■内視鏡で撮影した画像からAIがポリープ判別 会津大などが技術を開発 [健康ダイジェスト]
会津大学(会津若松市)の朱欣上級准教授(40 歳)と福島県立医科大学会津医療センター(同)の冨樫一智教授(57歳)らの研究チームは、大腸内視鏡で撮影した画像から人工知能(AI)を使ってポリープがあるかどうかを判別する高精度な技術を開発しました。
ポリープに関する症例の統計データと照らし合わせることで、識別の精度を約97%まで高めたといいます。1日に会津大で開かれた記者会見で発表されました。
研究では、ポリープの形や色などのデータを学習したAIが大腸内を撮影した画像データから、ポリープの有無を瞬時に識別します。世界では現在、同様な仕組みで約90%の確率でポリープの有無を判断する技術は開発されているといいます。
福島医大の冨樫教授によると、一般的に医師の診察では見落とすポリープが約25%あるといいます。今後は、大腸内視鏡で撮影しながら、その場でポリープの有無をリアルタイムに判断できるように改良したい考え。将来的には見付けたポリープに発がん性のリスクがあるかどうかまで、AIで判別できるような技術の確立を目指します。
研究成果をまとめた論文は、11月8~10日に台湾で開かれたアメリカ電気電子学会(IEEE)の第8回認識科学技術国際会議で、最高賞の最優秀論文賞を受賞しました。
会津大の朱上級准教授は「AIが医療技術を進歩させることを証明した」、福島医大の冨樫教授は「新しい技術を医療の現場に生かし、医師の精神的な負担軽減につなげたい」と語りました。
2017年12月2日(土)
ポリープに関する症例の統計データと照らし合わせることで、識別の精度を約97%まで高めたといいます。1日に会津大で開かれた記者会見で発表されました。
研究では、ポリープの形や色などのデータを学習したAIが大腸内を撮影した画像データから、ポリープの有無を瞬時に識別します。世界では現在、同様な仕組みで約90%の確率でポリープの有無を判断する技術は開発されているといいます。
福島医大の冨樫教授によると、一般的に医師の診察では見落とすポリープが約25%あるといいます。今後は、大腸内視鏡で撮影しながら、その場でポリープの有無をリアルタイムに判断できるように改良したい考え。将来的には見付けたポリープに発がん性のリスクがあるかどうかまで、AIで判別できるような技術の確立を目指します。
研究成果をまとめた論文は、11月8~10日に台湾で開かれたアメリカ電気電子学会(IEEE)の第8回認識科学技術国際会議で、最高賞の最優秀論文賞を受賞しました。
会津大の朱上級准教授は「AIが医療技術を進歩させることを証明した」、福島医大の冨樫教授は「新しい技術を医療の現場に生かし、医師の精神的な負担軽減につなげたい」と語りました。
2017年12月2日(土)
■日本初となる便秘のガイドラインがまとまる 「慢性便秘の診断・治療研究会」が作成 [健康ダイジェスト]
消化器内科医らで組織する「慢性便秘の診断・治療研究会」が、日本初となる医療機関向けの「慢性便秘症診療ガイドライン(指針)」をまとめました。
日本だけで用いられ、「ガラパゴス化」していた便秘の分類を、国際基準に合わせて変更しました。薬が有効でない便秘や、食物繊維の摂取で悪化する便秘などへの適切な対応が可能になります。
現状で慢性便秘は、便を送り出す力が低下する「弛緩(しかん)性」と、ストレスが原因の「けいれん性」、肛門や直腸の働きに異常がある「直腸性」に分類されます。便の回数や量が少ないと医師が診ると、弛緩性と診断されることが多く、下剤の必要がない患者にも薬が処方され、副作用が問題になることもありました。
今回作成されたガイドラインは、排便が少なくなる排便回数減少型と、肛門の動きや、肛門に近い直腸自体に原因がある排便困難型に分類。2つの型はさらに2つのタイプに分かれ、それぞれ治療法が異なります。
まず、排便回数減少型は、食事の内容や量が便秘の要因になっている大腸通過正常型と、腸管の動きが悪く便が腸内に滞りがちな大腸通過遅延型があります。
大腸通過正常型の多くは、食物繊維や食事の量を増やすと改善します。反対に大腸通過遅延型は、食物繊維を増やすとさらに便秘が悪化する恐れがあり、治療には排便を促す下剤を使います。
どちらのタイプか正確に見極めるには、専門の検査が必要で、20個の小さなバリウムの粒を含む検査薬を服用し、5日後に腹部のエックス線検査を受けます。4個以上が大腸に残っていれば大腸通過遅延型、3個以下なら大腸通過正常型と診断します。ただし、この検査は健康保険が使えず、一部の医療機関が研究として、患者から料金を取らずに行っています。
ガイドライン作成に携わった指扇(さしおうぎ)病院(さいたま市)の排便機能センター長、味村俊樹さんは、「この検査は正確な診断と適切な治療につながり、患者の体への負担も少ない。早急な保険適用を求めたい」と話しています。
下剤の選択も、新しい指針で大きく変わりました。下剤は現状で、腸管を刺激して動きをよくする刺激性下剤が多く使われています。しかし、腹痛などの副作用が起こりやすく、島根大学第2内科教授の木下芳一さんは「指針では、高齢者に使いやすい非刺激性下剤の推奨度がより高くなっている」と話しています。
非刺激性下剤は、水分で便を軟らかくして排出を促します。代表的な薬は酸化マグネシウムですが、腎機能低下があるとマグネシウムが十分に排出されず、体に悪影響が出ます。そこで、腎機能が低下した高齢者らには、近年発売されたマグネシウムを含まない非刺激性下剤の使用が推奨されています。
排便困難型には、手術が必要なタイプがあります。器質性便排出障害は、直腸が女性器の膣(ちつ)側に膨らむ直腸瘤(りゅう)などが原因で、手術で直腸を元に近い形に戻します。
もう一方のタイプの機能性便排出障害は、排便しようと息むと逆に肛門が締まったり、肛門近くの直腸の感覚が鈍ったりしているのが便秘の元になっています。これには、肛門の力の入り具合をモニターで見ながら締めたり緩めたりするバイオフィードバック療法や、直腸内で膨らませたバルーンを排出する訓練などの治療法が行われます。
厚生労働省の国民生活基礎調査(2013年)によると、便秘に悩む人は60歳までは男性よりも女性が多いものの、加齢とともに男性の有病率も増加し、80歳以上では男性が女性を上回ります。高齢化が進む中、日本の便秘「患者」は1000万人以上いるとみられています。
ガイドライン作成に携わった横浜市立大大学院医学研究科・肝胆膵消化器病学教室の中島淳教授は、「『便秘なんてたいしたことない』と思う人も多いが、とんでもない。中でも高齢者の便秘は、命にかかわることが最近の研究でわかってきた。また、ただの便秘と思っていたら、実際は大腸がんなどの病気が隠れていることもある。高齢化の進展で便秘患者はさらに増えるとみられるだけに、診断・治療体制を整える必要があった」と説明しています。
特に最近、医療機関で問題となっているのが「宿便性腸穿孔(せんこう)」の患者の増加で、これは便秘で硬くなった便が原因で腸に穴が開く病気。かつてはごくまれにしかみられませんでしたが、高齢者の便秘の増加で多くの病院で対応を迫られるようになっているといいます。
今回作成されたガイドラインは、「便秘」を「本来なら体外に排出すべき糞(ふん)便を、十分量かつ快適に排出できない状態」と定義。その上で、「大腸がんなどの病気による大腸の形態的変化を伴わないもので、排便困難や残便感があって困っている場合治療が必要だ」とし、「週に3回程度の排便でも、腹痛や腹部膨満感、残便感などがなければ問題はない」としています。
2017年12月2日(土)
日本だけで用いられ、「ガラパゴス化」していた便秘の分類を、国際基準に合わせて変更しました。薬が有効でない便秘や、食物繊維の摂取で悪化する便秘などへの適切な対応が可能になります。
現状で慢性便秘は、便を送り出す力が低下する「弛緩(しかん)性」と、ストレスが原因の「けいれん性」、肛門や直腸の働きに異常がある「直腸性」に分類されます。便の回数や量が少ないと医師が診ると、弛緩性と診断されることが多く、下剤の必要がない患者にも薬が処方され、副作用が問題になることもありました。
今回作成されたガイドラインは、排便が少なくなる排便回数減少型と、肛門の動きや、肛門に近い直腸自体に原因がある排便困難型に分類。2つの型はさらに2つのタイプに分かれ、それぞれ治療法が異なります。
まず、排便回数減少型は、食事の内容や量が便秘の要因になっている大腸通過正常型と、腸管の動きが悪く便が腸内に滞りがちな大腸通過遅延型があります。
大腸通過正常型の多くは、食物繊維や食事の量を増やすと改善します。反対に大腸通過遅延型は、食物繊維を増やすとさらに便秘が悪化する恐れがあり、治療には排便を促す下剤を使います。
どちらのタイプか正確に見極めるには、専門の検査が必要で、20個の小さなバリウムの粒を含む検査薬を服用し、5日後に腹部のエックス線検査を受けます。4個以上が大腸に残っていれば大腸通過遅延型、3個以下なら大腸通過正常型と診断します。ただし、この検査は健康保険が使えず、一部の医療機関が研究として、患者から料金を取らずに行っています。
ガイドライン作成に携わった指扇(さしおうぎ)病院(さいたま市)の排便機能センター長、味村俊樹さんは、「この検査は正確な診断と適切な治療につながり、患者の体への負担も少ない。早急な保険適用を求めたい」と話しています。
下剤の選択も、新しい指針で大きく変わりました。下剤は現状で、腸管を刺激して動きをよくする刺激性下剤が多く使われています。しかし、腹痛などの副作用が起こりやすく、島根大学第2内科教授の木下芳一さんは「指針では、高齢者に使いやすい非刺激性下剤の推奨度がより高くなっている」と話しています。
非刺激性下剤は、水分で便を軟らかくして排出を促します。代表的な薬は酸化マグネシウムですが、腎機能低下があるとマグネシウムが十分に排出されず、体に悪影響が出ます。そこで、腎機能が低下した高齢者らには、近年発売されたマグネシウムを含まない非刺激性下剤の使用が推奨されています。
排便困難型には、手術が必要なタイプがあります。器質性便排出障害は、直腸が女性器の膣(ちつ)側に膨らむ直腸瘤(りゅう)などが原因で、手術で直腸を元に近い形に戻します。
もう一方のタイプの機能性便排出障害は、排便しようと息むと逆に肛門が締まったり、肛門近くの直腸の感覚が鈍ったりしているのが便秘の元になっています。これには、肛門の力の入り具合をモニターで見ながら締めたり緩めたりするバイオフィードバック療法や、直腸内で膨らませたバルーンを排出する訓練などの治療法が行われます。
厚生労働省の国民生活基礎調査(2013年)によると、便秘に悩む人は60歳までは男性よりも女性が多いものの、加齢とともに男性の有病率も増加し、80歳以上では男性が女性を上回ります。高齢化が進む中、日本の便秘「患者」は1000万人以上いるとみられています。
ガイドライン作成に携わった横浜市立大大学院医学研究科・肝胆膵消化器病学教室の中島淳教授は、「『便秘なんてたいしたことない』と思う人も多いが、とんでもない。中でも高齢者の便秘は、命にかかわることが最近の研究でわかってきた。また、ただの便秘と思っていたら、実際は大腸がんなどの病気が隠れていることもある。高齢化の進展で便秘患者はさらに増えるとみられるだけに、診断・治療体制を整える必要があった」と説明しています。
特に最近、医療機関で問題となっているのが「宿便性腸穿孔(せんこう)」の患者の増加で、これは便秘で硬くなった便が原因で腸に穴が開く病気。かつてはごくまれにしかみられませんでしたが、高齢者の便秘の増加で多くの病院で対応を迫られるようになっているといいます。
今回作成されたガイドラインは、「便秘」を「本来なら体外に排出すべき糞(ふん)便を、十分量かつ快適に排出できない状態」と定義。その上で、「大腸がんなどの病気による大腸の形態的変化を伴わないもので、排便困難や残便感があって困っている場合治療が必要だ」とし、「週に3回程度の排便でも、腹痛や腹部膨満感、残便感などがなければ問題はない」としています。
2017年12月2日(土)
■千葉県こども病院で心臓手術を受けた新生児が死亡 MRSA検出、院内感染か [健康ダイジェスト]
千葉県こども病院(千葉市緑区)は1日、心臓手術を受けた県内の生後1カ月未満の男児がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に感染し、死亡したと発表しました。ほかに4人の0歳児からMRSAが検出され、別の1人は感染していました。
発表によれば、亡くなった男児は先天性の心臓疾患があり、千葉県こども病院で11月上旬に心臓手術を受けた後、17日に発熱し、19日にMRSAが検出されました。血中の酸素が少なくなる低酸素血症を発症し21日に死亡しました。
ほかの5人はいずれも県内在住で、0歳の男児2人と女児3人。うち生後10カ月の女児1人はMRSAに感染して発熱したものの、抗菌薬を投与して現在は快方に向かい、MRSAが検出された4人に発熱などはないといいます。
6人は同じ時期に、新生児集中治療室(NICU)や新生児治療室(GCU)、集中治療室(ICU)などで治療を受けていました。亡くなった男児とほかの5人のMRSAの遺伝子型が一致しないケースがあり、感染経路が複数ある可能性があるといいます。
千葉県こども病院は、病室に出入りした職員約80人の保菌検査を実施。院内感染とみて第三者を含めた調査委員会を設け、感染と死亡の因果関係や感染経路を調べます。
同院では2013年にも、体重1000グラム未満の男児がMRSAに感染して亡くなっています。
星岡明・病院長は1日夜、千葉県庁での記者会見で、「亡くなられた患者様とご遺族には深くおわび申し上げるとともに、ご心配をかけている患者様とご家族、県民の皆様におわび申し上げます」と頭を下げました。
2017年12月2日(土)
発表によれば、亡くなった男児は先天性の心臓疾患があり、千葉県こども病院で11月上旬に心臓手術を受けた後、17日に発熱し、19日にMRSAが検出されました。血中の酸素が少なくなる低酸素血症を発症し21日に死亡しました。
ほかの5人はいずれも県内在住で、0歳の男児2人と女児3人。うち生後10カ月の女児1人はMRSAに感染して発熱したものの、抗菌薬を投与して現在は快方に向かい、MRSAが検出された4人に発熱などはないといいます。
6人は同じ時期に、新生児集中治療室(NICU)や新生児治療室(GCU)、集中治療室(ICU)などで治療を受けていました。亡くなった男児とほかの5人のMRSAの遺伝子型が一致しないケースがあり、感染経路が複数ある可能性があるといいます。
千葉県こども病院は、病室に出入りした職員約80人の保菌検査を実施。院内感染とみて第三者を含めた調査委員会を設け、感染と死亡の因果関係や感染経路を調べます。
同院では2013年にも、体重1000グラム未満の男児がMRSAに感染して亡くなっています。
星岡明・病院長は1日夜、千葉県庁での記者会見で、「亡くなられた患者様とご遺族には深くおわび申し上げるとともに、ご心配をかけている患者様とご家族、県民の皆様におわび申し上げます」と頭を下げました。
2017年12月2日(土)
■用語 愛情遮断症候群 [用語(あ)]
子供が十分な愛情を感じられないまま育ち、成長や発達の遅れを生じる状態
愛情遮断症候群とは、母子関係や家族関係の問題によって、子供が十分な愛情を感じられないまま育った結果、成長や発達の遅れを生じる状態。情緒剥脱(はくだつ)症候群とも呼ばれます。
乳幼児から6歳児程度の子供に多くみられます。母親など養育者からの愛情を感じられない極度のストレスや不安から、子供は心から安らいでグッスリ眠ることができず、成長するために必要な成長ホルモンが睡眠時に脳下垂体から十分に分泌されなくなる結果、身体的な成長や精神的な発達に遅れが出ると考えられています。
子供は愛情ばかりでなく、十分な栄養も与えられていないこともあります。
入院、死亡、離婚などによる母親不在の環境が原因となったり、母親など養育者が深い悩みを抱えていたり、うつ状態であったり、薬物依存や知的障害、精神的な病気を持っていたりして、適切な子育てができないことが原因となったりします。
母親など養育者自身が子供時代に十分な愛情を受けて育っていない場合に、世代を超えて子育てに影響する世代間伝達、愛情不足の連鎖もあります。
栄養障害によって現れる症状として、身長が低い、体重の増えが悪い、腕や脚が細い、やせている、肋骨(ろっこつ)が目立つ、お尻がへこんでいるなどがあります。不適切な養育の結果として観察される症状としては、おむつかぶれがひどい、皮膚が汚い、汚い服を着ているなどがあります。子供の心理的な変化や行動異常によって現れる症状としては、目を合わせない、表情が乏しい、感情表現が乏しい、動作が緩慢、抱きついたり寄り添ったりしない、親に抱かれるのを嫌がる、異様な食欲増進、尿や便をもらす、寝付きが悪い、かんしゃくを起こすなどがあります。
養育者が子供の愛情遮断症候群に気付いたら、母子手帳の成長曲線をつけてみたり、子供らしい豊かな表情をしているかどうか、気を配りましょう。心配なことがあれば、小児科医や保健師に相談しましょう。
愛情遮断症候群の検査と診断と治療
小児科の医師による診断では、身長、体重、頭囲の計測値から成長曲線をつくり、子供の成長を評価します。食事の内容から、栄養学的な分析をします。また、養育環境についての情報を集めます。
小児科の医師による治療では、食事の内容について養育者に栄養指導を行い、子供の年齢に見合った十分な食事を与えます。
また、子供と養育者にとって、ストレスの少ない環境になるように調整をします。母親など養育者に対する心理カウンセリングが必要な場合もあります。子供にとってストレスの少ない環境で、年齢に見合った十分な栄養を与えると、体重が増加し、成長の遅れは取り戻されます。
しかし、虐待やネグレクト(育児放棄)など養育者の子育てに重大な問題がある場合、ケースによっては養育者と子供を遠ざけることも必要です。入院で治療を受けさせたり、保護観察施設で養育したりすることで遅れていた成長が改善されることもあります。
母親が不在の場合、あるいは母親がいても子供に愛情を十分に与えることができない場合には、母親に代わって父親や親に代わる養育者が十分な愛情を注ぐことで防ぐことは可能です。
愛情遮断症候群とは、母子関係や家族関係の問題によって、子供が十分な愛情を感じられないまま育った結果、成長や発達の遅れを生じる状態。情緒剥脱(はくだつ)症候群とも呼ばれます。
乳幼児から6歳児程度の子供に多くみられます。母親など養育者からの愛情を感じられない極度のストレスや不安から、子供は心から安らいでグッスリ眠ることができず、成長するために必要な成長ホルモンが睡眠時に脳下垂体から十分に分泌されなくなる結果、身体的な成長や精神的な発達に遅れが出ると考えられています。
子供は愛情ばかりでなく、十分な栄養も与えられていないこともあります。
入院、死亡、離婚などによる母親不在の環境が原因となったり、母親など養育者が深い悩みを抱えていたり、うつ状態であったり、薬物依存や知的障害、精神的な病気を持っていたりして、適切な子育てができないことが原因となったりします。
母親など養育者自身が子供時代に十分な愛情を受けて育っていない場合に、世代を超えて子育てに影響する世代間伝達、愛情不足の連鎖もあります。
栄養障害によって現れる症状として、身長が低い、体重の増えが悪い、腕や脚が細い、やせている、肋骨(ろっこつ)が目立つ、お尻がへこんでいるなどがあります。不適切な養育の結果として観察される症状としては、おむつかぶれがひどい、皮膚が汚い、汚い服を着ているなどがあります。子供の心理的な変化や行動異常によって現れる症状としては、目を合わせない、表情が乏しい、感情表現が乏しい、動作が緩慢、抱きついたり寄り添ったりしない、親に抱かれるのを嫌がる、異様な食欲増進、尿や便をもらす、寝付きが悪い、かんしゃくを起こすなどがあります。
養育者が子供の愛情遮断症候群に気付いたら、母子手帳の成長曲線をつけてみたり、子供らしい豊かな表情をしているかどうか、気を配りましょう。心配なことがあれば、小児科医や保健師に相談しましょう。
愛情遮断症候群の検査と診断と治療
小児科の医師による診断では、身長、体重、頭囲の計測値から成長曲線をつくり、子供の成長を評価します。食事の内容から、栄養学的な分析をします。また、養育環境についての情報を集めます。
小児科の医師による治療では、食事の内容について養育者に栄養指導を行い、子供の年齢に見合った十分な食事を与えます。
また、子供と養育者にとって、ストレスの少ない環境になるように調整をします。母親など養育者に対する心理カウンセリングが必要な場合もあります。子供にとってストレスの少ない環境で、年齢に見合った十分な栄養を与えると、体重が増加し、成長の遅れは取り戻されます。
しかし、虐待やネグレクト(育児放棄)など養育者の子育てに重大な問題がある場合、ケースによっては養育者と子供を遠ざけることも必要です。入院で治療を受けさせたり、保護観察施設で養育したりすることで遅れていた成長が改善されることもあります。
母親が不在の場合、あるいは母親がいても子供に愛情を十分に与えることができない場合には、母親に代わって父親や親に代わる養育者が十分な愛情を注ぐことで防ぐことは可能です。
タグ:風疹(三日ばしか) 尖頭合指症候群 性染色体異常 巨人症 特発性正常圧水頭症 軟骨無形成症 下垂体前葉機能低下症 小人症 下垂体性小人症 先天性風疹症候群 新生児テタニー シモンズ病 臍肉芽腫 低身長症 臍帯ヘルニア アペール症候群 新生児エリテマトーデス 新生児メレナ 正常圧水頭症 XO症候群 性染色体モノソミー 臍炎 愛情遮断症候群 脳瘤 先天性甲状腺機能低下症(クレチン症) クラインフェルター症候群 水頭症 成長ホルモン分泌不全性低身長症 用語(あ行) 用語(あ) 用語 健康創造塾 思春期遅発症 ソトス症候群 新生児仮死 神経管閉鎖障害 出べそ 臍ヘルニア 無脳症 ヌーナン症候群 血液型不適合妊娠 ターナー症候群
■用語 尿漏れ [用語(に)]
無意識に尿が漏れて、日常生活に支障を来す状態
尿漏れとは、膀胱(ぼうこう)や尿道、その筋肉や神経に問題がある場合に、自分の意思と関係なく尿が一時的に漏れる状態。尿失禁とも呼ばれます。
尿漏れのうち、一時的な漏れではなく、一日中、常に漏れ続ける尿漏れを真性尿漏れ、または全尿尿漏れと呼びます。真性尿漏れ、全尿尿漏れの代表例として挙げられるのは、尿管開口異常などの先天性尿路奇形によって常に尿が漏れているもの、または手術などの際、尿道括約筋を完全に損傷したものです。
一時的な漏れを示す尿漏れのほうは、腹圧性尿漏れ(緊張性尿漏れ)、切迫性尿漏れ(急迫性尿漏れ)、溢流(いつりゅう)性尿漏れ(奇異尿漏れ)、反射性尿漏れの4タイプに大別されます。
腹圧性尿漏れ
腹圧性尿漏れは、せきやくしゃみ、運動時など、腹部に急な圧迫が加わった時に尿が漏れます。尿意とは無関係に、膀胱にたまった尿が一時的に漏れるもので、その程度はさまざまで、軽度の時は少量の一方で、重度になると多量に尿が漏れることもあります。
腹圧性尿漏れは頻度が高く、中年以降の出産回数の多い女性にしばしば認められるほか、比較的若い女性にもみられます。起こる原因は、膀胱を支え、尿道を締めている骨盤底筋群が加齢や出産、肥満などで緩んで、弱くなったためです。骨盤底筋群の緩みが進むと、子宮脱、膀胱瘤(りゅう)、直腸脱などを合併することもあります。
まれに、放射線治療やがんの手術によって、尿道を締める神経が傷付くことが原因となることもあります。
腹部に急な圧迫が加わるような動作をした時、例えばせきやくしゃみをした時、笑った時、階段や坂道を上り下りした時、重い荷物を持ち上げた時、急に立ち上がった時、走り出した時、テニスやゴルフなどの運動をした時、性交時などに、一時的に尿が漏れます。通常、睡眠中にはみられません。
この骨盤底筋の衰えによる腹圧性尿漏れと、急に強い尿意を感じてトイレに間に合わず尿を漏らしてしまう切迫性尿漏れの両方の症状がみられる場合もあり、混合性尿漏れ(混合型尿漏れ)と呼ばれます。混合性漏れは骨盤底筋群の緩みがベースにあり、膀胱と尿道の両方の機能低下が加わることで起こりやすくなります。そうした症状は加齢により増えてくるので、閉経期から後の高齢の女性に次第に生じる率が高くなります。
切迫性尿漏れ
切迫性尿漏れは、急な強い尿意を催し、トイレにゆく途中やトイレで準備をする間に、尿が漏れます。トイレが近くなる頻尿、夜中に何度もトイレに起きる夜間頻尿が、同時に生じることもあります。
この切迫性尿漏れは、自分の意思に反して勝手に膀胱が収縮する過活動膀胱が主な原因です。普通、膀胱が正常であれば400~500mlの尿をためることが可能で、尿が250~300mlくらいになると尿意を感じて排尿が始まりますが、過活動膀胱では100ml前後の尿がたまると膀胱が収縮するために、突然の尿意を催して、我慢できなくなるのが特徴です。膀胱が正常であれば、尿意を感じ始めて10~15分ぐらいは我慢できることもありますが、過活動膀胱ではそれも難しいとされています。
過活動膀胱の人はとても多く、日本では40歳以上の男女のうち8人に1人は過活動膀胱の症状があり、その約半数に切迫性尿漏れの症状があると報告されています。近年40歳以下でも、過活動膀胱の症状に悩まされている人が大変多くなってきています。
女性が過活動膀胱になる最も多い原因は、膀胱を支え、尿道を締めている骨盤底筋群や骨盤底を構成する靱帯(じんたい)が弱まる骨盤底障害です。骨盤底筋群や靱帯が弱まってたるむと、膀胱の底にある副交感神経の末端が膀胱に尿が十分にたまらないうちから活性化して、突然強い尿意が出るようになるのです。
女性は若い時は妊娠や出産で、また、更年期以降は老化と女性ホルモン低下の影響で骨盤底障害になりやすいので、男性よりも多くの発症者がいます。男性の場合も、老化や運動不足で骨盤底筋や尿道括約筋が衰えることによって過活動膀胱になることがあります。
また、男女ともに、脳と膀胱や尿道を結ぶ神経のトラブルで起こる過活動膀胱も増えています。こちらは、脳卒中や脳梗塞(こうそく)などの脳血管障害、パーキンソン病などの脳の障害、脊髄(せきずい)損傷や多発性硬化症などの脊髄の障害が原因となります。
過活動膀胱のほか、切迫性尿漏れは膀胱炎、結石などによって膀胱の刺激性が高まって起こるものもあります。
溢流性尿漏れ
溢流性尿漏れは、排尿障害があって十分に排尿できず、常に膀胱が伸展しているために、一時的な少量の漏れを示す尿漏れ。
排尿障害があって尿が出にくい状態になっていても、新しい尿は腎臓(じんぞう)から次々に膀胱に送られてくるのでたまっていき、膀胱がいっぱいになると尿がチョロチョロと少量ずつあふれて出てきます。
この症状は、前立腺(ぜんりつせん)肥大症による下部尿路閉塞(へいそく)が原因となることが多いので、中高年男性に多くみられます。
前立腺肥大症による排尿トラブルは、膀胱への刺激による頻尿から始まります。前立腺は膀胱から出てすぐの尿道を取り巻いているので、前立腺肥大によって膀胱の出口や尿道への刺激が強くなり、夜中に何度も排尿のために起きるというような頻尿が始まります。同時に、会陰(えいん)部の不快感や圧迫感、尿が出にくいといった症状も現れます。
次に、排尿に際して尿が出切らずに、膀胱にたまる残尿が発生するようになります。この段階では排尿障害が次第に強くなり、息んで腹圧をかけないと出ないようになってきます。さらに、肥大した前立腺によって尿道が狭くなっていくと、慢性尿閉となります。残尿が多くなって膀胱は尿が充満した状態になり、尿意を感じなくなって気付かないうちに尿が少量ずつあふれて漏れる溢流性漏れの状態になります。
ほかには、女性が子宮がんを手術した後、糖尿病や脳血管障害で膀胱が収縮しなくなった場合に、溢流性尿漏れがみられます。
女性の場合は尿が出やすい体の構造なので、男性に比べて溢流性尿漏れの状態になるケースはまれですが、子宮がんや直腸がんの手術の後で一時的に膀胱が収縮しなくなった場合、大きな子宮筋腫(きんしゅ)で膀胱の出口が圧迫され尿閉になった場合、子宮脱や子宮下垂などで尿道が開きづらくなった場合に、溢流性尿漏れがみられます。
また、糖尿病や脊髄(せきずい)損傷、脳血管障害などによって、膀胱を中心とする末梢(まっしょう)神経系が器質的に傷害されると、膀胱が収縮しなくなる神経因性膀胱となり、たまった尿があふれて漏れる溢流性尿漏れがみられます。糖尿病では知覚がまひするために、尿意を感じないまま膀胱が膨らんで、1000ミリリットルもたまることがあります。
溢流性尿漏れがみられると、下着がぬれる、臭いが気になるなど、しばしば不快感を覚えることになります。また、溢流性尿漏れを放置していると、膀胱にたまっている尿に細菌が繁殖して尿路感染症や腎機能障害などを起こしたり、腎不全になることもあります。
反射性尿漏れ
反射性尿漏れは、尿意を感じることができないまま、膀胱に尿が一定量たまると反射的に排尿が起こる状態。
尿意を感じることができないため排尿の抑制ができず、腎臓から尿が膀胱に送られた時に刺激が加わると、膀胱壁の筋肉である排尿筋が反射的に収縮して、自分の意思とは無関係に、不意に尿漏れが起こります。
脳、脊髄など中枢神経系の障害や、交通事故などによる脊髄の損傷などによる後遺症の一つとして、脳の排尿中枢による抑制路が遮断されてしまうことによって起こります。膀胱には物理的に十分な量の尿がたまっているにもかかわらず、尿意が大脳まで伝わらないので尿意を催すことがなく、排尿を自分でコントロールすることができません。
膀胱からの感覚は、脊髄反射により直接的に膀胱括約筋を刺激して、反射的に膀胱収縮を起こして排尿を起こします。漏れ出る尿量は多いことが、特徴です。
逆に、排尿筋が反射的に収縮して膀胱が収縮する時に、外尿道括約筋が弛緩(しかん)せず尿道が閉鎖したままになると、膀胱内の圧力が異常に高くなり、腎臓に尿が逆流する膀胱尿管逆流症を起こします。尿の逆流を放置して進行すると、腎機能障害が起こりやすくなります。
尿漏れは恥ずかしさのため医療機関への受診がためらわれ、尿パッドなどで対処している人も多いようですが、外出や人との交流を控えることにもつながりかねません。次第に日常生活の質が低下することも懸念されます。尿漏れの4タイプによる自分の意思と関係なく尿が一時的に漏れる症状が続くようであれば、泌尿器科を受診することが勧められます。
尿漏れの検査と診断と治療
泌尿器科の医師による診断では、症状および各種検査を総合し、尿漏れの原因を確定します。
一般的には問診、尿検査、超音波検査、血液検査、尿失禁定量テスト(パッドテスト)、尿失禁負荷テスト(ストレステスト)、尿流動態(ウロダイナミクス)検査(膀胱内圧、腹圧、排尿筋圧、外尿道括約筋活動、尿流量測定、残尿測定)、尿路造影検査、内視鏡検査などを行って、尿漏れの原因を探ります。
問診では、出産歴、手術歴、婦人科疾患の有無、便秘の有無、尿漏れの状況などを質問します。切迫性尿漏れの主な原因となる過活動膀胱かどうかを調べるための過活動膀胱スクリーニング質問票(リンク)や、過活動膀胱の症状の程度を調べるための過活動膀胱症状質問票(OABSS)という簡単な質問票を、問診のために使うこともあります。
尿失禁定量テスト(パッドテスト)では、パッドをつけた状態で水分を取ってもらい、せき、くしゃみ、手洗い、足踏みなど腹部に圧迫が加わりやすい動作を行ってもらい、1時間後のパッドの重量増加で尿漏れの程度を確認します。
泌尿器科の医師による治療では、難産を経験した女性、40歳を過ぎた女性で腹圧性尿漏れ、切迫性尿漏れ、その2つが重なる混合性尿漏れを起こしている場合には、尿道、膣(ちつ)、肛門(こうもん)を締める骨盤底筋体操が割合効果的です。肛門の周囲の筋肉を5秒間強く締め、次に緩める簡単な運動で、仰向けの姿勢、いすに座った姿勢、ひじ・ひざをついた姿勢、机に手をついた姿勢、仰向けになり背筋を伸ばした姿勢という5つの姿勢で、20回ずつ繰り返します。
朝、昼、夕、就寝前の4回に分けて、根気よく毎日続けて行うのが理想的です。3カ月以上続けても効果のない場合には、手術が必要となる可能性が高くなります。
骨盤底筋の強化を目的として、電気刺激によって骨盤底筋や尿道括約筋など必要な筋肉を収縮させる電気刺激療法もあります。また、腟内コーンという器具を腟内に15分程度、1日2回ほど保持し、それを徐々に重たいものに変えていくことで骨盤底筋を強化し、症状を軽減する方法もあります。
切迫性尿漏れの主な原因となる過活動膀胱の場合には、できるだけ尿意を我慢して、膀胱を拡大するための訓練をします。毎日訓練すると、膀胱が少しずつ大きくなって尿がためられるようになりますので、200~400mlくらいまでためられるように訓練します。排尿間隔を少しずつ延長させ、2時間くらいは我慢できるようになれば成功です。尿道を締める筋肉の訓練も必要です。
薬物による治療としては、交感神経に働いて膀胱壁の筋肉である排尿筋の収縮を阻止し、尿道括約筋を収縮させる作用のある抗コリン剤(ポラキス、BUP−4)、または排尿筋を弛緩(しかん)させるカルシウム拮抗(きっこう)剤(アダラート、ヘルベッサー、ペルジピン)を用います。抗コリン剤を1~2カ月内服すると、過活動膀胱の80パーセントの発症者で改善されます。状況に応じて、抗うつ薬を用いることもあります。閉経後の女性に対しては、女性ホルモン剤を用いることもあります。
重症例や希望の強い場合などには、手術による治療を行います。尿道括約筋の機能が低下している場合には、尿道の周囲にコラーゲンを注入する治療や、尿道括約筋を圧迫するように腹部の組織や人工線維で尿道を支えるスリング手術、日本ではあまり行われていない人工括約筋埋め込み術などがあります。
溢流性尿漏れの場合は、原因になる疾患の種類によって異なり、基礎疾患があればその治療が第一です。前立腺肥大症や子宮脱、子宮下垂と診断すれば、その治療を行います。また、必要に応じて膀胱を収縮させる薬を用いることもあります。
前立腺肥大症が溢流性尿漏れの原因の場合は、症状が軽い場合は薬物療法から始め、症状がひどい場合や合併症を引き起こしている場合は手術療法を行います。
神経因性膀胱が溢流性尿漏れの原因の場合は、治療が可能ならばまず基礎疾患に対して行いますが、神経の疾患はなかなか治療の難しいことが多く、薬物療法、排尿誘発、自己導尿法などで排尿効率を高めることになります。
自己導尿法は、尿が出にくく残尿が多い場合に、1日に1〜2回、清潔なカテーテルを自分で膀胱内に挿入し、尿を排出させるものです。 これで、とりあえず症状は改善し、外出も容易になります。
反射性尿漏れの場合は、原因となる脊髄損傷がある時に機能を回復させる手術を行うことで、失禁を起こさないようにします。神経の疾患はなかなか治療の難しいことが多く、尿道括約筋の機能が低下している場合には、内視鏡によるコラーゲンなどの注入療法、各種の尿漏れ防止手術を行うこともあります。
尿漏れとは、膀胱(ぼうこう)や尿道、その筋肉や神経に問題がある場合に、自分の意思と関係なく尿が一時的に漏れる状態。尿失禁とも呼ばれます。
尿漏れのうち、一時的な漏れではなく、一日中、常に漏れ続ける尿漏れを真性尿漏れ、または全尿尿漏れと呼びます。真性尿漏れ、全尿尿漏れの代表例として挙げられるのは、尿管開口異常などの先天性尿路奇形によって常に尿が漏れているもの、または手術などの際、尿道括約筋を完全に損傷したものです。
一時的な漏れを示す尿漏れのほうは、腹圧性尿漏れ(緊張性尿漏れ)、切迫性尿漏れ(急迫性尿漏れ)、溢流(いつりゅう)性尿漏れ(奇異尿漏れ)、反射性尿漏れの4タイプに大別されます。
腹圧性尿漏れ
腹圧性尿漏れは、せきやくしゃみ、運動時など、腹部に急な圧迫が加わった時に尿が漏れます。尿意とは無関係に、膀胱にたまった尿が一時的に漏れるもので、その程度はさまざまで、軽度の時は少量の一方で、重度になると多量に尿が漏れることもあります。
腹圧性尿漏れは頻度が高く、中年以降の出産回数の多い女性にしばしば認められるほか、比較的若い女性にもみられます。起こる原因は、膀胱を支え、尿道を締めている骨盤底筋群が加齢や出産、肥満などで緩んで、弱くなったためです。骨盤底筋群の緩みが進むと、子宮脱、膀胱瘤(りゅう)、直腸脱などを合併することもあります。
まれに、放射線治療やがんの手術によって、尿道を締める神経が傷付くことが原因となることもあります。
腹部に急な圧迫が加わるような動作をした時、例えばせきやくしゃみをした時、笑った時、階段や坂道を上り下りした時、重い荷物を持ち上げた時、急に立ち上がった時、走り出した時、テニスやゴルフなどの運動をした時、性交時などに、一時的に尿が漏れます。通常、睡眠中にはみられません。
この骨盤底筋の衰えによる腹圧性尿漏れと、急に強い尿意を感じてトイレに間に合わず尿を漏らしてしまう切迫性尿漏れの両方の症状がみられる場合もあり、混合性尿漏れ(混合型尿漏れ)と呼ばれます。混合性漏れは骨盤底筋群の緩みがベースにあり、膀胱と尿道の両方の機能低下が加わることで起こりやすくなります。そうした症状は加齢により増えてくるので、閉経期から後の高齢の女性に次第に生じる率が高くなります。
切迫性尿漏れ
切迫性尿漏れは、急な強い尿意を催し、トイレにゆく途中やトイレで準備をする間に、尿が漏れます。トイレが近くなる頻尿、夜中に何度もトイレに起きる夜間頻尿が、同時に生じることもあります。
この切迫性尿漏れは、自分の意思に反して勝手に膀胱が収縮する過活動膀胱が主な原因です。普通、膀胱が正常であれば400~500mlの尿をためることが可能で、尿が250~300mlくらいになると尿意を感じて排尿が始まりますが、過活動膀胱では100ml前後の尿がたまると膀胱が収縮するために、突然の尿意を催して、我慢できなくなるのが特徴です。膀胱が正常であれば、尿意を感じ始めて10~15分ぐらいは我慢できることもありますが、過活動膀胱ではそれも難しいとされています。
過活動膀胱の人はとても多く、日本では40歳以上の男女のうち8人に1人は過活動膀胱の症状があり、その約半数に切迫性尿漏れの症状があると報告されています。近年40歳以下でも、過活動膀胱の症状に悩まされている人が大変多くなってきています。
女性が過活動膀胱になる最も多い原因は、膀胱を支え、尿道を締めている骨盤底筋群や骨盤底を構成する靱帯(じんたい)が弱まる骨盤底障害です。骨盤底筋群や靱帯が弱まってたるむと、膀胱の底にある副交感神経の末端が膀胱に尿が十分にたまらないうちから活性化して、突然強い尿意が出るようになるのです。
女性は若い時は妊娠や出産で、また、更年期以降は老化と女性ホルモン低下の影響で骨盤底障害になりやすいので、男性よりも多くの発症者がいます。男性の場合も、老化や運動不足で骨盤底筋や尿道括約筋が衰えることによって過活動膀胱になることがあります。
また、男女ともに、脳と膀胱や尿道を結ぶ神経のトラブルで起こる過活動膀胱も増えています。こちらは、脳卒中や脳梗塞(こうそく)などの脳血管障害、パーキンソン病などの脳の障害、脊髄(せきずい)損傷や多発性硬化症などの脊髄の障害が原因となります。
過活動膀胱のほか、切迫性尿漏れは膀胱炎、結石などによって膀胱の刺激性が高まって起こるものもあります。
溢流性尿漏れ
溢流性尿漏れは、排尿障害があって十分に排尿できず、常に膀胱が伸展しているために、一時的な少量の漏れを示す尿漏れ。
排尿障害があって尿が出にくい状態になっていても、新しい尿は腎臓(じんぞう)から次々に膀胱に送られてくるのでたまっていき、膀胱がいっぱいになると尿がチョロチョロと少量ずつあふれて出てきます。
この症状は、前立腺(ぜんりつせん)肥大症による下部尿路閉塞(へいそく)が原因となることが多いので、中高年男性に多くみられます。
前立腺肥大症による排尿トラブルは、膀胱への刺激による頻尿から始まります。前立腺は膀胱から出てすぐの尿道を取り巻いているので、前立腺肥大によって膀胱の出口や尿道への刺激が強くなり、夜中に何度も排尿のために起きるというような頻尿が始まります。同時に、会陰(えいん)部の不快感や圧迫感、尿が出にくいといった症状も現れます。
次に、排尿に際して尿が出切らずに、膀胱にたまる残尿が発生するようになります。この段階では排尿障害が次第に強くなり、息んで腹圧をかけないと出ないようになってきます。さらに、肥大した前立腺によって尿道が狭くなっていくと、慢性尿閉となります。残尿が多くなって膀胱は尿が充満した状態になり、尿意を感じなくなって気付かないうちに尿が少量ずつあふれて漏れる溢流性漏れの状態になります。
ほかには、女性が子宮がんを手術した後、糖尿病や脳血管障害で膀胱が収縮しなくなった場合に、溢流性尿漏れがみられます。
女性の場合は尿が出やすい体の構造なので、男性に比べて溢流性尿漏れの状態になるケースはまれですが、子宮がんや直腸がんの手術の後で一時的に膀胱が収縮しなくなった場合、大きな子宮筋腫(きんしゅ)で膀胱の出口が圧迫され尿閉になった場合、子宮脱や子宮下垂などで尿道が開きづらくなった場合に、溢流性尿漏れがみられます。
また、糖尿病や脊髄(せきずい)損傷、脳血管障害などによって、膀胱を中心とする末梢(まっしょう)神経系が器質的に傷害されると、膀胱が収縮しなくなる神経因性膀胱となり、たまった尿があふれて漏れる溢流性尿漏れがみられます。糖尿病では知覚がまひするために、尿意を感じないまま膀胱が膨らんで、1000ミリリットルもたまることがあります。
溢流性尿漏れがみられると、下着がぬれる、臭いが気になるなど、しばしば不快感を覚えることになります。また、溢流性尿漏れを放置していると、膀胱にたまっている尿に細菌が繁殖して尿路感染症や腎機能障害などを起こしたり、腎不全になることもあります。
反射性尿漏れ
反射性尿漏れは、尿意を感じることができないまま、膀胱に尿が一定量たまると反射的に排尿が起こる状態。
尿意を感じることができないため排尿の抑制ができず、腎臓から尿が膀胱に送られた時に刺激が加わると、膀胱壁の筋肉である排尿筋が反射的に収縮して、自分の意思とは無関係に、不意に尿漏れが起こります。
脳、脊髄など中枢神経系の障害や、交通事故などによる脊髄の損傷などによる後遺症の一つとして、脳の排尿中枢による抑制路が遮断されてしまうことによって起こります。膀胱には物理的に十分な量の尿がたまっているにもかかわらず、尿意が大脳まで伝わらないので尿意を催すことがなく、排尿を自分でコントロールすることができません。
膀胱からの感覚は、脊髄反射により直接的に膀胱括約筋を刺激して、反射的に膀胱収縮を起こして排尿を起こします。漏れ出る尿量は多いことが、特徴です。
逆に、排尿筋が反射的に収縮して膀胱が収縮する時に、外尿道括約筋が弛緩(しかん)せず尿道が閉鎖したままになると、膀胱内の圧力が異常に高くなり、腎臓に尿が逆流する膀胱尿管逆流症を起こします。尿の逆流を放置して進行すると、腎機能障害が起こりやすくなります。
尿漏れは恥ずかしさのため医療機関への受診がためらわれ、尿パッドなどで対処している人も多いようですが、外出や人との交流を控えることにもつながりかねません。次第に日常生活の質が低下することも懸念されます。尿漏れの4タイプによる自分の意思と関係なく尿が一時的に漏れる症状が続くようであれば、泌尿器科を受診することが勧められます。
尿漏れの検査と診断と治療
泌尿器科の医師による診断では、症状および各種検査を総合し、尿漏れの原因を確定します。
一般的には問診、尿検査、超音波検査、血液検査、尿失禁定量テスト(パッドテスト)、尿失禁負荷テスト(ストレステスト)、尿流動態(ウロダイナミクス)検査(膀胱内圧、腹圧、排尿筋圧、外尿道括約筋活動、尿流量測定、残尿測定)、尿路造影検査、内視鏡検査などを行って、尿漏れの原因を探ります。
問診では、出産歴、手術歴、婦人科疾患の有無、便秘の有無、尿漏れの状況などを質問します。切迫性尿漏れの主な原因となる過活動膀胱かどうかを調べるための過活動膀胱スクリーニング質問票(リンク)や、過活動膀胱の症状の程度を調べるための過活動膀胱症状質問票(OABSS)という簡単な質問票を、問診のために使うこともあります。
尿失禁定量テスト(パッドテスト)では、パッドをつけた状態で水分を取ってもらい、せき、くしゃみ、手洗い、足踏みなど腹部に圧迫が加わりやすい動作を行ってもらい、1時間後のパッドの重量増加で尿漏れの程度を確認します。
泌尿器科の医師による治療では、難産を経験した女性、40歳を過ぎた女性で腹圧性尿漏れ、切迫性尿漏れ、その2つが重なる混合性尿漏れを起こしている場合には、尿道、膣(ちつ)、肛門(こうもん)を締める骨盤底筋体操が割合効果的です。肛門の周囲の筋肉を5秒間強く締め、次に緩める簡単な運動で、仰向けの姿勢、いすに座った姿勢、ひじ・ひざをついた姿勢、机に手をついた姿勢、仰向けになり背筋を伸ばした姿勢という5つの姿勢で、20回ずつ繰り返します。
朝、昼、夕、就寝前の4回に分けて、根気よく毎日続けて行うのが理想的です。3カ月以上続けても効果のない場合には、手術が必要となる可能性が高くなります。
骨盤底筋の強化を目的として、電気刺激によって骨盤底筋や尿道括約筋など必要な筋肉を収縮させる電気刺激療法もあります。また、腟内コーンという器具を腟内に15分程度、1日2回ほど保持し、それを徐々に重たいものに変えていくことで骨盤底筋を強化し、症状を軽減する方法もあります。
切迫性尿漏れの主な原因となる過活動膀胱の場合には、できるだけ尿意を我慢して、膀胱を拡大するための訓練をします。毎日訓練すると、膀胱が少しずつ大きくなって尿がためられるようになりますので、200~400mlくらいまでためられるように訓練します。排尿間隔を少しずつ延長させ、2時間くらいは我慢できるようになれば成功です。尿道を締める筋肉の訓練も必要です。
薬物による治療としては、交感神経に働いて膀胱壁の筋肉である排尿筋の収縮を阻止し、尿道括約筋を収縮させる作用のある抗コリン剤(ポラキス、BUP−4)、または排尿筋を弛緩(しかん)させるカルシウム拮抗(きっこう)剤(アダラート、ヘルベッサー、ペルジピン)を用います。抗コリン剤を1~2カ月内服すると、過活動膀胱の80パーセントの発症者で改善されます。状況に応じて、抗うつ薬を用いることもあります。閉経後の女性に対しては、女性ホルモン剤を用いることもあります。
重症例や希望の強い場合などには、手術による治療を行います。尿道括約筋の機能が低下している場合には、尿道の周囲にコラーゲンを注入する治療や、尿道括約筋を圧迫するように腹部の組織や人工線維で尿道を支えるスリング手術、日本ではあまり行われていない人工括約筋埋め込み術などがあります。
溢流性尿漏れの場合は、原因になる疾患の種類によって異なり、基礎疾患があればその治療が第一です。前立腺肥大症や子宮脱、子宮下垂と診断すれば、その治療を行います。また、必要に応じて膀胱を収縮させる薬を用いることもあります。
前立腺肥大症が溢流性尿漏れの原因の場合は、症状が軽い場合は薬物療法から始め、症状がひどい場合や合併症を引き起こしている場合は手術療法を行います。
神経因性膀胱が溢流性尿漏れの原因の場合は、治療が可能ならばまず基礎疾患に対して行いますが、神経の疾患はなかなか治療の難しいことが多く、薬物療法、排尿誘発、自己導尿法などで排尿効率を高めることになります。
自己導尿法は、尿が出にくく残尿が多い場合に、1日に1〜2回、清潔なカテーテルを自分で膀胱内に挿入し、尿を排出させるものです。 これで、とりあえず症状は改善し、外出も容易になります。
反射性尿漏れの場合は、原因となる脊髄損傷がある時に機能を回復させる手術を行うことで、失禁を起こさないようにします。神経の疾患はなかなか治療の難しいことが多く、尿道括約筋の機能が低下している場合には、内視鏡によるコラーゲンなどの注入療法、各種の尿漏れ防止手術を行うこともあります。
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■用語 尿道上裂 [用語(に)]
生まれ付きのもので、外尿道口が陰茎の背面に開口する尿道奇形
尿道上裂(じょうれつ)とは、先天的な奇形である膀胱外反症のうちの軽症に相当し、外尿道口が陰茎の背面(上面)に開口する状態。
男児の尿道上裂は、外尿道口が亀頭または陰茎幹部の背面もしくは陰茎恥骨移行部に開口している状態のことをいいます。女児の尿道上裂は、外尿道口が陰核と陰唇の間または腹部に開口している状態のことをいいます。
外尿道口がどの程度、通常の位置から外れているかにより、近位型上裂と遠位型上裂とに分類されます。
近位型上裂は男児では陰茎恥骨型、女児では完全型であり、これらは尿道括約筋の欠損により尿失禁を伴います。近位型上裂は遠位型上裂よりも多く、全体の4分の3を占めるといわれています。
遠位型上裂は女児にはまれな状態で、男児では陰茎型と亀頭型とに分類されます。遠位型上裂では、尿失禁のほかにも、頻尿が多発していることが知られています。そのほかの症状としては、膀胱(ぼうこう)尿管逆流症がほとんどの場合に認められ、尿路感染症が起こりやすくなります。
尿道上裂の原因は、先天性の奇形であり、はっきりとはわかっていません。
尿道の先天性の奇形は、男児においては通常、陰茎の解剖学的異常を伴いますが、女児においては、ほかの外性器異常は伴わないことが多いとされています。尿道上裂により引き起こされる機能障害や症状のほとんどは、その形態の異常により引き起こされています。
尿失禁が引き起こされるのは、奇形により膀胱粘膜が体の表面に出ていることが原因とされ、軽度の膀胱外反症と見なされます。
頻尿が多発するのは膀胱の容量が小さいためであり、膀胱尿道逆流症が起こるのは腎臓(じんぞう)から膀胱につながっている尿管口が片側に偏って位置するために起こります。尿路感染症が起こりやすくなる原因は、外尿道口の位置の奇形により粘膜が表面にさらされていることや、膀胱に尿が一杯になった時や排尿する時に尿の尿管、腎盂(じんう)への逆流が起こることによって引き起こされます。
男児では出生時に明らかに外陰部の異常が認められ、放置することで尿失禁や尿路感染症などのさまざまな問題が生じるため、小児泌尿器科医もしくは小児外科医に早期に相談すべきです。
尿道上裂の検査と診断と治療
小児泌尿器科、小児外科の医師による診断では、出生時に外陰部の状態により確定しますが、膀胱尿管逆流症の合併が多いため、膀胱尿道造影などを行います。
膀胱尿道造影は、新生児、乳幼児の場合には麻酔をかけて行います。膀胱に過度の圧をかけないようにして造影剤を膀胱内に注入し、膀胱充満時のX線(レントゲン)撮影を行います。膀胱尿管逆流は排尿時に最も生じやすいため、可能であれば、排尿時に息む際に排尿時膀胱尿道造影を行い、造影剤が尿管および腎盂に逆流しないかどうかを検査します。
小児泌尿器科、小児外科の医師による治療では、奇形部分の外科的形成術を行います。症状が軽い場合でも、見た目上の問題や、尿路感染症の予防のために手術を行うことが多くなっています。
遠位型上裂の場合と近位型上裂の場合とで手術の内容が異なってきており、遠位型上裂の手術では、陰茎背面の外尿道口から亀頭部の先端まで、新尿道を形成するのに必要な皮膚を管状に縫い合わせ、左右の陰茎海綿体の間を割って陰茎腹側に埋め、分割した両側の海綿体を縫い合わせた上で背側の皮膚を縫い合わせます。
近位型上裂の場合は陰茎の外科的再建だけでは、膀胱尿管逆流症の合併が非常に多く、失禁が残存する可能性があるため、両側の尿管口を上方に移動させるようにして膀胱尿管逆流術を行い、同時に膀胱頸部(けいぶ)を縫い縮める形成術を行います。
尿道上裂(じょうれつ)とは、先天的な奇形である膀胱外反症のうちの軽症に相当し、外尿道口が陰茎の背面(上面)に開口する状態。
男児の尿道上裂は、外尿道口が亀頭または陰茎幹部の背面もしくは陰茎恥骨移行部に開口している状態のことをいいます。女児の尿道上裂は、外尿道口が陰核と陰唇の間または腹部に開口している状態のことをいいます。
外尿道口がどの程度、通常の位置から外れているかにより、近位型上裂と遠位型上裂とに分類されます。
近位型上裂は男児では陰茎恥骨型、女児では完全型であり、これらは尿道括約筋の欠損により尿失禁を伴います。近位型上裂は遠位型上裂よりも多く、全体の4分の3を占めるといわれています。
遠位型上裂は女児にはまれな状態で、男児では陰茎型と亀頭型とに分類されます。遠位型上裂では、尿失禁のほかにも、頻尿が多発していることが知られています。そのほかの症状としては、膀胱(ぼうこう)尿管逆流症がほとんどの場合に認められ、尿路感染症が起こりやすくなります。
尿道上裂の原因は、先天性の奇形であり、はっきりとはわかっていません。
尿道の先天性の奇形は、男児においては通常、陰茎の解剖学的異常を伴いますが、女児においては、ほかの外性器異常は伴わないことが多いとされています。尿道上裂により引き起こされる機能障害や症状のほとんどは、その形態の異常により引き起こされています。
尿失禁が引き起こされるのは、奇形により膀胱粘膜が体の表面に出ていることが原因とされ、軽度の膀胱外反症と見なされます。
頻尿が多発するのは膀胱の容量が小さいためであり、膀胱尿道逆流症が起こるのは腎臓(じんぞう)から膀胱につながっている尿管口が片側に偏って位置するために起こります。尿路感染症が起こりやすくなる原因は、外尿道口の位置の奇形により粘膜が表面にさらされていることや、膀胱に尿が一杯になった時や排尿する時に尿の尿管、腎盂(じんう)への逆流が起こることによって引き起こされます。
男児では出生時に明らかに外陰部の異常が認められ、放置することで尿失禁や尿路感染症などのさまざまな問題が生じるため、小児泌尿器科医もしくは小児外科医に早期に相談すべきです。
尿道上裂の検査と診断と治療
小児泌尿器科、小児外科の医師による診断では、出生時に外陰部の状態により確定しますが、膀胱尿管逆流症の合併が多いため、膀胱尿道造影などを行います。
膀胱尿道造影は、新生児、乳幼児の場合には麻酔をかけて行います。膀胱に過度の圧をかけないようにして造影剤を膀胱内に注入し、膀胱充満時のX線(レントゲン)撮影を行います。膀胱尿管逆流は排尿時に最も生じやすいため、可能であれば、排尿時に息む際に排尿時膀胱尿道造影を行い、造影剤が尿管および腎盂に逆流しないかどうかを検査します。
小児泌尿器科、小児外科の医師による治療では、奇形部分の外科的形成術を行います。症状が軽い場合でも、見た目上の問題や、尿路感染症の予防のために手術を行うことが多くなっています。
遠位型上裂の場合と近位型上裂の場合とで手術の内容が異なってきており、遠位型上裂の手術では、陰茎背面の外尿道口から亀頭部の先端まで、新尿道を形成するのに必要な皮膚を管状に縫い合わせ、左右の陰茎海綿体の間を割って陰茎腹側に埋め、分割した両側の海綿体を縫い合わせた上で背側の皮膚を縫い合わせます。
近位型上裂の場合は陰茎の外科的再建だけでは、膀胱尿管逆流症の合併が非常に多く、失禁が残存する可能性があるため、両側の尿管口を上方に移動させるようにして膀胱尿管逆流術を行い、同時に膀胱頸部(けいぶ)を縫い縮める形成術を行います。
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■用語 新生児エリテマトーデス [用語(さ行)]
新生児に円板状の紅斑、時に肝機能異常、血球減少などの全身症状を生じる疾患
新生児エリテマトーデスとは、慢性円板状エリテマトーデに似た円板状の紅斑(こうはん)、もしくはシェーグレン症候群に随伴する円板状の紅斑によく似た症状を、誕生時から誕生後1カ月以内に生じる疾患。新生児紅斑性狼瘡(こうはんせいろうそう)とも呼ばれます。
紅斑は顔面を中心にして、頭部、胸部、四肢などに生じますが、6カ月程度経過するころには、軽度の色素沈着を残して消失してゆきます。しかし、皮膚の症状とともに、膠原(こうげん)病の代表的な疾患で全身性の症状を伴う全身性エリテマトーデスの特徴である溶血性貧血や、肝臓と脾臓(ひぞう)が肥大する肝脾腫(しゅ)、血小板減少、白血球減少、発熱といった全身症状を生じることがあります。
まれには、皮膚症状、全身症状とともに、不可逆性の先天性に脈が乱れる房室ブロック(2度房室ブロック、AVブロック)、あるいは完全房室ブロック(3度房室ブロック)を生じることがあります。新生児エリテマトーデスの新生児の1〜 2%で、房室ブロックを伴うとされています。
房室ブロックは不可逆性の重篤な心伝導障害ですが、それ以外の皮膚症状、肝機能障害、血液障害は一過性の可逆的な障害で、誕生後1年以内に自然に治癒し、持続的な後遺症は残りません。しかし、新生児エリテマトーデスの子供が成長した後、成人期に全身性エリテマトーデスを発症することも、ないわけではありません。
新生児エリテマトーデスは極めてまれな疾患で、全身性エリテマトーデスやシェーグレン症候群に罹患した母親、あるいは時に無症状の母親から、母親由来の自己抗体が胎盤を経て、胎児に移行することによって発症します。抗SS-A抗体、抗SS-B抗体が原因といわれており、特に抗SS-A抗体は皮膚症状に関与しています。
6カ月程度経過すると紅斑を生じる皮膚症状に改善がみられ、その際、母親由来の抗SS-A抗体、抗SS-B抗体も新生児から消失するため、これらの抗体の関与が指摘されています。
新生児エリテマトーデスは出生前に診断することが可能で、適正な治療を行うことで、新生児を最適な健康状態に導くこともできます。例えば、出生前に徐脈心不全が進行する先天性房室ブロックが胎児に見付かった場合は、リトドリンという治療薬の点滴や錠剤による母親への投与が胎児の心拍数増加、心機能改善、子宮収縮抑制作用を有し、出生後のイソプロテレノールという徐脈、房室ブロックの治療薬への反応の予測にも役立つ治療法です。
先天性房室ブロックを随伴している新生児エリテマトーデスの新生児に対しては、出生直後から発症する高度の呼吸循環不全を乗り切るため、産科、新生児科、循環器科、心臓外科が連携して、呼吸管理、抗心不全療法を行います。房室ブロックを伴う新生児エリテマトーデスの新生児の死亡率は15~22%で、新生児の時期を乗り越えると予後はよくなります。
新生児エリテマトーデスの検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、免疫血清や血液の検査を行います。免疫血清検査では、高頻度にみられる血清中の抗SS-A抗体、抗SS-B抗体を調べます。また、血液検査によって 貧血の程度や白血球減少、血小板減少の有無を調べます。
併せて、皮膚生検も行います。顔面の頬(ほお)などの紅斑の皮膚症状が出ている部位から米粒大の皮膚組織を採取して顕微鏡を用いて判断する病理組織検査で、事前に眠り薬を点滴で投与してから、組織を採取します。
母親由来の自己抗体が発症の原因と見なされているので、母親の問診、血液検査をすることもあります。自覚症状を認めていない母親に、採血にて抗SS-A抗体と抗SS-B抗体陽性が指摘されたり、膠原病である全身性エリテマトーデスやシェーグレン症候群の可能性が指摘されることもあります。
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、基本的には皮膚症状、全身症状ともに、対症療法を中心に行います。皮膚症状に対しては、ステロイド薬(副腎〔ふくじん〕皮質ステロイド薬)の軟こうを直接塗ることが一般的です。目立つほど顔にできている場合や、頭皮の脱毛がひどい場合は、内服のステロイド薬を使用します。
全身性エリテマトーデスを合併する場合には、内臓の炎症に対して内服のステロイド薬が有効で、効果を発揮しています。
円板状の紅斑の悪化を防ぐためには、紫外線を避ける必要があります。肌の露出を控えるために、日焼け止めや帽子、長袖(ながそで)などの対策が大切です。肌に過剰な刺激を与えることも悪影響なので、かゆみがある時でもかいたり刺激を与えないように気を付ける必要があります。薬を塗る時なども、手を洗い清潔な状態で塗るようにします。
先天性房室ブロックに対しては、恒久型ペースメーカーの植え込みが適用されることもあります。ペースメーカーは、正常よりも脈が遅くなる徐脈時には電気刺激を出して心臓の拍動を調整するもので、脈の状態は心臓の中に留置したリード線を通して察知します。手術で、ライターほどの大きさのペースメーカーを鎖骨の下に埋め込みます。
新生児エリテマトーデスとは、慢性円板状エリテマトーデに似た円板状の紅斑(こうはん)、もしくはシェーグレン症候群に随伴する円板状の紅斑によく似た症状を、誕生時から誕生後1カ月以内に生じる疾患。新生児紅斑性狼瘡(こうはんせいろうそう)とも呼ばれます。
紅斑は顔面を中心にして、頭部、胸部、四肢などに生じますが、6カ月程度経過するころには、軽度の色素沈着を残して消失してゆきます。しかし、皮膚の症状とともに、膠原(こうげん)病の代表的な疾患で全身性の症状を伴う全身性エリテマトーデスの特徴である溶血性貧血や、肝臓と脾臓(ひぞう)が肥大する肝脾腫(しゅ)、血小板減少、白血球減少、発熱といった全身症状を生じることがあります。
まれには、皮膚症状、全身症状とともに、不可逆性の先天性に脈が乱れる房室ブロック(2度房室ブロック、AVブロック)、あるいは完全房室ブロック(3度房室ブロック)を生じることがあります。新生児エリテマトーデスの新生児の1〜 2%で、房室ブロックを伴うとされています。
房室ブロックは不可逆性の重篤な心伝導障害ですが、それ以外の皮膚症状、肝機能障害、血液障害は一過性の可逆的な障害で、誕生後1年以内に自然に治癒し、持続的な後遺症は残りません。しかし、新生児エリテマトーデスの子供が成長した後、成人期に全身性エリテマトーデスを発症することも、ないわけではありません。
新生児エリテマトーデスは極めてまれな疾患で、全身性エリテマトーデスやシェーグレン症候群に罹患した母親、あるいは時に無症状の母親から、母親由来の自己抗体が胎盤を経て、胎児に移行することによって発症します。抗SS-A抗体、抗SS-B抗体が原因といわれており、特に抗SS-A抗体は皮膚症状に関与しています。
6カ月程度経過すると紅斑を生じる皮膚症状に改善がみられ、その際、母親由来の抗SS-A抗体、抗SS-B抗体も新生児から消失するため、これらの抗体の関与が指摘されています。
新生児エリテマトーデスは出生前に診断することが可能で、適正な治療を行うことで、新生児を最適な健康状態に導くこともできます。例えば、出生前に徐脈心不全が進行する先天性房室ブロックが胎児に見付かった場合は、リトドリンという治療薬の点滴や錠剤による母親への投与が胎児の心拍数増加、心機能改善、子宮収縮抑制作用を有し、出生後のイソプロテレノールという徐脈、房室ブロックの治療薬への反応の予測にも役立つ治療法です。
先天性房室ブロックを随伴している新生児エリテマトーデスの新生児に対しては、出生直後から発症する高度の呼吸循環不全を乗り切るため、産科、新生児科、循環器科、心臓外科が連携して、呼吸管理、抗心不全療法を行います。房室ブロックを伴う新生児エリテマトーデスの新生児の死亡率は15~22%で、新生児の時期を乗り越えると予後はよくなります。
新生児エリテマトーデスの検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、免疫血清や血液の検査を行います。免疫血清検査では、高頻度にみられる血清中の抗SS-A抗体、抗SS-B抗体を調べます。また、血液検査によって 貧血の程度や白血球減少、血小板減少の有無を調べます。
併せて、皮膚生検も行います。顔面の頬(ほお)などの紅斑の皮膚症状が出ている部位から米粒大の皮膚組織を採取して顕微鏡を用いて判断する病理組織検査で、事前に眠り薬を点滴で投与してから、組織を採取します。
母親由来の自己抗体が発症の原因と見なされているので、母親の問診、血液検査をすることもあります。自覚症状を認めていない母親に、採血にて抗SS-A抗体と抗SS-B抗体陽性が指摘されたり、膠原病である全身性エリテマトーデスやシェーグレン症候群の可能性が指摘されることもあります。
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、基本的には皮膚症状、全身症状ともに、対症療法を中心に行います。皮膚症状に対しては、ステロイド薬(副腎〔ふくじん〕皮質ステロイド薬)の軟こうを直接塗ることが一般的です。目立つほど顔にできている場合や、頭皮の脱毛がひどい場合は、内服のステロイド薬を使用します。
全身性エリテマトーデスを合併する場合には、内臓の炎症に対して内服のステロイド薬が有効で、効果を発揮しています。
円板状の紅斑の悪化を防ぐためには、紫外線を避ける必要があります。肌の露出を控えるために、日焼け止めや帽子、長袖(ながそで)などの対策が大切です。肌に過剰な刺激を与えることも悪影響なので、かゆみがある時でもかいたり刺激を与えないように気を付ける必要があります。薬を塗る時なども、手を洗い清潔な状態で塗るようにします。
先天性房室ブロックに対しては、恒久型ペースメーカーの植え込みが適用されることもあります。ペースメーカーは、正常よりも脈が遅くなる徐脈時には電気刺激を出して心臓の拍動を調整するもので、脈の状態は心臓の中に留置したリード線を通して察知します。手術で、ライターほどの大きさのペースメーカーを鎖骨の下に埋め込みます。
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