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■膝軟骨修復の再生医療実用化へ向けて治験を開始 大阪大と中外製薬など [健康ダイジェスト]

 大阪大学と中外製薬(東京都中央区)などの研究チームは、膝の軟骨を損傷した患者に、他人の細胞から作った組織を移植して治療する臨床試験(治験)を始めたと発表しました。
 膝の軟骨は、激しい運動や加齢に伴って損傷してもほとんど再生しないため、治療が難しいという課題がありました。治験では、別の患者の手術で出た不要な膝の組織から、軟骨などに変化する「間葉系幹細胞」を採取して培養。厚さ約3ミリの組織を作り、患者の軟骨に貼り付けます。
 これまでに患者自身の間葉系幹細胞から作った組織で5例の移植を行い、いずれも半年~1年後に膝の軟骨の再生を確認できたといいます。一部が軟骨になるほか、軟骨再生を促す物質を出しているとみられます。
  今回の治験では11月に、20歳代の男性患者1人に他人の間葉系幹細胞から作った組織の移植を行ったということです。うまくいけば数カ月で膝の軟骨が修復される見通しで、他人の間葉系幹細胞をあらかじめ培養することで、1人から提供された間葉系幹細胞で1000人から1万人程度の治療を行うことができるといいます。
 研究チームでは今後3年間で、大阪大病院など全国9施設の患者70人に移植を行い、安全性や効果が確かめられれば、実用化の手続きを進めることにしています。
 大阪大学大学院医学系研究科の中村憲正・ 招聘(しょうへい)教授(整形外科)は、悪化すると歩行困難になる変形性関節症の予防にもつながるとし、「この組織は損傷部に接着しやすく、高い効果が期待できる。他人の細胞を用いることで患者自身の負担が減り、治療コスト削減も期待できる。今後、本格的に再生医療の扉が開くことを期待したい」と話しています。
 東京医科歯科大学の関矢一郎教授(整形外科)は、「備蓄する他人の細胞を使えば必要な時に移植できる利点はあるが、感染症などのリスクには注意すべきだ」と話しています。

 2017年12月11日(月)

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■インフルエンザ患者が大幅に増加 ワクチンの供給は一部地域で不足 [健康ダイジェスト]

 インフルエンザが11月下旬から全国的な流行期に入り、首都圏でも12月に入って患者数が大幅に増えています。
 今シーズンはインフルエンザワクチンの供給が例年のシーズンより遅れ、一部の地域で不足が指摘されていますが、厚生労働省は「ワクチンの出荷は今月中旬ごろまで継続され、順次、供給される見込みです」としています。
 厚労省や国立感染症研究所によりますと、インフルエンザは例年よりやや早いペースで11月下旬から全国的な流行期に入っており、12月3日までの1週間に、医療機関から報告されたインフルエンザの患者数は、東京都では前の週から500人あまり増えて1322人となり、全国で最も多くなっています。
 関東の1都6県では、1医療機関当たりの患者数は栃木県が4・88人と最も多く、次いで埼玉県が3・39人、東京都が3・17人、千葉県が3・15人、神奈川県が2・87人、群馬県が2・33人、茨城県が1・28人となっており、すべての都県で前の週から増えています。
 今シーズンはインフルエンザワクチンの供給が例年のシーズンより遅れ、一部の地域で供給が不足して接種希望者に対して在庫が間に合っていないため、医師などでつくる東京保険医協会は先週、厚労省に対しワクチン不足の解消を求める緊急の要望を行っていました。
 供給の遅れの原因について、厚労省は当初新しい種類のワクチンを製造しようとしたものの生産量が思うように伸びず、急きょ、昨シーズンと同じ種類のワクチンの製造に切り替えたことから、例年のシーズンより製造の開始が遅れたためだとしています。その上で、メーカー側が品質確認作業を急ぐなどしてワクチンの出荷を早める努力も重ね、13歳以上は原則1回のワクチン接種を徹底するよう呼び掛けるなど対策を講じたとしています。
 東京保険医協会は、「今後ワクチンを打っても効果が出るまでに2週間ほどかかるため、クリスマスや初もうでの時期に間に合わない場合もある。マスクやうがいをするほか、人混みを避けるなど十分に気を付けてほしい」としています。
 インフルエンザが流行期に入り、首都圏の学校などでも休校や学級閉鎖が相次いでいます。厚労省によりますと、休校や学級閉鎖の措置を取った保育所や幼稚園、それに学校は12月3日までの1週間で関東の1都6県で117施設に上り、前の週から74施設増えました。
 このうち、東京都が最も多い44施設、次いで千葉県が18施設、栃木県が16施設、埼玉県が14施設、神奈川県と群馬県が9施設、茨城県が7施設となっています。

 2017年12月11日(月)

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■用語 アミロイドーシス [用語(あ行)]

[天秤座]水に溶けない特殊な蛋白質が臓器や神経に沈着し、機能障害を起こす疾患
 アミロイドーシスとは、代謝異常により、アミロイドと呼ばれる特殊な線維状の蛋白(たんぱく)質が血管壁や心臓、腎臓(じんぞう)、消化管、末梢(まっしょう)神経などに沈着するために、さまざまな障害を起こす疾患の総称。アミロイド症、類デンプン症とも呼ばれます。
 1年間に、アミロイドーシスで医療機関を受診する人は全国で1500人程度と推定されており、発症者は1000~2000人に1人とされます。男女ともに、発症は20~40歳代に多く、慢性進行性に経過します。
 大きく、アミロイドが全身に沈着する全身性アミロイドーシスと、アミロイドが限られた臓器、組織に沈着する限局性アミロイドーシスの2つのタイプに分けられます。
 また、遺伝性家族性に現れてくる原発性アミロイドーシスと、慢性感染症や骨髄腫(しゅ)、糖尿病、リウマチ様関節炎、結核、がんなどに伴って現れる続発性アミロイド症に分けられます。原発性アミロイドーシスは、特定疾患(難病)の一つとして厚生労働省から指定されています。
 全身性アミロイドーシスは、さらに免疫細胞性アミロイドーシス、反応性アミロイドーシス(AAアミロイドーシス)、家族性アミロイドーシス、透析アミロイドーシスに分けられます。
 免疫細胞性アミロイドーシスは、免疫細胞の一種で、免疫グロブリンという蛋白質をつくっている形質細胞が過剰に増殖したり、がん化した場合に、大量の免疫グロブリンがつくられ、免疫グロブリンの一部分がアミロイドとなって全身に沈着していきます。
 反応性アミロイドーシス(AAアミロイドーシス)は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなどの膠原(こうげん)病、がん(悪性腫瘍〔しゅよう〕)、結核などの炎症や感染症が治療困難な場合に、血清アミロイドA蛋白という蛋白質が著しく増加し、その状態が長期間続くと、血清アミロイドA蛋白の一部分がアミロイドとなって全身の沈着していきます。
 家族性アミロイドーシスでは、遺伝子の異常によって、正常とは異なった蛋白質が合成され、アミロイドの原因物質になることがあります。最も多いのは、トランスサイレチンという蛋白質の合成異常による異型トランスサイレチンです。このタイプのアミロイドは、特に手足の神経に沈着しやすく、30歳前後で発病し、全身に広がっていきます。特に、熊本県と長野県に発症者が多くみられる地域があり、遺伝形式は常染色体優性で、親から子供に50%の確率で伝わります。
 透析アミロイドーシスは、5年以上、血液透析を受けている慢性腎不全の患者にみられます。β2ミクログロブリンという蛋白質が血液中に著しく増加し、透析ではあまり除去できないために起こります。
 一方、限局性アミロイドーシスは、さらに脳アミロイドーシス、内分泌腺(せん)アミロイドーシスに分けられます。
 脳アミロイドーシスは、脳にアミロイドが沈着するもので、老人性認知症を引き起こすアルツハイマー病の原因とされています。
 内分泌腺アミロイドーシスは、甲状腺髄様がん、Ⅱ型糖尿病、インスリノーマなどの内分泌系の疾患がある場合に、その病変のある臓器に高頻度にアミロイドが沈着するものです。
 最近、アミロイドの構造、その原因物質が次々と明らかにされてきました。しかし、原因物質が何であれ、症状はアミロイドが沈着する臓器、組織によって決まります。よくみられる初期症状は発熱、下痢、患部のはれなどであるため、発見が遅れることが多くなっています。
 全身性アミロイドーシスでは多臓器の障害がみられ、初発症状は倦怠(けんたい)感、むくみ、蛋白尿、貧血、低蛋白血症、巨舌がみられます。腎不全、心不全、または感染症を併発すると、死に至ることがあります。
 限局性アミロイドーシスでは、腎臓に最も多くアミロイドの沈着が起こり、最初は、蛋白尿のみですが、進行するとネフローゼ症候群、腎不全となります。また、心臓にも高頻度にアミロイドが沈着し、心肥大、不整脈を起こし、心不全へと進行します。
 消化管への沈着も高頻度にみられ、頑固な下痢が続きます。手足の神経に沈着すると、知覚障害や筋力低下などを起こし、起立性低血圧、インポテンス、発汗低下などの自律神経障害も現れます。
 そのほか、気管支、肺、肝臓、脾臓(ひぞう)、皮膚、血管壁、関節などにも沈着し、さまざまな症状を現します。
 アミロイドの蓄積が進行し各器官に深刻な障害を起こすと、死に至ることもあります。
[天秤座]アミロイドーシスの検査と診断と治療
 内科、消化器科、消化器内科、循環器内科、リウマチ・膠原病内科などの医師による診断では、症状を手掛かりに、採血・採尿や画像検査、内視鏡検査などを行い、臓器障害を詳しく調べます。
 アミロイドーシスは原因蛋白によって病型タイプが分けられており、この分類によって治療方針が変わってきます。そのため、血清アミロイドA蛋白の測定や、尿中免疫グロブリンの軽鎖測定、遺伝子検索を含む病型を分けるための検査も同時に行います。最近では、家族性アミロイドーシスの原因物質の1つである異型トランスサイレチンの血中濃度を測ることが、可能となりました。
 さらに、生検といって胃十二指腸粘膜や腎臓などの病変臓器の組織の一部を採取して顕微鏡で調べる検査を行い、アミロイド沈着が確かめられた場合に、アミロイドーシスと確定します。
 内科、消化器科、消化器内科、循環器内科、リウマチ・膠原病内科などの医師による治療では、アミロイドーシスのタイプにより治療法は異なりますが、現在、決定的な治療法はありません。
  免疫細胞性アミロイドーシスには、免疫抑制薬とステロイド(副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン)剤を併用して治療します。最近では、自己末梢血幹細胞移植を併用することもあります。
 反応性アミロイドーシス(AAアミロイドーシス)には、関節リウマチや膠原病、がんなど原因となっている疾患を抗リウマチ剤、抗がん剤などを使用して治療します。最近では、血清アミロイドA蛋白の原因物質であるインターロイキン-6の働きを抑える薬剤であるトシリズマブという生物学的製剤によって、血清アミロイドA蛋血の産生を抑えることもあります。
 家族性アミロイドーシスには、異型トランスサイレチンが肝臓で合成されるため、肝臓移植などで進行を抑えることができます。
 透析アミロイドーシスには、β2ミクログロブリンだけを吸着する透析膜の開発が進められ、一部は実用化しています。

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