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■紫外線を遮るオゾン層の減少、熱帯と中緯度帯で進行中 国際研究チームが警告 [健康ダイジェスト]

 有害な紫外線を遮って地球上の生命を守っているオゾン層が、世界で最も人口の多い熱帯と中緯度帯の上空で予想外に減少しているとの研究論文が6日、発表されました。
 1987年9月16日、オゾン層を破壊する物質の生産・消費の具体的削減策を定めた国際協定「モントリオール議定書」が採択され、上層大気、特に南極大陸上空のオゾンを化学的に分解するフロンなどが規制されました。
 それから約30年後の現在、南極上空と上部成層圏の「オゾンホール」は明確な回復の兆候を示しています。成層圏は高度約10キロから始まり、厚さが約40キロです。
 だが同時に、高度10~24キロの下部成層圏に存在するオゾンの分解が徐々に進行していると、今回の論文を発表した研究者20数人からなる国際研究チームは警告しています。
 研究論文の主執筆者で、スイス連邦工科大学チューリヒ校の研究者のウィリアム・ボール氏は、「(人類の大半が居住している)熱帯と中緯度帯の地域では、オゾン層はまだ回復し始めていない」と語り、「実際に、現在の状況は20年前よりやや悪化している」と指摘しました。
 オゾン層の破壊が最も顕著だった21世紀の始まり前後では、オゾン層が約5%減少していたことが、過去の研究で示されていました。
 欧州地球科学連合の学術誌「Atmospheric Chemistry and Physics」に掲載された研究論文によると、複数の人工衛星による観測に基づく今回の最新研究では、オゾン層が現在さらに0・5%減少しているとの推定結果が得られたといいます。
 この推定結果に関して確証が得られれば、オゾン層破壊の度合いが「現在、史上最高レベルに達している」ことになると、ボール氏は語りました。
 研究論文の共同執筆者で、イギリスのロンドン大学経済政治学院グランサム気候変動環境研究所の共同所長を務めるジョアナ・ヘーグ氏は、低緯度地帯に及ぶ可能性のある害は実際に極地方より深刻化する可能性があると指摘し、「オゾンの減少はモントリオール議定書制定前の極地方で観察されたものより小さいものの、低緯度地帯のほうが紫外線が強く、居住人口も多い」と語っています。
 この憂慮すべき傾向を引き起こしている可能性のある原因は2つあると、論文は結論付けています。
 1つは、溶剤、塗料剥離剤、脱脂剤などとして利用されていて、通常6カ月足らずで分解する「極短寿命物質」と総称されるジクロロメタンなどの人工化学物質のグループで、これが下部成層圏のオゾンを破壊します。
 「これが極短寿命物質の問題なら、対応は比較的容易なはずだ。モントリオール議定書を改正して、極短寿命物質を使用禁止にすることが可能だろう」とボール氏は話しています。
 オゾン層破壊を再び進行させている可能性のあるもう1つの原因は、地球温暖化です。
 下部成層圏の大気循環パターンの変化が最終的にオゾン濃度に影響を及ぼし、この影響はオゾンが生成される熱帯上空の成層圏から現れ始めることが、気候変動モデルで実際に示唆されています。
 だがこれまで、こうした変化が起こるのは数10年先と考えられており、熱帯と極地方の間の中緯度帯にまで達していることは予想外でした。
 ボール氏は、「気候変動がその原因なら、問題ははるかに深刻だ」と指摘し、「成層圏が気候変動に対してすでに顕著な反応を示しているかどうかに関しては科学者らの間で意見が分かれている」と付け加えました。
 「憂慮すべき事態だが、不安に駆られないようにするべきだ」とボール氏は続け、「今回の研究は『気候変動モデルに現れていない何かがここで起きている』ことを示すための大きな警鐘を、科学界に向けて鳴らしている」としました。

 2018年2月8日(木)

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