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■優生保護法による不妊手術の強制、全国初の提訴へ 宮城県の60歳代女性 [健康ダイジェスト]

 1948年から1996年まで施行された「優生保護法」に基づき、知的障害を理由に同意のないまま不妊手術を強制されたのは憲法違反だとして、宮城県内の60歳代の女性が、国に損害賠償や謝罪を求めて2018年1月に仙台地方裁判所に提訴することが3日、明らかになりました。
 旧法に基づく不妊手術は同意がある約8500件を含め、全国で約2万5000件確認されていますが、国への提訴は初めて。
 関係者によると、女性は重い知的障害があり、10歳代で不妊手術を受けました。事前に医師側から手術の説明はなかったといいます。女性は手術後、腹部に痛みを訴えて入院。悪性の卵巣嚢腫(のうしゅ)が見付かり、右卵巣を摘出しました。
 不妊手術が原因で結婚も破談になり、現在も独身で、女性側は「旧法は個人の尊厳や幸福追求の権利を保障する憲法に違反する」と主張する見通し。
 女性の代理人を務める新里宏二弁護士は、「声を上げたくても、上げられない被害者は多い。訴訟を通じ、全国に問題提起したい」と述べました。損害賠償の請求額は、今後決めるといいます。
 女性は2017年6月、義理の姉とともに宮城県に対し、不妊手術について記録した「優生手術台帳」の情報開示を請求。7月に全国で初めて開示され、手術を受けたのが1972年12月で当時15歳だったことや、疾患が「遺伝性の知的障害」だったことが判明しました。
 旧優生保護法は、精神疾患や遺伝性疾患がある男女に対し、医師が必要と判断すれば、都道府県の審査会を経て人工妊娠中絶や、本人の同意がない不妊手術を認めました。1996年に障害者差別に該当する条文が削除され、母体保護法に改定されました。改定までに不妊手術約2万5000件のほか、人工妊娠中絶も約5万9000件に上ります。
 2016年には国連の女性差別撤廃委員会が、被害者が法的救済を受けられるよう日本政府に勧告。日弁連も2017年2月、国に実態調査や謝罪を求める意見書を出しましたが、国は「当時は適法だった」と応じていません。

 2017年12月3日(日)

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■たばこ税、1本当たり3円増税へ 来年10月から3年間で段階的に [健康ダイジェスト]

 来年度の税制改正を議論している自民党税制調査会は、「紙巻きたばこ」にかけられている「たばこ税」を来年10月から2021年度まで、段階的に1本当たり3円増税する方針を固めました。
 一般的な「紙巻きたばこ」にかけられている「たばこ税」は現在、一部を除いて、1本当たり12・2円となっていますが、自民党税制調査会は厳しい財政状況を踏まえ、社会保障などに充てる財源を確保するため、引き上げに向けて検討を進めてきました。
 その結果、増税によって消費が減少し、税収が落ち込むことを避けるため、来年10月から2021年度まで、段階的に1本当たり3円増税する方針を固めました。
 たばこ増税は、2010年度に1本3・5円(1箱で70円)引き上げられて以来、8年ぶりとなります。今回は一度に増税せず、来年10月に1本当たり1円増税し、2019年度は消費税率が10 %に引き上げられるため増税を見送り、2020年度と2021年度にそれぞれ1円ずつ増税するとしています。
 2015年度のたばこ税収は約2・2兆円で、1本当たり3円の増税が実現されれば、2000億円から3000億円程度の増収になると見込んでいます。 
 自民党税制調査会は公明党とも調整を進めた上で、今月14日に取りまとめを予定している税制改正大綱に盛り込みたいとしています。
 自民党税制調査会は、通常のたばこより税金が安く設定されている「加熱式たばこ」も来年10月から増税する方針ですが、健康への悪影響が比較的小さいとして与党内には増税に慎重な声もあり、増税額などの調整を続けます。

 2017年12月3日(日)

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■京大とアステラス製薬、iPS創薬分野で連携 企業の技術とノウハウを取り込み [健康ダイジェスト]

 京都大学iPS細胞研究所(山中伸弥所長)はアステラス製薬と創薬分野で提携し、共同研究を開始しました。
 今後5年間のプロジェクトで、アステラス製薬が研究費用と創薬の候補物質を探し出すノウハウを提供。京大が持つiPS細胞を体の細胞に育てる技術などと組み合わせ、共同で効率的な医薬品開発を目指します。京大は製薬大手と組むことで、研究成果の早期実用化に弾みをつけます。
 京大iPS研が創薬研究を強化する目的で設置した創薬技術開発室に、アステラス製薬が研究者数人を派遣。同室にアステラス製薬の技術やノウハウを取り込み、創薬に欠かせない候補物質を探索する拠点として機能させる狙いがあります。京大iPS研の研究者全員が、アステラス製薬の創薬の基盤技術を広く活用できるようになります。
 研究対象は、アステラス製薬と京大iPS研がともに強みを持つ腎臓や免疫、神経、筋肉などとみられます。アステラス製薬が拠出する研究費は、明らかにしていません。
 京大は今年、患者由来のiPS細胞を用いた創薬で医師主導治験を始めるなど実績を積んできました。製薬大手のノウハウを取り込み、成果を量産する体制づくりを急ぎます。
 製薬企業が1つの新薬を開発する費用は1000億円を超え、今後も上昇傾向が続くとされます。動物実験をクリアしても人で効果が確かめられないなどの理由から治験の途中で開発を断念する場合もあり、開発効率を高めるのは喫緊の課題となっています。
 患者由来のiPS細胞などを使って培養皿上で病気を再現すれば、短期間に低コストで薬の候補物質を見付けられると期待されています。
 京大iPS研は2015年には、武田薬品工業と10年で200億円を拠出する共同研究契約を結びました。武田の湘南研究所(神奈川県藤沢市)に京大の主任研究者8人を派遣し、iPS細胞技術の医療応用を目指しています。

 2017年12月3日(日)

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■用語 尿道脱 [用語(に)]

[トイレ]尿道の粘膜が尿道の外側にめくれるように脱出する疾患
 尿道脱とは、尿道の出口の粘膜が尿道の外側にめくれて飛び出す良性の疾患。
 小さな女児や高齢の女性にみられます。下着や、排尿後にふいたトイレットペーパーに血液が付いたことにより、気付くことが多いようです。
 また、尿道脱が大きくなると、大豆(だいず)大の腫瘍(しゅりゅう)のように見え、尿道の出口の赤い粘膜の突出に触れることができます。異物があるように感じることもあります。
 尿が出にくくなったり、脱出した粘膜が締め付けられると痛みが起きたりすることもあります。しばしば尿失禁や頻尿の症状もあります。
 よく似ているものに尿道カルンクルがあり、こちらは中高年女性の尿道出口の6時方向にできる赤色または暗褐色の良性の小さな腫瘍(しゅよう)で、やはり出血などで気付くことが多いようです。
 尿道カルンクルでは、腫瘍は1カ所で尿道の壁につながっているのに対し、尿道脱ではゴムホースの先端を外側にまくったように、尿道の出口の粘膜全周が反転して外側に飛び出します。指で脱出部分を尿道の中に押し戻すと、整復できることがあります。
 尿道脱は、生まれ付き尿道や骨盤内の組織が弱いことも原因の1つです。高齢の女性の場合は、出産時の外陰部の損傷や閉経後の女性ホルモン不足なども原因となっています。
 尿道は一番内側が粘膜で、その外側が内縦走筋、外輪状筋となっており、これら2つの筋肉の間が緩くなって尿道脱が生じると考えられています。せきや便秘などで腹圧をかけることが多い女性は、尿道脱を起こしたり、症状を悪化させたりします。
[トイレ]尿道脱の検査と診断と治療
 泌尿器科、ないし小児泌尿器科の医師による診断では、尿道脱の症状が見受けられる場合、排尿記録を何日分かに分けて、患者に行ってもらいます。また、排尿の勢いや残尿があるかどうかをチェックする尿流・残尿検査を行ったり、尿流動態検査、鎖膀胱(ぼうこう)尿道造影というレントゲン造影検査を追加して行ったりします。
 高齢の女性では、尿道カルンクルなどの尿道腫瘍、尿管の下端部の膀胱につながる部分が膀胱内で袋状に膨らむ尿管瘤(りゅう)との鑑別を膀胱鏡を用いて行います。
 泌尿器科、ないし小児泌尿器科の医師による治療では、まず、女性ホルモン剤の軟こうやステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)の軟こうの外用を行います。日本では、女性ホルモン剤の軟こうを医療機関で処方することが難しく、まずはステロイド剤の軟こうを使うことが多いようです。これらの軟こうは症状を改善させますが、67%で再発するといわれています。
 軟こうによる治療で、尿道粘膜の飛び出しが大きくならず、出血や痛みの症状が現れなくなれば、経過を観察します。腹圧をかけると症状を悪くさせるので、便秘を改善させたり、腹圧をかけるような動作も長く続けないように気を付けます。
 また、脱出した尿道粘膜を外側から尿道の中に押し戻し、整復を維持する治療法を行うこともあります。具体的には、膣(ちつ)内に脱出した尿道粘膜の整復を維持するペッサリーという器具を挿入したり、ケーゲル体操を行うことによって、尿道粘膜の整復に必要な骨盤部の筋肉を鍛えたりします。
 ケーゲル体操は、排尿を途中で止める時のように、腟、尿道、直腸の周囲の筋肉に力を入れて約10秒間引き締め、次に力を抜いて約10秒間緩めます。この動作を10〜20回繰り返すのを1セットとして、1日に3セット以上行います。
 軟こうによる治療、整復を維持する治療に効果がみられず、再発したり、出血や痛み、排尿困難などの症状が出る場合は、外科手術の選択もあります。手術は麻酔をかけて、めくれて飛び出している尿道粘膜を切除し、外側の皮膚と内側の尿道粘膜を縫い合わせます。
 状況により全身麻酔もしくは脊椎(せきつい)麻酔で行い、手術に要する時間は30分程度。合併症は少なく、手術中の出血や感染症などが生じる可能性もありますが、程度は軽いものです。手術後はまれに、尿があちこちに飛び散るようになることがあります。
 手術前日に入院し、手術後2、3日は排尿のための管を膀胱内に入れて置くので、5、6日の入院が必要です。手術を行って再発することは少なく、飛び出している尿道粘膜を切除するのみですので、尿道が短くなるようなことはありません。

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■用語 尿道カルンクル [用語(に)]

[トイレ]女性の外尿道口付近の後壁にできる良性腫瘍
 尿道カルンクルとは、主に中高年女性の尿が体外に出る外尿道口付近の尿道後壁にできる良性の小さな腫瘍(しゅよう)。尿道カルンクラとも呼ばれます。
 中年以降の女性の良性の尿道腫瘍としては最も多く、赤色または暗褐色で、5ミリから1センチほどの大豆(だいず)くらいの大きさで、比較的軟らかい腫瘍です。尿道に付着している本体が、外尿道口からはみ出しています。
 症状としては、排尿時の尿道出血、血尿が多く、排尿痛があることもあります。また、腫瘍には血管が多いため触れると容易に出血し、疼痛(とうつう)があります。腫瘍が小さい場合には、自覚症状がないことも少なくなく、排尿後にトイレットペーパーに血液が付着したり、下着にこすれて血液が付着したりすることで気付きます。
 自転車に乗ったり、きついズボンをはいたりする物理的な刺激によって炎症を起こし、腫瘍が大きくなることもあります。
 現在のところ、原因ははっきりとしていませんが、便秘や多産、閉経による女性ホルモンの低下などが関係しているのではないかという考え方もあります。
[トイレ]尿道カルンクルの検査と診断と治療
 泌尿器科の医師による診断では、視診のみを行うことで判断を下します。尿検査を行って、血尿や尿路感染の有無を確認することもあります。視診で鑑別すべき疾患としては、尿道腫瘍(しゅよう)、尿道脱、尿道がんなどがあります。
 泌尿器科の医師による治療では、炎症を抑える副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤) 含有軟こうを使うほか、女性ホルモン剤を局所的に投与することもあります。痛みがある場合は、鎮痛剤を使うこともあります。細菌感染している場合は、抗生物質(抗生剤、抗菌剤)を使います。
 炎症が治まることで腫瘍が縮小すれば、良性の腫瘍で悪性化することはないため、経過を観察します。日常生活では、下着に触れるなどの刺激が繰り返されれば再び大きくなるので、自転車に乗ったり、きついズボンをはいたりするのを避けることが望まれます。
 炎症が治まらず出血と痛みを繰り返す場合、下着が汚れるのが気になる場合は、手術で腫瘍を切除し、摘出する選択もあります。局所的な麻酔で切除、摘出する短時間の手術で、日帰りも可能です。
 手術後は、排尿後に外尿道口付近を強くこすってふかないようにしたり、清潔を保てるようにハイアミンなどでしばらく消毒するようにします。
 似ているものに、尿道内の粘膜がめくれて外に出る尿道脱があります。治療法はほぼ同じですが、こちらは痛みを伴うことも多く、また、軟こうなどでは治りにくいため、多くは手術で切除、摘出します。

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■用語 アカントアメーバ角膜炎 [用語(あ)]

[眼鏡]アカントアメーバが原因で起こる角膜感染症
 アカントアメーバ角膜炎とは、アメーバと呼ばれる微生物の一種であるアカントアメーバが角膜に感染して起こる疾患。
 角膜は、黒目の表面を覆う透明な無血管組織で、4つの異なった層からなっています。外界の光が目の中に入る入り口となるとともに、目の屈折力の約7割を担うレンズとしての役割も果たしています。三叉(さんさ)神経が多岐に分布し、知覚が非常に鋭敏であるという特徴があり、厚さ1ミリながら目の中の組織を守るために膠原線維(こうげんせんい)というとても丈夫な線維組織で作られています。
 この角膜は、常に外界と接して空気にさらされているために乾燥したり、ほこりが付いたりします。そこで、まばたきというまぶたの動きによって、常にその表面を涙で湿らして、ほこりを取り除き、細菌やかび、ウイルス、アメーバなどの侵入を防いでいます。しかし、目にゴミが入ったり、目を強くこすったり、涙の出る量が少なくて角膜が乾燥したりすると、角膜の表面に傷が付いて、傷口から細菌などが侵入し、感染を起こします。
 土の中にも、空気の中にも、水の中にも広く存在し、家の中のほこりにも、水道水の中にも存在しているアカントアメーバが角膜に侵入し、感染を起こすことはまれですが、角膜の感染症の中では最も重症です。多くは、アカウントアメーバで汚染されたコンタクトレンズを使用することによって生じます。
 アカントアメーバ角膜炎は、非常にゆっくりと進行していくため、感染の初期には、涙や目やにが多くなる程度です。1週間くらい経過すると、角膜の中央部分に丸い形の混濁と目の痛みが起こります。さらに症状が進むと、目の痛みは寝るのもつらいほどの非常に強いものに代わり、涙の量もさらに増えます。加えて、上下のまぶたの裏側と、眼球の表面から黒目の周囲までを覆っている結膜下の白目の部分の慢性的な充血、角膜の輪状潰瘍(かいよう)、輪状浸潤、円板状角膜炎などを起こします。
 視力の低下は初期は軽度ですが、徐々に見にくくなり、進行すると重度の視力障害となり、失明の恐れもあります。
[眼鏡]アカントアメーバ角膜炎の検査と診断と治療
 眼科の医師による診断では、細隙灯(さいげきとう)顕微鏡で角膜を観察して診断を行います。一般的に、病変部は混濁するとともに、病変周囲の角膜組織には浮腫(ふしゅ)が生じています。感染性の角膜炎の可能性がある場合は、組織を採取して病原体を調べる生検を実施します。
 アカントアメーバの場合は特殊な病原体であり、また、アカントアメーバ角膜炎はまれな疾患であるだけに、大きな総合病院の眼科でも検査が困難なことが多い点が問題になっています。
 眼科の医師による治療では、原則として、原因となる病原体を同定し、感受性を示す抗菌剤を必要かつ十分に投与します。ただし、病原体の同定や薬剤感受性試験結果が出るまでには一定の日時を要するため、病歴や細隙灯顕微鏡所見などから病原体を想定して、適切な治療を迅速かつ集中的に開始する必要があります。
 アカントアメーバを病原体と想定した場合は、特効薬がないため、少しでも効果のある抗真菌剤や消毒薬を点眼するのに加えて、感染した角膜表面を何度も削る治療を併用します。極めて治りにくいのが特徴で、 根治には何カ月もかかることがまれではありません。
 アカントアメーバをすべて取り除き、感染そのものの治療が完了した後も、角膜の融解が原因で、瘢痕(はんこん)性の角膜混濁が残る場合があり、視力の大幅な低下の恐れがあります。ひどい角膜混濁が残って失明の恐れがある場合には、角膜移植などの手術治療が必要となることがあります。
 アカウントアメーバは非常に感染しにくい病原体ですが、いったん感染すると、失明の恐れがある角膜炎となり、眼科の医師による診断と治療は困難を極めますので、予防のためには正しいコンタクトレンズの使用が大切です。
 コンタクトレンズに触れる際には、しっかりと手を洗い、外からアカントアメーバを持ち込まないことです。次に、毎日使い捨てにしなければならないコンタクトレンズを再度装用しないこと、再装用可能なコンタクトレンズの場合は、決められた時間を超えての長時間の装用をしないこと、こすり洗いやすすぎなど洗浄の決められた用法と回数を必ず守ること、コンタクトレンズのケースは3カ月程度で交換することです。

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■他人の間葉系幹細胞を使う再生治療薬、膝の軟骨向け治験開始 ツーセルと中外製薬 [健康ダイジェスト]

 広島大学発の創薬ベンチャー、ツーセル(広島市南区)は、膝の軟骨を再生する細胞治療薬の臨床試験(治験)を始めました。別の人の細胞を使う中外製薬との共同開発で、患者の細胞を採取・培養するよりもコストや時間がかかりません。
 1年間かけて北海道や福岡県、大阪府、千葉県などの病院で70症例を手掛け、2019年中に国内での製造販売の承認を取得し、2020年の発売を目指します。
 新薬の製品化に向けた治験は、大きく3段階に分かれます。今回、ツーセルが行うのは第3相(フェーズ3)の治験で、多数の患者を対象にして、新薬の安全性や効用について既存の治療方法などと比較します。
 11月末に、膝の軟骨を再生する細胞治療薬の第3相治験で、最初の患者の手術が実施されました。今後、提携する各地の病院と連携し、新薬を使った手術と比較対象となる治療法を合わせて70症例実施します。治験の対象となるのは、外傷性軟骨損傷や離断性骨軟骨炎の患者。治療後、1年間の経過観察をして審査します。治験が順調に進めば、最短で2020年ごろに国内での販売にこぎ着けます。
 国内の再生医療製品の実用化例は現在、患者自身の細胞から培養した細胞を使う「自家移植」のものしかありません。ツーセルの再生医療製品は、他人の細胞から培養した間葉系幹細胞(MSC)を使う「他家移植」での実用化を目指しています。あらかじめ培養しておいた他人由来の細胞を使う場合、自家移植と比べ費用や手術にかかる時間も大幅に短縮できます。ツーセルの技術では、1人の細胞から1000人から1万人分のMSCを作製できる可能性があるといいます。
 一方、他人の細胞を移植した場合は、体内から取り除こうとする「拒絶反応」が懸念されます。ツーセルでは、血清を使わずにMSCを培養するなど研究を重ね、拒絶反応が起きにくいMSCを供給する技術を整えています。
 ツーセルは2003年の設立で、今回治験に入った膝の軟骨を再生する細胞治療薬は初の製品化となる可能性があります。製品化となった場合は、量産化のための工場を広島県内に建設する方針。
 MSCを活用した再生医療の裾野拡大も進めます。大塚製薬からも出資を受けており、脳梗塞を含む中枢神経疾患領域の研究開発にも着手しています。
 間葉系幹細胞(MSC)は、人の骨髄や脂肪、滑膜(関節周囲の膜)などに含まれる細胞で、骨、軟骨、脂肪、神経などへ分化する能力を持っていて、最近では神経や腎臓(じんぞう)、膵臓(すいぞう)などにも分化できる能力を持つことがわかってきました。ES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞(人工多能性幹細胞)のようにどんな細胞にも分化するわけではありませんが、細胞のがん化リスクが低いなどのメリットもあります。

 2017年12月3日(日)

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