、むくみ、蛋白尿、貧血、低蛋白血症、巨舌がみられます。腎不全、心不全、または感染症を併発すると、死に至ることがあります。
 遺伝性のもの、原因不明のもの、多発性骨髄腫や膠原(こうげん)病、がん、腎不全による長期透析に伴って起こるものがありますが、免疫グロブリンなどの原因となる蛋白質からアミロイド線維蛋白が過剰に体内でつくられ、沈着する仕組みは不明です。
 アミロイド肝はほかの肝臓病と同様に、発症しても自覚症状が出にくいため、多くはネフローゼ症候群や心不全などほかの臓器の症状で、全身あるいはほかの臓器のアミロイドーシスとして発見され、その後全身の精密検査を行ってアミロイド肝も診断されます。高頻度に肝腫大を起こすため、肝腫大で発見されることもあります。
 ほかの臓器の症状があり、肝臓の腫大に気付いたら、すぐに内科、消化器科、消化器内科の医師に相談してください。
[天秤座]アミロイド肝の検査と診断と治療
 内科、消化器科、消化器内科の医師による診断では、直腸生検か肝生検によって、直腸や肝臓の組織にアミロイド線維蛋白の沈着が証明されれば、アミロイド肝と確定します。
 出血の危険性が約5%ほどありますので、肝臓の組織をとって検査する肝生検は積極的には行われていません。生検できた場合は、特殊に染色をし、アミロイド線維蛋白の沈着を証明していきます。同時に、特異抗体を用いた免疫組織化学染色という方法で、沈着しているアミロイド線維蛋白の種類を決めていきます。
 肝臓の検査だけでなく、全身の精密検査を行うこともあります。血液検査では、血清アルカリホスファターゼと呼ばれる酵素の数値がやや標準より高い数値になり、肝臓病特有の黄疸(おうだん)の症状が出た場合は、かなり進行した状態で予後不良です。画像診断では、肝臓の腫大が認められてもあまり特徴的な所見はありません。
 鑑別診断としては、肝腫大を示すすべての肝疾患が挙げられますが、中でも肝硬変、びまん性肝細胞がん、あるいはヘモクロマトーシスなどの代謝性肝疾患などを除外する必要があります。
 内科、消化器科、消化器内科の医師による治療では、全身性アミロイドーシスの一部分症なので、一般には全身性アミロイドーシスとしての治療を行います。
 続発性アミロイドーシス(AAアミロイドーシス)では、新たなアミロイド線維蛋白の産生を抑制するために、原因となる関節リウマチなどの基礎疾患を治療することが原則です。最近は、末梢(まっしょう)血幹細胞移植(PBSCT)を用いた大量化学療法の有効性も報告されています。
 肝臓にできたアミロイド線維蛋白は溶けにくい性質であるため、いったん沈着したら除去することは非常に困難で、それぞれの症状に対しての対処療法が主体となります、ただし、ジメチルスルホキシド(DMSO)という薬剤は、アミロイド線維蛋白を溶解する可能性が示唆されていて、内服や皮膚外用塗布として用いられています。
 すでにほかの臓器にアミロイドーシスの症状が出ていて、さらに肝臓にも症状が出ている場合は、治療に長い時間がかかります。全身性で進行が極めて速い場合は、命にかかわるような危険性もあります。黄疸の進行など肝不全の兆候がある場合は、肝臓移植も勧められています。

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